〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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if世界~アビドスルート~その6

 

 

 

 

 

 

ユメは病院までの道を全力で走っていた

 

その理由は現在入院中の大事な後輩の面会に急いでいるからだ

 

本来ならばもう一人の後輩のホシノと共に向かう予定だったが、その日は偶然カイザーローンへの返済日と被ってしまった為、先にホシノだけでも向かわせたのだ

 

更に最悪な事にその日は返済だけでは終わらず、カイザーローンと交わしている契約の再確認の為に話が長引いてしまった

 

…………いや、結果だけ見れば最悪どころかむしろ最高だ、その理由は────

 

 

 

 

(────カイザーローン……どうして突然利息を減らしてくれたのかしら?)

 

 

 

 

 

そう、ユメは突然カイザーローン側から利息の軽減を提案されたのだ……………それも、こちら側にメリットしかない条件で

 

彼等の狙いを考えてみるが、なんの条件も無しに利息を減らす理由など思い付くはずもなく……

 

 

(何を企んでいるのか分からないけど…………)

 

 

 

 

 

「待っててねー!二人ともー!」

 

 

とりあえずユメは可愛い後輩達に早く会う事を優先した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室の扉を開けたユメが目撃したのは信じられない光景だった

 

 

あの……そろそろ離れ───

 

「………酒泉」

 

な、何でしょうか?

 

「アビドスに来てくれてありがとう」

 

へ?

 

「いつも頑張ってくれてありがとう」

 

ちょ………

 

「私達の事を支えてくれてありがとう」

 

待っ………

 

「一緒に居てくれてありがとう」

 

…………過去おじのデレの破壊力エグいんだけど

 

「ねえ、これからもアビドスに居てくれるんだよね?」

 

勿論そのつもりっすけど………あ!前にも言いましたけど、小鳥遊さんが嫌だって言っても意地でもアビドスに入学しますからね!?

 

「………ううん、嬉しい」

 

あ、そうですか……

 

「えへへ………」

 

 

 

いつもツンツンしていた後輩が酒泉に対して素直に接していた

 

 

(え?これは現実なの?本当に?夢でも見ているの?あ、ユメは私か……じゃなくて、え?え?嘘?)

 

 

あまりの光景に思考回路がフリーズし、現実逃避気味に下らない事を考えてしまう

 

が、無理やり思考回路を動かして恐る恐るホシノに話しかける

 

 

「あ、あの……ホシノちゃーん?」

 

「あ、もう話し合いは終わったんですね、ユメ先輩」

 

あ、ユメ先輩、こんにちは

 

「こんにちは……じゃなくて、その……これはどういう状況かしら?」

 

俺が聞きたいです……

 

「ねえ酒泉、いつ退院出来るの?」

 

「ホシノちゃーん?然り気無く話を進めないでー?」

 

えっと……このまま何も無ければ三日後に退院出来るらしいです

 

ただ、また突然気絶するかもしれないから定期的に検査に来てくれって……

 

「じゃあこれからは私が毎日お世話するね」

 

「ホシノちゃん!?」

 

何が〝じゃあ〟何ですか!?

 

「今度は私が支える番だから……」

 

 

そう呟くと腕に力を込めてより強く抱き締めるホシノ、それを見たユメは少し焦りながら止めようとする

 

 

「ホ、ホシノちゃん!その距離感は流石に近すぎると思うの!」

 

「………何がですか?」

 

「もしかして気づいてないの………?」

 

「…………?」

 

「その……今の二人の………」

 

「………………あっ……」

 

 

酒泉にベッタリと抱きついている姿を指摘されたホシノは一気に顔が赤くなり、すぐに酒泉から離れた

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そんな……カイザーローンが……」

 

はい、今まで黙っててすいませんでした

 

「………………………」

 

あの、ユメ先輩?何か喋ってくれないと怖いんですけど……

 

 

 

ある程度落ち着いた後、酒泉からカイザーとの契約の事を伝えられたユメは無言で酒泉を見つめ続けた

 

 

 

……あの、勝手な行動してすいませんでした

「…………ごめんね、酒泉君」

 

……へ?

