〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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クソボケ対メカクソボケ

 

 

 

 

 

「えぇ~!?酒泉、ゲームできないのー!?」

 

「そんな……」

 

 

ゲーム開発部、部室にて

 

小さな勇者が俺の身体に抱きつきながら目を滲ませて見上げてくる

 

モモイさんは大袈裟に落ち込んでみせながらも顔を伏せたまま時々チラッと視線を向けてくる、そんなバレバレな演技をしたところで駄目なもんは駄目だ

 

 

「別にゲームができないってわけじゃないけど……あんま目を使いたくないっていうか……」

 

「……酒泉はアリス達と遊びたくないのですか?」

 

「うっ……ご、ごめんなぁ……」

 

「あーあ、酒泉とゲームやるの楽しみにしてたのになぁ」

 

「ごめん無理」

 

「なんか私とアリスで対応変えてない!?」

 

 

ほら……モモイさんってなんか同級生的な親しさがあるから……それはそれとしてどっちに頼まれても断るけど

 

そもそも俺は無理矢理拉致られた身だぞ、よく頼みを聞いてくれると思ったな

 

 

「……えっと……それで?俺を拉致した理由はそれだけか?だったらそろそろ帰してもらえるとありがたいんだけど………調月さんと会う約束してるし」

 

「………アリスとは遊んでくれないのに、ですか?」

 

 

そんな悲しそうな瞳で見つめないでくれ、俺だって本当に心苦しいんだ

 

ここらでオロオロしている花岡さんと同情的な目で見てくるミドリさんに助けを求めてみる

 

 

「えっと……アリスちゃん?酒泉君は今日は用事があるみたいだからさ……」

 

「そ、その……アリスちゃんも全力の酒泉君と対戦したいよね……?」

 

「……今日は2人で協力するゲームをプレイするつもりでした」

 

「あ……」

 

「こうして直接会うのは久しぶりでしたので一緒に楽しくゲームをしようと………」

 

 

そう言って天童さんが指差した先には幾つかのハンティングゲームのソフトが置かれていた

 

 

「……どうしても駄目……ですか……?」

 

「うぅ……私もずっと待ってたのに……」

 

 

天童さんもモモイさんもそんなに一緒に遊ぶのを楽しみにしてくれてたのか………まあ、天童さんも言ってたけど地上に帰ってきてから直接会うのは随分久しぶりだしな

 

目の検査とかシロコさんを受け入れる準備とか連邦生徒会との手続きとかで会いに行く暇がなかったからな、モモトークでのやり取りはしていたけど

 

 

「アリス達はアトラ・ハシースの様子が分からないから地上で待ってるしかなくて……」

 

「酒泉達の無事を祈ることしかできなくて……」

 

「酒泉達が帰ってきたって連絡がきた時は凄く嬉しかったのに……」

 

「肝心の酒泉本人は〝暫く忙しくなるから〟って会えなくて……」

 

「アリス達はずっと我慢してて……」

 

「こうしてやっと会えたと思ったら……こんな冷たい対応をされるなんて……」

 

「………それなのに、アリス達はまだ触れ合ってはいけないのですか?」

 

 

天童さんとモモイさんが左右から交互に思いを告げてくる

 

2人の純粋系女子が繰り出すこの攻撃に耐えられる人物など存在するのだろうか?いや存在しない

 

「……えっと……調月さんとの用事が済んでから………少し遊ぶくらいなら……」

 

 

心の中で俺の目を検査してくれたお医者さんにごめんなさいと謝罪しながら条件付きで2人の頼みを受け入れる

 

すると、モモイさんはパァッ!と顔を明るくしながら跳び跳ねた

 

 

「やったー!言質取ったりー!作戦通りだね!アリス!」

 

「……は?作戦?」

 

「ふふん!こうやって攻め込めば酒泉はなんだかんだ断れないって、私達は最初から分かってたよ!」

 

 

