「ふーん?ここが貴女達の新しい拠点なんだぁ……」
「……何を呑気に見渡している、早くマダムの所へ向かうぞ」
手錠をかけられた状態のままマンホールの中や謎の地下通路を歩いていると、いつの間にか謎の廃ビルに辿り着いていた
雰囲気的にはアリウス自治区に繋がっていたカタコンベ周辺の空気と似ているが………アリウスの別拠点か?
てか、俺はアリウス自治区に直接連れ込まれるもんだと思ってたんだが………
「いや、我々はここで待機させてもらおうか……これ以上そちら側の陣地に足を踏み入れるつもりはない」
……ああ、そういう事か。カイザー側からしたらアリウス自治区で突然裏切られたら逃げようがないもんな
どうやら完全に〝仲良し〟って訳じゃなさそうだな………互いに妥協点を探していった結果、何とか協力まで漕ぎ着けた感じか
「………マダムの手を煩わせるつもりか?」
「一向に姿を現そうとしない者など信用できる筈がないだろう」
「契約を破る気はない………こいつの持つ〝知識〟の中でカイザーの利益に繋がるものは全て渡すつもりだ」
ああー……納得、それが俺を狙った理由か
エデン条約のどっかしらのタイミングでベアトリーチェに俺の事を勘付かれたか?それを餌に契約を結んだのか
まあ、シャーレと敵対する可能性を考えたら戦力は多い方がいいもんな………あと俺の〝知識〟にも気づいてそうだし、既存戦力じゃ意味がないと考えたのかもしれない
「……全て渡す、か。そんな事をしなくてももっと手っ取り早い方法があるのだがな」
「……ほう?」
「それは────この場で貴様等アリウスを殲滅し、折川酒泉の身柄を此方で独占すればいいだけだ」
「確かにな、だがそれは─────お前達が私達に勝てればの話だろう?」
そう言い放つと、背後で立っていたカイザー兵達と反対側のアリウス生達が同時に銃を構える
「抵抗はしない方がいい、頭を撃ち抜かれるぞ?」
「奇遇だな、此方も同じ事を言おうとしていたところだ」
瞬間、リーダー格であろうアリウス生とカイザー兵の頭部に弾丸が飛来する
二人は舌打ちしながら同時に横に跳んで弾を回避する
………マジか、コイツら全く同じタイミングで裏切るつもりだったのか
争いは同じレベルの者同士でしか発生しないってのは本当だったんだな
「……狙撃手か」
「貴様……カイザーグループに逆らってタダで済むと思うなよ?」
互いに銃口を相手に突きつけながら睨み合っている
……真ん中に俺が立っているせいで俺が恨まれてるみたいな状況になってるけどな
やめて!私の為に争わないで!……いや、やっぱ勝手に戦力削り合え、うん
戦え……戦え……(お前らが)戦わなければ(俺が)生き残れない!これで一人減りましたね……(自己申告制)
「……マダム、想定通りカイザーが裏切りました。ここから先は作戦通りに動きます」
「総員、構えろ!目標はアリウスとベアトリーチェの殲滅だ!」
いや、そんなこと言ってる場合じゃないな
ここは俺も逃げ……られる訳ないよな、下手に動いたら蜂の巣にされるかもしれないし
「貴様の出番だぞ!その無駄に頑丈な身体を我々カイザーの為に役立ててみせろ!」
「……うるさいなぁ」
謎の人物が近くに居た俺にしか聞こえないぐらい小さな声でボソッと呟くと、そいつは銃を構えているアリウス生の元へ─────堂々と駆け出した
……はっ!?正面から!?アレじゃ〝撃ってください〟って言ってるようなもんだぞ!?
「なっ!?早────」
そんな心配をしていたが、本人は何事も無いかの様に走り続ける
一人のアリウス生に近づくと、彼女の腹に拳をめり込ませてから銃を胸元に放し────ん?
待て、こっからじゃよく見えないけど……あの銃ってどこかで……
「あっははは!つぎつぎ~!」
今度は隣のアリウス生を足払いで転ばせると、そのまま足を持って………そのまま他の生徒にぶん投げやがった!?
