クソボケ、ボロボロのガキと出会う
「うぅ……や、やっぱり外の世界に希望なんて……」
ぐう~とお腹を鳴らしながらびしょ濡れの身体を自分で抱き締めている、そんな儚げな雰囲気を醸し出している少女と出会ったある日の午後
少女の着ている汚れたその作業服は知る人ぞ知る悪徳企業の物で、確かゲヘナ風紀委員会の方でも生徒達がカモられないように要注意リスト入りしていたはず
……まあ、ここトリニティの路地裏だけど
(……詐欺にでも遭ったか?)
雨でぐっしょぐしょに濡れ、完全に破けている〝給料〟と書かれていたであろう袋には何も入っておらず、その封筒を見つめている少女の目は虚ろだった
同情はする、でも助けはしない
トリニティの生徒……かは分からないがトリニティで起きた事件なら正義実現委員会かティーパーティーが解決するだろうし、ゲヘナの俺が下手に関わるべきではないだろう
(まあ、次はちゃんと相手の会社の評判を調べてから契約するんだな)
これ以上ジロジロ見るのも悪いと思い、何も気にしていない風を装って座り込む少女の前を通り抜ける
路地裏のダクト下では当然雨風を完全に凌げる筈もなく、既に濡れている少女の身体に追い討ちを掛ける様に雨粒が襲いかかる……今日の天気予報によれば更に雨が強くなるらしいけど大丈夫か?
そんな空腹状態でこれ以上体温を奪われると少々不味い気がするが……流石に帰る家か寮ぐらいはあるだろうし放っておいても問題無いか?
「……み、みんなの言う通りだった……結局……私達は……」
何やら絶望に染まった表情でぶつくさ呟いている少女、明らかにただ事ではない雰囲気を感じて足が一瞬止まってしまうが、すぐに何事も無かったかの様に歩き出す
傘の予備でもあればせめてそれだけでも置いていってやったが、生憎俺が持ってるのは折り畳み一本のみ。赤の他人の為に風邪を引いてやるほど俺は優しくない
「あー……なあアンタ、大丈夫か?」
「…………ぇ?」
優しくはない……が、最低限の良心は持っていたようだ
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「暖かいです……」
はふぅ、と声を溢しながらちびちびココアを飲む少女───立木マイア、喫茶店内の暖房が良い感じに効いてきたのか、先程まで震えていた身体はすっかり落ち着きを取り戻していた
汚れている作業着に関しても身嗜みを気にして取り敢えず上の方だけ脱いでもらい、代わりに俺の上着を羽織らせている
「それにしても……まさかココアすら飲んだことがないとはな」
「ご、ごめんなさい……」
「ああ悪い、別に責めてる訳じゃないんだ」
この立木マイアという少女、どうやら都会に憧れてドがつく程の田舎から抜け出してきたらしい
……結局都会で生き抜く術と知識が無かったせいで悪い大人の食い物にされ、最後にはあんな場所まで流れ着いてしまったらしいが
「ここは凄いです。部屋中こんなに暖かくて、こんなに美味しい飲み物も飲めるなんて……」
「いやいや、ドがつく田舎でも流石に飲食店くらいはあるだろ?そうじゃなくてもココアくらい売ってるだろうし」
「え、えーっと……それすら無い程の田舎ですので……」
「……そうか」
なるほど、確かにそのレベルの田舎っぷりなら出ていきたくなるのも無理はないな……つーか話を聞いている限りだとアリウス自治区レベルで時代に取り残されてんな
「お待たせしましたー、こちらカスタードパイでーす」
「ありがとうございまーす」
「……?あ、あの……これ、パン……ですか?」
「…………食ってみれば分かるよ」
「え?で、でも……」
「いいからいいから、カスタードパイもそっちのココアもどっちも俺の奢りだ……ほら、食え」
カスタードパイを前に心底不思議そうに首を傾げる立木さん、彼女の目には恐らく目の前のスイーツがただのパンにしか見えていないのだろう
此方の皿をじっと見つめてくるその姿に気圧された……という訳ではないのだが、折角だし都会で素敵な思い出でも作らせてあげようと初めてのカスタードを体験させてあげる事にした
立木さんがあむ、と口に含むと同時にぱりぱりとパイ生地が剥がれ落ち、次の瞬間には先程までの悲壮感漂う雰囲気を吹き飛ばす程の笑顔を浮かべた
「お……おいひい……おいひいでふ……!」