前言撤回、全然純粋系じゃなかった

 

いつの間にかそんな知恵を得たんだ……姑息な手を……!(白き盾)

 

 

「ごめんね酒泉君、でも今回ばかりは2人を………ううん、3人を許してあげて?アリスちゃんはここ最近ずっと元気が無かったしケイちゃんも酒泉君が会いにこない事への文句ばかりだったし………」

 

「モ、モモイは時間が空く度に〝そろそろ酒泉も暇になったかな〟って私達に聞いてきて────」

 

「うあああああっ!!!わざわざ言わなくていいからあああああ!!!」

 

 

モモイさんは花岡さんの言葉を遮りながら大声で叫ぶ

 

しかし残念、花岡さんの言葉は既に俺の耳に届いた後だった

 

 

「そっかー、モモイさんはそんなに俺と遊びたかったのかー」

 

「……な、なにさ!?」

 

「いや?お姉ちゃん属性のモモイさんも俺が相手だと甘えん坊になるんだなーって思ってさ?」

 

「は……はぁ!?別に甘えてるわけじゃないじゃん!?一緒に遊びたいって言ってるだけでしょ!?」

 

「あんな演技までしておいて?」

 

「なっ!?あ、あれはぁ……そのぉ……」

 

 

先程騙されたことへの仕返しとばかりにニヤニヤしながら言ってやると、モモイさんは顔を真っ赤にしながら必死に否定しようとしている

 

そんな彼女に対して勝ち誇った笑みを浮かべながら部室の扉に手を掛ける

 

 

「とりあえず調月さんとの用事を済ませたらなるべく早く戻ってくるよ………誰かさんが俺と遊びたがってるからなぁ?」

 

「よ、余計なことは言わなくていいから!早く行ってきてよ!」

 

「はいはい、行ってきまーす………じゃあ、そういう事だからちょっとだけ待っててくれ、天童さん」

 

 

未だに身体に抱きついている天童さんを離れさせ、部室の扉を開けて廊下に出ようと足を進める

 

ついでにスマホをポケットから取り出して調月さんに〝やっぱり解決しました〟とメッセージを送ろうとし─────全く動かない自分の身体に気づく

 

 

「ん?」

 

「………ゃ……です……」

 

いつの間にか天童さんが俺の服を後ろから掴んでいた

 

他に用があるのかと問おうとすれば、天童さんは頬を膨らませてから大きな声で叫んだ

 

 

 

「嫌ですっ!!!」

 

 

 

キーンと耳鳴りがし、咄嗟に両耳を塞いでしまう

 

そんな俺を見ても天童さんは構わず叫び続ける

 

 

「アリスもケイも沢山我慢してきました!これ以上は待ちきれません!」

 

「……え……えっと……アリスちゃん?酒泉君は忙しいみたいだから……ね?」

 

「嫌です!離しません!今すぐ遊びたいです!」

 

「て、天童さん?天童さんは他の人を思いやれる優しい子だろ?」

 

「今日のアリスは悪い子です!」

 

 

いやいやと首を振りながら離そうとしない天童さんをなんとか説得しようとするが、むしろ服を掴む力が強くなってしまった

 

「アリスの気分はバッド状態です!構ってくれないと体調が悪くなる一方です!」

 

「そんな育成ゲームみたいな………」

 

「とにかく!アリスは酒泉から離れません!」

 

 

おかしい……天童さんはここまで我儘ではなかったはずだ

 

他者を無理矢理縛り付けたり強引に連れていったりとそんな事は殆どされたことはなかったし、仮にその機会があったとしても説得すれば渋々応じてくれた

 

なのに、今は意地でも自分の意見を押し通そうと必死になっている

 

 

「……生きて帰ってこられるかもわからないダンジョンに潜って………無事が確認できるまでずっと胸が張り裂けそうで……」

 

「……ん?」

 

