〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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if世界~女先生ルート~その24

 

 

 

「嫌だよ……これで終わりなんて……!」

 

 

心の奥底にしまっていた本音が溢れ出す

 

 

「諦めたくない……私、諦めたくないよぉ……!」

 

 

生徒の前にも関わらず恥も外聞も無く泣き出してしまう

 

こんなつもりじゃなかったのに、最後まで我慢するつもりだったのに

 

 

「好き……ずっと好きだったのっ!」

 

「このキヴォトスにきた時からずっと私を助けてくれて、私を支えてくれて……!」

 

 

私の決意はいとも容易く崩れ去ってしまった

 

自分で決めたことすら貫き通せないなんて……何が先生だ、何が大人だ

 

 

「生徒にこんなこと言っちゃいけないってのはわかってる!わかってる……けど……!」

 

「それでも……好きになっちゃったんだもん……!」

 

 

そんな自嘲的な思考に陥りながらも、自分の想いを伝える事を止められない

 

もしかしたら心のどこかで〝酒泉なら受け入れてくれるかもしれない〟なんて都合の良い事を思っているのかもしれない

 

……本当に情けないなぁ………私

 

 

「大人が……先生がこんな事を言うのはおかしいって、子供にこんな感情をぶつけるのはおかしいって頭では理解してても……でも……もう、抑えられないの……!」

 

「何度も捨てようとして!それでも捨てられなかったっ!」

 

「あり得ない未来だと分かっていても!それでも望まずにはいられなかったっ!」

 

 

これ以上恥を晒してどうしようというのか

 

酒泉に同情でもしてもらいたいの?少しでも酒泉の気を引きたいの?

 

……それとも、どうせ結ばれる事はないからと、せめて傷跡でも残そうとしているのか

 

 

「それでも……それでも私は……!酒泉と二人で……!」

 

 

〝歩む未来を〟

 

その言葉が出なかったのは先生としてのせめてもの抵抗か、それとも……ここまで来ておきながら単純に勇気が無かっただけなのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────先生

 

 

 

 

 

 

 

はあはあ、と息を切らしていると酒泉が私を呼んだ

 

 

「あ……」

 

 

全部吐き出して、漸く気づいた

 

自分の言った言葉の愚かさを、どれだけ身勝手なことをしてしまったのかを

 

 

「え……ぁ……ち、違う!あの、私は……!」

 

 

責任感の強い酒泉のことだ、こんな事を伝えてしまったら尚更酒泉を縛り付けてしまうだろう

 

〝自分が先生の想いに気づけなかったから〟と

 

〝自分のせいで先生が苦しんでしまった〟と

 

 

「しゅ、酒泉を……苦しませたかった訳じゃなくて……!」

 

 

無理して受け入れてくれるにせよハッキリと断られるにせよ、どの道酒泉を傷つけてしまう事に変わりはない

 

今すぐ否定しないと

 

 

「い……今のは全部────」

 

 

嘘だ、そう否定したかった

 

……でも、出来なかった

 

酒泉を好きになったという現実を無かった事にはしたくなかった

 

 

「全、部……」

 

 

言葉が続かない私を待ち続ける酒泉

 

数十秒後、酒泉は私を背中から下ろして近くのベンチに座らせた

 

……必死すぎて背負われていることすら忘れていた

 

 

 

 

 

 

────なんで謝るんですか

 

「……え?」

 

 

 

俯きながら座る私に酒泉が問いかけてくる

 

肩を震わせ、何かを訴えるような瞳で

 

 

 

────なんで、自分の気持ちを無かったことにしようとするんですか!?

 

「っ!?」

 

────好きなら好きで良いじゃないですか!それを自らねじ曲げようだなんて……!

 

「だ、だって……私は大人で、先生だから……!」

 

 

 

両肩を掴まれ、無理矢理視線を合わせられる

 

正面から見つめてくる酒泉に私が返した言葉は言い訳だった

 

そんな私に対して、酒泉はギリッと歯噛みしてから口を開いた

 

 

 

────大人だからなんです!?先生だからってなんなんですか!?そんなのただの言い訳でしょう!?

 

「い、言い訳って……!私だって必死に考えた結果がこれで……!」

 

────そもそも、どうして言い訳なんてする必要があるんですか!大人だろうと先生だろうと!何かを愛することに立場なんて関係無いんですよ!

