〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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かつての敵はずっと友

 

 

 

 

愛らしい瞳で見つめてくる目の前の小さき者に手の甲を向けると、トテトテと寄って頬をすりよせてくる

 

もう片方の手で頭を撫でれば身体を小さく震わせ、撫で終えて手を離そうとすれば逆に自分から寄って顔をくっつけてきた

 

その妖精の様な愛らしさを持つ生き物は、時々俺の手に口先を当ててきたりとくすぐったさを与えてくる

 

ああ……もう駄目だ……我慢できない!お前が悪いんだぞ……!

 

お前がそんなつぶらな瞳で見つめてくるから……小悪魔みたいに甘えてくるから……!

 

全部お前のせいだぞ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────シマエナガくん!!!」

 

「……私を置いて勝手にイチャつかないでくれるかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「漸く顔を見せに来てくれたかと思えば、まさか私そっちのけでシマエナガと戯れ始めるとはね……」

 

「すいません……シマエナガ君が可愛すぎてつい……」

 

 

俺の手の上をトテトテと歩くシマエナガくんを未だに愛でていると、百合園さんはどこか不機嫌そうに目を細める

 

もしや俺がシマエナガくんを独占しているから怒っているのだろうか……ごめんよシマエナガくん、あっちに行っておいで

 

 

「なっ……」

 

 

だが、手から下ろしてもシマエナガくんは首を傾げながら再び俺の手に飛び乗ってきた

 

な……なんだこの可愛い生き物は……!わからん!わからねば!

 

 

「モフモフしすぎだろマジで……一生触ってたいんだが……」

 

「……これは特に理由のない独り言だが、耳の毛の触り心地なら私も自信があるんだ」

 

「おっふ……めっちゃ手にすりすりしてくれる……しゅきぃ……」

 

「……聞こえてないのか」

 

 

あまりの愛くるしさにシマエナガくんをそのまま自身の頬に近づけると、此方が顔を動かす前に向こうからピョンと身体をくっつけに来てくれた

 

ああもうホントすきかわいい最高

 

 

「……そろそろ返してくれないかい?」

 

「も、もうちょっと……もうちょっとだけ……」

 

「駄目だ、時間切れだ」

 

「そんな……あと数分だけでいいから────っ!?んっ……ちょ……」

 

 

百合園さんが手を伸ばした瞬間、シマエナガくんは俺の胸元から制服の中へと侵入してきた

 

まさか……お前も離れたくないのか……!?可愛すぎだろ天使かよ!

 

どうか忘れないでほしいシマエナガくんは我らの光であり────

 

「……もういい、こうなったら君の制服を脱がせてでも回収させてもらうぞ」

 

「はい?────ぬおっ!?」

 

 

いつまで経ってもシマエナガくんと離れようとしない俺に痺れを切らしたのか、百合園さんは椅子から立ち上がって俺のネクタイを解くとそのまま制服まで脱がせてきた

 

すると、真っ白なワイシャツのお腹辺りの部分の膨らみがモゾモゾと動いていた

 

かわいいどうやらシマエナガくんはかわいいこんな所まで潜りかわいい込んだみたいだかわいい

 

 

「……ふん!」

 

「キャアアアアアアア!?百合園さんのエッチィィィィィ!?」

 

 

百合園さんは俺のワイシャツの中に勢い良く下から手を突っ込み、シマエナガくんを両手で包んで回収した

 

返せよぉ!俺のシマエナガくん返してくれよぉ!

 

 

「全く……君は自分の主人が誰なのか理解して────こら、隙あらば彼の元に行こうとするんじゃない」

 

 

百合園さんは再び移動しようとしたシマエナガくんの身体に優しく手を乗せて動きを封じる

 

シマエナガくんも観念したのか、モゾモゾと手の中から抜け出してそのまま百合園さんの肩に移動した

 

 

「酒泉、君もだぞ………シマエナガにばかり意識を向けるんじゃない」

 

「だって……めっちゃ可愛いし……」

 

 

本日何度目になるのか覚えていない〝可愛い〟発言

 

馬鹿の一つ覚えみたいにその言葉を連呼していると、百合園さんはピクッと眉間を震わせた

 

 

「……そうか……つまり君はシマエナガは可愛かったからそちらにばかり意識を向け、私は可愛くなかったから疎かにした………と?」

 

「え?」

 

「すまなかったな、君の好みの容姿でなくて」

 

 

ムスッとした表情で怒る百合園さんを見て漸く自分の行動が失礼なものだったと自覚した

 

目の前のレディがもてなしてくれたというのに、それを無視してしまうなんて……

 

 

「……そ、そんなことないです!百合園さんもバチクソ可愛いです!めっちゃ好みです!」

 

「へぇ?シマエナガとどちらの方が?」

 

「……ッ…!」

 

「そこで悩むんじゃない」

 

 

百合園さんが口を尖らせながら文句を言ってくる

 

だが、これは俺にとっては簡単には決められない問題なんだ

 

確かに百合園さんはその小さな身体でも見る者を魅了させる大人の雰囲気を醸し出してるし、時々覗かせてくる年齢相応の子供らしい立ち振舞いもそれを助長させている

 

しかしシマエナガくんも負けてない、あの子も触れた者全てを取り込む様なふわふわした身体や目が合った瞬間にその相手を虜にしてしまう悪魔の瞳を持っている

 

……駄目だ……俺には……選べない……!

