〝流石だ、勇者クボソケよ……しかし私を倒したとしても第二第三の魔王がウボァ─────!!!〟
画面の中で魔王モモフートの太ももが膨らんだかと思えば突然大爆発を起こした
そして画面が切り替わってフィールドは魔王城から……何故か結婚式場へ
勇者クボソケの前には四人の少女の姿が
ピンク髪の魔法少女、プリンセスピーチ
ミドリ髪の魔法少女、プリンセスグリーン
見習い勇者、リアス
いつも棺桶に引きこもっている僧侶、ズユ
全員可愛らしいイラスト姿だが、そんなことよりも魔王モモフートの死に様が酷すぎて俺はメッセージを進められずにいた
「ほら、酒泉!ここからが感動のエンディングだよ!最後まで泣いちゃ駄目だからね!」
────いや、あの……何これ……?
「何って……結婚式イベントだけど?RPGでは別に珍しくもなんともないでしょ?」
急かすモモイさんの後ろからミドリさんが説明してくる
しかし俺が聞きたいのはこのイベントの事じゃなくてモモフートの死に様だった
「こ……この中から一人結婚相手を選ぶとその子専用のエンディングに移行するの」
「アリス達はこの要素に開発力の全てを掛けて完成させました!」
成る程、だから肝心のメインストーリーの方はそんなに面白く……つまら……クソゲ……イマイチだったのか
因みに未だにモモフートの死に様が脳に焼き付いてるせいでモモイさん達の話に集中できない、太ももが爆発して死亡ってなんだよ
「……因みに私のオススメはプリンセスグリーンルートだよ。この子は自分が死にそうな状況でもずっと主人公のことを想い続けるほど一途で、魔王軍との戦いが終わるまでずっとその想いを隠し続ける程の忍耐強さも────」
「いいや!一番のオススメはプリンセスピーチルートだよ!この子は元気で明るくて主人公とも気楽に接してるし、一緒に居て楽しいのは間違いなくこの子だよ!」
「アリスは見習い勇者のリアスを推します!今はまだ見習いとして勉強中ですが、リアスはいつか必ず心身共に勇者クボソケのパートナーに相応しい素敵な女性に成長するはずです!」
「わ、私は……ズユも良いと思う……かな?ふ、普段は引っ込み思案だけどやる時はやるタイプだし……それに、作中のミニゲームをプレイする時とかは主人公と抜群のコンビネーションを発揮するし……わ、悪くないと思います!」
それぞれのキャラの良いところを紹介される、俺の頭では未だに太ももが爆発するシーンがリプレイされている
「そ、それで!?酒泉はどの子がタイプなの!?」
────……え?何が
「だから……酒泉は誰を選ぶの!?」
必死に顔をグイッと前に押し出しながら尋ねてくるモモイさん、その顔は何故か赤い
……せっかく新作ゲームのテストプレイヤーに選んでくれたのに適当に流すのも悪いしここはちゃんと決めるとしようか────って思ったけど
「……ど、どう?」
「酒泉君は……誰が好きなの……?」
「答えてくれるまで帰しません!」
「か、軽く教えてくれるだけでいいから……ね?」
────……うーん……正直……この中にはいないかなぁ……
「「「「………え?」」」」
勿論どのキャラクターも可愛いと思うけど、特に結婚したいと思うほどのキャラはいないな
そもそもテストプレイだけではキャラクターの魅力があまり感じられない、こういうのはしっかりとやり込んでこそ初めて感じられるものだ
「そ、そんな……ロリコンの酒泉がこの中の誰にも魅力を感じないなんて……!」
「……お姉ちゃん、話が違うよ」
「噂と違います……」
「酒泉がちっちゃい子を好いているって噂、嘘だったんだ……」
────よーしその噂を流した奴の名前を教えてくれ、今すぐしばきに行くから
「えっと……セミナーのコユキって人が……」
あ、キレそう
そろそろ血管が破裂しそうだ、明日の調印式を終えたら全力でアームロックを決めてやろう
「そーれーよーりーもー!本当に結婚したいほど好きなキャラはいないの!?」
────まあ、うん……
「本当に!?マジの本当に!?もう一度良く見てよ!?」
────………いないな
「むぐぐぐぐっ……じゃ、じゃあ強いて言えばでいいから!それなら答えられるでしょ!?」
強いて言えばかぁ……それなら……んー……
────……モモフート、かなぁ?