 

「……っ」

 

 

 

映画でも聞いたような台詞が返ってくる

 

ありきたりだけど、今の私が一番求めている言葉が

 

 

 

「……酒泉が認めてくれたとしても、他の人達が許してくれないよ」

 

────そんなのやってみなきゃ分かんないでしょう!行動する前から怖じ気づいて……!慎重と臆病は違うんですよ!?

 

「……だって……それをやったら……私は、先生として……」

 

────〝先生として〟じゃない!俺は一人の人間としての気持ちを貴女から聞きたいんだ!

 

「────っ」

 

 

 

私の、気持ち?

 

 

 

 

────好きなら好きって伝えていいんだ!触れたいなら触れていいんだ!

 

────大人だろうと子供だろうと!先生だろうと生徒だろうと!それは誰にでも許される当然の権利なんだ!

 

────だから、自分を抑えないでください!先生!貴女の……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────本当の貴女を!俺に教えてください!

 

 

 

 

そう叫んだ酒泉は、ずっと私を見つめ続けている

 

喋っている最中も少しも視線を逸らさず、堂々としていた

 

待ってくれている、私の答えを

 

受け止めようとしている、私の気持ちを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………好き」

 

 

ポツリと

 

 

「好き」

 

 

自然と溢れてきた

 

 

「大好き」

 

 

 

 

「私、やっぱり諦め切れない!」

 

「周りの人達がなんと言おうと!世間に批判されたとしても!」

 

「好きなものは好きだって胸を張って言いたい!」

 

「下らない価値観なんかに縛られずに愛するものを堂々と抱きしめたい!」

 

「だって、こんなにも………!こんなにも好きなんだから────」

 

 

 

 

 

 

 

 

────俺もです、先生

 

「……え?」

 

────俺も先生と……同じ気持ちですから

 

「……うそ」

 

────嘘じゃないです、本気です……今日一日中、ずっと同じことを考えていました

 

「……それじゃあ……」

 

 

 

微笑みながらそう伝えてくる酒泉

 

私と同じ気持ち?それってつまり……酒泉も、私を?

 

 

「……あは、は……」

 

 

また涙が零れてくる

 

でも、さっきみたいな嫌な涙じゃない、嬉しい涙だ

 

 

「は、あはは!そう、だったんだ……こんな私のことを、酒泉はずっと……ずっと想っていてくれたんだね……」

 

 

逃げようとしていたのは私だけ、酒泉は自分の気持ちと向き合っていたんだ

 

想いが通じ合った嬉しさやら先程まで感じていた不安感で感情がぐちゃぐちゃになる

 

酒泉にどう言葉を掛けようか考えていると、酒泉がベンチの前に座り込んで再び私に背を向ける

 

 

 

「ど、どうしたの……?」

 

────こんな形で終わるなんて嫌なんでしょう?……行きましょうよ、もう一度

 

「……い、いいの?」

 

 

 

酒泉が何の事を言っているのか一瞬で理解できた

 

彼は〝もう一度デートをやり直そう〟と言っているのだ

 

ただの不器用な男女の買い物を、今度は想いが通じ合ったカップルのデートとして

 

 

 

「……でも、時間が……」

 

────あと四十分くらいは店開いてますよ、早歩きでいけば十分に間に合います

 

「……私を背負いながら?」

 

────余裕です

 

 

そう言って酒泉は早く背に乗るように急かしてくる

 

 

 

「……ふふっ……じゃあ、お願いね?酒泉」

 

涙を拭った私は、再びその背に自分の身を預けた

 

さっきより強く酒泉を抱きしめて、さっきよりピッタリと身体をくっつけて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────お願いしますっ!!!どうかディバイドとディサイドの十周年記念ベルトを俺達に触らせてください!!!

 

「そ、そんなこと言われましても……」

 

 

 

十分後、そこには先程の特撮専門店の店長さんに土下座する酒泉の姿が

 

……どうしてこうなった

 

 

 

「何度も説明しましたけど、あれは展示品でして……」

 

────先生が欲しているんです!〝諦めたくない〟って!〝これで終わりなんて嫌だ〟って!涙を流す程に!