 

 

 

何故か謝罪された事に困惑し、間の抜けた声を出してしまった酒泉

 

しかしそんな事は無視し、今度はユメが正面から抱きしめる

 

 

ちょっ!?また────

 

「酒泉君がこんなに苦しんでいた事も気付かず、いつも私一人で舞い上がっちゃって」

 

…………

 

「ずっと私達の為に一人で戦い続けてたんだよね?………私が頼りないばかりに………」

 

……そんな事ないです、ユメ先輩はいつも俺達を助けてくれたじゃないですか

 

「……私が?」

 

俺達が気を張り詰めすぎないようにいつも気にかけてくれましたよね

 

「……でも」

 

俺も小鳥遊さんもそんなユメ先輩の明るさに救われてきたんですから!

 

「まあ……確かに水族館に遊びに行った時も楽しかったですし……」

 

「ホシノちゃん……酒泉君……」

 

そもそもの話、俺がなんも相談せずに勝手に行動した結果なんで自業自得みたいなもんですよ

 

兎に角気にしないでください!

 

「………」

 

 

 

ユメの背中をポンッと軽く叩く酒泉、それと同時に少しだけユメの腕に力が籠り────

 

 

 

「………そんな事よりいつまで抱きついてるんですか」

 

「…………あっ!?」

 

 

 

 

────その前にユメがパッと離れた

 

 

「ご、ごめんなさい!つい……」

 

い、いえ………

 

「………話を戻しますよ、まずは酒泉の契約をどうやって破棄させるかです」

 

あー……それは自分で何とかしますよ、自己責任なんで───

 

 

「「駄目」」

 

 

────………はい、すいません

 

「カイザーローン……あの連中がそう簡単に契約破棄してくれるとは思えません」

 

「そうね……何か向こうの弱みでも握ることが出来れば……」

 

「でも、そう都合良く弱みなんて……」

 

………ありますよ、弱み

 

「………へ?」

 

「……それ、本当?」

 

カイザーローンはヘルメット団を利用してアビドスを襲わせていました、でもヘルメット団だって無限に軍資金がある訳じゃない

 

それに、金にうるさいカイザーローンが何度も襲撃に失敗しているチンピラ集団ごときに自分達の金を出すとはとても思えません

 

「じゃあ……」

 

「私達のお金がヘルメット団の軍資金に充てられていたってこと……?」

 

その可能性はあります………辛いですけども

 

「そんな……」

 

「あいつ等……っ!」

 

もしその証拠を……〝集金の記録〟の様な物を押さえる事が出来ればカイザーに対して強く出られます

 

上手くいけば利息の問題も更に軽減出来るかもしれません

 

「……でも、どうやって証拠を手に入れるの?」

 

「………そんなの決まってます、先輩────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────銀行を襲いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

「………」

 

「重要な証拠を簡単に外に持ち出すとは思えません、かといってこのままのんびり待っていてもまた酒泉が実験で苦しめられるだけです」

 

………いや、流石に─────

 

 

 

「ナイスアイデアよ!ホシノちゃん!」

 

 

 

─────嘘だろ?この時からもう?初代覆面水着団の誕生か?

 

 

「早速計画を立てないとね!」

 

「今のうちに武器の調達もしておきましょう」

 

「下見もしておかないとね!」

 

「逃走ルートも調べておきます」

 

全く迷いがない……いや、元はといえば俺が人体実験なんか受けたせいだけど……

 

「待っててね酒泉君!すぐに証拠を押さえるからね!」

 

「今度は私達が酒泉を助けるから」

 

 

 

決意を込めた眼で酒泉を見つめるホシノとユメ、そんな二人に酒泉は少し遠慮がちに手を挙げる

 

 

…………あの、もう一つ提案したい事があるんですけど

 

「他にも方法があるの?」

 

はい……連邦生徒会を頼るってのはどうですかね?