 

 

「……た、確かにシマエナガくんは可愛いですけど、それは百合園さんと比べるようなものではないと言いますか……………ほら!シマエナガくんはペット的な可愛さですけど百合園さんは女性的な可愛さじゃないですか!」

 

「……誤魔化そうとしていないかい?」

 

「いやいやいや!まさか!本心ですよ本心!」

 

「そうか………それが本心だと言うのならば他の者の前でも同じ様に堂々と答えられるんだな?」

 

「勿論です!」

 

「それがミカの前であっても?」

 

「……?まあ、別に……」

 

「そうか……ならいいんだ」

 

 

全く関係のない聖園さんの名前が出てきたかと思えば、百合園さんは突然機嫌を直して椅子に座り直す

 

とりあえず落ち着いたみたいで良かった……次からは目の前の相手を疎かにしないように気を付けよう

 

………やっぱりもう少しだけシマエナガくん触っていたかったな

 

 

「まあ、茶番はこの辺りにして本題に…………………君のせいで何を話そうとしていたのか忘れてしまったぞ」

 

「えぇ……俺が悪いの……?」

 

「そうだ、君のせいだ。あの戦い以来電話越しでしか話せなかった君とせっかくこうして顔を合わせたというのに君がシマエナガのことしか─────ああ……今ので思い出したよ、あの戦いの事に関して労いの言葉を言おうとしたんだった」

 

 

そのまま話に入るかと思えば百合園さんは〝それよりも〟と付け加えてから口を開く

 

 

「先ずはこの言葉から言っておこう………おかえり、酒泉」

 

「………はい、ただいま」

 

 

地上に戻ってから色んな人に言われた言葉だが、何度聞いても自分が生きて帰ってこられた事への安心感を覚える

 

気分的にはラストシューティングした後の天パ、僕にはまだ帰れる(ry

 

 

「まさか君の方から〝直接話がしたい〟なんて言われるとはね……」

 

「もしかして迷惑でした?」

 

「そんなことはないさ、君の頼みならどんな状況でも受け入れるよ。何せ君はたった1人の同士なのだから………なんて、こんな言い方をすると重く聞こえてしまうかな?」

 

 

同士……百合園さんも俺も若干方向性は異なるものの、共に未来を視た者だ

 

百合園さんは恐らくその事を言っているのだろう

 

 

「まあ、同士と言っても互いに重荷は降りた後だけどね」

 

「危惧していた事態は全部解決しましたからね………なんかすっごい肩が軽くなった気がします」

 

「おや、君もあの感覚を味わったのかい?」

 

「はい……百合園さんも?」

 

「ああ、他にもギュウギュウに締めた首元のネクタイが外れたり脂っこい物を食べた後の感覚が消えたりと色んな例え方もあるがね」

 

「何ですかその例え………って言いたいところですけど、全部理解できちゃうんですよねぇ」

 

 

多分、こんな例えで通じ合えるのは全世界探しても俺と百合園さんだけだろう

 

 

「サイズ違いの小さめの靴を脱いだ時とかキツめのヘルメットを外した時とか、あのジワジワと迫りくる苦痛から解放された様な……」

 

「その例えも妙だな……まあ、理解できるが」

 

「やっぱり?」

 

 

クスクスと笑いながら下らない例を上げていくが、互いに似た様な経験をしている故か特に引っ掛かる事もなくサクサク話が進む

 

こんな事を言い合えるのは〝クソみてえな未来が視える同盟〟である百合園さんだけだろう

 

……まあ、その同盟ももう解散されたけどな

 

 

「………俺達、やっと乗り越えられたんですね」

 

「……ああ、私も君もやるべき事はやった……後は何も知らないこの世界を歩いていくだけだ」

 

「むしろ未来を〝知っている〟事の方がおかしいんですけどね………」

 

「そうだな……どうする?未知の世界を歩み始めた事への記念も込めて2人だけで慰労会でも開くかい?」

 

「おっ?それもいいっすね……個室のある飲食店でも探しておきます?」

 

「そうしよう、日程は後ほど連絡するよ」

 

 

互いに労いながら今後の予定を立てる

 

いつ死んでもおかしくない程のギリギリの戦いを生き抜いて目的を達成したんだ、こうして境遇の似た人と今までの苦悩を愚痴り合うのも偶には悪くないだろう

……大人の人達がビールを飲んで愚痴り合ってる時もこんな感じの気分なのかな、仕事の目標を達成した的な

 

「……まあ、とりあえずお疲れ様でしたってことで」

 

「ああ、君もお疲れ様」

 

 

〝既知〟は終わってここからは〝未知〟だ、でも以前まで感じていた不安はもう無い、むしろちょっとだけワクワクしている

 

……この感覚懐かしいなぁ……中学生に上がる時も高校生に上がる時もこんな風に胸を踊らせてたなぁ

 

……今世では高校も卒業して大人になった後も寿命まで生き続けられるといいな

 

とりあえず前世で出来なかった事は全てやっておきたい、具体的に言うとビールを飲む事とか………20歳になったら先生にオススメのお酒とか聞いてみようかな

 

 

「……どうしたんだい?まだ昼にもなってない内から黄昏れるなんて」

 

