〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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if世界~ミレニアムルート~その3

 

 

 

 

 

私が───黒崎コユキが酒泉さんに抱いた第一印象は〝なんかパッとしない人が来たなー〟くらいの感想でした

 

ノア先輩やユウカ先輩みたいに優れた何かがある訳じゃないですし……え?眼が良いって?別にセミナーの仕事じゃあまり役に立ちませんし……

 

確かにあの眼だって戦闘とかでは役に立ちますけど、それだってネル先輩とかの方が強いですし……なんか立ち位置が微妙なんですよねぇ

 

いえいえ、別に馬鹿にしてるじゃないですよ?ただ……あの頃の私にとっては正直〝どうでもよかった〟って感じでしたね……にははは……

 

『あーもう!また邪魔しにきたんですかー!?』

 

『邪魔するに決まってんだろバァァァカ!!!』

 

 

あ、でもその眼に一杯食わされる度に〝普段はあまり役に立たないくせにー!〟とか思ってたりしましたね

 

まあ、そんなこと言っても結局それから何度も捕まることになっちゃうんですけどね

 

 

『何がいけないんですか!ただ他の部のお金をちょっとだけ借りようとしただけじゃないですか!』

 

『あのなぁ……人の許可なく勝手にお金を持ち出すのはいけない事でな?』

 

『だからそのお礼として倍にして返してあげようとしたんじゃないですか!』

 

『そもそも勝手に持ち出すなっつってんだよ!それとギャンブルで勝つこと前提で話すんじゃねぇ!もしそれで全額溶かしたらどうやって返済するつもりだったんだ!?』

 

『そしたら今度はミレニアムそのもののお金を借りて……』

 

『それも溶かしたら!?』

 

『じゃあまた別の学園の……』

 

『他校にまで迷惑をかけるな!!そうやって借金を増やしていくつもりか!?』

 

『まあ、その時は運が無かったということで……ね?』

 

『〝ね?〟じゃねえ!!!』

 

 

酒泉さんに捕まる度に何が悪くて何をしちゃいけないのか事細かく説明されましたが、私にはイマイチそれが理解できませんでした

 

だって!私自身の才能を一番活かせる方法でお金を稼ごうとしただけじゃないですか!それなのにどうして私が毎度毎度お説教を……え?大いなる力には大いなる責任が伴う?ちょっと何言ってるかよく分かんないですね……

 

 

『だ、大体!私だけ怒られるのは筋違いってもんですよ!皆さんは知らないと思いますがあのリオ会長だって私と同じことやってるんですからね!?』

 

『……ん?』

 

『あの人だって〝エリドゥ〟とかいうでっかい街作る為にいっぱいお金抜き取ってるんでしょう!?以前暇潰しでミレニアムの機密ファイルにアクセスした時に計画書を見つけたんですからね!?』

 

『お前は暇潰しでなんて事を……まあいい、ところでそのファイル以外にも目を通しておかなかったのか?』

 

『え?まあ……なんか想像以上に面倒な事に巻き込まれそうだったんで』

 

『だったら最初からアクセスするなよ……それと黒崎』

 

『はい?』

 

『その計画、実行前からとっくの昔に凍結したやつだぞ』

 

『えっ』

 

『今はもう調月さんのポケットマネーと調月さんの新計画の協力組織の資金で作れる規模の〝未来平和監視機構アバンギャルド〟っていう地下設備しかないぞ』

 

『ダッッッッッ────』

 

『言うな……何も言うな……あの人はアバンギャルドって言葉を何故か気に入ってるんだ……』

 

 

 

……そのお説教の際にちょっとしたトラブルもありましたけど、それは今は置いといていいでしょう

 

 

 

『オラッ!話は終わりだ!』

 

『あ、あの……リオ会長の新計画というのは……?』

 

『んなもん気にするな!今はお前が迷惑をかけた人達に謝る事だけを考えてろ!』

 

『あいだだだだっ!?耳を引っ張らないでくださいよぉ!?』

 

 

とにかく!酒泉さんは私が何か行動する度にすぐに顔を真っ赤にして追いかけてきました!