「やっと酒泉の顔を……生きてる酒泉の姿を見ることができたのに………すぐに離れないといけないなんて……!」

 

 

……そういうことか

 

悲しそうな表情でボソボソと語る天童さんの姿を見て漸く気づくことができた、こうして俺と直接会うまで天童さんはずっと不安だったんだ

 

本当に帰ってきたのか、どこも怪我していないか、ちゃんと生きているのか

 

その身が残っていなくてもおかしくないほど激しい戦いから帰還した俺のことをずっと心配してくれてたんだ

 

 

「……ごめんな天童さん、気が利かなくて……」

 

「…………アリスの我儘、聞いてくれますか?」

 

 

不安そうな表情のまま尋ねてくる天童さんに苦笑を浮かべながら返事をする

 

 

「……んー……そうしたいのは山々だけど俺の独断じゃ決められないから、ここは一旦調月さんに連絡して────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【王女の気持ちを知っても尚、他の女の名前を出すのですか】

 

 

身体が凍てつく程冷たい声色と共に天童さんの瞳が赤く光る

 

喋り方も先程から一変し、元気な子供の様な喋り方からどこか大人らしさを感じる冷静な喋り方へ

 

 

「……ケイさん」

 

【……貴女の鈍感さは死の淵から帰還しても相変わらずですね】

 

 

ジロッと睨み付ける様に俺の顔を見上げ、表情に怒りを滲ませる

 

人格を交代しても尚、ケイさんは俺の服を掴み続けている

 

 

「えっと……ケイ?落ち着こ?気持ちは分からなくもないけど、酒泉は用が済んだら部室に来てくれるって言ってるし……」

 

【王女の頼みを聞くのは当然の事………問題は優先順位です】

 

 

モモイさんの説得を当然事として切り捨てたケイさんは、自身の不満点を口にする

 

 

「優先順位……?」

 

【その男は私たっ……王女よりも調月リオを優先しようとしていました、我々と共に歩むことを約束した彼がその様な行いをする事は万死に値します】

 

「や、約束……したっけ……?」

 

【……私を王女の精神世界から連れ出そうとした時に〝最後まで責任を取れ〟と言いましたし、色彩対策の話をしていた時も〝私と王女を永遠に護れ〟と命じたはずですが?】

 

「それは……言ってたけど……」

 

 

確かにその時の会話は覚えている

 

でも、あれは〝これからも仲よくしようね!〟的な意味だと思っていたんだ

 

 

【それなのに………貴方は私を置いて何処へ行こうと?】

 

 

ケイさんは俺の制服のネクタイを掴むと、そのままグイッと力強く引っ張る

 

鼻先同士が当たりそうになる程の距離まで顔が近づくが、ケイさんはそんな事など微塵も気にせず問い詰めてくる

 

 

【……ここで一度、主従関係をハッキリさせておく必要がありそうですね】

 

 

何をするつもりだ

 

そんな事を問う間もなくケイさんはネクタイから手を離すと、今度は俺の顔を両手で掴もうとし────

 

 

 

 

 

 

 

 

「戯れがすぎるわよ、ケイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

────指先が俺の頬に掠めた瞬間、身体が後ろに引っ張られる

 

 

「遅くなったわね…………トキ、お願い」

 

「お任せください、そこのソファに置いてあるマスタードーナッツのボックスセットは私が確保しておきます」

 

「そうじゃなくて彼をお願い」

 

「……イエス、マム」

 

 

俺よりドーナッツを優先しようとしたポンコツメイドは、前に立つと俺を庇うように片腕を広げる

 

やっぱり調月さんの分だけ買ってくればよかったかもしれない

 

 

「何が起きたのかと思って駆けつけてみれば………嫌がっている相手を無理矢理縛り付けるのは感心しないわね」

 

【……貴女がそれを言いますか、調月リオ】

 

「あんな事件を起こした私だからこそ言ってるのよ」

 

 

