「……先生?」
「うん?どうしたの?ユウカ」
「いえ……なんていうか……今日はいつもと様子が違います……ね……?」
この日、シャーレの当番として仕事を進めるのはセミナーの会計担当・早瀬ユウカ
彼女は妙な違和感を先生に覚える
「……そうかな?私はいつも通りだけど……」
「なんか……落ち着きがないといいますか、そわそわしてるといいますか……」
「うーん……気のせいじゃないかな?」
ユウカの感じた違和感を先生はハッキリと否定する
……手を膝の上に置いて上下させたりと、落ち着きのない行動を取りながら
「………いや、やっぱりおかしいですって。何をそんなにそわそわしてるんですか?何か待って────あっ!?もしかしてまた私に内緒で高いオモチャでも注文しました!?」
「えっ?……う、うん。実はそうなんだー」
「自分から正直に話した……?」
先生は話を逸らそうとユウカの推理を認めたが、素直すぎたせいで逆に怪しまれてしまう
「……先生、それ嘘ですよね?本当は別の事を隠してますよね?」
「い、いや?特に何も隠してないけどー?」
「お金の使い方以外で先生が私に隠したい事……うーん……予想がつきませんね」
「だ、だからぁ……本当に何でもないって────」
「酒泉君なら何か知ってるかしら……」
「酒泉!!?」
「きゃっ……」
先生が突然立ち上がり、大きな声で生徒の名前を叫ぶ
そのあまりの勢いにユウカは驚いて一歩後退りする
「しゅっ……酒泉が来てるの!?」
「いえ、まだ来てませんけど……」
「な、なんだ……ビックリさせないでよ……」
「ビックリしたのは私の方なんですけど……」
一人で勝手に騒ぐ先生を見てユウカの疑いの目がますます鋭くなる
「もう……そんな調子で仕事に集中できるんですか?」
「うぅ……返す言葉もございません……」
ユウカからジト目で見つめられて言葉に詰まる先生
本格的に怪しまれ始めたところで、シャーレオフィスの扉が開く
────おはようございまーす……ん?なんすかこの状況?
「あ……おはよう、酒泉君。丁度良いタイミングで来てくれたわね、ちょっと聞きたいことが────」
ゴスッッッ!!!
「……ゴス?」
────ゴズ?運ゲー総力戦ボスがどうかしたんすか?
何かが地面に打ち付けられた、そんな鈍い音が聞こえてユウカが後ろを向く
そこにはデスクに額をぶつけ、そのまま顔を伏せている先生の姿が
「……何してるんですか、先生」
「な、なななな何でもないよ!?それよりも……お、おはよう、酒泉」
────は、はぁ……おはようございます……?
出会って早々に奇行を見せつけられた酒泉は困惑しつつも自分のデスクに向かった
────あっ……そういえば右手の怪我も大した痛みは感じなくなってきたんで、そろそろ通常通りの業務に戻れそうです
「そ、そうなんだ?」
────はい、だから椅子も隣同士にする必要はありませんよ
「あー……酒泉君、それは……」
「そ、そう?わ、分かった……」
「………えっ?先生、それでいいんですか……?」
「う、うん……ずっとくっついてると私の方が持たな────何でもないです!はい!」
先生の酒泉に対する無自覚の想いから、自分から離れることはないだろうと考えていたユウカ
しかし、そんな予想とは裏腹に先生は慌てながら離れる事を承諾した
「……酒泉君、最近先生と何かあった?」
────……?いや、特には……
「……本当?」
これまでの一連の流れから先生の隠し事が酒泉絡みである事は理解したユウカ
だが、肝心の内容が思いついていなかった
「例えば先生と喧嘩したとか……もしくは女性関係のトラブルで先生に怒られたとか……」
────どうしてそんなピンポイントなトラブルなんですか……
「だ、だって……キヴォトスでは常識人側に属する酒泉君が起こすトラブルといえば大抵女性関係だし……」
────うん、早瀬さんが俺の事をどういう目で見ているのかよく分かりました
「じょ、冗談!冗談だから!……………多分」
────……えっ?もしかして俺って早瀬さん以外にもそんな風に思われてるんですか?
「……先生、一体何があったのかしら」
────目を逸らさないでくれます?