「お、おう……そうか……とりあえず他のお客さんも居るから落ち着こうな?」
「あ……ふ、ふみまへん……ぐすん」
泣きながらカスタードパイを頬張る立木さん、当然の様に他の席から視線を集めてしまう
……あれだ、今の反応なんか既視感あるなと思ったら槌永さんに飯奢った時と似たような反応だわこれ
「……よっしゃ!店員さーん!この抹茶パフェとイチゴオレ二個ずつ追加で!それとチーズケーキも二つお願いしまーす!」
「ず、随分沢山食べるんですね……?」
「何言ってんだ?アンタも一緒に食うんだよ」
「……えっ!?わ、私もですか!?」
「おう、まさかそれだけで腹膨れた訳じゃないだろ?」
「で、でも……私、お金が……お給料も全部大人の人達に抜かれちゃって……」
「だから奢りだって」
心の底から幸せそうに食事を堪能する姿に惹かれてついつい奮発してしまったが、立木さんは遠慮がちに目を伏せてそれを拒否しようとする
さっき〝反応が槌永さんと似ている〟とは言ったが……性格に関しては真逆な気がするな、俺的にこの人はもっと厚かましくなった方がいいと思う
あの人だったらきっと今の一連の流れで〝私の臓器でも売って資金を作らせるつもりなんですね!?うわあああああん!こうなったら最後の晩餐ぐらい楽しませてもらいますううううううう!!!〟とか叫びながらやけ食いしてただろう
「い、いいんですか……?」
「いいんだよ、どうせ雨が弱くなるまで暫く時間掛かるだろうしな。」
「雨……ですか?でも、酒泉さんには傘があるんですから待つ必要は無いのでは……?」
「傘なんかねーよ、アンタに渡すつもりなんだから」
「……え?」
「また身体濡らされてそのまま風邪でも引かれちゃ目覚めが悪いからな。俺は雨が弱くなったタイミングで適当に走って帰るから、アンタは好きなタイミングで帰ってくれ」
満腹になってからでも、身体の調子が回復してからでも、どうぞご自由に
俺は暫くこの店で糖分に脳を浸らせてから、弱そうな下弦の鬼を倒して下山す────
「ぅ……うぅ……うああああああんっ!」
「………はあ!?」
糖分が俺のテーブルの前に運ばれてくるまでの暇潰しにスマホでも触っていようかと取り出そうとした瞬間、突如立木さんが涙を溢しながら大声で泣き叫んだ
すると案の定周囲からは〝痴話喧嘩?〟だの〝女の子泣かしてるー〟だの〝さいてー〟だのとあらぬ誤解が
はー待て待て、これじゃ俺が泣かせたみたいじゃん頼むぜガキ共
「お、おい!急に泣かないでくれよ!トリニティですら風評被害食らわされないといけないのかよ俺は!」
「ご、ごめんなさい……こ……こんな……外でこんなに優しくしてもらったの……は、はじめて……で……!」
マジか、どんだけカモられてきたんだこの人……もしや錠前さんクラスに騙されやすいのでは?本当にどんな田舎で暮らしてきたんだか
「み、みんな……わたしをみても……き……きたないものをみるめでばかりみて……わるぐちたくさんいわれて……だ、だれもたすけてくれなくて……!」
「そ、そうか……でもまあ、ここが陰湿なトリニティでよかったな。もしアンタの流れ着いた場所が野蛮なゲヘナだったら陰口どころか〝調子乗ってんじゃねえ!〟って実際に襲われてたぞ?」
「ひいいいいいいいいいっ!?」
「うんそうだよなごめんな?冗談が通じるメンタルしてなさそうだもんな?」
やっちまった……ついうっかり槌永さんと会話してる時と同じノリで話しかけちまった
あっちは雑に扱っていいけどこの子の相手をする時はもう少し言葉を選んだ方が良いな
「うぅ……アr……じゃなくて、田舎の外は怖いことだらけです……都会ってきらきらしてるだけじゃなかったんですね……」
「……きらきら?」
「おっきな建物が沢山あって、カラフルなお菓子が沢山売ってて……私の目には、まるで世界中の希望を集めたみたいにきらきらしているように見えました」
「……でも、現実は違ったと」
「……はい。少なくとも私は……私みたいな薄汚いだけの存在じゃ、あのきらきら達の仲間にはなれなかったようです」
理想と現実が違っていた……なんてのはキヴォトスだろうと前世の世界だろうと同じ事だ、残酷な現実に打ちのめされる子供なんて他に幾らでも存在するだろう
……ただ、キヴォトスではその犠牲者である子供の数が多すぎる気もするが