その間にも銃弾がそいつの身体に襲い掛かるが、痛みで動きを止めることすらしない
なんだ、あの滅茶苦茶な戦い方は………
「何をしている!早くアイツを止めろ!」
アリウスのリーダー格がそう叫ぶと、奥の廃ビルから増援が飛び出してきた
あれは……ユスティナか!だとしたらバルバラが居る可能性も────
「やはり戦力を隠していたか!第二部隊!突入しろ!」
その声と同時にカイザー側からも増援が現れた
両肩のミサイルポッドのような武装に右腕のガトリング
前世ではゲーム内で〝パワーローダー〟と呼ばれていた代物、それが五体同時に戦場に投入された
相手を潰す為に互いに札の一部を切ってきたか、あーもうめちゃくちゃだよ
信じられるか?これが全部俺を捕らえる為に用意されてんだぜ?こちとらサークルの姫だぞ優しくしろや
「同時に投げろ!これなら効果があるはずだ!」
戦地で暴れる謎の人物に対して同時に手榴弾が投下される
彼女はすぐにその場から離れようとしたが、ユスティナの亡霊が彼女の前に立ちはだかって回避の邪魔をする
そして────ユスティナと共に爆発に巻き込まれた
「……よし、面倒なのは処理した。あとは折川酒泉の確保を────」
「けほっ!けほっ!もう……煙たいなぁ」
「────なっ……馬鹿な……!」
爆煙の中からは服がボロボロになった状態で謎の人物が姿を現す
彼女のマスクにはヒビが入り、下半分が割れ落ちて口元が晒されるが、彼女自身はまだまだ余裕がありそうだ
軽く埃を払ってからジト目でアリウス生を見つめると、突然口を三日月型に歪めながらそいつに向かって突っ込んでいく
「ひっ……!」
「はい、お返し☆」
アリウス生のマスクを正面から鷲掴みにすると、そのまま後頭部を勢いよく地面に叩きつけた
直後、ピシリと再び何かが割れる音が聞こえた
それはアリウス生のマスク────と、謎の人物がつけているマスクの残りの上半分が割れた音だった
「あー……バレちゃったかー」
「……お、お前は……!?」
………薄々感じてた、奴の戦い方の違和感に
どこかで見たことがあると思えば………そりゃそうだ、だって一度戦ったことがあるんだからな
忘れもしない、アリウス生を引き連れて俺達の前に現れた時のあの表情を
先生や補習授業部と一緒に立ち向かった相手を
「聖園ミカ……なんでこんな所に……!」
「なんでって……貴女達アリウスなら分かるでしょ?」
微笑みながらアリウス生に近づく聖園さん
だが、その笑顔に優しさなんて微塵も込められていない
存在するのは殺意のみだ
「聖園ミカ!本来の役目を忘れるな!我々の指示には従ってもらうぞ!」
「………はぁ」
カイザーに何かの指示を受けた聖園さんは面倒そうに溜め息を吐いた
聖園さんはアリウスから離れると、今度は俺の方に駆け寄り────そのまま肩に担がれる
「どうして私がゲヘナの生徒なんかを……」
ぶつくさと文句を言いながらも俺を担いだままカイザーの方へと下がり、聖園さんはそのままカイザーの兵士達に囲まれる
恐らくは俺をアリウスから護る為………というよりも俺を逃がさない為に護衛部隊をつけるつもりだろう
「折川酒泉を捕らえろ!」
「折川酒泉を護れ!一歩も近寄らせるな!」
指示と同時にパワーローダーが複数体アリウスやユスティナの前に立ちはだかる
………なんか今のセリフだけ聞くとカイザーが俺の味方みたいに聞こえるな、実際は全然そんなことないんだけど
なんて事を聖園さんの肩で揺れながら考えていると、少しずつ銃声が遠退いていった
すっごーい、サラマンダーよりずっとはやーい
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「……これは……間違いない、私達アリウスが使用していた銃だ」
監視の生徒達が目を光らせる中、サオリがポツリと呟く
その言葉を聞いて先生は思わず椅子から立ち上がってしまう
「それ、本当!?」
「作戦前に何度も装備点検してきたんだ……見間違えるものか」
エデン条約絡みの可能性があるならばエデン条約に関係した者全てに話を聞くべきだ
そう判断を下した先生はトリニティに保護されているアリウススクワッドにも話を聞いた
結果は期待以上、見事にヒットした
「……しかし、なぜこんな写真を?」
サオリの視線の先には銃を持って戦っている何者かの写真
それをポケットにしまいながら先生は眉間を寄せながら事情を説明する
「……酒泉がこの子達に襲われたの」
「……酒泉?折川酒泉か!?」
今度はサオリの方が大声を出して椅子から立ち上がるが、監視の目が鋭くなるのを感じると一言謝罪を入れてから再び椅子に座った
