「お願い、酒泉!正気に戻っ───んん!?」
「黙れ」
「んっ……んぅ……んむぅ───ぷぁ……っ」
彼を止める為に開いた口は、無情にも彼の唇によって塞がれた
十秒程経った後に彼が離れると、互いの唾液が交わる事で作られた糸の架け橋が伸び、彼の生気を失った様な虚ろな瞳がハッキリと視界の真ん中に映った
「俺は雷帝の意思を継ぎ、キヴォトスを支配する。だが、永遠の支配には相応の力を持った後継者が必要だ。……残念ながら今のゲヘナに俺やアンタより強い生徒は存在しないがな」
直後、ドクンと胸が高鳴ると同時に顔が熱を帯びてくる……いや、顔だけじゃない
手も、足も、首も───下腹部も、呼吸の荒らさが増してくると同時に身体全体がどんどん熱くなっていく
これは、まさか、媚薬……くちで、うつされて
「だから、その後継者をアンタと作る事にした。……ゲヘナ最強の風紀委員長とゲヘナ最高の眼の遺伝子が交わればどんな子供が生まれてくるか、想像しただけでワクワクしてくるだろ?だから───」
本当なら嬉しい筈なのに、大好きな酒泉に身体を求められるなんてずっと望んできた事の筈なのに
酷く悲しくて、何故か涙が止まらなくて、でも……やっぱり歓喜が抑えられなくて、私は───
「───空崎ヒナ、俺の子供を産め」
「ぁ……は、はぃ……」
───火照った身体も歓喜で染まった表情も隠さず、弱々しくそう答えるしかなかった
~某コミックでマーケットな会場~
「すみませんっ!新刊の〝雷帝堕ち酒泉本〟ください!」
「私は旧刊セットでお願いします!」
ヒナ「はい、新刊500円旧刊セット1000円ね」
「ありがとうございます!」
「買えてよかったぁ……」
「旧刊去年逃しちゃったんだよなぁ……」
ヒナ「新も旧もどっちも順調に売れてる……この調子なら想定より1時間早く売り切れそう」
ヒナ「……そうなったら私も他のサークル回ってこようかな。ヒナ酒以外の本なんて本来なら見たくもないけど、シチュエーションの勉強にはなるだろうし」
ヒナ「……それに、酒泉を狙おうとしている新たな〝外敵〟の調査もついでにできるし」
────────
ミヨ「え、えっと……〝罰当たりな君へ〟はいかがですかー……な、内容としては許嫁幼馴染主人公が別の学園に通ってる男の子と結ばれるまでの話になってまーす……」
ミヨ「うぅ……あまり売れてない……隣に置いてあるミステリーホラー小説は一瞬で売り切れたのにどうして……」
カレン「ほらほら!もっと大きな声で宣伝しないと!」
マユミ「ほ、ほんとに!?これほんとに言わなきゃ駄目!?うぅ……ゲ……〝ゲヘナ性交委員会〟売ってまーす!」
ショウコ「実力や知名度を共に兼ね備えている酒泉さんの力を借りる為に我々が身体を使って籠絡しようとする話です、興味がある方は是非列にお並びください」
スバル「……」
マイア「お、お客さん来ませんね……」
スバル「まあ、我々はあまり実績の無い素人ですからね。絵も特別上手いという訳では───」
「あ、あの!すみません!〝貴方への架け橋〟と〝My 愛〟一冊ずつお願いします!」
スバル「……え?」
マイア「せ、先輩!お客さんですよ!お客さん!」
スバル「……はっ!?え、えっと……ご、合計で1000円になります!」
「ありがとうございます!……絵柄好みなんだよなぁ~」
スバル「……まさか売れるなんて」
マイア「わ、私達みたいな素人が描いた酒泉さん本でも必要としてくれる人がいるんですねぇ……」
スバル「そう、ですね……」
ミネ「……はい、〝救護騎士団長は絶対アルコール依存症にはならない〟一冊ですね、ありがとうございます」
ミネ「……え?去年は居なかった?はい、私は今年が初参加なので……」
ミネ「理由、ですか?その……アリウス自治区で少々───い、いえ!何でもありません!忘れてください!」
ケイ「はい、こちら〝受肉少女は触れあいたい〟三冊です……はい?このマスクとサングラスですか?気にしないでください、ただのファッションなので」
ケイ「……モモイ達に〝こんな如何わしいイベントに興味なんて無い〟と言い放ってしまった以上、バレる訳にはいきませんので」
ミスズ「す、すみません!〝お酒は20歳からっ!〟はもう売り切れちゃいましてぇ……ひぃん!?ご、ごめんなさい……折角列に並んで頂いたのに……次はもっと沢山用意しておきます……」
スケバンA「あ゛あ゛!?てめぇスズちゃんに文句あんのかゴルァ!?」
スケバンB「テメェの血をインク代わりにしてこの場で新刊描いてやろうか!?ああん!?」
ミスズ「け、喧嘩しないで~!?」
フウカ「……」
ニコ「……」
フウカ「……貴女が最近酒泉君の胃袋を掴もうとしてるって噂の女狐?」
ニコ「そういう貴女は〝元〟酒泉君の食事担当のフウカさん……ですよね?」
フウカ「……うふふ」
ニコ「……あはは」
フウカ「オラァ!!!」
ニコ「無駄ぁ!!!」
────────
ヒナ「……まさかこの会場に居る人達全員本編ヒロインになる予定って訳じゃ……番外編ならギリ許せるけど本編は流石に───いえ、やっぱり番外編ヒロインになるのも許せないわね」
ヒナ「今ここでイシュボシェって全員一網打尽に……ん?」
ヒナ「……あれは」
────────
イロハ「なんていうか……意外ですね、先輩がマコ酒本描くなんて」
マコト「私だってあんなミジンコの顔など絵でも見たくないわぁ!……ただ、それ以上にメリットが大きいからこうして参戦したまでだ」
イロハ「へー……で、そのメリットというのは?」
マコト「それはだな……空崎ヒナの脳を破壊できる!!!」
イロハ「……」
マコト「そうしてまともな思考能力を失った空崎ヒナは仕事にも手が付かなくなり、奴の評価はゲヘナ中で下がる一方という訳だ!キキキキキキッ!」
イロハ「……まあ、そんなところだろうと思ってましたよ。先輩が本気で酒泉に首っ丈になるなんて天地がひっくり返っても有り得ませんもんね」
イロハ(というか、先輩まで堕とされると他の万魔殿メンバーまで余裕で射程範囲内って事になりそうなので勘弁してほしいというか……私も割と面倒な女である事は自覚してるのであまり本気にはなりたく……ん?)