 

その頃には私からの印象も〝なんかパッとしない人〟から〝すぐに怒る面倒な人〟に変わってましたし、苦手意識も多少芽生えていました

 

それに私が酒泉さんを怒らせる度にユウカ先輩も〝あまり迷惑を掛けるな〟ってしつこく注意してきますし、ノア先輩も……怒りはしませんけど……なんかめっちゃニコニコしてジッと見つめてきますし……

 

ユウカ先輩もノア先輩も酒泉さんのことを気に入ってますから、私が酒泉さんを怒らせるという事は間接的に3人を敵に回すという事態に繋がっていました

 

ノア先輩の記憶力で逃走ルートを把握され、酒泉さんの目で行動を先読みされたらもう逃げ場なんてありません!……ユウカ先輩の強み?ユウカ先輩は……あの太ももによる圧力?

 

まあ、単純に3対1ってだけでもかなり面倒だったので私も下手に動こうとは思いませんでしたけどね

 

暫くは大人しいフリをして、皆さんの目が向いてない時に好きに行動する……そしてまたバレる

 

 

『黒崎ぃ!!何やってんだお前ェっ!!この間教えたことをもう忘れたのか!?』

 

『お、覚えてますよ!えーっと……に、にはははは』

 

『〝他人の金を勝手に使うな〟だ!』

 

『わ、分かってますよ!だから今度は金融機関に借り入れしようとしただけじゃないですか!』

 

『他の部達の名義でなぁ!?結局何も分かってねえだろ!?』

 

『直接借りた訳じゃないですよ!?ちゃんと酒泉さんの言い付けは守ってるじゃないですか!』

 

 

その度に私にお説教をするのはやっぱり酒泉さんで、彼は何度も何度も同じような言葉を私に言ってきました

 

流石に同じ言葉ばかり聞かされると私もうんざりしてくるもので、その時は溜め息を吐きながら酒泉さんにある事を尋ねました

 

 

『もう……どうして私ばかり相手にするんですか……他にも問題を起こしてる人達がいるんですからそっちに行ったらどうです?』

 

『ああ?その人達の所にはとっくに行った後だよ』

 

『ええ……だったら疲れてる筈でしょうに……私の事は放っておいて休んだ方がいいんじゃないですか?』

 

『おう、そうやって逃れようとしても無駄だからな……てか、放っておいたら余計に仕事が増えるだろうが!』

 

 

はい、至極真っ当な意見ですね

 

私が仕事を増やせばその分皆さんに迷惑が掛かるなんて小学生でも分かるような事です

 

 

『……あのな、このままだとお前は取り返しのつかないところまで行っちまうぞ?』

 

……酒泉さんにとってはそれ以外にも理由があったみたいですけど

 

 

『このまま自分勝手な行動ばかり続けていると叱ってくれる人すら居なくなるぞ?』

 

『最高じゃないですか!』

 

『……呆れられて、見捨てられて、誰の目にも留まらなくなる。そして周りから人がいなくなって……最後には孤独になる、本当にそれでいいのか?』

 

『だって邪魔してくる人がいなくなるって事ですよね?ならやりたい放題じゃないですか!』

 

『……やめとけ、人間ってのは寂しいと死ぬ……とまでは言わないけど人によってはそれだけで死にたくなるんだ、孤独ってのはそう簡単に克服できるものじゃない』

 

 

〝俺達は兎とは違うからな〟と最後に訳の分からない言葉を呟く酒泉さん

 

今にして思えば酒泉さんは私の為に言ってくれてたのでしょうけど、その時の私にとっては余計なお節介でしかありませんでした

 

面倒そうにそっぽを向く私に酒泉さんは苦笑しながらも、どこか優しさを感じさせる目で手を差し伸べてきました

 

 

『ほら、さっさと帰るぞ……早瀬さんがぶちギレて待ってるからな、反省文も書かせるつもりだぞ』

 

『それだけで帰る気が失せるんですけどぉ……』

 