バチバチと火花を幻視してしまいそうなほど激しく睨み合う両者

 

モモイさんもミドリさんも花岡さんも口出しができずにオロオロしている

 

 

【………酒泉、どうせ大したことのない事情でしょうが一応聞いておきます……貴方の用事とは?】

 

「え?ああ………実は調月さんが俺の為に用意してくれた新兵器をアトラ・ハシース内に置いてきちゃって………だから改めてのお礼とそれを台無しにしちゃったことへの謝罪をと思ってな」

 

「そんな事気にしなくてもいいのに………酒泉、私は貴方が無事に帰ってきてくれただけでも十分なのよ」

 

「でも……あの武器って手間もお金も結構掛かってそうでしたし……」

 

「……それがどうかしたの?」

 

「……え?」

 

「そんな問題、貴方と比べたら頭の隅に入れておく必要すらない些細な事よ。私にとって貴方は時間やお金なんかより大切な存在なのだから」

 

「調月さん……」

 

「酒泉……」

 

【……私は用事が何なのか聞いただけですが?誰がそこまで語り合えと?】

 

 

調月さんと見つめ合っていると、ケイさんが下からずいっと割り込んでくる

 

そのまま2人の視線は再びぶつかりあった

 

 

「先約は私よ、彼に用があるのなら後にしてちょうだい」

 

【どちらが先に約束したかなど関係ありません、彼は我々の要求に無条件で応える義務があります】

 

「……傲慢ね」

 

【傲慢なのは貴女でしょう】

 

 

互いに一歩も譲らぬまま語り続け、どちらかの口が開く度に部室内の空気が冷たくなっていく

 

部室の隅っこから送られてくる視線に気づけば、ミドリさんが口パクで俺に何かを伝えようとしている

 

 

〝な ん と か し て〟

 

 

無理だ、そもそもお宅の部員さん達が結託して俺を拉致してきたのだからそっちでなんとかしてほしい

 

てか助けてほしい

 

 

【酒泉、貴方は当然────リオ会長のことばかり構っててズルいです!アリスともお話してください!」

 

「……アリス、酒泉を困らせては駄目よ」

 

「で、でも!アリスは酒泉のことをずっと待って────困っているかどうかは彼が決める事です、貴女には関係ありません】

 

「………なら、彼に直接聞いてみましょう………子供に現実を突きつける様な真似はあまりしたくないのだけど」

 

【逆に貴女が現実を知る結果になるかもしれませんけどね………前々から気に入らなかったのですよ、その理解者面が】

 

「ちょっ……ちょっと待ったー!?私のことを忘れてもらっちゃ困るよ!?」

 

「お姉ちゃんのヒロイン力じゃ無理だよ……ここは下がろう」

 

「うぅ……な、なんだか雰囲気が……」

 

 

途中から天童さんも乱入し始めてもはや収拾がつかなくなってきた、花岡さんに至っては我関せずとロッカーの中に隠れてしまった

 

何故かギャーギャー騒ぎながらこの2人の戦いに参戦しようとしているモモイさんもミドリさんに腕を引っ張られて動けずにいる、飛鳥馬さんはいつの間にかドーナッツを頬張ってやがる

 

つまりケイさんと調月さんを止められるのはただ1人………俺だ!

 

…………帰りてェ~!!

 

 

【酒泉?】

 

「酒泉?」

 

 

2人から向けられる視線を受けながらも心の中で誰かに助けを求めてみる、当然返事は来ない

 

せめて無関係の第三者がここに来て2人の話を聞いてくれたら……冷静に諭してくれるかもしれないのに……

 

そんな都合の良い展開なんて訪れる筈もないのに、無駄な希望を抱いてしまっている辺り自分がどれほど追い詰められているのか改めて自覚することができた

 

……なんて考えている場合ではない、こうしている間にも心なしか調月さんとケイさんの圧が強くなっている気がする

 