「綺麗な部分だけ見て、自分に都合の悪いところは敢えて気付かないふりをして……そんなことばかり繰り返しているから罰が当たったんですよね、きっと」
「……」
「……ごめんなさい、こんな話をされても困りますよね」
目の端に涙を滲ませ、作り笑いで謝罪してくる立木さん
……理想ばかり追い求める子供が悪いのか、それとも理想の一つも魅せてくれないこの世界が悪いのか、そんなこと俺に分かる筈もない
ただ、一つだけ言えることがある
「────諦めたらそこで試合終了ですよ」
「……は、はい?」
「結局のところアンタ次第じゃねーの?幸せとやらを諦めて以前の生活に戻れば楽になれるだろうし、逆にこのまま周囲から蔑まれて見下されて馬鹿にされて嘲笑われ続けてでも都会で生きていけば……幸せになれる〝チャンス〟くらいは手に入れられるかもしれない」
勿論、確実に幸せになれるかは別として、と忘れず付け足しておく
戦わなければ負けることはないが、戦わないと勝利することができない、そんなのは子供でも理解できる
「勿論、それを強制するつもりはないけどな。アンタがしてきた苦労もアンタが重ねてきた努力も、何も知らない俺が偉そうに〝諦めるな〟とか〝いつか幸せになれる〟なんて無責任な事を言える訳がない」
「…………結局、自分でどうにかするしかないんですね」
「ああ……俺に出来る事と言えばちゃんとした仕事を紹介してやる事だけだ」
「……え?」
「正確には〝仕事を紹介してくれる人を紹介する〟だけどな」
さて、先ず真っ先に候補に挙がるのは先生だな。伝手なら大量にあるだろうし、もしかしたら面接したその日の内にシャーレで雇ってくれるかもしれない
いや、でもこの人はトリニティで暮らしてるっぽいし職場もトリニティの方がいいよな……百合園さん辺りに連絡したらどうにかならんかな
一応ゲヘナからも候補を……いや、無いな。もし美食テロリストや温泉テロリストに雇われでもされたら敵対する事になるし、便利屋とかいう万年赤字企業に雇われるのも可哀想だしな
それなら風紀委員会で雇ってくれるように空崎さんに……いや、風紀委員会で働かせるのもそれはそれで可哀想だな、やめておこう
「となればやっぱ先生を頼るしか……なあアンタ、特技はなんだ?書類仕事でも戦闘でも何でもいいから教えてくれよ」
「えっ!?そ、そんな急に言われましても……!」
「自分の長所が分からないってか?……よし、じゃあまずはそれを探すところから始めるか、電子履歴書でも作りながらじっくり考えよう」
「うぇ……ええええ!?」
「何、心配すんな。特別な知識が無くても最低限身体を動かせさえすれば出来る仕事もあるから……そうだ、俺が時々やってる単発バイトでも紹介してやろうか?」
そうだ、その前に履歴書に貼る写真も撮っておかないとな
そう思って再び立木さんの方を向き────視界に映る、店を汚さないようそこらのコンビニで買った透明の袋に強引に詰め込まれた作業着
うーん……服装的に今日中に履歴書用の写真を撮るのは無理そうだな……
「仕方ない、それはまた今度別の機会に……」
「あ、あの……酒泉さん」
「ん?どうした?」
「酒泉さんはどうしてこんなに私を気にかけてくれるんですか……?出会ったばかりなのにこんなに優しくされるなんて……その……」
……どうして、か
「あー……なんていうのかな……俺の知り合いにもさ、アンタみたいな人達がいるんだ」
「私みたいな……ですか?」
「ああ、その人達も少し前まで最悪な環境下で生活しててな?でもトリニティに保護されたお陰でやっとまともな暮らしが出来るようになったんだよ、ただ……まあ、なんだ。アンタみたいにド田舎から来た奴がいきなり都会に適応できる訳なくてな、未知の出来事にあたふたしながらなんとか都会の〝普通〟に馴染もうとしてるところなんだよ」
「────、」
「だからかな……もしかしたらそいつらとアンタを重ねて見ちまってたのかな、俺」
「……その人達って、もしかして……」
「ん?」
「…………いえ、何でもありません」
立木さんは何かを俺に尋ねようとしていたが、大して重要な内容でもなかったのかすぐに話を変えてきた
「あ、あの……酒泉さん。もし、その酒泉さんの知り合いの人と同じ出身の人達がいて、その人達もトリニティに来たのだとしたら……全員、幸せになれると思いますか……?」「無理」