『俺も手伝ってやるから……しゃーない、反省文書き終わったら好きなもん奢ってやるよ』

 

『えっ!?本当ですか!?それならギャンブルの為の資金を────』

 

『やっぱ無し』

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

『──…──!』

 

『……──…』

 

 

 

 

 

『ふふっ……今日こそはバレないように………ん?』

 

 

 

怒らせて、怒られて

 

逃げて、捕まって

 

脱出して、また捕まって

 

そんな日々を繰り返していたらある日、偶然通りがかった部室から酒泉さんの声が聞こえてきました

 

一体何の話をしてるんだろう、そう思ってバレないようにこっそり部室の扉を開いて中の様子を確認してみました

 

『────本当にすいませんでした!!』

 

『……まあ、今回は酒泉君が未然に防いでくれたからいいけど……』

 

 

その目に映ったのは、酒泉さんがその部の生徒達に深々と頭を下げている光景でした

 

 

『ミレニアムのお金を取られそうになった時は間接的に私達の部費に手を出されただけだったけど……でも……』

 

『酒泉君には悪いけど、この前みたいに直接お金に手を出されそうになったら私達も黙っている訳にはいかないからね……』

 

『……はい、むしろそれが当然の事だと俺も理解しています。むしろあの時の件を穏便に済ませてくれただけでも返し切れない大きな借りが出来てしまって……』

 

 

 

私の事だ、少し話の内容を聞くだけでそれが理解できました

 

 

 

『……ねえ、酒泉君。その……酒泉君は大丈夫なの?』

 

『……え?』

 

『だって……ただでさえ色んな部の相手までしてるのに、こうして自分が起こした訳でもない事件の謝罪までしに来るなんて……』

 

『あの子が何かやらかす度に他の人達にも謝ってるんでしょ?そんなに構う必要は無いんじゃ……』

 

『あまりにも更正の余地がないなら、ちょっと言い方はキツくなっちゃうけど……その……セミナーを辞めさせる事とかも考えないと……結構シャレにならない事件を起こそうとした事もあるみたいだし……』

 

 

責めるというよりは気を遣ったような喋り方、この事から相手の生徒さん達は酒泉さんの心配をしている事が窺えます

 

……そして、私を良く思っていないということも

 

それも当然ですね、彼女達も述べていましたけどミレニアムの資金に手を出すという事はミレニアムの全生徒の財布に手を出すという事ですから

 

 

『……確かにアイツは平然と大事件を起こすような問題児です……でも────見捨てる程の人間じゃありません』

 

 

ですが、酒泉さんはそんな私を庇いました

 

 

『ただちょっと倫理観が足りてないだけで、本当に心の底から悪意を持って動いてる訳じゃないんです!』

 

『良い事と悪い事の区別が上手くつけられなくて、アイツ自身もそれに振り回されてるだけで……』

 

『……そ、その!アイツだって自分から望んで怒られるような事はしたくない筈です!』

 

『だからっ、ちゃんと一般常識とか守って当然の法の事とか教えていけば……絶対に大人しくなる……とは言い切れませんけど……』

 

『……で、でも!それでも多少は自重してくれるようになるはずです!だから……お願いします!もう一度だけアイツのことを信じてやってくれませんか!?』

 

 

必死に頭を下げている酒泉さんを扉の隙間から覗くだけ、ただそれだけなのに身体のどこかがズキリと痛む

酒泉さんは私が迷惑を掛けてしまった相手の所まで一緒に謝りに行ってくれてましたけど、それは私が見ている限りのほんの一部の出来事です

 

本当は私の見ていない所でもずっと私の為に頭を下げていました

何度も頭を下げる酒泉さん、そんな彼を痛ましそうに見つめる生徒達

 

その光景を見続けるとズキリとした痛みがズキズキと続くようになって、それが酷く苦しくて

 

 

 

『────っ!あ、あの!』

 

『っ!?あ、貴女は……』

 

『……黒崎!?何でここに────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、怒られに……きました……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいたら、部室の中に入ってそんなことを口走っていました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

