〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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if世界~女先生ルート~その後

 

 

 

 

「お邪魔しまーす!」

 

「お、お邪魔します……」

 

 

靴を脱ぎ、玄関に上がる2人を後ろから眺める

 

 

「酒泉、荷物はリビングでいいかな?」

 

 

薄暗い青色の髪の女性が、その緑の瞳で楽しそうに此方を見つめてくる

 

 

「……どうしたの?もしかして……腕が痛むの?」

 

 

白い長髪の少女が、紫の瞳で心配そうに見上げてくる

 

今、俺の目の前には先生と空崎さんが立っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……泊まるのに必要な物が入った、大きめのバッグを抱えて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

時は数時間前に遡る

 

些細な理由によって一部のゲヘナ生とトリニティ生の間でいざこざが発生し、それが銃撃戦にまで発展してしまった

 

調印式の件から何も学んでいないかのような事件に風紀委員と正義実現委員は頭を抱えながらも、互いの生徒を止めようと即座に出動した

 

更に両校の仲をこれ以上悪化させる訳にはいかないと中立的立場であるシャーレにまで救援が求められ、先生と酒泉もすぐに現場まで駆けつけて戦闘に参加した

 

その戦闘自体は特に苦戦することなく、一瞬で終わった……のだが、問題はその後だった

 

正実の生徒に連行されているトリニティ生の1人が車に乗り込もうとする直前、不意を突いて没収された拳銃を奪い返し、先程まで争っていたゲヘナ生に向かって弾丸を1発放つ

 

その弾はギリギリで外れたが、突然攻撃された事に怒ったゲヘナ生が近くの風紀委員から拳銃を奪い取り、先程の仕返しにと此方も弾をトリニティ生に放った

 

だが、その弾も外れ、結局誰も傷付くことはなくこの事件は幕を閉じる……はずだった

 

トリニティ生を拘束していた正実の生徒の近くを弾丸が通り、それに驚いた正実の生徒が一歩後ろに後退りしてしまう

 

その先には石階があったが、キヴォトスの生徒は皆身体が頑丈な者ばかり

 

無傷とはいかないだろうが、頭を打ち付けたところで大怪我にまではならないだろう

 

……だが、折川酒泉の頭の片隅からはその事がすっかり抜け落ちており、正実の少女の後ろに立っていた彼は咄嗟に抱きしめるようにして庇ってしまった

 

その結果────彼の右腕が骨折してしまった

 

直後、正実の長である剣先ツルギよりも一足先に到着した空崎ヒナはその現場を目撃し、ゲヘナの生徒が彼の怪我の一因であると知って酷く悲しんだ

 

先生も〝自分も近くに居たのに助けてあげる事ができなかった〟といつかの様に心を曇らせていた

 

病院で手当てを受けた酒泉はそんな2人……と、酒泉に助けられた正実の生徒にヘラヘラ笑いながら〝気にするな〟と口にするが、当然そんな気休めな言葉は何の意味も成さなかった

 

やがて覚悟を決めた様な表情で互いに頷き合う先生とヒナ、2人は正実の生徒を一旦トリニティに帰してからコソコソと会話を始めた

 

そして────

 

 

 

 

 

 

『酒泉の利き腕が治るまでは私達がお手伝いするからね!』

 

『……その……私もゲヘナの風紀委員長として責任を取るわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっけー!やっちゃえー!」

 

「これが酒泉と先生が好きな〝特撮作品〟なのね……」

 

 

 

テーブルにスナック菓子とジュース、テレビの画面にはヒーローと怪人

 

そして俺が座っているソファの左には先生が、右には空崎さんが

 

元はといえば俺の不注意で怪我したようなもんなのに、それで2人に迷惑を掛けるのもなんだかなぁ………って事でちょっとしたパーティーを開くことにした

 

勿論、特撮DVDだけじゃなくて別のアクション系の映画も用意しているが………空崎さんが〝私も酒泉が好きな作品を観てみたい〟と言ってくれたので、その思いに応えることにした

 

 

 

「……なるほど、なんで怪人の人達はヒーローが変身してる時に攻撃しないんだろうって思ってたけど……変身シーンのあのエフェクト自体に攻撃を防ぐ効果があったのね」

 