「すまない、取り乱した……」
「う、ううん………それで、サオリに聞きたいのはこの子達の居場所に心当たりがないかって事なんだけど………」
「心当たりか……通常ならばアリウス自治区に戻っているはずだが、私が捕まった後もアリウス自治区を拠点にしたままだとは考えられないな……」
「だよね……バレバレの隠れ家に留まっている理由なんて無いもんね……」
「一応、不思議な力でカタコンベ内は迷路のようにされていたが………それにしたって多くの人員を投入して時間を掛けて正解のルートをしらみ潰しに探していけば済む話だからな」
実際にアリウススクワッドを保護した後、カタコンベ内では正義実現委員会によって調査が行われた
いくら解析不明の謎の力があるとはいえ、カタコンベの一件で既に拠点の場所が割れているアリウス生達が大人しく内部で待っているとは考えにくいだろう
「じゃあ、アリウス自治区以外にも拠点にしてそうな場所……とかは……」
「いくつか心当たりはあるが………多くの地下道を経由する為、地図などで説明するには複雑すぎるルートなんだ…………というよりも地図にすら載っていない可能性もある」
「……そっか」
落ち込む先生に対して申し訳なさそうに頭を下げるサオリ
だが、サオリはすぐに顔を上げて次の言葉を口にした
「────そこで先生に提案がある」
「……提案?」
「ああ……先生、私を案内役として連れていってくれ」
次の瞬間、サオリを監視していたトリニティ生達の目が険しくなる
それも当然だろう、彼女達はただの〝被害者〟として保護されている訳ではない
調印式の〝加害者〟として監視されている立場でもあるのだから
「外に出た瞬間に逃走される……それを危惧しているのならば私の両足の腱を切ってくれて構わない、それでも心配なら両手を縛った状態で爆弾だって首に巻いてくれていい」
「そ、そんな事しないよ!?そもそも、いくらシャーレの権限があっても今回ばかりは私一人で決められることじゃないし……」
物騒な提案をするサオリに対して首を横に振って否定する先生
だが、サオリはそれでも食い下がってくる
「頼む、今回だけでいいんだ………望むのなら戦力としても役に立ってみせよう、ただの肉壁として使ってくれても構わない、だから………」
「サオリ……どうしてそんなに────」
「あの男は……折川酒泉は私にとっての〝光〟なんだ」
「……はい?」
唐突に脈絡もない事を言い出したサオリに先生の動きが止まる
だが、先生はサオリの想いをしっかり聞こうと次の言葉を待った
「私は仲間を………家族を地獄まで連れていった挙げ句、何の責任も取らずにそのまま生を終えようとしていた」
「〝やり直したい〟………後悔や絶望の中でそう願いながらも、結局私には抗う力など少しも残されていなかった。闇の中に沈み、この無価値な命をマダムに捧げる………それを待つ事しか私にはできなかった」
「……だが、そんな深い闇の中にも一筋の光が差し込んだんだ」
「折川酒泉が私に手を伸ばしてくれた……私の家族を救い、そのまま私の元まで駆けつけて私を引っ張り上げてくれたんだ」
拳を握りながら自分の想いを語るサオリ
そんな彼女を見て先生は暫く頭を悩ませ、数十秒後に静かに口を開いた
「ティーパーティーに正義実現委員会、万魔殿に風紀委員会………トリニティとゲヘナの両方から許可が貰えないと貴女を出すのは難しいと思う。それに………仮に許可が貰えたとしても、かなり厳しい制限が掛けられると思う」
「それで構わない、少しでも力になれるのならばそれで………」
「……分かった、それじゃあすぐにでも掛け合って────っと………ごめん、ちょっと待ってて」
会話の途中で突如先生の携帯に着信が届き、先生は一言断りを入れてからそれに出た
「もしもし、カンナ?」
『先生、聖園ミカ失踪の件で進展があったので報告を』
「………うん、お願い」
『まず聖園ミカの脱走の手助けをした人物ですが、これは復権を目論んでいたパテル分派の少女で間違いありません。ですが………取り調べの結果、彼女を唆した人物も判明しました』
「……更に裏が居たんだ」
『はい、そしてその人物は………カイザーグループの人間でした』
「────っ」
『どうやらパテル分派への多額の資金援助と引き換えに聖園ミカの手引きを依頼されたようです』
「……正直なところ、私にはミカがパテル分派の復権に興味があるとは思えないんだけど」
『聖園ミカには別の報酬を用意していたそうです………アリウスへの復讐の手助けという報酬を』