ユウカの視線は再度先生に向けられる
彼女はチラッと何度か酒泉を見つめ、目が合いそうになる度に視線を逸らすという謎の行動を取っている
「な、なに?私の顔に何かついてる?」
────いえ、特には……
「……先生……まさか……」
「も……もー、二人してジロジロ見てくると流石に照れちゃうよー」
先生はバレバレの演技で誤魔化そうとするが、当然それが通用するはずもなく二人は先生を見つめ続ける
「ほら!仕事仕事!早く終わらせて早く帰ろ!?ねっ!?」
そう言って逃げるように仕事に取りかかる先生
………この日の先生はとんでもないポンコツっぷりを発揮し、逆にいつも以上に仕事に時間が掛かったのだとか
──────────
────────
──────
「疲れた……今日は何倍も疲れた……」
時刻午後の五時、酒泉とユウカの二人と別れた先生は肩を落としながらコンビニに入っていった
くたびれた様子でエナジードリンクとカップ麺をカゴに入れ、だらだらとレジに向かおうとする
「はぁ……駄目だ、昨日からずっとこんな調子だ……」
昨日────つまり先生が折川酒泉に向けている感情について一つの〝仮説〟を立てた日
あの瞬間から先生はずっとその〝感情〟について考え続けていた
(あれってやっぱり……いや、まだギリギリ生徒への愛情の範囲内……だよね?)
どこまで行っても〝教師〟と〝生徒〟という感覚が抜けないのか、同じような思考をひたすら繰り返す
(うん、そうだ。私が酒泉に向けているのは〝先生〟としての愛情……そうに決まって────いや、それだったら〝ずっと一緒に居て〟とか言う必要無くない?)
(……そうだ!あれは〝シャーレとしてこれからも一緒に働いてほしい〟って意味だったんだ!あの時は精神が衰弱していて、それで変な言い方になっちゃっただけで……)
(……………うん?生徒の未来を縛るような言い方してるのも十分おかしくない?それはそれで別の問題が発生して……)
解決するどころか少しずつ広がっていく悩み
先生はコンビニ内で人目があるのにも関わらず思わず後ろに唸ってしまう
「うぅ~……頭が痛い~……なんで私がこんな目に────」
人生で初めての経験に頭を抱える先生
そんな彼女が額を押さえながら顔を上げた瞬間、目に入ってきたのは────
「……………………明日はお休み、だよね」
────魔法の液体、マジカルジュース
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
────先生が過労で壊れたかもしれません
『……先生が?』
電話の向こうから困惑したかのような声を出す聖園さん
辛うじて携帯端末の使用だけは許可されたのか、俺のモモトークにはつい最近〝聖園ミカ〟の四文字が登録された
『貴方の出来が悪すぎて困ってるんじゃない?』
────そうか……俺と聖園さんが無能すぎるせいか……
『然り気無く巻き込まないでくれるかな?』
チッ……バレたか……
『はぁ……それで?具体的にはどんな風に壊れたの?』
────お?相談に乗ってくれるんすか?
『……先生には色々とお世話になっちゃったし純粋に心配だからさ』
直接迷惑を掛けたり直接助けられたのを気にしているのか、聖園さんは先生に対してだけは素直に接する
……え?〝お前に対してはどうなのか〟だって?いつも煽ってきますけど何か?
わざわざ自分から嫌いな奴に連絡してないで桐藤さんや百合園さんに連絡しとけよ
……って言ってやった事もあるけど、その時に返ってきた答えが………
〝あの二人が相手だと……その……まだちょっと罪悪感があるっていうか………でも酒泉君が相手なら愚痴ったりつい本音が出ちゃったりしても問題無いでしょ?〟
〝だって酒泉君が怒ったり泣いたり悲しんだりしても私、なんとも思わないし☆〟
聖園さんはゴリラじゃないのかもしれない、だってゴリラは優しいはずだろ?
この人は魔女なんかじゃないしゴリラでもない、ただの性格の悪いクソ女だ
……いや、やっぱ身体だけはゴリラだわ、うん
『ほら、早く話してよ』
そんな事を考えていると電話越しから聖園さんが急かしてくる
そうだな……
────例えば、俺が部屋に入った瞬間に突然デスクに額を打ち付けたり……
『酒泉君の顔が見るに堪えなかったのかな?』
────俺の方を見たかと思えばすぐに視線を逸らしてきたり……
『一瞬見るのすらキツかったとか?』
────仕事にも集中できてなかったし……その間にも何か言いたそうにこっちを見てくるし……
『身体ぐらいちゃんと洗いなよ、スメハラって知ってる?』
────アホ死ねボケブスカスうんこばーかばーか
『小学生かな?』
さては相手がゲヘナ生なら何言ってもいいと思っているな?