頼む……誰でもいいからこの状況を─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ……お困りのようだね?共にロマンを追い求める同士よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某野菜人に助けを求めるクリのZ戦士みたいに〝誰でもいいから早くきてくれー!〟と心の中で叫んでみると、俺の背後から落ち着いた声が聞こえてくる

 

 

「やあ、直接会うのは君が地上に帰ってきた時以来かな?」

 

「お久しぶりです!酒泉さん!」

 

「……なんか……ギスギス……してる?」

 

 

軽く振り向いてみるとそこには時々役に立つ道具を作ったり大半の確率で訳の分からん物を作り出すエンジニア部の3人が立っていた

 

 

「白石さん!豊見さんに猫塚さんも!まさか……俺のことを助けにきてくれたんですか!?」

 

「いや、なんか〝ゲヘナの制服を着た生徒がゲーム開発部の生徒に拉致られてた〟って噂を校内で聞いたから野次馬しに……」

 

「帰れ」

 

 

だったら〝お困りのようだね〟とか助けてくれそうな台詞吐きながら登場しないでください

 

微かな希望を砕かれた事に若干げんなりしていると、白石さんはぽんぽんと笑顔で俺の肩を叩いてきた

 

 

「まあまあ、そんな冷たいことを言わずに………共に裸を見せ合った仲じゃないか」

 

「見せ合ってねーよ俺だけが一方的に見られてるわ」

 

「な、なんだい?それじゃあ私にも裸を見せろと?……し、仕方ないな……他ならぬ君の頼みとあらば……」

 

「状況を混乱させに来ただけならマジで帰ってくれませんかねぇ!?」

 

「ははっ!すまない、ずっと徹夜続きで作業していたせいでどうにもテンションが………ウトナピシュティムの内装を点検したあの日からずっとアイデアが止まらなくてね!」

 

 

あの戦いで使用された超兵器の数々、どうやらエンジニア部はそれに心惹かれてしまったらしい

 

頭に思い浮かんだアイデアは片っ端から試しているといった感じだ……え?なんで知ってるかって?モモトークに写真付きで発明品の全体図が送られてくるからですけど?

 

 

「さて、冗談は半分置いといて………」

 

「残りのもう半分で本気で野次馬しにきてたんだとしたらキレますからね」

 

「どれを冗談と捉えるかは君に任せるよ…………それよりも酒泉、もし私がこの状況をどうにかできると言ったら?」

 

「……え?」

 

 

ふふん!と得意気な顔で胸を張る白石さん

 

俺はてっきり本当にちょっかい掛けにきただけなのかと……

 

 

「……ウタハ、悪いけどこれは私達の問題よ」

 

【貴女達エンジニア部の出る幕ではありません】

 

「ふふっ……それはどうかな?2人は酒泉の身をめぐって言い争っているんだろう?」

 

 

白石さんは勿体振った様な言動をしながら指をパチン!と鳴らす

 

すると背後に立っていた豊見さんと猫塚さんは横にずれ、更にその後ろに隠していたマネキン程のサイズの〝何か〟を俺達の前に出す

 

 

「それなら〝2人分の酒泉〟を用意してしまえば問題解決だろう?………せーの!」

 

 

その〝何か〟には銀色の布が被されており、豊見さんと猫塚さんはその布を掴むと白石さんの合図と同時に引っ張った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────という訳でこんな時こそ〝メカ酒泉君スペックⅡ〟の出番だッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って俺達の前に姿を現したのは、肌が鉄で出来ていてどこかメカメカしさを感じる顔が俺ソックリのロボットだった

 

 

「……え?」

 

「説明しましょう!メカ酒泉君スペックⅡとは試作型であるメカ酒泉君から戦闘機能をオミットし、肩揉み機能や甘やかし囁き機能を代わりに搭載した次世代機です!」

 

「いや……あの……」

 

「この肩揉み機能、結構便利なんだよね……エナドリを飲ませてくれる機能も付いてるし……」

 