 

「は、はぁ……」

 

 

 

何度も何度も頭を下げる酒泉、店長さんはその気迫に押されている

 

それでも酒泉は少しも立ち上がることなく、床に頭を打ち付ける

 

そんな彼の後ろ姿を見て一つの最悪な可能性を想起してしまった

 

 

 

「そうは言われましても……此方としてもあのベルトは当店のメインシンボルの様な役割ですので……あまり他者に触れさせるようなことは……」

 

────お金が必要なら俺が払います!足りなかったら一生働いてでも返し続けます!

 

「え、えぇ……そんなに……?触れるだけなのに……?」

 

 

もしかして、さっきの告白……

 

 

 

「あ、あの……そろそろ止めた方がいいのでは……血が出てきちゃいますよ……?」

 

────お願いします!先生にとっての想い出なんです!このキヴォトスに来てからも支え続けてくれた、大切な記憶なんです!

 

「うおっ!?ジャンピング土下座!?なんて美しい……私がこの域に達したのは二十代後半……」

 

 

 

……あのベルトに対するものだと思われてた?

 

いや、絶対そうだ、だってさっきからベルトの話しかしてないもん酒泉

 

どうしてそんな勘違いをしたのか、気持ちはちゃんと伝えたはず、何処にも間違える要素なんて……

 

 

 

 

 

《……これは……2号ヒーロー・マスクヒーローディサイドの十周年ベルト!?》

 

《────こんな物まで!?………あ、これも非売品か》

 

《……そん、な》

 

《────触れることすらできないなんて……》 

 

《うぅ……でも触りたい……諦めたくないぃいいい……!》

 

 

 

あっ(察し)

 

嘘でしょ?まさかあれが原因なの?あの言葉だけで?

 

……いや、多分それだけじゃない、そもそもの前提条件として酒泉の中では〝自分が告白されるはずがない〟ってクソボケみたいな思い込みが存在するはず

 

「そうまでして触れたいか……厄介オタクめ!」

 

────失礼だな、純愛だよ

 

「ならばこちらは商売だ」

 

「……は、ははっ……」

 

「……ん?なにやらお連れさんの様子がおかしいようですが……?」

 

────……先生?

 

「ははは、あはははははは」

 

 

 

そっか……そっかぁ……

 

酒泉はそう捉えたんだぁ……私が勇気を振り絞って出した言葉を、大人や先生っていうしがらみを越えて発した告白を

 

私が流した涙も全部無駄だったんだぁ……

 

 

 

「店長さん、ご迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありませんでした………ほら酒泉、立って」

 

「い、いえ……」

 

────え?で、でも……まだベルトが……

 

「私、別にベルトに触れたかった訳じゃないから」

 

────……え?それってどういう……

 

「早く立って」

 

────ごめんなさいすぐに立ち上がります

 

 

 

 

私の指示に従って酒泉は頭を上げて立ち上がってくれた

 

でもどうしてかな、そんな怯えた様な表情をしているのは

 

 

 

「帰るよ」

 

────ほ、本当にいいんですか?あんなに泣いてたのに……

 

「……まだ理由が分からないの?」

 

────……先生?な、なんか……怒ってます?

 

「………」

 

 

 

自分の中で何かが冷えていくのを感じる

 

先程までの苦しみも悲しみも葛藤も全部全部ぜーんぶどうでもよくなってきた

 

 

 

「ねえ、酒泉」

 

────は、はい……なんでしょうか……

 

「私って生徒を叱るにしても感情を一方的にぶつけたりしないように気を付けてるんだけどさ………でも、無自覚に人を怒らせるムーブを繰り返す子が相手なら遠慮する必要無いと思わない?」

 

────え?そ、そうです……ね……少しくらいは舐められないようにしないと……

 

「だよね、本人からも許可が貰えてよかったよ」

 

────え?何を……っとお!?

 

「アー、マダアシガイタムナー、アルケナイナー」

 

 

 

困惑している酒泉の肩にもたれかかる、因みに足が痛いのは本当だ

 

………もう普通に歩けるぐらいには回復してるけどね

 

 

「ねえ、歩くの辛いから肩借りてもいい?」

 

────構いませんけど……まだ痛むなら俺がまたおぶって………

 

「じゃあ、遠慮無く借りるね」

 

 

 

そう言ってからより酒泉に身体を近づけ、そのまま酒泉の腕と私の腕を絡ませる

 

別に特別大きくはないけど小さすぎもしない柔らかな二つの感触を酒泉の腕にムギュッと押し付ける

 

 

 

────ほえ?