『黒崎ぃ……!お前、成長したなぁ……!』

 

『なんか凄く感動してるわね……』

 

『あら?何かあったのですか?』

 

『あっ!早瀬さん!生塩さん!聞いてくださいよ!黒崎の奴、今までは勝手に他の部の金を抜き取ってたのに最近は〝ギャンブルの為にちょっとだけ借りてもいいですか?〟ってちゃんと聞くようになったんですよ!断られたらちゃんと諦めますし!』

 

『えっと……それは……良かった?……ですね?』

 

『にはははははっ!この新たに生まれ変わった新黒崎コユキ、もう皆様にご迷惑はおかけしませんよぉ!』

 

『ノア、酒泉君、甘やかしちゃ駄目よ!むしろそれが当然……って、まだ運試し癖は治ってないの!?』

 

 

あの日から私は自分の行動を自重しようとなるべく慎重に考えてから動くようになりました

 

そうすれば皆さんが怒ることは無くなりますし、仮に何か失敗しちゃっても必要以上の説教を受けたり膨大な枚数の反省文を要求されるようなことは無くなります

 

そして何より────酒泉さんが私のせいで頭を下げるような事も起きないはずです

 

 

『酒泉さん!』

 

『おう?なんだ?』

 

『生まれ変わった私のこと、しっかり見届けてくださいね!』

 

『……ああ!突然生き方を変えるのは大変だと思うけど……諦めずに頑張れよ!何かあったら俺も助けてやるから!』

 

 

酒泉さんはいつもの様な怒った顔ではなく、ユウカ先輩やノア先輩に向けるような笑顔で答えてくれました

 

そんな彼に応える為に、私はもう二度と問題を起こさないと誓いました────

 

 

 

『……ところで酒泉君?昼休みも近いしそろそろ……』

 

『あ、もうそんな時間に?……じゃあ、今日もよろしくお願いします』

 

『あれ?2人とも何処に行くんですか?』

 

『ユウカちゃん、お昼休みになると酒泉君に勉強を教えてるんですよ……そのついでに仲良く一緒にお食事してたりもしますよね♪』

 

『な、何よその笑みは……ノアだってこの前2人で仲良く話してたじゃない』

 

『私はただ〝感想〟を頂いてただけですよ?』

 

 

 

────……が、そうなると私が起こした事件の後始末に追われる事がなくなる訳でして

 

酒泉さんの方も当然の様に他の方と過ごす時間が増えていきました

 

それはそれでなんか寂しいなーって思って〝また問題を起こすかもしれないしもう少し私のことを監視した方がいいのでは?〟ってそれとなく伝えてみました

 

 

『ん?まあ……黒崎さんなら大丈夫だろ、もう他の人には迷惑かけないって俺は信じてるからな』

 

 

返ってきたのは100%の信頼でした

 

そう言われると私もそれ以上詰め寄ることもできず、上手く例えられないようなもどかしい気持ちに陥りました

 

かと言ってまた問題でも起こしてしまったら酒泉さんに頭を下げさせていた頃の私に戻ってしまう訳で……

 

どうしたらまた私に構って……私を見てくれるのか、どうしようかどうしようかと悩みに悩み抜いて、そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あっ!そうだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────黒崎いいいいいいいっ!!!今度は俺の弁当の中身をもやし一色に染めやがったなあああああ!!?

 

「だってこの前もやしを沢山買ってたじゃないですか!だから好きなのかなーって!」

 

────テメェが俺の金を抜いたからだルォ!?仕方なくだ!!しーかーたーなーくっ!!!

 

「そんな怒らないでくださいよー!誰にも迷惑かけてないじゃないですかぁ!!」

 

────だからって俺に迷惑かけていい理由にはならねぇだろうがよ!!ええ!?

 

「え?そうなんですか?」

 

────こ、このクソガキィ……!!どうして……どうして……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────俺に対する悪戯癖だけは治らねえんだよおおおおおおおおお!!?

 

「にはははははっ!ごめんなさーい!」

 

 

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