〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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ifミレニアム
if世界~ミレニアムルート~その1


 

 

 

 

「……あの……リオ様……」

 

「どうしたのトキ、何かこの設計図に問題でも?」

 

 

明かりが全て消え失せたセミナー執務室、その奥の席で1人の女性が部下にとある機械の塊の設計図を見せていた

 

トキと呼ばれたその少女は再びその設計図に書かれた文字を心の中で読み上げるが、その度に複雑そうに眉間に皺が寄る

 

 

「本当に私がこの機体のテストパイロットを……?」

 

「安全面の事なら心配しないで、セーフティも緊急時用脱出装置も完璧に仕上げてから渡すわ」

 

「……いえ……性能面での不満はありませんが……」

 

 

何か言おうとして口ごもるトキ、そんな彼女に対し主である女性────リオは首を傾げながら口を開く

 

 

「……トキ、言いたい事があるのならハッキリと言っていいわ。可能な限り貴女の要望には応えるつもりよ……それにテストパイロットの意見は貴重よ、まだ改善の余地があるというのならここから更に改造を施すわ」

 

「………」

 

 

 

リオからの命令を受けても口を開こうとしないトキ、普段であれば文句を言う事もなく与えられた任務をこなす彼女も今回ばかりは不満がある様子

 

そんな彼女の様子を珍しく思ったのか、リオは意外そうな表情で尋ねる

 

「トキ、貴女はこの機体の何が不満なのかしら?この2体────〝ライジング・アバンギャルド君〟と〝イモータル・アバンギャルド君〟のどこが……?」

 

「………いえ、その……」

 

 

設計図に描かれているのは青いロボットと赤いロボットの2体、共通点は顔と名前がダサいというところ

 

この場にトキ以外の生徒が居たら何に不満があるのか一瞬で理解できてしまうであろう空気が広がるが、残念な事に現在この部屋に居るのはリオに忠実な懐刀であるトキだけだ

 

彼女の苦悩を理解してくれる者はこの空間には存在していないのである

 

 

「……その機体の名前は……リオ様が……?」

 

「ええ、私が考えたわ……それもかなりの時間を掛けて。〝彼〟に渡す機体の名前だもの……適当に付ける訳にはいかないわ」

 

「………そうですか」

 

 

これからこの機体の名前を何度も呼ぶ事になるであろう少年を憐れに思ったトキは心の中で手を合わせる

 

何故自分の為に作ってくれた装備────アビ・エシュフと同じ様なカッコいい名前を付けられないのか

 

そんな疑問を抱きながらもトキは一刻も早くこの話を終わらせるべく会話を続ける

 

 

「その……この2体は何処での戦闘を想定しているのですか?」

 

「ああ、貴女はそれが聞きたかったのね。この2体は特にこれといった特定の場所での戦闘用という訳ではないけど、強いて言うなら対奇襲に特化された機体よ」

 

「対奇襲……」

 

「ライジング・アバンギャルド君には敵の襲撃を察知できる超精密な生体反応感知システムが、イモータル・アバンギャルド君には奇襲を受けても並大抵の攻撃では破壊されない強固な装甲が備わっているわ」

 

 

こんな見た目でも、その言葉をトキは飲み込んだ

 

何故なら彼女は賢いからだ、決して聞くのが面倒になった訳ではない

 

 

「勿論、現段階ではまだ完成していないし〝その予定〟というだけの話よ」

 

「では、ここから性能が落ちる可能性もあると……」

 

「………そうね、だとしてもこの2体は私達の新たなる剣よ。これから私達が倒すべき多くの厄災を切り裂く為の……ね」

 

「……」

 

「……まあ、酒泉が言ってた〝ベアトリーチェ〟という人が色彩を呼び寄せる前に倒すことができれば別にそれでもいいのだけど」

 

「……リオ様は彼の予言が当たると?」

 

「ええ、当たるわ……〝今回も〟ね」

 

 

リオが空中投影型のディスプレイを開くと、その画面には眼鏡をかけた1人の男性が映る

 

 

「先生がこのキヴォトスに来たのも、アビドスから先生に向けて救援依頼が送られてきたのも、ゲーム開発部と共に天童アリスと出会ったのも……全て酒泉の言ってた通りよ」

 

「トリニティのトップの1人が事件を起こしたのも彼の予言通りでした」

 

「酒泉の話を信じるとして、もし私達が儀式完遂前にベアトリーチェを倒すことができなかったら────その時点で色彩の襲来が確定してしまう」

 

「仮にベアトリーチェの件が解決したとしてもまだ天童アリスの件が残っています」

 

「ええ、それも勿論忘れていないわ」

 

 

真剣な表情で目を細めながらトキを見つめるリオ

 

それは戦う覚悟を決めた者の強い瞳だった

 

 

「────だからトキ、貴女も〝ライジング・アバンギャルド君〟と〝イモータル・アバンギャルド君〟の完成に協力して頂戴」

 

「……………………了解しました」

 

 

一方のトキは本当に渋々といった雰囲気だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────黒崎いいいいいいいい!!!待てやゴルアアアアアアアアア!!!

 

「にははははははっ!待ちませんよーだ!」

 

ミレニアムサイエンススクールの廊下を全力で走る2人の生徒

 

片や逃走中も後ろを見て煽る事を忘れない程の余裕を見せ、片や息を切らしながらも必死に追い続ける

 

 

「もう!しつこいなぁ……ちょっとイタズラしただけなのに!」

 

────人の通帳を空にすんのはイタズラのレベル越えてるだろうがよぉ!?