「そ、そうじゃなくて……」

 

「他にも口説きモードとかクソボケモードとかも付いてますよ!……口説きモード、オン!」

 

《ア、カミニイモケンピツイテルヨ》

 

 

髪に芋けんぴってどんな状況だよ、そんなの前世にあった少女漫画でしか────いや少女漫画でもその状況はおかしいだろ

 

てか俺の顔でクソみてぇな事を言わせるんじゃない、それとクソボケモードってなんだよ

 

 

「………って!そうじゃない!?」

 

 

ツッコミどころが多すぎて思わず肝心な事をスルーしてしまうところだった

 

そもそもさ────

 

 

「………なんで俺のロボット作ってんの?」

 

「「「………」」」

 

 

一度ビクッ!と震えると3人の動きは止まってしまった

 

言い逃れなどさせまいと思いっきりジト目で睨んでやると、白石さんがモゴモゴと言い訳を始めた

 

 

「い、いや……違うんだ、これは別に私達が自分の意思で作り始めた訳ではなくてね………最初はとある依頼人に〝酒泉そっくりの機械人形を作ってくれ〟と依頼されたのが全ての始まりなんだ」

 

「その依頼人のご要望通り、当初は〝甘やかし囁き機能〟だけを搭載して渡すつもりだったのですが………それだけだと面白みが無いと思いまして……」

 

「結局、他にも色んな便利機能を勝手に付けちゃったんだよね…………で、その機能を全部紹介したら依頼人の人が〝ちょっと待ってちょうだい!こんなの酒泉じゃないわ!〟って受け取り拒否されちゃって………まあ、お金は払ってくれたんだけど」

 

「それでも廃棄するのが勿体無くて私達の所で使っていたら……その……想像以上に凄く便利で……」

 

 

髪に芋けんぴが付いてるものと仮定して口説いてくるロボットなんて拒否られるに決まってんだろアホか

 

……ん?もしかしてこの調子だと他の機能もクソみてーなのしかなかったのでは?

 

 

「と、とにかく!クオリティはかなりの出来だと保証するよ!百聞は一見に如かず、だ!」

 

「ささっ!試しにどうぞ!」

 

 

そんな疑問を口にする間もなく、ケイさんが豊見さんに背中を押されてメカ酒泉君スペックⅡの前に立つ

 

 

「甘やかし囁きモード、オン!」

 

「あっ!?ま、待って!?どうせテストするなら私が!」

 

「お姉ちゃん!空気読もうよ!」

 

 

先程と違って甘やかし囁きモードとやらを起動するとメカ酒泉君スペックⅡはゆっくりと口を開き、ケイさんはそれを黙って眺めている

 

そして────

 

 

 

《オシゴト オツカレサマ………ホラ ヤクソクドオリ イッショニ ネテアゲルヨ?》

 

【なんですか?この酒泉の名を騙るだけのガラクタは】

 

 

一瞬で否定された

 

 

「うーむ……やはり君も解釈違いを起こしたか、実は依頼人もこれが原因で断ってしまったんだ」

 

「解釈違いってなんだよ……」

 

 

てか、なんで俺が一緒に寝ないといけないんだよ、もっと需要ありそうな人に頼めよ

 

誰かが近くに居ないと眠れないとか、どうしてもそうしないといけない理由があるなら一度だけOK出すかもしれないけど

 

 

「だって君なら〝なんで俺が一緒に寝ないといけないんだよ……他にも適任はいるだろ?〟みたい事を言って断るだろ?」

 

「えっ」

 

「それで頼み込まれたらちょっと照れながらも〝こ、今回だけですからね!?〟ってなんだかんだでOKを出すだろ?」

 

「えっ」

 

 

なんで白石さんは俺のムーブをそんな正確に理解してるんだよ

 

………って思ったけど、周りの人達も頷いている辺り俺は相当分かりやすい人間なのかもしれない

 

