〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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本編前から付き合うことに成功した良妻賢母ヒナちゃん

 

 

 

ミカが銃を持ち上げようと─────指を撃たれて弾かれる

 

ツルギが前に踏み込もうと─────片足を地を離れたと同時にもう片足を払われる

 

ミカの拳が動く─────直前、腕を引き寄せられて腹部に一発食らう

 

ツルギがショットガンの引き金を─────引く前に蹴りによって銃口を逸らされる

 

全ての行動が封殺されている

 

攻撃を〝防がれている〟訳ではない、攻撃を〝避けられている〟訳でもない

 

そもそも攻撃を〝させてもらえない〟

 

行動の予測を極限まで極めた戦闘時限定の〝未来予知〟

 

何通りものパターンを相手の視線と筋肉の動きで予測し、徹底的に選択肢を潰す

 

……もしくは、自らが敵の選択肢を誘導させるように戦う

 

そして、この男は攻めに関しても徹底している

 

ミカのようなダメージを無視してくる相手には人体を動かすのに必要な部位にダメージを与え、ツルギのようなダメージをすぐに回復してくるような相手には鳩尾や顎などの内部へのダメージが残りやすい場所を狙う

そうして追い詰められた相手の手段を潰し、敵の〝大技〟や〝切り札〟など知らんと言ったような戦い方を繰り返すうちに、折川酒泉は一部ではこう噂されるようになった

 

 

 

〝折川酒泉は未来が見える〟

 

 

 

 

 

「……っ……余裕たっぷりって感じだね」

 

 

片膝をつきながら酒泉を睨むミカ

 

顔は笑っているが、身体は限界を迎えているかのように震えている

 

ツルギはそんなミカの横に立ち、肩を貸して立ち上がらせる

 

 

「………で?どうする?」

 

「……どうするって……何が?」

 

「作戦だ」

 

「意外………結構冷静なんだね、アナタって」

 

落ち着いたような表情で小声で話すツルギ

 

酒泉はそんな二人に近寄らずにゆっくりと弾のリロードをしている

 

 

「まあ、作戦も何も………どっかで油断した隙を突くしか方法はないんじゃない?現状だとね」

 

「……油断?」

 

「向こうは私達のことを格下だと思ってそうだし、どっかしらで────」

 

「止めておけ、その作戦は失敗する」

 

「────……え?」

 

「奴が弱者の気持ちを理解できないと思っているのなら、それは大きな勘違い─────っ!?」

 

 

ツルギが何かを言いかけたところで、二人に対して弾丸が飛んでくる

 

左右に別れて回避し、そのまま挟み撃ちを仕掛ける

 

 

「キヘヘヘヘヘヘヘッ!!!」

 

「ちょこまかちょこまかと……!」

 

 

相も変わらず攻撃を捌き続ける酒泉

 

その中で僅かな違和感を感じる─────聖園ミカの動きが鈍っている

 

いよいよダメージを無視できない段階まで来たのか、それとも単純な体力切れか………どちらにせよ、攻撃の手が緩くなっているのは事実だった

 

酒泉はツルギの背後を取り、ショットガンをリロードしようとする腕を押さえつけながら考える

 

〝決めるなら今か〟

 

そのままツルギの背中を蹴り跳ばし、ミカに距離を詰める

 

ミカはサブマシンガンで迎撃しようと腕を上げる………ことはなく、苦虫を噛み潰したかのような表情で動きが止まる

 

ついに銃口を向けることさえ叶わなくなったのか、ミカは迫ってくる酒泉を真っ直ぐ見つめることしかできなかった──────その表情な裏に不敵な笑みを隠して

 

ミカは別にダメージに耐えられなくなった訳でも体力が切れた訳でもない、単純に〝弱ったフリ〟をしただけだ

 

今まで圧倒的な力で敵を片付けてきた聖園ミカ、ここに来てフェイントを仕掛ける

 

それは奇しくも折川酒泉と似たような戦闘方法………追い詰めていると見せかけ、逆に敵の行動を誘導する為の作戦

 

酒泉の足がミカに一歩近づく、彼は自身の好む攻撃………ゼロ距離での射撃を浴びせる為に銃を取り出す

 

そしてミカは彼から離れるように一歩下がる────ことはなく、大きく前に踏み出す

 

拳の間合いに入った、敵は身体を前に出している、銃弾も耐えられる、今更気づいたとしても回避行動は間に合わない

 

ミカはそのまま拳を振りかざし─────そこで一瞬の疑問が生じる

 

(距離が……遠ざかっている?)