 

「連邦生徒会………」

 

「………あいつ等は当てにならない」

 

「昔から色々と要請してるんだけど……中々動いてくれなくて……」

 

それなら〝動かざるを得ない証拠〟を使いましょう

 

「………何をするつもりなの?」

 

 

自信ありげに堂々と立ち上がる酒泉、そして自分の身体に手を当てて言い放った

 

 

 

 

 

────キヴォトスで唯一ヘイローを持たない人間型の男子生徒、そんな貴重な存在が悪徳企業の人体実験によって今にも壊れそうな程ボロボロになっている

 

「………まさか」

 

「………酒泉君、自分の身体を利用するつもり?」

 

その上、俺の身体と一緒にカイザーローンの〝集金の記録〟も叩きつけてやればいくら怠け者の連邦生徒会でもそれなりには動いてくれるはずです

 

「…………駄目よ酒泉君、もっと自分を大事にして」

 

「私達に酒泉の事を道具みたいに扱えっていうの?」

 

二人が罪悪感を感じる事はありませんよ、俺が俺の身体を勝手に利用してるだけですから

 

それに、別に連邦生徒会に身体を弄らせようって訳じゃないですから、これを機にアビドスの事をちゃんと気に掛けてもらいましょう

 

「…………分かったわ」

 

「っユメ先輩、良いんですか!?」

 

「酒泉君がアビドスの為にここまでしてくれたのなら、それを一ミリだって無駄にしたくないわ」

 

ありがとうございます!

 

「たーだーしっ!少しでも身体の調子がおかしくなったらすぐにでもまた入院してもらうからね?」

 

それで構いません!

 

「………絶対に無茶したら駄目だからね、酒泉」

 

 

 

納得していない表情のホシノだったが、渋々了承する

 

 

 

「それじゃあ、まずはさっきも言った通りカイザーローンから攻めましょう!」

 

「出来るだけ警備の薄い日を見つけたいですね」

 

あ、じゃあ俺はその日を調べ────

 

「酒泉は大人しくしてて」

 

「あとは私達に任せて、ね?」

 

────あ、はい

 

 

 

二人に威圧され一瞬で押し黙る酒泉、その直後ハッと思い出した様にホシノが酒泉に問いかける

 

 

 

「……そういえば酒泉、カイザーの人間との会話で出てきた〝黒服〟って誰?」

 

あー……黒服ってのは裏でカイザーと手を組んでいる………というよりもカイザーを利用している黒幕の呼び名みたいなもんです

 

「カイザーを利用……?それってつまり……」

 

………確かに俺の身体を直接弄くりまわしたのはカイザーです、でも人体実験の契約を持ちかけて来たのはその〝黒服〟って奴なんです

 

「黒服……その人が酒泉君を……」

 

俺が直接契約しているのはカイザー、でも黒服はそのカイザーに金を渡して自在に操っているんです

 

「………なら、今すぐそいつの所に───」

 

 

 

 

 

────っ!絶対に駄目です!

 

 

 

 

 

 

必死な形相で叫ぶ酒泉に驚くホシノとユメ、そんな二人を見てすぐに冷静になり謝罪を入れる

 

 

 

………いきなり叫んですいませんでした、でも……黒服とは俺自身の手で決着をつけたいんです

 

「……また一人で戦うつもり?」

 

はい、俺個人のケジメです

 

「そんな理由で───」

 

───お願いします、これだけは譲れないんです

 

「………」

 

黒服との話が終わり、カイザーとの決着がついたらその後は全て小鳥遊さんとユメ先輩の指示に従います

 

「どうしても一人で向かいたいの?」

 

はい

 

「………本当は私達をその〝黒服〟って人に会わせたくないだけじゃないの?」

 

………っはい

 

「……さっきも言ったけど酒泉君のしてきた事を無駄にはしたくない、けど、流石に限度があるわ」

 

……

 

「だから、黒服と二人きりになる直前までは私とホシノちゃんも付いて行く」

 

え……?