「……そ、即答……ですね」
「価値観なんて人それぞれだからな、全員が全員幸せになれるとは限らないだろ」
「……そう、ですよね。トリニティに行ったところで、全員が幸せになれるわけじゃ……」
普通に生きていけるだけで満足できる人間もいれば、普通じゃ満足できずより高みを目指す人間だっている
十人十色どころの話ではない、この世界では何億何十億という色がぐちゃぐちゃに混ざり合っているのだから
……ただ───
「そもそもさ、なんで都会じゃないと幸せになれないんだ?」
「……え?そ、それは……」
「〝お前は田舎に住んでるから不幸だ〟とか誰かに言われたのか?」
「……そういう訳ではありませんけど……」
「じゃあ別に都会に拘る理由も無いだろ、田舎じゃ一切楽しい事が無かったのか?」
「………」
そう尋ねてみれば立木さんは無言で俯き、一分経たない程度の思考の末に〝ありました〟と呟いた
「…………ハーモニカが、大好きでした」
「……」
「私は吹けませんけど……でも、先輩が吹いてくれるハーモニカが……」
「……」
「どんなに辛い環境でも……あの音色が聞けるだけで……私は……」
「……そのハーモニカは都会で聴けるか?」
「……聴けません」
「じゃあそれが答えだろ……さっき〝仕事を紹介してやる〟って言ったけど、少なくとも〝今は〟ここに残るべきじゃないだろうな」
故郷に自分の居場所がなくて飛び出してきた訳じゃないなら幾らでもやり直せる筈だ……本人にその気があれば、だが
少なくとも〝今の〟この人にとってはトリニティにいるよりそのドがつく田舎に帰った方が幸せにはなれるだろうな
「……そうだな、アンタ携帯持ってるか?」
「携帯……ですか?一応ありますけど……」
「んじゃ、それちょっと貸してくれ。俺の連絡先入れ───なんだこのバキバキスマホ!?」
「その……お金がなくて……」
立木さんが見せてきたのはバッキバキに画面の割れたスマホ……いやよく確かめてみたら裏側まで割れてやがる!?
しかも一部完全にカバーが外れている箇所もあり、そこからスマホ内の構造が完全に見えるようになってしまっていた
それは例えるならバキバキスマホを完全に超越したスケルトンスマホだった
「……こ、これ操作できるのか……?」
「は、はい。画面は少し割れているだけですので……」
「(少し?)な、ならいいけど……ちょっと借りるぞ」
少しでも力を入れると壊れるような気がしたのでめちゃくちゃ慎重に立木さんのスマホを手に取った
何度かタップしないと反応しない事があったり、センサーが変なタイミングで反応して全く開くつもりのなかったアプリが開いてしまう事もあったが、何とか目的の画面まで移動できた
「完了っと……ほい、ありがとさん」
「あ、あの……これは一体……?」
「……まさかモモトークも知らないとは……えっと、それは……まあ、簡単に説明するとめちゃくちゃ簡単にメールを送れるアプリだ」
立木さんのモモトーク画面から適当に〝あ〟と送り、ぴこんと反応した俺のスマホを立木さんに手渡す
するとたった一文字だけの簡素なメッセージが俺のスマホに表示された
「これを使えばメールなんて面倒なアプリ使わなくてももっと簡単にやり取りできるからな」
「あ、ありがとうございます……でも、どうして酒泉さんの連絡先を私の携帯に……?」
「もし再チャレンジするつもりがあるなら……また現実と戦いながら理想を追う覚悟があるならそん時は俺に連絡しな、こっちも頼れる伝手全部使って可能な限りサポートしてやるから」
「……ま、また戻ってくるか分かりませんよ……?」
「それならそれでいいさ、少なくともまた雨に打たれてるアンタを見掛ける事はないだろうしな」
同じ釜の飯を食った仲……ならぬ同じテーブルの上のスイーツを食った仲
一度助けた相手が知らない間にまたボロボロになってるのも気分悪いし、それなら最初から色々手を貸して最後まで見届けた方が精神衛生上良いだろう
「呼んでくれたら、いつでも助けに行くから」
「────」
言いたい事を全て伝え終えると、立木さんは口を少しだけ開いたまま唖然としてしまった
……な、なあ……冷静に考えたらさ、俺のムーブってただのお節介にしてはちょっとキモすぎないか?これって引かれてるのでは?