「いや……なんかスッゲー充実してんなぁって…………ちょっと前まで燃え尽き症候群になってたんですけど」

 

「おや、君にもそんな時期が?」

 

「はい、地上に戻ってすぐの話ですけど………」

 

「……まあ、やることがないというのは言い方を変えればそれだけ平和だという意味でもあるからな」

 

 

百合園さんの言う通り、気を抜く余裕が出来たのは良いことだ

 

だからと言って風紀委員としての活動に支障を来すほど気を抜きまくるのは駄目だろうが………こうして休んでいる間だけなら別に問題ないだろう

 

 

「……あ、そうだ」

 

 

雑談ばかりしていたせいで忘れるところだったが、こうして直接会いに来たのには別の理由があるんだった

 

 

「百合園さん、アリウススクワッドとの面会許可を出してくれてありがとうございます………今日会いたかったのはこの事に関して直接お礼が言いたくて」

 

「………なんだ、それが理由だったのか。てっきり私は────いや、何でもない………その事なら気にしなくてもいい」

 

「そうはいきませんよ、だって百合園さんは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────全員分の面会許可を出してくれたんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……はい、持ち物検査は以上です」

 

「ありがとうございました」

 

 

目の前に立っているトリニティの生徒達に武器を全て手渡し、私物として施設内に持ち込む袋の中身を返してもらう

 

中にはスナック菓子やペットボトルに入ったジュース等、特に危険でもない物が沢山入っていた

 

……まあ、あの人達に恨みを持ってる連中が変なもん仕込む可能性もあるし、ただのお菓子1つにも注意しないといけないってのは理解できるけどな

 

いつか、こんな検査を通さなくても普通に会えるようになればいいのに

 

そんなことを願いながら連れの帰りを待っていると、近くにいたトリニティ生の1人がおずおずと話しかけてきた

 

 

「あの……お連れさんのことで少々お話が……」

 

「はい?なんです?もしかして持ち物に問題が?」

 

「というよりも……持ち物の受け渡し自体を拒否しておりまして────」

 

 

 

 

 

「おい!そいつを止めろっ!!!」

 

 

 

俺達の背後から大声が聞こえてきたのはその時だった

 

目の前のトリニティ生と同時に身体をビクッ!と震わせながら驚き、恐る恐る後ろを振り向いてみる

すると、遠くの方から白い羽を揺らしながら全力で駆け寄ってくる少女の姿が

 

「そいつは持ち物検査を拒否して────うおおおっ!?爆弾を落とすんじゃあない!?」

 

「くっ……このままだと追い付かれて………っ!?酒泉!良いところに!」

 

 

……えっと……これは……どういう状況だ?

 

 

「いつまでも逃げてないでさっさと武器を渡せ!」

 

「断る、〝武器は戦いにおける生命線、つまり自分の命そのものだと思え〟………サオリの教えだから」

 

「その錠前サオリに会わせる為に危険物をここで全部預けろって言ってるんだが!?」

 

「敵が人質を解放するとは限らない」

 

「敵じゃない!」

 

 

………ああ、大体分かった

 

恐らくあの人が武器の受け渡しを拒んだのだろう

 

 

「酒泉、無事でよかった!ここは一旦体制を立て直して……」

 

「なあ────白洲さん」

 

「なに?」

 

「持ってきた物、全部あの人達に渡そっか」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリウススクワッドが暮らしている保護施設内を歩いていると、隣で白洲さんが不服そうに呟く

 

 

「こんな無防備な状態で堂々と歩くなんて……」

 

「敵に会いに行く訳じゃないんだし別にいいでしょう?」

 

「別にサオリ達のことを警戒してる訳じゃない、私が警戒しているのは帰宅中に戦闘に巻き込まれる可能性」

 

「それはそれで大袈裟……でもないですね、ここキヴォトスだし」

 

 

ちょっと買い物に出掛けただけなのに突然弾丸が飛び交う………白洲さんの危惧してる事だって起こり得るのが学園都市キヴォトスの恐ろしさだ

 

因みにゲヘナでは結構な確率で発生する

 

 

「……酒泉、今日は私を誘ってくれてありがとう」

 

「いえいえ……せっかくアリウススクワッド全員が揃ってる日なんですし、俺1人で会うなんて勿体無いでしょ?」

 

 

虚妄のサンクトゥムから出現した敵勢力を食い止める為の防衛戦は特に人的被害が出る事もなく、無事キヴォトス側の勝利で終わった

 

だが、建造物等に関してはそうとは言い切れず、戦闘の被害によって破壊されかけた建物の復旧を多くの生徒達の協力の元行われている

 

その協力者の中には当然アリウススクワッドの面々も含まれており、基本的に全員駆り出されているため帰還時間もほぼ同時になる

 

そのお陰か、ここ最近は4人で任務に駆り出されることは少ないアリウススクワッドが全員集まれる数少ない機会となっていた

 

 

「………皆に会うの、久しぶりなんだ」

 

「ん?面会には行ってないんですか?」

 

「面会には行ってるけど……そうじゃなくて〝5人全員揃うのは久しぶり〟って意味」

 

「……もしかして自治区でベアトリーチェと戦った時以来?」

 

「うん」

 

 

緊張しているからなのか、それとも楽しみだからなのか

 

よく観察してみると少しそわそわしてるように見えるのもそれが原因なのだろう

 

 

「ちょっとだけ緊張するけど………応援してくれた補習授業部の皆の思いに応える為にも頑張る」

 

「応援?………ああ、アリウスの皆と会う事への?」

 

「……分からない」

 

「えっ」

 

 

白洲さん本人も何を応援されたのか分かっていないのか……?