 

「最大限譲歩してここまでよ」

 

「まあ、それなら何とか…………本当はそれすら嫌だけど」

 

………っありがとうございます!何から何まですいません!

 

「さ~て、それじゃあそろそろ帰ろうかしら!作戦会議もしないといけないしね!」

 

「じゃあね、酒泉」

 

「退院出来るまでしっかりと安静にしておくのよ?」

 

 

 

そう言うと二人は部屋を出ていった

 

ユメの言った通り今後に備えて身体を休ませようとした酒泉だったが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめん酒泉、少しいい?」

 

あれ?小鳥遊さん?帰ったんじゃ……忘れ物でもしたんですか?

 

 

ベッドで横になってから少しして再びホシノが戻って来た

 

 

「忘れ物……って訳じゃないけど、伝え忘れた事があって」

 

伝え忘れた事?

 

「うん………私、これから変わるね」

 

……何に?

 

「今まで酒泉にキツく当たりすぎたから……その、いきなり素直になるのは無理かもしれないけど……」

 

「少しずつでもちゃんと変わっていくから、ユメ先輩みたいに優しくなるから」

 

「だから、その……………見捨てないで」

 

……別に無理に変わる必要はないんじゃ───

 

 

 

「───それじゃあ、またね」

 

 

そう言うとホシノは逃げる様に部屋を飛び出していった

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、ホシノとユメの作戦は想定していた以上にあっさりと終わった

 

その理由はヘルメット団の襲撃が無くなった為、カイザーローンの行動パターンの調査に集中しやすかったからだ

 

更にはアビドスの借金やその利息も減った為、物資の調達もいつもより少しだけスムーズに行う事が出来た

 

万全な準備を整えたユメとホシノは作戦決行日にカイザーローンへと乗り込んだ

 

外の邪魔な警備員を誰にも気づかれずに無力化し、その後建物内にスモークを焚いてブレーカーを落とす

 

全てが上手く進みすぎるあまり二人も罠かと警戒していたが、結局最後までアクシデントが起こる事は無かった

 

………事が終わった後で気づいたが、その日のカイザーローンは普段よりも警備員が少なく、警戒もそこまで強くなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事で、作戦成功ー!」

 

「最後までスムーズに進みましたね………逆に怪しいくらいに」

 

すいません、二人に任せっきりで………

 

「もー!気にしないでって何度も言ってるのにー……」

 

「……酒泉は身体を治す事に専念して」

 

 

 

 

カイザーに乗り込んでから一ヶ月後、三人はいつもの部屋────廃校対策委員会の部室に集まっていた

 

 

「………それにしても、まさか本当にこんな日が来るなんて」

 

「借金はまだ残っているものの、莫大な利息については解決しましたね」

 

「ここまで来るのに色々あったわねぇ……」

 

でも大体計画通りでしたね

 

「………酒泉が連邦生徒会で突然服を脱ぎ出した事以外はね」

 

いや、あれはインパクトが大事だと思って………

 

「どうやって出したのか分からない奇声も上げてたわね………」

 

あ、再現しましょうか?

 

まず自分の上半身が裸だと仮定して…………ブゥン!

 

「……それ本当に必要なの?」

 

でも注目集めたお陰で皆俺の身体を見たじゃないですか

 

「まあ、それはそうだけど………」

 

「………あんまり他の女の子達に裸を見せちゃ駄目よ?」

 

「……先輩?」

 

「うえ!?いやっ別に変な意味は無いのよ!?ただそういうのに免疫の無い子達が可哀想だからっていうか……」

 

「まだ何も言ってませんが」

 

「あ………」

 

「先輩?」

 

「ホ、ホシノちゃん?お顔が怖いわよ?」

 

 

 

連邦生徒会に乗り込んだ酒泉達はカイザーローンの集金記録を叩きつけ、更に酒泉の身体を検査させた

 