 

「どうしたの?早く行こ?」

 

 

酒泉の口から出てきた呆けた声を無視して今度は指同士を絡ませる

 

腕も手も完全に封じた、絶対に逃がさない

 

 

 

「ほら、ボーッとしてないで帰ろうよ。どっかでご飯食べていくんでしょ?」

 

────あの……これって肩じゃなくて腕を借りてるんじゃ……

 

「そう?でもこの方が歩きやすいしこっちで良いかな」

 

────い、いや……でも……む、胸の感触が……

 

「ごめんね、声がちっちゃくてよく聞こえないや」

 

 

 

酒泉が鈍感なのは他の娘との会話を聞いてても分かっていたけど、こうして自分自身がその被害に遭うと……こう……めちゃくちゃムカつく

 

それに、酒泉はただの鈍感じゃない

 

何度でも女性を怒らせる度を超えたド級のクソボケ、ドボケだ

 

こんな子を放置してるとどんどん被害者が増えていくに違いない、だから私がしっかり管理しないと

 

そして、少しでもクソボケを改善させる為に……

 

 

 

「食事を終えたらシャーレに行こっか、そこでも今回の映画の感想を語り合おうよ………夜まで、二人で」

 

────せ、先生?なんか顔が……近い……

 

「どうしたの?顔を赤くしちゃって」

 

────ちょっ……腕にやわらかかかかかかかk

 

「腕が何?ほら、ちゃんと私の顔を見て答えて?」

 

まずは女性との接し方を教えなければならない

そうでもしないと恋愛以前の問題になってしまうだろう

 

少しでも私が女だって意識させる為に、自分が告白されていたと気づかせる為に

 

 

 

 

────あ、ああああの、こんなところを生徒の誰かに見られたら面倒な事になるんじゃじゃじゃじゃじゃ

 

「私は別に構わないけど?」

 

────で、でも!ほら!シャーレって色んな学校とよく絡む中立組織でしょ!?特定個人とのこういう写真が出回るのは良くないんじゃないかなーって!

 

「その時は思い切って付き合っちゃう?」

 

────ヴェ!?

 

「私、酒泉が相手なら嫌じゃないよ?」

 

────……そ、そうやって生徒を口説いてばかりいると他の娘に襲われますよ?手遅れになっても知りませんよ?

 

 

 

 

顔を更に近づけると酒泉は必死に視線を逸らす

 

……そんな酒泉の頬を両手で挟み、無理やり私の方に向かせる

 

 

 

 

「酒泉は嫌なの?私と付き合うの」

 

────そ……そりゃあ、先生みたいな綺麗な人と付き合えたら嬉しいなーとは思いますけど?でも、先生のお時間を頂く人は他に居る訳でして……

 

「私は酒泉の気持ちを聞いてるんだけど?」

 

 

 

さっき酒泉が私に言ったみたいに逃げ道を塞ぐ

 

逃がさない、ここで追い詰める、絶対に────

 

 

 

「あの~……そろそろ閉店の準備をしたいのですが……」

 

────っ!?す、すいませんでした!ほら先生!帰りましょ!?ね!?

 

「……うん、そうだね」

 

 

 

申し訳なさそうに話しかけてくる店長さんに〝すみませんでした〟と再び謝罪する

 

そのまま酒泉と二人で店を出る………勿論、腕は離さずに

 

 

「あ、そうそう……今の話の続きはシャーレでしようね」

 

────えっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、先生が酒泉に腕を絡ませている写真がキヴォトス中に広まった

 

クロノス報道部は酒泉に襲撃された、時既にお寿司

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────先生、こっちの仕事終わりました

 

「お疲れ、私の方も丁度終わったよ」

 

 

 

時計は午後の六時を指し示している

 

互いに確認を終えた書類を一纏めにしてから先生のデスクにしまう

 

 

「今日の分はこれで全部、か………酒泉、明日の予定は?」

 

────明日は久しぶりにゲヘナに視察っすね、ですから俺は放課後そのままゲヘナで待機してますね

 

「うん、現地集合ってことで良いよね」

 

 

 

仕事用のノートPCを閉じ、メモ帳やペンなどの細かい物も全て鞄にしまう

 

デスクの上がサッパリしたのを確認すると、先生は椅子から立ち上がって両腕を広げ、大きく背伸びをする

 

そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゅ~せんっ♪」

 

 

 

同じくデスクの上の物を片付けている最中の酒泉の背後から抱きついた

 