「作品にもよるけど、最近の特撮はその辺も拘ってるよねー」

 

────一部の作品は変身エフェクトだけで敵を倒せそうな火力があったりしますよね……

 

 

 

誰でも一度は思うであろう〝なんで変身中に攻撃しないの?〟問題

 

案の定空崎さんもそれを口にしたが、納得してくれたようで何よりだ

 

 

 

「……ねえ、そういえば1つ気になった事があるんだけど」

 

────どうしました?空崎さん

 

「この人……主人公が変身してる姿って最強フォーム?……とかいう一番強い姿なんだよね?」

 

────はい、そうですけど

 

「これって本当に最強なの?その……数話前からあまり活躍が────」

 

────空崎さん、ストップ

 

「ヒナ、それ以上はいけない」

 

 

 

先生と同時に空崎さんの言葉を止める

 

その感情はな……全ての特撮ファンが通る道なんだ……

 

 

 

「いい?ヒナ……特撮ってのはね、全ての最強フォームが活躍できる訳じゃないんだよ……」

 

「活躍出来ないのに最強なの?」

 

「い、いや……それは、その……主人公が使うフォームの中で一番強いからさ……」

 

「でも、1つ前の……中間フォーム?って先生と酒泉が呼んでいた姿の時の方が活躍していた気が……」

 

「……それは私もそう思う」

 

「それと、この2号ヒーローの人って前話でパワーアップしたばかりだよね?なんだかもう負けてるけど……」

 

 

悲しいなぁ……

 

 

 

「うっ……で、でも!ヒーローの条件っていうのは強さだけじゃないからさ!」

 

「確かに……ヒーローの価値観なんて人それぞれだもんね。例えば優しさを重視したりだとか……」

 

「ただ強いだけの人よりも、誰かの為に戦える人の方がカッコイイもんね」

 

「……うん、私もそう思う」

 

 

 

良い話の逸らし方だなぁなんて考えていると、先生と空崎さんが俺の顔をチラッと見つめてきた

 

なんだ……?頬にポテチのカスでも付いてるのか?

 

 

 

「……いや、酒泉の場合はどっちかっていうとヒロインかな」

 

「………言われてみれば」

 

 

 

!?

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「おっ?牛肉が安いね?」

 

「野菜も新鮮な物が揃っているわね」

 

 

 

夕飯の準備をする……直前に〝そういや冷蔵庫の中身補充してなかったな〟って思い出し、近所のスーパーまで買い物に来ました

 

……シャーレの先生とゲヘナの風紀委員長を私用の買い物に付き合わせるなんて、誰かに見られたら怒られるのでは?

 

 

「どうしたの?……やっぱり腕が痛いんじゃ……」

 

 

 

2人の背中を眺めながらそんな事を考えていたら、空崎さんが心配そうに見上げてきた

 

いかんいかん……俺もボーっとしてないで手伝わないと

 

 

 

 

────いえ、今日のメニューを考えていただけですよ……そうだ!今日はビーフカレーにしませんか?

 

「カレーか……いいね!3人居るし、多めに作っちゃおっか!」

 

────じゃあ、早速ルーを選びに……あっ

 

「どうしたの?」

 

────いや、俺……料理出来ないじゃん……

 

「ああ、右腕のこと?」

 

「それなら気にしないで、私と先生で作るから」

 

────その気遣いは嬉しいですけど、でも……買い物だけじゃなくて料理までさせるなんて……

 

「いいからいいから!それとも酒泉は私達の料理の腕が信用できないの?」

 

 

 

それを言われると何も言い返せなくなってしまう

 

俺の中に先生と空崎さんを傷つけるという選択肢は存在しないのだ

 

 

 

────じゃあ……料理も2人に任せちゃっていいですかね?