 

 

「ヒフミ達に遊びに誘われた時、その時間は酒泉と2人で買い物する予定があるから無理だと答えたらハナコに〝デート楽しんできてくださいね〟とは言われたけど……」

 

「……もしかして……補習授業部の人達、俺達の関係を勘違いしてるんじゃないですか?」

 

「?」

 

 

何がおかしいのか理解していないのか、白洲さんはキョトンと首を傾げる

 

まあ、確かに2人で買い物したけどさ………アリウススクワッドの皆に色々渡す為に

 

 

「……てか、白洲さんの友人達は俺のこと知ってるんですか?」

 

「うん、スカルマンのぬいぐるみを貰った時の事とかで度々話題に出してたから………その時に皆に関係を聞かれたりした」

 

「なんか嫌な予感が……その時なんて答えました?」

 

「〝恩人〟とか〝優しい人〟とか………他には〝サオリ達と同じぐらい大切な人〟とか」

 

「……多分、それが原因ですね」

 

 

それってつまり白洲さんにとっての〝家族〟と同義じゃねえか

 

そんな答え方されたら俺だって勘違いするわ………いや、浦和さん辺りは勘違いに気づいていながらも楽しんでそうだな

 

 

「……その誤解、なんとかしておいた方がいいですよ……白洲さんの将来にも関わりますし」

 

「……誤解?」

 

「その……〝大切な人〟ってところとか……」

 

「別に誤解じゃない、事実だから」

 

 

フンス!と何処か得意気に見える表情で胸を張る白洲さん、具体的に言うとᓀ‸ᓂみたいな表情で

 

 

「サオリ達を止めてくれたこともアツコを助けてくれたことも全部話した、ヒフミ達も悪いイメージは持ってないはず」

 

「いや、そういう事じゃなくて……」

 

「2人で出掛けることを伝えたら何故かコハルだけ〝エッチなのは駄目!〟って慌てていたけど」

 

「ドピンクじゃねえか」

 

 

どんな性格かは最初から知っていたけど、まさかエ駄死判定が此方にまで来るとは思っていなかった

 

聖園さん聖園さん、貴女のヒーロー頭の中エロ一色ですよ

 

 

「……あと、スカルマンに興味を持ったことを伝えたらヒフミが喜んでいた」

 

「ひぇ……裏組織のボスに目をつけられた……」

 

「?」

 

どうしよう、今後はモモフレ関連の話題を口にする時は気を付けた方がいいのかもしれない

 

特にペロロ様をペロペロ様と言い間違えようもんなら存在そのものが消されるかもしれない

 

 

「………ここか?」

 

 

なんて冗談混じりに考えていると目的の部屋の前に………冗談だよな?冗談で済むよな?

 

まあ、とにかく2人だけのお喋りはここまでだ、この先は皆も交えて……な

 

 

「ノックしてもしもお~~~し」

 

「……その変な挨拶は?」

 

「なんとなく」

 

 

コンコン、と戒野さん達が暮らしている施設の一室のドアを軽く叩いてみるが返事はない

 

おっかしいなぉ……中からは微かに声が聞こえるし部屋だってここで間違いないはずなんだけどなぁ……

 

 

「錠前さーん?いないんですかー?」

 

「……そんなはずはない、ドアの奥からは微かにサオリの声が聞こえてきた………もしかして何かあったのかも」

 

「はい?────って、白洲さん!?」

 

 

此方の言葉を待つ間も無く勢いよくドアを開ける白洲さん

 

銃器類は持ち物検査の段階で全て預けてしまっている為、代わりに拳を構えている

 

 

「サオリ!大丈夫!?」

 

 

警戒しながらそう叫ぶ白洲さん、次に飛び込んできた光景とは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしている!早く飾り付けを終わらせるぞ!」

 

「今からじゃ間に合わないって………あとリーダー、そこの紙輪切れてる………力みすぎ」

 

「なっ……そんな……!こんな事すら満足にこなせないなんて………やはり全ては虚しいのか……」

 

「サッちゃんがばにたすモードに入っちゃった」

 

「……姫が今日になっていきなり〝歓迎会を開こう〟なんて言い出したせいだからね」

 

「でも、ミサキだって〝酒泉も喜んでくれるかも〟って言った途端乗り気になったよね?」

 

「……私はリーダーがまたポンコツ晒さないか見張ってただけ」

 

「あのぉ……ところで私はいつまで折り紙で輪を作る作業を続けていればいいのでしょうか……?」

 

「ずっと」

 

「ずっと!?」

 

「酒泉が来た後も」

 

「来た後も!?」

 

「歓迎会用のお菓子をつまみ食いした罰なんだし当然でしょ」

 

「そ、そんなぁ……1つ摘まんだだけなのに……」

 

「ヒヨリ、実はあのチョコレートはね?〝酒泉は糖分が好き〟っていう情報を手に入れたミサキが自分で選んで買ってきた────モゴッ」

 

「……余計な事は言わなくていいから」

 