ったく……俺の全力号泣が見たいなら最初から素直にそう言えっつーの(キリッ)
『まあ、冗談は置いといて………半分だけ』
────全部置けよ泣くぞ
『うるさいからやめてね?………話を戻すけど、酒泉君は先生に何かした覚えとかないの?』
────……本当に無いな、喧嘩もしてないし
『うーん……直近の出来事で何か印象に残ってる事とかは?』
────……例の事件以外、特には……
『その時に何か話したりしなかったの?』
────うん?そういえば……色々約束したな
『約束?どんな?』
────例えば……一人で無茶しないとか、これからは先生をもっと頼るとか
『んー……それだけだと何とも────』
────あと……先生が望む限りはずっと一緒に居るとか、そんな感じかなぁ……?
『……あー……うん、そういう事ね』
────おっ?何か分かったのか?
『酒泉君』
────ん?
『簡単にそういう約束したりサラッと人の事をお姫様呼ばわりしたりさ……そういうところ、直した方がいいと思うよ?』
急に説教された、解せぬ
『先生の様子がおかしい理由、大体分かったよ……』
────マジで?教えてくれません?
『やだ、酒泉君にだけは絶対に教えないもーん』
何が〝もーん〟だよ、アンタが言っても寒気がするだけだっての
……でも、聖園さんの反応的には本当に気づいているのか?
『……まあ……真面目な話、勝手に教えるのは先生に悪い気がするからさ。だからこの話はここでおしまいね』
────えー……すっごい気になるんですけど……
『自分で考えなよ……って、物騒な事ばかり考えているゲヘナ生の野蛮な頭じゃ一生掛かっても答えに辿り着けなさそうだけどね☆』
────よーし上等だ、そのうちアンタの口にロールケーキ突っ込みに行くから待ってろよ
『じゃあ酒泉君用にとびっきり不味いお茶でも用意して待ってるねー』
ああ言えばこう言うな、コイツ……
ここまでゲヘナ嫌いだと平常運転すぎて逆に安心するわ
『……じゃあ、今日はこの辺にしとこっかなー。これ以上モモトーク長引いたら怒られそうだし』
────……あー……その辺もいちいち許可制なのか……まあ、当然の罰だな
『……うわっ、ムカつく……けど言い返せないなぁ』
────……やっぱりゲヘナの俺なんかに電話するより、ちょっと勇気を出してでもティーパーティーの二人に掛けた方がいいだろ
『……あの二人、今は聴聞会の準備で忙しいから……』
ああ……そういえばそうだったな
聖園さんはあの事件の後、桐藤さんや百合園さんとちゃんと話し合って和解したらしいけど……その辺の申し訳なさもまだあるんだろうな
『それと……確かにゲヘナのことはすっっっっっっっっっごく嫌いだよ?』
────ん?
『でも、酒泉君は………大っ嫌い』
そう言い残すと、突然ブツンと通話が切れてしまった
その直後にモモトークにも〝あっかんべー〟のスタンプが貼られる
………いや、結局嫌いなんじゃん
まあいい、とりあえず今回の件で聖園さんは大して力にならなそう………というよりもなってくれなさそうだ
休み明けに先生にあった時によーく観察してみて、それでまだ様子がおかしかったら本人に聞いて────
《ピンポーン》
そこまで考えて思考が止まる
真夜中に突然鳴り響くインターホンの音
こんな時間に誰かと思いながら玄関前モニターの画面を開く
そこに映っていたのは………
────……先生?どうしてこんな遅くに?
モニター越しに話しかけてみるが返事は来ない
色々と疑問に思うところはあるが、夜中に外で立ちっぱなのは寒いだろうと思ってとりあえず〝今行きまーす〟とだけ伝えてから玄関に向かう
────お待たせしました……それで?何の用です?
「…………」
────……先生?
ドアを開けて直接先生と対面し、俺の家まで来た理由を尋ねる
だが、それでも先生は何も答えてくれない
……ここまで無言だと何か嫌な事でも起きたのかと心配になってしまう
「……酒、泉……」
やっと喋ってくれたかと思えば、出てきたのは俺の名前だけ
〝俺がどうかしたのか〟と問おうとした瞬間、先生の身体がフラッと前に倒れ…………そのまま正面から俺に抱きついてきた
────は?