 

「だからちゃんと全額返したじゃないですか!」

 

────2日も金が無かったんだぞ!?その間もテメェはモモトークにも反応しねえしよぉ!?お陰で昨日も一昨日もモヤシ生活だったわチクショウ!!!

 

 

 

イタズラどころか極悪犯罪レベルの所業をやらかした少女の名は黒崎コユキ(前科多数)

 

セミナー所属の彼女は数学的な暗号解読に関しては天賦の才を持っているが、彼女自身はそれを自覚していないどころか〝力を持つ者の責任とか知らね~!〟と言わんばかりにその才を悪戯の為に利用している

 

そして大抵その悪戯の被害者になるのが後ろでコユキを追いかけている同じくセミナー所属の少年、折川酒泉である

 

 

 

 

────撃滅っ!!!

 

「よっ!」

────抹殺っ!!!

 

「ほいっと!」

 

────瞬殺っ!!!

 

「はっちゃ!!!」

 

────ちょこまか動くんじゃねえ!

 

「だったら当ててみてくださいよー!」

 

────お前!お前!お前えええええ!!!

 

 

後ろから掴みかかる酒泉だが、コユキはそれを兎の様にピョンと跳ねて回避する

 

その度に酒泉の顔が怒りで赤く染まっていき、益々動きが荒々しくなる

 

 

 

「にははははっ!!楽勝!!」

 

────僕はぁ!僕はねぇ!?モヤシ以外の食べ物が欲しかったんだ……!

 

「うわっ、凄い切実……」

 

 

 

息を切らしながらも魂の叫びを吐き出す酒泉に若干引いているコユキ、そもそもの原因はコイツである

 

コユキに振り回されすぎて汗をかいている酒泉に廊下を歩いている他の生徒達から同情する様な視線が集まるが、その中に助け船を出そうとする者は1人も存在しない

 

……何故ならコユキと酒泉の追いかけっこは今に始まった事ではなく、日常茶飯事だからだ

 

 

 

────お前はなんでこう、俺にばかりちょっかい掛けてきやがるんだ……!

 

「うぇ!?そ、それはー……なんて言いますか……ほ、ほら!酒泉さんって反応が面白いじゃないですか!」

 

────お前を殺す

 

「ええ!?今の褒め言葉だったんですけど!?」

 

 

 

走るスピードを早めた酒泉から逃れようとコユキも足に力を込める

 

そして一気に前方へと跳躍し、その勢いのまま加速を始める

 

その逃げ足の早さは文字通り脱兎の如く

コユキはピョンピョン跳ねて酒泉を小馬鹿にしながら階段を上ろうとし────

 

 

「では酒泉さん!これにておさらば────プギュッ!!?」

 

 

 

突如階段から降りてきた〝何か〟と激突して勢い尻餅をついた

 

 

「いたたたたたっ……もう!誰ですか学校の廊下にボンレスハムを置いたのは!?ちゃんと食堂にしまっておいてくださいよ!?」

 

 

コユキはプンプンと頬を膨らませて怒ろうとするが、その直後にさっきまで酒泉に追われていたことを思い出す

 

 

(やっば……足止めちゃった────あれ?追いかけてきてない?)

 

 

しかし振り向いてみれば先程まで鬼の形相で走っていた酒泉の足はピタリと止まっており、そこから動こうとする様子も見えない

 

代わりに何故か怒りの表情が怯えの表情に変わっているが……コユキは細かく考えないことにした

 

 

(よく分かんないけど……今の内に逃げちゃ───え?)

 

 

 

そして再び逃げ出そうしたコユキだが、突如彼女の首に〝ボンレスハム〟とやらが襲い掛かる

 

2体に分裂した〝ボンレスハム〟はコユキの首をがっしりロックし、そのまま締め落とそうとしている

 

 

「うげぇっ!?い……いきなり……な、にを……!?」

 

 

 

何故ボンレスハムが動いている、奴は自我が芽生えた食料だとでもいうのか

 

いや待て、だとしたら奴は最近ゲヘナで噂の動くパンケーキと同類の存在なのか

 

途絶えそうになる意識を必死に保ちながら敵の正体を探ろうとコユキは視線を上に寄せる

 

 

 

 

「あ、ユウカ先輩」

 

「まだ声を出せる元気があったのね、コユキ」

 

 

 

そこにいたのは動くパンケーキよりも恐ろしい存在だった

 

 

「こ、こんな所で会うなんて奇遇ですねぇ……には、にはははは……」

 

「ええそうね、奇遇ね………じゃないでしょ!?」

 

「うげえええええ!?」

 

「いつまで待っても仕事をしに来ないと思えば……こんな所で何をしてるの!しかもまた酒泉君に迷惑掛けて!」

 

「痛い痛い痛い!ユウカ先輩の首4の字固めはシャレになりませんって!その太もも普通に殺人兵器認定されてますって!?そもそも最後のはただの嫉t────ピッ!?」

 

 

より強く、よりキツく、コユキが更に拘束される

 

するとコユキの首からぺきっという軽い音が鳴り、それと同時に情けない悲鳴をあげてコユキの意識が途絶える

 

ユウカは白目を剥いて気絶しているコユキを手慣れたように肩に抱えると何事も無かったかのように酒泉に話しかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酒泉君、またコユキに絡まれてたの?………わざわざ相手してあげるその優しさも酒泉君の良いところだと思うけど、偶にはハッキリと叱ってやらないと駄目よ?」

 

────いえ、たった今死んだんで一生絡まれることはなくなりました

 

 

 

 

 




やはり最強は早瀬ユウカか……
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