「ばにたす……ばにたーたむ……」

 

「リーダーもいつまでも落ち込んでないで作業を────あ」

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

「……久しぶり、皆」

 

 

 

目が合った

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

「……やはり慣れない事はするものじゃないな」

 

「あ、あはは……でも気持ちは嬉しかったですよ」

 

 

ここはアリウススクワッドの保護兼監視施設、更にその中に作られた通常の民家と殆ど変わりのない生活スペース

 

その玄関辺りで落ち込む錠前さんに軽くフォローを入れてみるが、それが明らかな気遣いだと一瞬で理解したのか余計に落ち込んでしまった

 

 

「……サオリ、私達はどんな過ちを犯そうと生きるしかない……前に進み続けるしかないんだ」

 

「アズサ……お前は未だに私の前を歩き続けるんだな……そんな、何も恐れず光の中を歩み続けるお前だからこそ────」

 

「これってそんな重い話でしたっけ?」

 

 

こんな些細な事でも真面目に考え込んでしまう辺り似た者同士に感じる

 

……というよりも……姉妹?的な?やっぱこの人達は家族なんだなーって

 

 

「……いや、それよりも今はお前達を歓迎する事だけを考えよう………落ち込むのはそれからだ」

 

「そうだね……ということでヒヨリ」

 

「は、はい!」

 

 

秤さんの呼び声と共に槌永さんが前に出てくると、手に持っているクラッカーのような物を俺と白洲さんの方へ向けてきた

 

そのまま下に付いている紐を引っ張ると、パン!と勢いよく音が鳴る

 

 

「よ、ようこそ!アリウススクワッドへ!………こ、こんな感じでよろしかったでしょうか……?」

 

「………つまみ食いの罰として歓迎の言葉を考えてもらってたけど………まさかそれで終わりなの?」

 

「えぇ!?これ以上何を求めるつもりなんですかぁ!?」

 

「槌永さん……その……頑張ったな……」

 

「なんですかその反応はぁ!?万人に受ける挨拶なんてそんなすぐ思い付くはずないじゃないですかぁ!!」

 

「顔が近い!あと顔がうるさいぞアンタ!」

 

「むごぅ!?…………んむむむむむっ!むむむっ!?」

 

「口を塞がれながら喋らないでよ……」

 

 

うわあああん!と涙を滝のように流しながら騒がしくすり寄ってくる槌永さんの顔を片手で押さえていると、戒野さんが俺の手を引っ張って奥の部屋まで連れていってくれた

 

その際、支えを失った槌永さんがおもいっきり顔を床に打ち付けていたが……まあ、キヴォトス人の耐久力なら問題ないだろ

 

少しずつ槌永さんの泣き声が遠ざかっていき、戒野さんがピタリと止まる頃にはリビングらしき部屋に着いていた

 

「ほら、ここ座って………飲み物は何でもいいでしょ」

 

「あ、はい……ありがとうございます」

 

 

トン、と

 

雑なように見えて中身が溢れないくらいの勢いでオレンジジュースが入ったコップを目の前に置かれる

 

 

「………」

 

「………」

 

「……向こう、どうだったの」

 

「………向こう?」

 

「………アトラ・ハシースのこと」

 

「ああ……あれですか……」

 

 

なんとなく無言でジュースを飲んでいると、同じく無言で此方を見つめていた戒野さんが唐突な質問をしてきた

 

 

「結構ギリギリの戦いでしたね、何度も交戦しましたし何度も死にかけました」

 

「ふーん……まあ、こうして帰ってこれたなら上出来じゃない?知らない間に勝手に〝持ち主〟に死なれてても困るし」

 

「あー……そういえばそんな契約も────」

 

「何?忘れてたって?」

 

「────そんな事ないさ、ずっと俺の心に刻まれてるよマイハニー……」

 

「キモッ……」

 

「ごめんて」

 

 

〝そんな契約もあったなー〟って言おうとした瞬間、戒野さんに強めに睨まれる

 

誤魔化す為に咄嗟に演技してみたが俺の顔面偏差値では受け入れられなかったみたいだ

 

 

「……で?他には?」

 

「え?」

 

「何か面白そうな話とかないの?」

 

「えぇ……何その無茶振り……」

 

「……ほら、何か話してよ……早く」

 

「……いや、特に無いかな……うん」

 

「………あっそ」

 

一言それだけ言い残すと、戒野さんは自分の分のコップを取りに台所の方へと行ってしまった

 

人類の生存を賭けた戦いに行ったのに面白い話とかある訳がない………俺が全裸を晒したっていう他人からしたら笑い事になりそうな話はあるけど、でも絶対に言わない

 

てか、戒野さんってこんなキャラだっけ?本人の性格的にむしろ〝興味ないね……〟とか言いそうなもんなんだけど

 

 

「酒泉、酒泉」

 

「ん?」

 

 

ちょいちょいと秤さんに手招きされて顔を近づけると、耳元でコソコソと囁いてきた

 

 

「ミサキ、本当は無事に帰ってきた酒泉に対して〝おかえり〟って言ってあげたいんだけど、改めて意識して言おうとしてるから照れちゃってるの………さっきから酒泉に話を振ってるのも自然な流れで〝ただいま〟って言わせてから返事をしたいんだと思う」

 

「……なるほど?」

 