戦闘中の演技とかは自信あるんだけどなぁ……

 

 

「この機能はお気に召さなかったみたいだが……まだまだ未使用の機能は残っているぞ!次はこれだ!」

 

「口説きモード、オン」

 

 

今度は猫塚さんの呼び声と共に口説きモードとやらが起動する

 

名前からして既に嫌な予感がするが………これが杞憂である事を願うばかりだ

 

それから数秒後、言葉を発したメカ酒泉君スペックⅡは─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フウキイイン トカ シラナイケド、タブン ゼンイン ダイタゼ》

 

【………………フンッ!!!!!】

 

《オピョピョニャーン!!!》

 

 

 

 

─────奇妙な悲鳴を上げながら顔面をケイさんに無惨にも殴り飛ばされた

 

メキャッ!という音と共に顔が歪み、内部から機械のパーツが溢れ落ちる

 

その壊れた顔面の元まで顔を真っ青にしたエンジニア部が駆け寄り、絶望した様な表情で両手をついて叫び始める

 

 

「う、うあああああ!?私達の酒泉がああああ!?」

 

「か、顔が……あんなぐしゃぐしゃに……!」

 

「酒泉が……酒泉が死んじゃった……!」

 

「それ本人の前で言うのやめてくれません?」

 

 

自分と同じ顔面が部室内に転がっている事に複雑な心境を抱いていると、ケイさんは不服そうに呟く

 

 

【先程以上の解釈違いです、このクソボケに堂々と〝他者を抱いた〟等と言う度胸などありません…………そもそもその相手が風紀委員だというのも不愉快です】

 

 

さりげなく俺のチェリーっぷりを馬鹿にされたような気がするが、とりあえずこれもまたケイさんのお気には召さなかったみたいだ

 

メカ酒泉君スペックⅡを見てみればガタガタと震えていた身体がピタリと止まり、その内部からプシューッと煙を吹いて倒れてしまった

 

 

「ぶ、部室が……煙くなっちゃう……」

 

 

ロッカーの中から花岡さんの声が聞こえ、そういえばここがゲーム開発部であった事を思い出す

 

そこから連鎖的に〝そういえば調月さんとの用事をどうしようか〟と本来の目的も共に思い出した

 

……なんか、色々ありすぎて考え事すんの面倒になってきたなぁ

 

 

「………ねえ、調月さん。いっその事この部室内で話しません?ここなら天童さんとゲームで遊ぶこともできますし……」

 

「……そうね、想定外のハプニングが起きたせいで無駄に時間を浪費してしまったし………本当は2人だけで話したかったけど今回は妥協しましょう」

 

「天童さんとケイさんもそれでいいか?」

 

【……次はありませんから─────アリスは酒泉と遊べたらそれでいいです!!」

 

 

なんだ、最初からこうすればよかったんだ

 

2人の圧が怖くてどちらかを選ぶことに拘ってしまったけど………やっぱ皆仲良くが一番だよな、うん

 

 

「つまりハーレムルートですね」

 

「飛鳥馬さん、これ以上話をややこしくするならドーナッツ取り上げるからな」

 

 

途中からずっと知らんぷりを決め込んでいた飛鳥馬さんを睨むと、彼女は無表情のままくっそ下手な口笛を吹いてきた

 

そんなんじゃ誤魔化されないが……もはや突っ込む余裕すらない、今日はとにかく疲れた

 

 

「花岡さんもミドリさんも悪かったな……部室内で騒がしくしちゃって」

 

「あ、いや……私達がアリスを止められなかったのも原因だから……」

 

「あと途中からギスギス空間に参戦しようとして話をややこしくしようとしたお姉ちゃんもね」

 

「え!?私も悪いの!?」

 

「そもそもアリスが酒泉君を連れ去ろうとした時に賛同したのもお姉ちゃんじゃん」

 

「うえっ!?あ、あれは冗談というか……」

 