イロハ「あっ……」
マコト「キキキキキッ!待っていろ、空崎ヒナ!この同人誌が有名になる頃には、貴様はモモッターを開く度に脳破壊画像を見せつけられる羽目に遇うだろう!」
イロハ「あの……先輩……」
マコト「イロハ!お前も呆けている暇があるなら売り子としての役目を果たせ!1ミリでも〝空崎ヒナ脳破壊計画〟を進める為になぁ!」
イロハ「いや、ですから来てます」
マコト「来てる?……誰がだ?」
イロハ「その空崎ヒナ委員長がです、しかもデストロイヤーを構えて」
マコト「…………ゑ」
ヒナ「こんにちは、こんなところで逢うなんて奇遇ボシェテ」
マコト「おまっ、技名はちゃんとぐああああああああああああああああああああ────!!!」
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酒泉「こんにちは、折川酒泉です」
酒泉「今年もやってきましたね……ヲタク達の祭典、コ☆ミ☆ケが」
酒泉「皆さんはもう誰の本を買うか決めてますか?俺はもうとっくに決めました」
酒泉「髪が長くて、白髪で、規則に厳しくて、ちっちゃくて、それで強い」
酒泉「そう───空崎ヒナちゃそ以外有り得ませんね?」
酒泉「俺は今年もヒナちゃそ本を漁りまくる予定ですが、その前にやっておくべき事があります」
酒泉「例えば保冷機能の高い水筒を用意してそこにキンッキンに冷えた飲み物を入れておくとか、ハンディファンやスマホ用バッテリーの充電をしておくとか、夏コミは待機が地獄ですからね」
酒泉「……が、今年はちょいと天候が不安定なんで暑さ対策以外も忘れずしておいた方が良さそうですね。雨が降ったり止んだりを繰り返してるので折り畳み傘を忘れずリュックに仕舞っておく、ゲリラ豪雨に見舞われた時の為にリュックや鞄をまるごと入れられるくらい大きい袋を用意しておく」
酒泉「大事な戦利品を守る為です、多少面倒でも雨対策もしっかり行っておきましょう」
酒泉「まあ、飲み物や傘等は現地か手前の駅のコンビニでも購入できるので最悪忘れても大丈夫なんですが……参加する為のリストバンドやチケットはそうはいきません、もしこれ等を忘れてしまった場合は会場に入れなくなってしまいますからね」
酒泉「どうしても心配だってんなら常に財布の中に入れておく事をお勧めします。財布ってのは遠出する時必ずと言っていい程持ち歩く物ですからね、そん中入れときゃ大丈夫でしょ」
酒泉「……ああ、それとその財布も二つ用意しておいた方がいいですね。やっぱホール内は人混みが凄いですから、スリに遇う可能性も考えたら〝同人誌用〟と〝生活費用〟でお金を分けておいた方がいいでしょうね」
酒泉「あ、それと同人誌用のお金に関しては千円札を多めに持ってた方がいいですね。新刊って大体千円か五百円ですし、お釣りが出ても大体五百玉1枚でさっと済むんで。お互いスムーズにやり取りしましょうねー」
酒泉「さて、雑談混じりに色々と注意喚起したところで……俺も、そろそろ出陣しますかね」
酒泉「例のビッグな会場───大量の空崎さんが俺を待ってる、そんなエデンへ!!!」
~ホール内~
酒泉「えっ」
ヒナ「……酒泉?」
イロハ「おや、これまた奇遇ですね」
アフロ「」プスプス
酒泉「……どういう状況?」
ヒナ「ゲヘナの深い闇よ」
オマケ~ゲヘナ編を見た酒泉君、負けヒロインルートぶりにキレる~
酒泉「……」
ショウコ「が、はぁ……!ま、まだ……です……!ここを撤退、して……ぐ、ぅ……!次、こそは───」
酒泉「次なんてない」
ショウコ「……え?」
酒泉「敗者に相応しいエンディングを見せてやる……!」
ショウコ「ひっ……やだ……やだぁ……!」
マコト(ぬおおおおおおっ!?な、なんだこの寒気は!?)