結構可愛らしい理由だなと思いつつ、これをネタにからかうとグーパンが飛んできそうなので止めておいた

 

秤さんに〝行ってくる〟と目配せしてから席を立ち、台所でコップを洗っている戒野さんの隣に立つ

 

 

「……なに?」

 

「あー……その、もうちょい大きめのコップありません?一気に飲みたいっていうか……」

 

「………後で持ってくから座って待ってて」

 

 

戒野さんは俺の顔を見ようともせず俯いたままコップを拭いている

 

袖を捲って露になった腕を見てみると、前まではそこに巻いていたはずの包帯が少しだけ面積を減らしていた

 

……もうここまで治ったのか

 

 

「……腕、綺麗ですね」

 

「………誰かさんに人権渡しちゃったし、勝手に自傷する訳にはいかないからね」

 

「……あー……あの……今更ですけど、実は言い忘れていたことがありまして……」

 

「………」

 

「……た、ただいま……?」

 

「………はいはい、おかえり」

 

 

そう返事をすると戒野さんは素っ気なく手を振って台所から去っていく

 

これで良かったのかと秤さんの方をチラ見すると、秤さんはグッ!と親指を上に立ててきた

 

 

「……それにしてもリーダーとアズサ遅いんだけど」

 

「多分、玄関辺りで話し込んでいるんじゃないかな?」

 

「まだ終わってないんだ………まあ、ここで待ってたらそのうち戻ってくるでしょ。ほら、酒泉も早く」

 

戒野さんが隣の椅子の上を叩き、さっさと座れと暗に伝えてくる

 

お言葉に甘えて席に着いて待っていようと足を進め………ようとしたが、そんな俺の横を槌永さんが通り抜ける

 

 

「うぅ……や、やっと鼻の痛みが治まりましたぁ……」

 

 

どうやら想像より強めに顔を床に打ち付けたのか、赤く張らした鼻を押さえながらトボトボと席に着く

 

……戒野さんが俺に座るように催促してきた席に

 

 

「ミサキちゃん……私にも飲み物をください……流した涙の分だけ水分を摂らないと干からびてしまいますぅ……」

 

「んな大袈裟な……泣いた程度でミイラになるなら今頃人類滅んでるわ」

 

「この前滅びかけたけどね」

 

「秤さん、それブラックジョークどころじゃないです」

 

「うぅ……ミサキちゃん……ミサキちゃあん……」

 

「…………」

 

「……ミ、ミサキちゃん?」

 

 

とりあえず秤さんの隣に2つ席が空いていたからそっちにお邪魔させてもらったが、そうすると戒野さんの周囲に何やら不吉なオーラが漂った………気がした

先程からずっと槌永さんの呼び掛けを無視する戒野さん、これは……怒ってる……のか?

 

 

「あ、あのぉ……?わ、私……何かしてしまいましたか……?」

 

「……別に?気のせいでしょ」

 

「お、怒ってますよね……?絶対に怒ってますよねぇ!?」

 

「……だから気のせいだってば」

 

「ヒヨリ、その席はミサキが酒泉を隣に座らせようと────」

 

「……あっ!?もしかして私なんかが隣に座ったせいでミサキちゃんを不快にさせてしまったのでしょうか!?そうですよね……私みたいな廃墟の片隅に捨てられてそうな存在なんかが隣に居たところで邪魔なだけですよね……えへ、えへへ……」

 

 

いつもの卑屈さを発揮した槌永さんは暗い雰囲気で席を立つと、そのままトボトボと他の席………俺の隣まで移動してきた

 

 

「あ……お隣失礼します……えへへ……」

 

「お、おう……」

 

 

慰めようかと思ってぽんぽんと肩を叩こうとしたが、なんか今の雰囲気の槌永さんに触れると指の先から腐り落ちそうだったから途中で手を引っ込める

 

すると、それを見た槌永さんはぶわっ!と再び目から大量の涙を流し、俺の両肩を掴んで詰め寄ってきた

 

 

「今、引きましたよね!?ドン引きしましたよねぇ!?いつもみたいに慰めてくださいよぉ!」

 

「うるせぇ!アンタなんか慰めた覚えはねえよ!」

 

「うわあああん!アリウス自治区ではあんなに優しかったのにいいいいい!」

 

 

うるさっ、コイツうるさっ

 

この騒がしさも久しぶりだなぁ……なんて懐かしみながら肩を何度も何度も揺らしてくる槌永さんに頭突きをお見舞いする────硬っ!?

 

 

「おいゴルァ!!もっとデコ柔らかくしろやぁ!!」

 

「そ、そんな理不尽なっ!?」

 

「頬っぺばかり柔らかくなりやがってよぉ!?おおん!?」

 

「ほっへはをひっはらないれふらはい~!」

 

 

身体を揺らしてきたお返しとばかりに槌永さんの両頬をつまみ、おもいっきり引っ張る

 

すると、むにぃ~という擬音を幻視してしまうほど伸びてしまった

 

 

 

「うぅ……いひゃいれふ……」

 

 

むに

 

 

「あ……あやまりまふから……」

 

 

むにむに

 

 

「はっ……はらひてふらはい~!」

 

 

むにむにむに

 

 

 

「……酒泉、いつまで引っ張ってるの?」

 

「……秤さん、槌永さんの頬ってこんな触り心地良かったっけ?」

 