下手に大企業と争う訳にはいかない為、普段は日和気味だった連邦生徒会も流石に動かざるを得なかった

 

また、それだけではなく連邦生徒会内部からも酒泉達の行動を後押しする様に水色とピンク色、二つの髪色を持つ少女青みがかった黒の髪色で眼鏡を掛けている少女が援護してくれたのも大きいだろう

 

 

 

この時はまだ存在していた───って当たり前か

 

「……?酒泉君何か言った?」

 

いえ、何でもないです

 

「……そういえばもう一つだけ計画外の事がありましたね」

 

「………そうね」

 

……黒服の事ですね

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

……っ!?お前は……!

 

「お久しぶりですね、酒泉さん」

 

 

 

 

 

ホシノ達がカイザーローンの集金記録を手に入れ、連邦生徒会に乗り込む前日の朝、一人で登校中の酒泉の前にある男が現れた

 

 

 

───黒服……

 

「そう睨まないでください、私は貴方と争いに来た訳ではありません」

 

 

黒服と呼ばれた男は顔全体が黒く染まっており、更に右目を中心にそこから広がる様にヒビが入っていた

 

 

「病体のお身体で向かわせるのは酷かと思いまして……こうして此方から迎えに来ました」

 

 

……何?その言い方だとまるで────

 

 

「────ええ、貴方達が私に会おうとしていたのは知っていますよ」

 

 

 

黒服の言葉に酒泉は冷や汗をかく

 

 

「そろそろカイザーローンとの決着を付ける頃合いだと思いましてね、私との契約も破棄しようとしているのでは?」

 

………どうして───

 

「最初からご自身の身体を利用して連邦生徒会を動かすおつもりでしたでしょう?」

 

………まさか、最初から気づいていたのか!?

 

 

 

 

ゆっくりと近づいてくる黒服、酒泉はいつの間に自分が震えている事に気づいた

 

 

 

 

 

「ええ、貴方がカイザーの弱みを知っていた事も」

 

 

黒服が一歩踏み出す、酒泉が逃げる様に一歩下がる

 

 

「借金の返済だけで無く、自分の身体がボロボロになるのも目的で実験に参加していた事も」

 

 

黒服が酒泉を見つめてくる、酒泉は黒服を直視出来ずに視線を逸らす

 

 

「初めて出会った時から……いえ、出会う前からずっと私の事を警戒していた事も」

 

 

黒服が酒泉の肩に手を置く、酒泉の震えが強くなる

 

 

 

……っ……じゃあ、俺に契約を持ちかけて来たのも……

 

「クックックッ……貴方なら断らないだろうと思いましてね」

…………

 

「貴方との実験は中々有意義でした、出来ればこれからも続けていきたいのですが………」

 

……悪いがその話は無しだ、そもそも直接契約している相手がカイザーである以上─────

 

 

 

 

 

 

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

─────は?

 

 

 

 

 

「おや、伝わりませんでしたか?私と貴方の間で結んだ契約………いえ、ただの約束は全て無かった事にしましょう」

 

何で………

 

「最低限の必要なデータは取り終えました」

 

………何を考えている?

 

「別に何か企んでいる訳ではありませんよ、先程も言いましたが私は貴方と争いに来た訳ではありません。その証拠にホシノさんとユメさんがカイザーローンを襲撃した日、私の指示でカイザーローンの警備員の何人かには別の施設の警備に移ってもらいました」

 

……だからあんな簡単に行けたのか

 

「それと、この後の事……貴方達の計画の邪魔をする気もありません、彼等は切り捨てても問題無いですから。実験の対価もキチンとお支払いいたします、途中で中止してしまったので当初の提案金額の半分程ですがアビドスの借金返済に充てましょう」

 

………

 

「これで理解して頂けましたか?私は貴方の敵ではないと、ですからどうか────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────そう怯えないでください、酒泉さん

 

 

 

 

 

 

 

 

「薬の影響は何もしなければ自然と薄れていくはずです………まあ、体内で突然の変化が起きなければですが」

 