 

「うん、任せて……というよりも、断られたとしても無理矢理手伝うつもりだったから」

 

「じゃあ、お肉買っちゃうね?」

 

────了解です、とりあえず財布は2人に預けちゃいますので……

 

「いいよ、私が出すからさ」

 

────え?……いや、流石にそこまでは……

 

「もう……こんな時ぐらい私達を頼ってよね?」

 

「……酒泉は甘えるのが下手だから」

 

────空崎さんに言われた……

 

「……私の事はいいの」

 

 

 

誤魔化すように顔を逸らす空崎さん

 

……そう、だな。もっと頼るって先生とも約束したし、ここは……

 

 

 

────ありがとうございます、先生……なら、あっちの野菜コーナーの方に置いてある〝家族用詰め合わせセット〟を買ってきてもらってもいいですか?

 

「か、家族……酒泉ってば、もう……」

 

「……そ、卒業前からなんて……嬉しいけど、気が早すぎる……」

 

────はい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?酒泉君、今日は彼女連れ?」

 

 

 

レジまで行くと、このスーパーで働いている鳥人のおばちゃんに声を掛けられる

 

 

────違いますよ、この2人は……

 

「こんばんは……私はただの酒泉の先生ですよ、まだ」

 

「私もただの酒泉の通ってる学園の風紀委員長よ、まだ」

 

「……酒泉君、頑張るのよ?」

 

────え?何が?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ヒナー、カレーはー?」

 

「良い感じ……あとちょっとだけ煮込めば完成よ」

 

「じゃっ、先にご飯だけ盛り付けちゃおっか」

 

 

 

台所の方でエプロンを着る2人の背中をテーブルからジっと眺める

 

……こんな美人さん2人に手料理を振る舞ってもらえるなんて、もしかして俺の前世は仏様か何かだったのでは────いや、普通の高校生だったわ、うん

 

いやぁ……それにしても自宅で誰かに料理をしてもらうのなんて前世以来だなぁ……

 

確かあの時は………風邪を引いた俺の看病をしに、後輩ちゃんが家まで来てくれたんだっけ

 

その日は両親がちょっとした私用で遠出してたし、本当に助けられたなぁ……

 

 

『勘違いしないでください、私は先輩の為に来た訳じゃないので。ただ、風邪を周りの人達に撒き散らされると迷惑ですので………だからさっさと食べてさっさと寝てさっさと治してください』

 

 

 

色々文句を言いながらも俺の為に作ってくれたたまご雑炊……美味しかったな

 

………改めて思い起こしてみると、家に誰も居ないってのは……なんか、寂しいな

 

 

 

「はい!お待たせしましたー!」

 

 

 

なんて、自分のキャラに合ってないことを考えていたら目の前に皿とコップを置かれる

 

食欲を刺激してくる匂い、コップの中に注がれる新鮮な牛乳

 

おお……!これが全小学生男子の心を射止める究極の兵器……カリライッ!!!

 

「ふふん、どうよ……これが私達の真の実力だよ!」

 

「口に合えば良いけど……」

 

 

 

自分達の分のお皿とコップを持って、後から椅子に座る先生と空崎さん

 

……めっちゃニコニコしながら見つめてくる

 

 

 

「ささっ!早速いっちゃって!」

 

 

 

手でスプーンを握る動作をしながら急かしてくる先生

 

空崎さんも空崎さんで何かを期待している様な表情で待っている

 

……よし!

 

 

 

────では………いただきます!

 

 

 

 

肉、野菜、ルー、全てを米と共に掬って口の中に入れる

 

ゆっくりと、味を身体全体に染み込ませるように味わう

 

 

 

「……ど、どう?」

 

「……美味しい?」

 

 

 

────はー待て待て

 

 

 

「……え?」

 

「も、もしかして……あまり好みじゃ────」

 

 

 

 

────美味すぎるだろカレー共

 

 

 

「………………よ、よかったぁ!」

 

「……ヒヤッとした」

 

 

 

新鮮な牛乳で胃袋のボルテージが上がる

 

一般人、折川酒泉に千年ぶりの感動が走る

 

今はただただ、口内が心地良い……

 

いや、冗談抜きでめちゃくちゃ美味いっす

 

もっとバクバク食べたいくらい────だけど、利き腕が怪我してるんで左手で慎重にスプーンを持たないといけないんですよねぇ……

 

 

 

「……なんか食べづらそうだね?」

 

「うん……」

 

 

 

それを察したのか、2人から心配そうな視線を向けられる

 

すまない……折角作ってくれた料理を満足に食べてあげる事ができなくてすまない……

 

 

 

「……あっ!そうだ!ヒナ!耳かして!」

 

「……どうしたの?先生」

 

 

 

ゴニョゴニョと何かを話す2人だが、じゃがいもをスプーンに乗せようと苦戦している俺にはそれを聞いている暇はない

 

こ、こいつ……(スプーンの上から)動くぞ!?抵抗するんじゃない!