「多分だけど、ここの健康的な食事が原因で肌の艶とかがより増したんだと思う」

 

 

そうか……アリウス時代より圧倒的に良い生活を送っているのか……よかったなぁ皆

 

 

「……いつまで触ってんの」

 

「あ……すまん」

 

「うぅ……酒泉さんに傷物にされてしまいました……きっとこのまま身も心も傷だらけにされて私の全てを酒泉さんに支配されて────うあああん!やへへふらはいいいい!」

 

 

人聞きの悪いことを言い出す槌永さんの頬を再びつねると、またギャーギャーと騒ぎ始めた

 

それを無視して錠前さんと白洲さんの到着を待っていると、秤さんが俺の肩をちょいちょいと叩いて顔を此方に近づけてきた

 

 

「なんだ?秤さん」

 

「……私も負けてないよ?」

 

「何の話────うおっ……?」

 

 

秤さんは空いている方の俺の手を掴むと、そのまま俺の人差し指を自身の頬に突っつかせた

 

 

「どう?」

 

「どうって……触り心地のことか?」

 

「うん、私もこっちでの生活で結構健康的になった方だと思うんだけど」

 

 

この間にも俺の指を勝手に動かして頬を突つかせてくる秤さん

 

うーん……確かに秤さんの頬も柔らかいけど……

 

 

「この頬に比べたらなぁ……」

 

「いひゃいれふよね……くるひいれふよれ……」

 

「……別にいいもん」

 

 

秤さんの頬を突きながら槌永さんの頬を釣り上げて改めて比べてみる、やっぱ〝伸び〟が違いますね……うん

 

そうして槌永さんの頬の感触を楽しんでいると秤さんは俺の指を離し、あの黒いマスクを付けてそっぽを向いてしまった

 

 

「……もしかしていじけてる?頬の感触比べで槌永さんに負けただけで?」

 

「………いじけてない」

 

「いや、やっぱいじけて────ぬうおおおおおおおお!!?」

「酒泉の頬っぺはあまり柔らかくないね」

 

「うわあああん!ちぎれひゃいまふううううう!」

 

 

秤さんから思わぬ反撃をくらい、今度は俺の頬が引っ張られる

 

悶えた際に槌永さんの頬を摘まんでいた指に力が入ってしまい、槌永さんの方にも被害が行ってしまう

 

 

「秤さん!ストップ!本当に千切れるから!?」

 

「あ、でもこの硬さ……癖になるかも………ミサキも触ってみたら?」

 

「……そうだね、じゃあ……怒りを込め────じゃなくてお言葉に甘えて」

「ぐああああああああっ!!?」

 

「うわああああああああああん!!?」

 

 

戒野さんも席を立ち上がり、俺の後ろから頬を引っ張ってきた

 

その結果、秤さんと戒野さんに両頬を引っ張られ、そんな俺に頬を引っ張られる槌永さんという訳の分からない光景が出来上がってしまった………が、それでも俺は槌永さんを離さない

 

貴様の頬も一緒に連れていく……!

 

 

「すまない、待たせ……た……?」

 

「……この状況は……?」

 

 

結局、この光景は錠前さんと白洲さんが戻ってくるまで続いた

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

「うぅ……どうして私ばかりがこんな目に……」

 

「文句なら全部酒泉に言ってね」

 

「あのクソボケがヒヨリを離さなかったのが悪い」

 

「ミサキちゃんと姫ちゃんにも原因があると思うのですが……」

 

「……本当だ……酒泉の言ってた通り、本当に柔らかい……」

 

「ア、アズサちゃん?触るだけならいいですけど引っ張らないでくださいね?」

 

「………」

 

「アズサちゃん?聞いてます?…………ア、アズサちゃん!?なんで頬をつまむんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……妹さん達、元気ですね?」

 

「……からかうな、酒泉」

 

 

テーブルの中央のお皿に盛られたお菓子をつまみながらワチャワチャしているアリウススクワッドの面々を眺めている錠前さん

 

そんな彼女の隣に座ってちょっとだけからかってみると、錠前さんはジトッと目を細目ながら睨んできた

 

 

「すいません……でも、彼女達が妹であることは事実でしょう?」

 

「……まあ、な……アズサまでそう思ってくれているのかは分からないが」

 

「思ってなかったら面会なんて来ませんよ」

 

 

錠前さんは未だに思うところがある様子を見せるが、すぐに控え目な笑みに切り替わる

 

「……そう、だな……ここまで来てもらったのに下らない疑いを掛けてしまうなんてアズサに失礼だからな、そう思っておくことにしよう」

 

「そうしましょう」

 

「……ところで話は変わるが……よくこの施設への立入許可が貰えたな、しかもアズサの分まで……」

 

「コネって最高ですよね、百合園さんには一生頭が上がりませんよ」

 

「お前な……」

 

 

正直に伝えると錠前さんが呆れたように溜め息を吐いてくる

 

勿論百合園さんには感謝している、今後俺の力が必要になった時は喜んで手伝うつもりだ………とはいえ、もう未来の知識は無いし単純な戦力としてだけどな

 

 

「……ふっ……」

 

「……なんかおかしな事でもありました?」

 

