〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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if世界~ミレニアムルート~その17

 

 

 

 

度重なる連戦により破損したアビ・エシュフを未だに身に纏いながら移動する酒泉

 

爆発の寸前、アビ・エシュフに仕組まれていた自動保護システムのバリアによって本人とメイスやテイルブレードは依然変わらず健在だが、滑腔砲は先端が完全に破損しており、ブースターに関しても半壊と言える状態だった

 

万全の状態に比べて明らかに機動力が落ちているであろう状態だが、それでも酒泉が生身で移動するよりかは速度を出せるだろう

 

移動先は勿論、秤アツコが逃走した方向だ

 

 

(トドメを刺すより逃走を選んだという事は向こうだってあの爆発じゃ俺を倒せていないと理解しているはず────っ!)

 

 

ならば敵が逃走中に再び罠を仕掛けてくる可能性もあるはず、それを考慮しながら駆け続ける酒泉はその道中でフラフラと揺れる人影を見かけ、即座に戦闘の体勢に入る

 

 

────っ?

 

 

 

しかし、その人影の正体に違和感を覚えた酒泉は自然と構えを解く

 

まず、その人物は戦闘前から既にボロボロの状態だった

 

次にその格好、アリウスともユスティナの複製とも違う格好をしたその人物は酒泉と同じく破損した状態の機械を装備していた

 

最後の違和感────その人物は、酒泉も知っている女性だった

 

 

 

────……飛鳥馬……さん?

 

「酒泉、さん……ぶじ、でした……か」

 

────っ、飛鳥馬さん!大丈夫ですか!?しっかりして……っ!?

 

 

 

ガラリ、とトキが支えとしていた建物の外壁が崩れ落ち、そのまま破片と共に倒れる

 

酒泉は咄嗟にトキに駆け寄り、その身体を支える

 

トキが纏っているアビ・エシュフは酒泉と同じく機体が破壊された時の為の緊急用装備だった、しかしその武装すら大半が破壊されてしまっている

 

両肩のビーム兵器は破壊され、脚部は最早跡形も無くなっており、辛うじて残されているのは小型のアームガンのみだった

 

 

 

────な、なんで飛鳥馬さんがこんな大怪我を……っ、まさか、ヒエロニムスが……!

 

「違います、私が戦ったのは……っ、恐らく、貴方がベアトリーチェと呼んでいた……ぐっ……!」

 

────……は?ベアトリーチェ?

 

 

 

トキが必死に振り絞った言葉を聞いて唖然とする酒泉

 

それもそのはず、本来ならこの戦場にベアトリーチェは存在しないはずなのだから

 

〝原作〟では起こり得ない、そんな未知の出来事は酒泉の混乱を深めるのに十分だった

 

 

 

────あり得ない……だ、だって!ベアトリーチェと戦うのはもっと後のはずなのに……!

 

「酒泉、さん」

 

────いや、そもそも敵の対応だって早すぎだ!完全に意表を突いたはずなのにそんなすぐ行動できるはずが……!

 

「酒泉さん、落ち着いてください」

 

 

血がこびりついたトキの掌を頬にピタリと当てられ、口を開けたまま言葉を止める酒泉

 

今にも意識を失いそうな痛みに苛まれる中、トキは酒泉を心配させまいと無表情のまま語り始める

 

 

 

「まず、ベアトリーチェが私と会敵した時の第一声は〝調月リオの居場所を教えなさい〟でした」

 

────……は?な、なんでアイツが調月さんの存在を……!

 

「それについては不明です、しかし……巡航ミサイルによる攻撃から先生達を防衛する事自体は成功した為、敵も此方の動きを全て察知しているという訳ではなさそうです」

 

────じゃあ……限定的に此方の情報を得ているか、もしくは巡航ミサイルを防がれた後で此方の情報を入手したか?

 

「ええ、しかしその情報の流出源が不明で……っ」

 

────飛鳥馬さん!?……くそっ、まず手当てを……!