「……っ、それは……」
『……まあ、それを信じるかどうかは先生の判断にお任せします。とりあえず現時点での聖園ミカに関する報告はこれで終わりです、この後も引き続き捜査を行う予定ですので、新たな情報が出た時にまた………』
「……うん、分かった」
大事な生徒が復讐の為に動いていると知った先生は、それを苦しく思いながらも現実として受け止めた
カンナは電話越しでもそんな彼女の心境を察し、少し間を空けてから続きの話をする
『それともう一つ………突入作戦の準備が整いました。カイザーグループの中でも特に怪しい動きのあった企業を絞り出し、その付近に突入部隊を配置しました。証拠を突きつけると同時に捜索を開始する予定です』
「ありがとう………もし何か問題が起きたとしても責任は全て私が取るからね」
『はい……それと、もし折川酒泉を現場で直接発見した場合ですが、そのままヴァルキューレで保護を───』
『その場合は我々が彼の身柄を保護しよう』
『七度ユキノ……』
電話の向こうから別の人物の声が聞こえてきた
『保護した後も敵が再び酒泉に狙いをつける可能性がある、ならばこの事件が解決するまで彼の身柄は私達の元で預かろう』
『……お前が不知火防衛室長から言い渡されている指令は〝折川酒泉の救出〟だけだろう、その後のことはヴァルキューレに任せればいい』
『小規模で行動した方が敵の目から逃れやすい、酒泉は私達FOX小隊が護ろう』
『大規模で囲んだ方が敵の襲撃を確実に防げるはずだ、酒泉は我々ヴァルキューレが保護する』
『………』
『………』
『……先生、また後で掛けなおします』
「あ、はい」
電話の向こうから何か冷たい空気を感じ取りながら、先生は通話ボタンを切った
「……なんか修羅場になりそうだし、救出した後はシャーレで匿ってあげよう。これは酒泉のため……酒泉のため……」
「……先生?どうかしたのか?」
「まずは毛布とか布団とか買って、それから────」
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少しでも戦場から遠ざかろうとカイザー達が移動しているところ、俺を担いでいた聖園さんが突如脚を止めた
何かと思えば、彼女は─────ぐぇ!?いきなり地面に落とすんじゃねえ!?
「……聖園ミカ、何をしている。休憩はまだ先だぞ」
「少し離れた地点で仲間が待機している、休むならそこに着いてからに────」
「やーめた」
「────は?」
頬をポリポリとかきながら聖園さんはカイザーに背を向けた
「貴方達が〝アリウスに復讐したくないか?〟って持ちかけてきたからこうして乗ってあげたのに………これじゃ荷物運びしてるだけじゃん、私」
────誰が荷物だ、おい
「我々に協力すればこのままアリウスの計画を潰すことができる、だから────」
「間接的じゃ意味が無いんだよ、私が直接やらないとさぁ………」
「……ならば折川酒泉を目的の場所まで届けてからにしろ、その後なら好きなだけ戦わせてやる」
「……ふーん?」
「勿論、望むのなら此方からも戦力を貸し出そう」
人を物扱いしたまま話を進める失礼な奴等になんて文句を言ってやろうか考えていると、カイザーが俺の髪の毛を掴んで無理やり立ち上がらせてくる
コイツら……好き放題しやがって……
「任務を続けるぞ、お前は引き続きその男を連れて走れ」
「………りょうかーい」
気だるげに返事をすると聖園さんは俺の手────じゃなくて手錠を掴んでくる
そのまま移動の為に無理やり引っ張られるかと思いきや、何故か両手でチェーンの根元部分だけを引っ張り始めた
「……おい?何をしている?」
「早く行くぞ」
聖園さんの身体が邪魔で何をしているのか見えないのか、カイザーの兵士達は首を傾げながら近づいてくる
───パキッ───
「……は?」
直後、聞こえてくる嫌な音
俺も視線を下ろして手錠を見てみると────見事にチェーンがぶっ壊れていた
「じゃあ……私、もう行くから。ばいばーい☆」
唖然としているカイザー兵(+俺)を置いてスキップしながら辿った道を戻っていく破天荒な少女
カイザー兵士は暫く固まっていたが、ハッと意識を取り戻すとすぐに聖園さんに銃口を向けた
「────っ!待て!これはどういうつもりだ!聖園ミカ!」
「んー?なにが?」
「何故手錠を破壊した!我々を裏切るつもりか!?」
「だって貴方達、いつまで経ってもアリウスと戦わせてくれないんだもん。そっちが約束を守る気がないなら私だって言うことを聞く必要はないよね?」
聖園さんは平然と答えると、そのまま引き返そうとしてしまう