「いや……立場上はただのゲヘナ生でしかない者の為にトリニティのトップが力を貸したり、そのゲヘナ生が少し前まで殺し合っていたアリウスの生徒に会いに来たりと………本当に人生何があるのか分かったものではないな」

 

……まあ、確かにゲヘナもトリニティも互いに険悪だったからな

 

もし俺達の関係を何も知らない生徒が見たら普通に困惑するだろうな

 

 

「……こんなにも行き先が分からない人生を……私は〝虚しい〟などと言っていたんだな」

 

「そこら辺は……まあ……ベアトリーチェの洗脳とかもありましたし……」

 

「それじゃ駄目なんだ」

 

「え?」

 

「たとえ昔の私の思考がベアトリーチェの教育の影響で歪んでしまったのだとしても、それに抗う強さを持てず心が折れてしまったのは私自身の責任なんだ」

 

 

後悔している様に語る錠前さんの視線の先には白洲さんの姿があった

 

 

「……それは……ベアトリーチェの教えに抗うことができた〝白洲アズサ〟という前例が居るからですか?」

 

「そうだ、アズサは私と違って最後まで抗い続けることができる心の強さを持っていた。なら私が何を言ったところでそれは言い訳にしかならないだろう」

 

「……でも、白洲さんは────」

 

「だからこそ、だ」

 

 

俺の言葉を遮り、錠前さんは言葉を続ける

 

 

「私は全て背負わなければならない………家族を地獄まで連れてしまいそうになったことも、ゲヘナとトリニティを破壊しようとしたことも、シャーレの先生を殺そうとしたことも………私はもう、逃げ出したくないから」

 

 

自分の覚悟を俺に伝えると、錠前さんはどこか自罰するように微笑みながら俺の胸元に手を当ててきた

 

 

「そして………私が付けてしまったお前の身体の傷のことも、な」

 

「……律儀なこった」

 

「お前に比べたら大したことないさ」

 

 

この空気が気恥ずかしくなり、錠前さんから視線を逸らしながら呟く

 

だが、錠前さんは視線を逸らすことなく真っ直ぐ此方を見つめる

 

なんだかこのまま見られ続けるのもこそばゆい為、先程の話の続きをしようと口を開く

 

 

「……そういや錠前さんはさっき〝アズサにできて私にできないはずがない〟みたいなこと言ってましたけど、錠前さんと白洲さんじゃ立場が違いますからね?」

 

「……立場?」

 

「確かに白洲さんの心が強いのは事実ですよ?でも、錠前さんだって家族に降りかかる苦痛をその身で受け止めてベアトリーチェから護り抜いたりしてるじゃないですか………錠前さんだって十分強い心を持ってますよ」

 

 

……こんな言葉、昔の俺ならアリウスに対して絶対に言わなかっただろうな

 

 

「むしろ錠前さんが白洲さんを護り抜いたからこそ、その分白洲さんに余裕が生まれてあのメンタルに成長した………とも考えられますよ?」

 

「……お前は本当に人の心を掴むのが得意な男だな」

 

「もしかしたら詐欺師の才能があるのかもしれませんね」

 

「もしくはホストかもね」

 

「うおっ……秤さん?」

 

 

錠前さんの言葉に冗談で返すと、直後に秤さんがひょこっと俺の視界の中に映り込んできた

 

一歩後退ってみれば、他の人達も全員俺と錠前さんを見つめていた

 

 

「……いつから会話聞いてました?」

 

「アズサのことを褒めてた辺りから」

 

「リーダーも酒泉さんもシリアスな雰囲気で会話してましたからねぇ……」

 

「嫌でも意識が向くに決まってるでしょ……」

 

 

なんか騒がしくじゃれ合ってたから気づいていないのかと思ってたが………全然そんな事はなかったな

 

どこか気まずさを感じていると、そんな俺と錠前さんを取り巻く空気を無視して白洲さんが近づいてきた

 

 

「サオリ、酒泉の言う通りだ………あの日、アリウスの上官に逆らった罰を与えられそうになった時、私を護ってくれたのはサオリだった」

 

「………私達が出会った日か」

 

「それだけじゃない、サオリが私のことを育て始めた日でもある………サオリが教えてくれた戦闘技術は全て私の中で生きている!この力があったからこそ、私達が退学させられそうだった時も空が赤く染まったあの日も乗り越えることができた!」

 

「……アズサ……ありがとう」

 

 

拳を震わせながら感謝を伝える白洲さん

 

錠前さんはそんな白洲さんを優しい瞳で見つめながら白洲さんの手を自身の両手で包み込んだ

 

 

「……で?ただの歓迎会のはずなのになんでお涙頂戴みたいな展開になってるの?」

 

「とか言ってるミサキも途中までサッちゃんと酒泉の会話をしんみりしながら聞いてたよね」

 

「……しんみりなんてしてないし」

 

「……はっ!?そ、そうですよ!私達が会える時間は限られているんですから早く歓迎会の続きをしないと!」

「………そうだった」

 

「……忘れるところだったな」

 

……さて、シリアスな空気はここまで

 

ここから先は頭の中であんうぇるかむなスクールを流しながら歓迎会を楽しむとしよう

 

 

 

「……あっ!?それよりも秤さん!さっき俺がホストに向いてるって言ってたのどういう意味ですか!?もしかしてガチればイケメンだったりします!?」

 

「……ごめん、やっぱり嘘」

 

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