 

「いえ、私は大丈夫です。自分の怪我は自分で手当てしますから……貴方はリオ様の元に向かってください、ベアトリーチェは今もリオ様の居場所を探っているはずですから」

 

────……分かった、飛鳥馬さんも気をつけてくれ

 

「大丈夫です、私は優秀なメイドですので」

 

 

 

心配そうな視線をぶつけてくる酒泉に両手でピースして余裕をアピールするトキ、しかしそれが演技である事を理解している酒泉は苦々しい表情を浮かべながらもアリウスを追うのを中断してリオを探しにいった

 

トキはその背が見えなくなるまで見届けた後、安心した様に息を吐きながら自身の身体に鞭を打って歩き出した

 

 

 

(応急措置を行うのはこの辺りでいいでしょう、幸いにも敵の姿は見えませんし……それにしても────)

 

 

 

瓦礫の山と化した建物の中から使えそうな布を探し始めるトキ、その行動の途中でベアトリーチェと対峙した時の会話を思い出す

 

 

『……なるほど?どうやらあの奇妙な機械人形の他に切り札を用意していたみたいですね……全く、彼女のデータ不足のせいで余計な手間を掛けさせられそうですね』

 

 

 

(あの時言っていた〝彼女〟とは……?)

 

 

 

発言からして〝彼女〟とやらがベアトリーチェにリオ達の情報を流していた可能性が高い、しかし誰がどのタイミングで行動に出たのかまでは吐かなかった

 

一体誰が、アリウスの生徒がどこかで情報を抜き取ったのか、それともミレニアムの中に誰か裏切り者でもいたのか、だとしても極秘情報を抜き取れるほどの技術を持つ生徒など限られているはず

 

 

 

(もしミレニアム内が情報の流出源だとすれば……ベアトリーチェがリオ会長を狙っているという事は、リオ会長に消えてもらうと都合が良くなる人物からのリーク……?)

 

 

 

しかしセミナーのトップに消えてもらうと都合の良い人物などトキには思い浮かばない

 

リオと犬猿の仲である明星ヒマリでさえ、流石に殺したいほどリオを憎んでいる訳ではあるまいし

 

 

 

(……私の考えすぎでしょうか、単純にアリウスの生徒がミレニアムに潜入していただけという可能性も十分にありますし)

 

 

 

それよりも今はこの状況の打開を

 

そう判断したトキは偶然建物の中で発見したカーテンらしき物を地面に落ちていたガラス片で裂き、それを使って手当てを始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調月さんや白石さんが待機していた場所に向かって駆け続けていると少しずつ戦闘の痕跡が増えてきた

 

トリニティの校章が描かれた旗は燃え、他の自治区より優雅さを醸し出していた風景は荒らされ、そして────弾薬やあらゆる建造物の破片が散らばっている地面には多くの生徒達が倒れ伏している

 

正義実現委員会の生徒達は呻き声を上げながら手を伸ばしている、風紀委員会の生徒達は互いの肩を支えて苦しそうに歩いている

 

それらの生徒を全員無視してひたすら前に進み続ける

 

 

 

(───なんで)

 

 

 

心の中で、黒い何かが燃え上がるのを感じながら

 

原作より被害が拡大している、そう感じるのは俺の気のせいではないだろう

 

それはどうして?俺が敵の計画を阻止するのに失敗したからか?

 

 

(なんで、アイツらが……アリウスが全部上手くいって、仲間も全員守れてるのに……)

 

 

計画通りに進むと安易に考えすぎたから?それとも敵の第二波第三波を警戒していなかったから?

 

原作を信用しすぎた?この世界をゲーム扱いしていたから?

 

 

 

(なんでアイツらばかり救われてるんだ?正しいのは────)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(正義は、俺達のはずなのに)

 

 

 

 

 




酒泉君かませっぽくね?って感想で言われる度に(計画通り……!)ってずっとニヤニヤしてました

俺はねえ!主人公にひたすら負け続けて変な風に感情を拗らせるキャラが大好きなんですよぉ!あとは大二君みたいな子とかも!
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