 

 

「この後はどうする?何食べに行く?」

 

────いや、なんで俺も一緒に行くこと前提なんですか……外食ばっかしてると冷蔵庫の中身が残りっぱなしになっちゃうんで今日は遠慮しておきます

 

「うぅ~……酒泉が反抗期だぁ……」

 

 

 

抱きついて体勢のまま酒泉の頬を上からつねる先生

 

それを適当に相手しながら酒泉はテキパキと帰りの準備を進める

 

 

 

「そっかー……今日は一人寂しくカップ麺でも食べてよっかなー……」

 

────……楽なのは分かりますけど、またカップ麺ばっか食って体調崩さないでくださいね?

 

「じゃあその時は酒泉が看病して?」

 

────面倒なんで嫌でーす

 

「ケチ!」

 

 

 

ブーブーと頬を膨らませて怒る先生

 

……折川酒泉は困惑していた、何故なら二人で出掛けた日から先生の態度が変わってしまったからだ

 

それも酒泉に対して〝だけ〟

 

他の生徒と話す時は普段通りに接しているし、酒泉と話す時も仕事中なら何ら変わらない

 

だが、仕事を終えた途端に一気に態度が変わるのだ

 

 

「むぅ……怒っている私を放っておいて何を考えているのさ」

 

 

一体何が原因なのか、そんな事を考えていると再び酒泉の背後から先生が抱きつく

 

酒泉としては理性やらなんやら色々とマズイのでさっさと離れてほしいのだが、一度本気で拒否した時にガチ泣きされそうになった為にあまり強く突き放せないでいた

 

 

「さてはヒナのことでしょ、それかFOX小隊?」

 

────違いますよ……

 

「そうだよねーあの娘達って皆可愛いし良い娘だもんねー」

 

 

 

子供のようにいじける先生に対して酒泉は後ろを振り向き、面倒そうな表情を向ける

 

すると、先生は勢いよく指を酒泉の頬に突きつけた

 

 

 

「あー!?今、めんどくさいって思ったでしょ!?」

 

────思ってませんって……

 

「嘘だ!絶対思ってたもん!」

 

 

 

訳の分からないことで怒る先生に呆れていると、そんな酒泉に先生の顔が近づく

 

 

 

「なーのーで!酒泉には罰として………先生のシュセニウム補充に付き合ってもらいます!」

 

────またですか……?

 

「言っとくけど譲歩はしないから!」

 

────……好きにしてください

 

「じゃあ遠慮なく………むふー」

 

 

 

先生は酒泉の胸元に顔を埋めると、そのまま大きく息を吸った

 

〝なんだコイツ〟と言いたげな顔をしている酒泉のことなど気にも留めず、それを何度も繰り返す

 

 

 

「あー……落ち着くぅ……」

 

────……そんなに楽しいですか?これ

 

「うん、最高」

 

────他の人に見られたらヤバくないっすか?

 

「大丈夫だって!今は私と酒泉しか居ないんだからさ!」

 

 

 

この人はどうしてこんなにおかしくなってしまったのだろう、ついでに僕達はどうしてこんな所へ来てしまったんだろう

 

酒泉はそんな事を考えながらも、これまでと違って荷が下りたかの様に楽しそうにしている先生の顔を見て何も言えなくなる

 

〝まあ、こうする事で少しでも先生が休める時間を作れるのなら別にいっか〟

 

酒泉はそう思いながら、大人しく先生が満足するのを待つ事にした

 

 

 

「あー……あったかいナリィ……」

 

────……そういえば先生、さっき〝私と酒泉しか居ない〟って言ってましたけど……なんか扉の前からむっちゃ気配を感じるんですが

 

「えっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、先生、私からもシロコニウムを摂取するべき」

 

「私はウサギではありませんが……独占欲は人よりも強い方だと自覚はありますので」

 

「いやー……お邪魔しちゃったっすか?」

 

「せ、先生にあんな冷たい態度を取るなんて……許せない許せない許せない許せない許せない……!」

 

「そんな……盗聴機の位置が全てバレている上に破壊されているなんて……なるほど、彼の仕業ですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────お疲れ様でしたー、お先に失礼しまーす

 

「「「「「ちょっとお時間いただきますね」」」」」

 

────はー待て待て、ガキ共すいませんでした

 

 







この後めちゃくちゃ睨まれたクソボケ
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