だが、カイザー兵が数発の弾丸を聖園さんの足元に放って動きを制止させる
「……さっきの行動は見なかった事にしてやる、だから大人しく持ち場に戻れ」
「………」
「これ以上余計な手間を掛けさせるな」
「………はいはい、分かりましたよーだ」
聖園さんは両手を上げてカイザーの元へとゆっくりと戻る
そして上げっぱなしの右手で────
「それでいい……よし!色々あったが、ここからも作戦通り後方の部隊と合りゅっ!!?!?」
────カイザーを思いっきり殴り飛ばした
「なっ!?貴様!やはり裏切っ!?」
「や、奴を無力化しろ゛お゛っ!?!!」
慌てふためく兵士達に次々と襲い掛かる聖園さん
カイザーも突然の裏切りに必死に対応しようとするが、実力差が掛け離れすぎているせいで勝負にすらなっていなかった
一方的な蹂躙、せめて本隊がこの場に居ればもう少しまともな戦いになったのだろうが………生憎、彼等はアリウスと戦闘中だ
そんな事を考えている内に戦闘の音が聞こえなくなった、辺りを見渡すと気絶しているカイザーの兵士達と平然と立っている聖園さんの姿が確認できた
聖園さんは周りに敵が居ないことを確認すると、今度は俺の方を向いて────
「……何をボーッとしてんの?逃げたいならさっさと逃げれば?」
────それだけ言い残してこの場から立ち去ろうとする
………いやいや、ストップストップストップ
「……何?私、忙しいんだけど?」
────忙しいって……何処に行くつもりなんだよ
「さっきの話、聞いてたでしょ?アリウスに復讐しに行くだけだよ………ゲヘナの生徒は鳥頭なのかな?」
さらっと煽りを入れられて言い返しそうになってしまうが、そんな下らないことで喧嘩をしている場合じゃない
今はこの女からもっと話を聞かなければならない
「最初はサオリに……アリウススクワッドに仕返ししようとしたけど、あの子達はトリニティに保護されたみたいだしね……」
────だから残った奴等に仕返しするって?………あそこにいるアリウス全員に復讐するつもりか?
「あそこに居る人達だけじゃないよ………その〝上〟に立っている人にも……ね?」
そう答えると聖園さんは口を歪めながら両手を無邪気に広げた
「私だけ奪われっぱなしなんて不公平でしょ?だから今度は私がアリウスから奪うんだ」
「彼女達の計画も、彼女達の自信も、全部全部ぜーんぶ」
「私自身の手で直接潰さないと……気が済まないじゃんね?」
あははと笑いながら目的を語る聖園さん
その表情は楽しそう……というよりも自棄になっている様に感じる
────アンタ一人で突っ込むのは危険だ、ここは一旦退くぞ
「はぁ?なんで私が貴方に従わないといけないの?私、別に貴方を助けにきた訳じゃないけど?その手錠を壊したのだってカイザーの指示に従うのが嫌になったからだし?」
────百合園さんや桐藤さんが心配するだろ
「………それはあり得ないよ、だって私………あの二人のことを傷つけようとしたんだもん」
────……百合園さんに何かあったのか?例えば……再び意識を失った、とか
「……何それ?そんなこと起きてないけど?」
………違うのか
原作だと聖園さんは会話の途中で百合園さんが倒れた事が切っ掛けでアリウススクワッドへの復讐を誓った
だけど、そのイベントが起きてないとなると………いや、そもそも二人の間に会話そのものが発生していなかったのか?
だから聖園さんはあんな事件を起こして尚、未だに自分が大切に思われてることに気づかずにそのまま罪悪感を拗らせてしまったのか?
〝とっくに見捨てられた〟と………〝友を失った〟と勘違いしたまま、それが復讐心に変わったか?
「とにかく………さっきも言ったように私は貴方を助けにきた訳じゃなければ貴方の仲間って訳でもないから」
聖園さんはそう言い残すと、説得の言葉を考えていた俺を置いて一人で先に進んでしまった
………武器はそこで倒れているカイザー達のがある、逃げるだけなら一人で楽勝だ
ここは退いて先生に事情を説明した方がいいだろう
うん、その方がいい………いい……けど……ユスティナが敵に居るならバルバラやアンブロジウスだって居る可能性があるよな
それにベアトリーチェ本人も強いだろうし………うーん………
………………うん、これは借りを返す為だ
あのムカつく煽り女がどうなろうと俺には関係ないけど、そんな奴に借りを作りっぱなしなのは嫌だ
別に助けたいとかじゃない、断じてない、絶対にない
そんなことを脳内で呟きながら、俺は気絶しているカイザー達から武器や弾を奪い取った