「〝神秘〟を植え付ける実験、何も持たぬ普通の人間への〝恐怖〟の適用、人間としての肉体的、そして精神的な〝強度〟の耐久テスト、どれも魅力的な実験でした」

 

「出来ればもう少し貴方の事を知りたかったですねぇ……」

 

「貴方が何者なのか」

 

「何処から来たのか」

 

「何を〝視た〟のか」

 

「何を〝知っている〟のか」

 

「なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?あぁ……理解出来ない」

 

「貴方は一体─────」

 

 

 

 

 

 

 

黒服は酒泉の頭へ手を伸ばし、そして

 

 

 

 

 

 

「─────いえ、これ以上は〝約束〟を破る事になりますね」

 

 

途中で手を引っ込めた

 

 

「〝契約〟の様な重さはない、たかが〝約束〟……ですが、それを破るのは私のポリシーに反します」

 

 

くるりと後ろを向き、歩き出す黒服

 

 

「伝えたい事は伝えました、それではまた………会う機会があれば」

 

 

未だに震える酒泉、せめてもの抵抗に黒服の背中に向かって一言罵ってやろうと思い────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………っ……ぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────出てきたのは〝大人〟の恐怖から解放された事への安堵感だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、」

 

ん………

 

「ん、ん、」

 

んー

 

「ん……」

 

ん!

 

「んー!ん、ん!」

 

 

 

 

「………ねえ、酒泉とシロコ先輩は何してるの?」

 

「えっと……『ん』だけで会話しようとしてるみたいです」

 

「何よそのワケわかんない遊び!?」

 

「わあ~!二人共とっても楽しそうですね☆」

 

「うへ~………おじさんには若い子の遊びは理解できないよ~」

 

 

 

ん、ん、ん!

 

「んー」

 

ん?

 

「ん!ん!」

 

んー、ん!

 

「んー!」

 

 

 

 

「……それで?二人とも何て言ってるか分かるの?」

 

 

いや全く理解できねえ

 

「ん、付き合いが長いなら私の言葉を『ん』だけで理解するべき」

 

 

 

「全部時間の無駄じゃないの……」

 

「無駄を楽しむのも大切なことだよ~?」

 

「セリカだってよく無駄な物を買ってきてる」

 

「はあ!?あれは無駄じゃないわよ!いい?あれはアビドスに置いておくだけで金運を………」

 

「セリカちゃん、また変なの買って来ちゃったんですか?」

 

「あの、そろそろ会議を始めたいのですが……」

 

「………zzz」

 

「ホシノ先輩?」

 

「うへっ!?ね、寝てないよ?」

 

「………はぁ」

 

「うぅ……アヤネちゃんがグレちゃった……おじさん悲しいよー」

 

「グレてません!」

 

「ああもう……収拾がつかなくなっちゃったじゃない……」

 

 

 

 

ん………

 

「あれ?今度は酒泉君が眠くなっちゃいました?」

 

…………いや………大丈夫……です

 

「私のお膝で良ければお貸ししましょうか☆」

 

「……ノノミちゃん、ちょっと警戒心が薄すぎるんじゃないかなー?」

 

「そうでしょうか?私は気にしませんけど……」

 

「ノノミちゃんみたいな子が膝枕すると男子高校生にはちょっと刺激が強すぎるからさ~、代わりにおじさんがやるよ」

 

「………ホシノ先輩こそ少し油断しすぎてませんか?」

 

 

 

 

「と、とんでもない戦いが起こりそうです……」

 

「肝心の酒泉本人は何してるのよ……」

 

「そこで寝てる」

 

「まあ、それは仕方ないけど……せめてあの戦いを静めてから寝てもらわないと……」

 

「……酒泉、起きて」

 

 

 

 

 

………

 

 

「……全く反応しませんね」

 

「おーい、酒泉ー?」

 

「ん、早く起きないと勝手に────」

 

 

 

 

 

………っ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………酒泉?」

 

 

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