 

モモイさんが何か言いたそうにチラ見してくるが、どうせただの言い訳だろうから適当に流しておく

 

そんな事よりも部室内に散らばってしまったメカ酒泉君スペックⅡのパーツを拾い集めながら未だに落ち込んでいるエンジニア部に声を掛けようとし────ある事を思い出す

 

 

「……そういえば白石さん、俺のロボットを作るように依頼した人って結局誰なんですか?」

 

「ああ……その事か……実は依頼は匿名で来ていてね、機能説明も捨てアドに送っていたから相手が誰なのか分からないんだ」

 

「………そんな怪しい奴の依頼を引き受けたんですか?」

 

「どうする?メカ酒泉君スペックⅡに悪用できそうな機能は1つも無いが……心配ならヴェリタスに頼んで相手を────」

 

「その必要は無いわ、相手の事なら私が調べておくから」

 

「調月さん……でも、調月さんだって忙しい身でしょう?」

 

「いいのよ、これが貴方の為になるのなら………むしろ私にやらせてちょうだい」

 

「……じゃあ、お願いしてもいいですか?」

 

「ええ、任せて…………それと、この事は私1人で進めるから他の人には頼まないで」

 

「……?まあ、調月さんが言うならそうしますけど……」

 

「……なるほど、そういうことか」

 

「………ウタハ」

 

「安心してくれ、何も言うつもりはないさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は18:53

 

ミレニアムから出る頃にはすっかり暗くなっていた

 

17:30頃にスマホでシロコさんに送っておいた〝現在ミレニアム、帰り遅れる〟〝作り置きしておいたおかずが冷蔵庫に入ってるからそれを食べてくれ〟というメッセージに既読が付いているのを確認し、スマホの画面を閉じる

 

調月さんと会うだけだからそんな時間は掛からないと思っていたけど………全然そんなことはなかったな

 

 

「……今度、お詫びにどっか連れていくか」

 

 

シロコさんとプラナを自宅で待たせてしまったことに罪悪感を抱き、休日に2人を連れて何処か遊びに行こうと考える

 

なんだろう、プラナも楽しめる場所となると………映画館とか?プラネタリウムを観にいくのも良さそうだな

 

どっちにするかまだ決めてないけど……とりあえずチケットは3人分買っておくか、プラナも入場客だし

 

 

「………よし、走るか」

 

 

脚に力を込めて走り出す

 

2人をこれ以上待たせたくないという申し訳無さと自宅で誰かが待っているという嬉しさに心を揺らし、途中からスキップの様になってしまう

 

もしここに誰か居たなら変質者だと思われてしまうかもしれないが………まあ、見たところ周囲に人影は

 

 

「……ある」

 

 

────違う、人影はない、でも人の気配はある

 

 

「……誰だ」

 

 

上からの気配に警戒しながら背のホルダーからスナイパーライフルを抜き出す

 

空崎さんから戦闘行為は禁止されているが、今だけは許してほしい

 

 

「私が貴方を見つけた瞬間に気配に気づくなんて………その〝眼〟は回復し切れてなくても1人で夜道を歩く分には申し分無さそうですね」

 

 

最近聞いたばかりの声がクスクスと笑いながら語りかけてくる

 

眼鏡を掛けていないその目を集中させ、本当は薄々と正体に気づいている気配の主を下から見上げて注視する

 

 

「……もう、そんな風にまじまじと見つめてくるなんて………私達の関係はまだその段階にまでは至ってませんよ?」

 

 

電柱の上から話しかけてきた少女は自らのスカートを押さえ、そして────その狐面を外し、少々赤く染まった頬を露にした

 

 

「お久しぶりです………貴方様♡」

 

「まだ貴方様とは呼ばない……みたいなこと言ってたような気がするんですけど」

 

「………あら、また呼んでしまいました」

 

 






ゲーム開発部(裸ってなんの話だろう……)
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