「しゅせん……しゅせんだぁ……」
突然の出来事に唖然としてしまい、言葉が出てこなくなる
そんな俺の状態などお構い無しに先生は俺の胸元に顔をグリグリと押しつけてくる
……そこまでされて漸く感じ始める、子供には嗅ぎ慣れない妙な匂いに
「んー……ほんものだぁ……」
この人────酒臭いぞっ!!?
顔は真っ赤に染まり、口からはアルコール臭を飛ばし、身体はフラフラになっている
これは……飲み過ぎたのか?それとも酒に弱いのか?
「へんじをしろー!しゅせーん!」
お前に考える暇など与えん……そう言わんばかりのアルコールラッシュが俺に炸裂する
前世でも直接飲むことなく終わった、そんな飲み物の匂いを直接浴びせられて思わず後ろに引いてしまう
「こら!にげるなー!」
だが、先生は頬を膨らませながら逆に一歩踏み込んでそのまま俺を押し倒してきた
後頭部を家の廊下に打ち付けてしまうものの、勢い自体はあまり無かったので大して痛みは感じなかった
「むふふ……つかまえたぁ……」
────ちょっ……は、離れてくれません?
「だーめ」
焦点が定まっているのかも分からない目で俺を見つめ、顔を近づけてくる先生
瞬間、先生の両腕を掴んでコロリと反転し、逆に先生を寝転ばせた
……なんか嫌な予感がしたんだもん、これくらいは許してほしい
「あっ……もう!いじわる!」
────……先生、アンタ酔ってるでしょ
「よってませーん!」
さっきから子供みたいな言動を繰り返す先生
うん、誰がどう見ても酔ってますね本当にありがとうございました
……つーか
────結局、何でここまで来たんですか?酔ってたとしても理由くらいはあるでしょ?
「んー?しゅせんにあいたかったからだけどー?」
────……それだけ?
「それだけとはなんら!それだけとは!」
もはや舌すらマトモに回らないのか、俺の頬を引っ張りながら幼い喋り方で怒る先生
……今日は駄目そうだな、後日詳しく話を聞かせてもらおう
────先生、とりあえず水を持ってくるんで……それ飲んだら帰りますよ、先生の自宅まで送り届けてあげますんで
「やだー!とまるー!」
────我儘言うんじゃありません!
「しゅせんはもっとせんせいをだいじにするべきだとおもいます!」
水を持ってこようと脚を動かすが、その脚に先生が両手でへばりついてくるせいでまともに動かす事ができない
ええい!離せい!
「やだやだやだやだやだ!とまるの!とーまーるーのー!」
────うるさっ……!?近所迷惑になるでしょ!止めなさい!
「うああああん!しゅせんがいじわるするー!」
────酒臭っ!!?
「しゅせんのばか!おんなたらし!すかぽんたぬき!えっち!へんたい!」
────は、はあ!?
「なにが〝しゅせんコレクション〟だー!なにが〝ぎゃくばにー〟だー!わたしだってきれるもん!そのきになればわたしだって────」
────あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!?ベッド!ベッドの掃除して来ますんで!!!
「またかってしまった……」
むふー、とドヤ顔で胸を張る先生
本当なら今すぐ先生の自宅まで送り返したいところだが………ご近所さんに聞こえる程の声量で〝酒泉コレクション〟の話をされる訳にはいかない
………よし、さっさと寝かしつけよう!
とりあえず先生にはベッドで寝てもらって……俺はリビングに布団でも敷けばいっか
「まちなさ────あうっ」
未だに張り付いてくる先生を無理やり引き剥がすと、ビタンッ!と床に顔を打ち付ける
「うぅ~……しゅせん~……」
涙目で睨んでくる先生を無視し、肩を支えて寝室まで連れていく
顔が近いせいで酒の臭いが更に強烈になるが……我慢だ我慢
寝室に着いたらとりあえず先生を適当に床に座らせ、ベッドシーツを洗濯済みのものに入れ替える
寝かせる準備を終えると今度は部屋の角で吐きそうになっている先生の為に台所隣の冷蔵庫から天然水を取り出し、それをコップに注いでから先生に手渡す
「うっ……おえっ……」
────……ほら、これでも飲んでください
「……のませて」
────赤ちゃんじゃないんだから自分で飲んでください
「………」
────……はぁ、口開けてください
先生は水も一人で飲めないほど泥酔しているのか、俺がコップを近づけてやっと飲む素振りを見せてくれた
……ちょっと目を離せば仕事も事件も一人で抱え込もうとする、そんな先生が生徒である俺に対して甘えまくるなんて………一体どれだけの量を飲んだんだ?