「……はぁ!?あの魔王を!?」
────死に様は衝撃的すぎたけど容姿は美人だったし……
「あんな太ももが太いだけのキャラが好きなの!?太ももが太いだけなのに!?それよりも絶対にちっちゃい子の方がいいって!酒泉はロリコンなんだから!」
何故二回言ったし、それと勝手に人をロリコン扱いしないでもらいたい
……それにしてもモモイさんは女性でありながら女性の事を何も分かってないな
仕方ない、ここは一つ俺が直接〝教え〟を説いてやるか
────いいか?モモイさん……
「ちょっと貴女達!?部費を上げてほしいなら〝あと500万増やしてほしい〟なんて雑に書かないでそれ相応の理由を────」
「まあまあユウカちゃん、いきなり扉を開けると皆さんが驚いて────」
────太ももってのはちょっと太いくらいが丁度良い……え?
「あ、ユウカ」
「それにノア先輩も……」
「ぱんぱかぱーん!新たなパーティーメンバーと合流しました!」
「……い、嫌な予感がするからロッカーに戻っておこう……」
俺が喋ると同時にゲーム開発部の部室の扉が勢いよく開かれる
そこに立っていたのは早瀬さんと生塩さんだった……が、二人ともポカンと立ち尽くしたまま固まっている
これ絶対聞かれたよね
「ど、どうしてここに!?私達何も悪いことしてないよ!?」
「……あ、その……ユウカちゃんがゲーム開発部の皆さんにお話があるらしく、私はその付き添いで来たのですが……」
叱られること前提で尋ねるモモイさん、その声に最初に反応したのは生塩さんだった
一方の早瀬さんは動いたかと思えば無言で俯く、しかし少しずつ顔が赤くなっているのが窺える
……そして、同時に生塩さんからの視線が俺に向けられていることも
「……」
────違うんすよ
「私はまだ何も言ってませんよ?」
────……違うんすよ
「……何がですか?主語はハッキリさせてください」
────…………ちゃうねん
「……11時28分16秒、酒泉君が自分の性癖を告白した」
満面の笑みで、しかし不機嫌そうな雰囲気で
生塩さんは俺を社会的に殺す為の情報を記録帳に書き記した、簡易デスノートの完成である
「……っ……」
なんて現実逃避気味に考えていると早瀬さんが俯いたまま何かを言おうとする
顔は既に耳まで赤く染まっており、その様子から俺の発言にぶちギレているであろう事が伝わってくる
違うんですあれはゲーム開発部にセクハラしてたわけじゃなくて仕掛けてきたのは向こうからと言いますか────
「……しゅ……」
────……しゅ?
「酒泉君は……その……太ももが太い方が好きなの?」
────いやマジで違うんすよ別にフェチとかそういうのじゃなくて女性は肉付いてる方が色々とセクシーだなって思っただけで更にこれは一般的な男子学生の平均的な考え方でもあって更にこれを主張する事によってロリコン扱いを避けるという効果もあるのでお願いします怒らないで通報しないで殺さないで────
「……そ、そう……つまり太い方が好きなのね……」
それだけ呟くと、意外なことに早瀬さんは怒りも引きもせず部室から出ていく
そのまま歩きながら〝太い方が好き……太い方が好き……〟とぶつぶつ呟きながら廊下を歩いていく
「……では、私もこれで」
────え?あの、生塩さん……
「また明日お会いしましょう♪……太ももが大好きな酒泉君?」
生塩さんは最後の部分だけ真顔で強調すると、早瀬さんの後を追うように部室を出ていく
若干足音が〝カツンカツン!〟と強めに響いているが……此方の予想通りやはり機嫌を悪くしているのかもしれない
……さて────
────ゲーム開発部の皆様方、女性の前でセクハラだと思われてもおかしくない発言をしたのは謝罪しますのでどうかその冷たい視線を止めていただけないでしょうか?
「……さいてー」
「……やっぱり酒泉君も大きい人の方が好きなんだ、結局男の子だね」
「アリス、酒泉なんてもう知りません!」
「……うぅ……勝ち目がないぃ……」