 

うおおおお!!!皿からいなくなれえ!!!

 

 

 

「……隣、失礼するね」

 

「……私も」

 

 

 

苦戦中の俺の両隣に先生と空崎さんが椅子ごと移動してきた

 

 

 

「酒泉」

 

────なんですか?今、俺はこのじゃがいもと戦って………

 

「はい、あーん」

 

 

 

俺が苦戦していたじゃがいもを右手のスプーンで簡単に掬い上げ、俺の口元に近づけてきた

 

……え?

 

 

 

「これなら簡単に食べられるでしょ?」

 

────……そ、そうですけど……

 

「ほら、口を開けて?」

 

────……あ……い、いただきます

 

 

 

先生に言われるがままに口を開き、そのままぱくっと頂く……やっぱ美味いな

 

 

 

────先生、ありがとうございまs「酒泉、あーん」………空崎さん?

 

「まだまだ食べ足りないでしょう?」

 

 

 

先生にお礼を言おうとしたら、今度は反対側から空崎さんにスプーンを差し出される

 

 

「あーん」

 

────……あ、あーん………うん、美味しいですね

 

「酒泉、今度はこっちね」

 

 

 

また反対側から先生が……いただきます

 

 

 

「酒泉、ニンジンも美味しいよ」

 

 

 

また反対側から空崎さんが

 

 

 

「ほら、お肉も一杯入ってるよ?」

 

 

 

先生が

 

 

 

「牛乳も美味しいよ」

 

 

 

空崎さんが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ご馳走さまでした」」

 

────ご馳走……さまでした……

 

 

 

 

 

首が疲れました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ぁあぁああ゛あ゛あ゛………

 

 

 

 

おっさんみたいな声を出しながらシャワーを浴びる、どうも男子高校生の折川酒泉です

 

先生と空崎さんが〝お皿は片付けておくから先に入ってきて〟と言われ、そのご厚意に甘えることにしました

 

……あ、着替えは上半身だけ手伝ってもらいました、ズボンは1人で脱ぎました

 

残念だったな、野郎共!お前らが想像していたようなイベントは発生していないぞ!

 

……まあ、そうでなくとも今日1日だけで大分助けられてるけどな、これがあと何日も続くと考えると罪悪感に押し潰されそうになってしまう

 

料理や買い物だけじゃなく、生活内での細かい事まで何度もお世話になってるしな………それに、食事の時まで────ん?

 

 

 

 

 

 

 

────そういや、あの時のスプーンって先生と空崎さんが使ってたやつじゃ……

 

「やっと気づいたんだ」

 

「まあ、私達も後から気づいたんだけどね」

 

────あ、やっぱりそうだったんですね

 

 

 

 

答え合わせをするかの様に、バスタオルを巻いて風呂場に入ってくる先生と空崎さん

 

一般家庭程度の大きさの風呂場なので、3人だと少々窮屈に感じてしまっ………

 

 

 

 

 

 

 

────………………………ん?

 

 

 

 

「お、お背中!流しにきました!」

 

「か、片腕だけじゃ……大変だと思って……」

 

 

 

 

 

頬を染め、モジモジしながら俺を見つめる2人の女性

 

バスタオルを、巻いた、先生と、空崎さん?

 

 

 

 

「その……何か、言ってもらえると……」

 

「……こ、これでも恥ずかしいんだからね!?誰彼構わずこんな事してる訳じゃないからね!?酒泉が相手だから────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下川酒泉「大マジ、元気ピンピンだよ」

 

────ッ死ねオラァ!!!

 

 

 

「「!!?」」

 

 

 

 

 

自分の股間を全力でぶん殴った、死ぬかと思った

 

 

 

 

 

 

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