「し……しっかし雨止まないなー!いやー洗濯した服とか溜まりっぱなしなんだけど────ん?」
自分のクソキモムーブを誤魔化す為に会話の流れを強引に変えようと天気の話を始めた瞬間、先程までザーザー降りだった外の景色が変化している事に気付く
店の中からでもハッキリ聞こえていた雨音もいつの間にか店内BGMにかき消される程度まで静かになっており、それが気になって視線を外に向けてみれば────
「……虹?」
「……ぁ」
「マジか、今日は一日中雨だって聞いてたんだけど……良い意味で天気予報が当てにならなかったな」
まだ僅かに雨も振っており、空も完全な晴れではなく大半が曇り雲に埋め尽くされている
「……綺麗」
……が、灰色の空の中心に一本だけ、止まない雨は無いと言わんばかりに陽の光の柱が立っていた
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「き……今日は見ず知らずの私なんかを助けてくれてありがとうございました!……あの、それで……この上着なんですけど……ちょっと濡れたままで……」
「いいよ気にしなくても、どうせ洗濯するつもりだし」
追加注文したスイーツを待っている間に再び雨が強まってしまう……なんてアクシデントもなく、外はすっかり晴れ空に変わっていた
ゲリラ豪雨ならぬゲリラ快晴、きっと天気様による予報士への嫌がらせだったのだろう
「……あ、あの!私、酒泉さんに言われた通り故郷に帰ろうと思います!けど…………その、もしかしたらもう都会には行かないかもしれません」
「まあ、そこは本人の自由だしな。好きにしな」
「で、でも!もし私が故郷の皆と〝外〟に出たくなった時は……さ、さっき言ってくれたように助けてくれますか……?」
「勿論、オレ、オマエ、トモダチ」
立木マイフレンド、一緒に糖分を摂取したらそれはもう大親友さ
なんて事を考えていたら立木さんは不安そうにおずおずと、視線だけ上にあげて再び尋ねてきた
「ほ、本当ですか……?私達が、どこから来た田舎者でも……?」
「勿論、ていうか俺自身未だに価値観がキヴォトスに染まり切れてない田舎者なところあるしな」
「一緒に居るせいで、酒泉さんまで周りに蔑まれても……?」
「恨み言も陰口も散々叩かれてきたからな」
「……わ、私達が……どの学園の生徒でも……?」
「こう見えても色んな学園の生徒と付き合いがあるんでね、今更気にしたりせんよ」
何度も何度も念入りに確認してくる立木さん、彼女を安心させる為にさっきと同じ言葉を堂々と宣言する事にした
「いいか?もう一度言うぞ────呼んでくれたらすぐに助けに行くからな」
「……ど、どこへでも……ですか?」
「……出来ればキヴォトス内で、あとオゾンより下なら……」
どんな所でもなんて無責任な事は流石に言えないので若干ヒヨった回答をする(槌永ヒヨリの事ではない)
しかしその回答に満足してくれたのか、立木さんは一度顔を伏せた後に俺に視線を合わせてくれた
「……ありがとうございます、ちょっとだけ安心できました……」
「おいおい、そこは盛大に安心していけ?こう見えてめっちゃ強いんだぜ?俺」
「は、はい!勿論存じてます!ゲヘナの風紀委員ですもんね……」
「そうそ……あれ?俺って自分の学園と所属してる組織まで教えてたっけ?」
「えっ!?えーっと……」
「……もしかしてあれか?」
「俺の名は田舎にまで轟いちまったってのか……!?」
「そ、そうです!私達の田舎では村人全員が酒泉さんの名前を知ってるくらい有名なんです!」
はー待て待て、完全にキヴォトス支配しちゃってんじゃん頼むぜガキ共
繋ぎ的な短編集的な何か的な何かです