「んー……なんか……ねむく……」
────寝るならベッドで寝てくださいよ
「はこんでー」
座ったまま手を伸ばしてくる先生を無理やり立ち上がらせてベッドの上に寝かせる
先生の身体に毛布を掛けようとする度に身を捩らせて抵抗してくるが、何度目かのチャレンジで漸く大人しくしてくれた
……本当は着替えさせてから寝かせた方がいいんだろうけど、今の先生が自分で着替えられるとは思えないし俺が手伝う訳にもいかないだろう
「……あれ?どこいくの?」
────俺も寝るんすよ……今日は疲れたんで……
「ベッドはこっちだよ?」
────男女で一緒に寝れるはずないでしょ……リビングで寝ますよ
「………ふーん」
何か言いたげな先生の反応を無視して寝室のクローゼットから布団と毛布を取り出し、それを持って部屋を出る
リビングに戻ると適当にテレビの前辺りに布団を敷いてそこに寝転がることにした
酔いの覚めた先生とちゃんと会話したくて〝さっさと朝にならないかな〟と願いながら目を閉じる………が、視界が黒く染まれば染まるほど逆に余計な事を考えてしまう
先生ってあそこまで自制が効かない人だっけ?
大人って酔ったらあんな風になるの?
それとも先生の素があの状態だっただけ?
関わりのある大勢の生徒達の中からどうして俺の家を選んだ?
てか酒の臭いこびりついてね?
眠りに近づくどころか次々と余計な事が浮かんでくる
……駄目だ駄目だ、さっさと寝よう
明日は休日……お風呂に入るのは朝でいいだろう
風呂に入ってから……朝食の準備をして……それから……
「ごはんはなにたべるの?」
────んー……鮭でも焼きましょうかねー……
「おみそしるものみたいなー」
────勿論、一緒に作る予定ですよ
「やったー」
近くから聞こえてくる気の抜けた声に返事をしながら、明日の朝食について考え────待て、俺は誰と会話している?
「……きちゃった」
嫌な予感がしつつも恐る恐る目を開けると、先生が俺の身体に覆い被さっていた
────……は?
「おじゃましまーす」
────いや、お邪魔しますじゃなく……って!?
「んー……せまい」
此方の思考が追い付く前にモゾモゾと毛布の中に侵入してくる先生
なんとか追い出そうとするが、両腕でガッチリと俺の身体をホールドしてきてなかなか離してくれない
「えへへ……あったかい……」
────ちょっ……離れてくれません!?だいたい何でこっちに来てるんですか!?ベッドがあるでしょう!?
「やだ!いっしょにあったまる!」
────馬鹿な事言ってないで早く……あひぃっ!?
「うへへへへ……いいカラダしてますなぁ……」
───やめっ……ひいんっ!?……いい加減にっ……んひぃっ!?
「よいではないか!よいではないかー!」
突然身体のあちこちを突っつかれたせいで男が出しても鼓膜破壊ASMRにしかならないような声が漏れ出る
誰得だよ何が悲しくてこんな声を聞かせなきゃいけないんだよ
俺だって聞くにしても女の子の声の方が嬉しい────ピイッ!!?
「おとなしくふとんにいれろー!」
────分かったから!入れるから………ひゃんっ!?
「うぅ……」
ジュージューという何かが焼けるような音と共に目が覚める
欠伸をしながら目を擦り、両腕を伸ばす
「んー……頭痛い……」
昨日の酔いが覚めきっていないのか、未だに頭が僅かに揺らぐ
フラフラと覚束ない足取りで立ち上がると、すぐ近くのテーブルの上に何かが置かれているのを視認した
「……ご飯?」
そこには焼鮭と海苔、きんぴらごぼうと白米が
────おはようございます……もうすぐ味噌汁も出来るんで座って待っててください
「あっ……おはよう……うん、分かった」
酒泉に言われるがまま椅子に座り、その場でジッと待機する
……こうして二人で食卓を囲むの、なんだか家族みたいだなー
「……え゛っ!?どうして私が酒泉の家に居るの!!?」
────気づくの遅くね???
もうすぐ終わると思います