 

気づけば酒泉が間合いからギリギリ離れている、何故?酒泉の動きが此方の予想以上に素早かったから?自分の踏み込みが僅かに足りなかったから?

 

否─────答えは単純、酒泉は最初から後ろに回避すること前提で動いていたから

 

自分が一番後ろに飛び退きやすいタイミングで回避する為、ミカにバレない程度にギリギリ速度を調整した

 

(私の演技に気づいていたとしても、あんな距離で対応するなんて─────違う、最初からバレていたんだ)

 

ミカがその事をハッキリと認識した頃には遅く、拳は空振り、酒泉の手にはスナイパーライフルが握られていた

 

そこから放たれた弾丸はミカの額に直撃するが、〝今更その程度のダメージがなんだ〟とすぐに起き上がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────試合終了のブザーが鳴ったのはそれと同時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

折川酒泉は〝余裕〟があっても〝油断〟はしない

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

『………酒泉、またヤンキーグループに絡まれたらしいね』

 

あ、銀鏡さん……なんでこんな所に?

 

『〝折川酒泉がまた気持ち悪い動きで無双してる〟って噂が聞こえたから様子を見にきただけだよ』

 

褒め言葉……で、良いんですかね?

 

『さあ………で、今度は何やったのさ』

 

いや、別に……態度が気に入らないとかなんとか……

 

『え?それだけ?』

はい………まあ、自分でも態度が悪いって自覚してますけど

 

『それじゃあ直しなよ………そうすれば絡まれることも無くなるのに……』

 

んー………別に悪いことだけじゃないんですけどねぇ………

 

『いや、悪いことだらけでしょ……』

 

冷静に考えてみてくださいよ。常にこんな感じの余裕そうな態度で戦闘してたら相手はぶちギレるでしょ?

 

『………なんで態々怒らせるような真似をするのさ』

 

だって─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────その方が〝折川酒泉はこっちが格下だからって油断してる〟………って、〝逆に油断してくれる〟じゃないですか

 

 

 

 

 

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「よしよし………頑張ったね、皆」

 

「結婚してください(ヒナ委員長、好きです)」

 

「アコちゃん、本音と建前が逆に………いや、どっちも大して変わらなさそうだね」

 

「さっきまであんなにボロボロだったのに……」

 

 

ヒナに頭を撫でられた瞬間、一瞬で傷が回復したアコ

 

イオリとチナツは本当に人なのか疑わしい自分達の上司を見つめるが、もはや慣れたもんだとすぐに目を逸らす

 

 

「ああ……ヒナ委員長の手が私の頭に……!………ヒナ委員長、失礼を承知でもう一つだけ我儘を言ってもよろしいでしょうか?」

 

「なに?言ってみて?」

 

「ヒナ委員長の髪の毛の匂いを吸わせて─────」

 

「それは酒泉専用だから駄目」

 

「……畜生ォ!(ヒナ吸いを)持って行かれた……!」

 

「うわぁ……」

 

 

 

関わりたくないと言わんばかりに一歩下がるイオリとチナツ

 

そんな二人にヒナは視線を向ける

 

 

 

「……二人はいいの?」

 

「え?」

 

「な、何がでしょうか……?」

 

「頭、撫でなくて」

 

「えっ!?わ、私達も!?」

 

「……そう、ですね………お願いしてもよろしいでしょうか」

 

「チナツ!?本気なの!?」

 

「だって………気になりませんか?いつも酒泉君が気持ち良さそうに味わってる感触を………流石にアコ行政官の反応は論外ですけど」

 

「け、結構言うようになったねチナツ……………そうだね、私達もちょっと味わってみよっか」

 

 

 

トリップしているアコから手を離し、両手を二人に近づける

 

頭にポスっと手を置かれ、そのまま撫でられる

 

イオリとチナツは気恥ずかしそうにしながらも、されるがまま全てを受け入れる

 

「き、気持ちいい……けど……」

 

「さ、流石に恥ずかしい……ですね……」

 

 

顔を赤く染めながらも、満更ではなさそうにする

 

 

「……そういえば、酒泉は?こういうの真っ先に委員長とやってそうなんだけど……」

 

「確かに………普段より空間糖度が甘ったるくないと思えば………」

 

「空間糖度って何さ………」

 

 

どこを見渡しても酒泉の姿が見当たらず、その場に残されているのは本人の鞄のみ

 

 

「さっき自販機でジュースを買いに行くって言ってたけど…………確かに遅いかも」

 

「まあ……あの男が居なければ、その分私が委員長の手を独占できる時間が増えるので────」

 

「アコの番はもう終わりだよ」

 

「……………なるほど、そういうプレイですね」

 

「きっしょ……なんで諦めないんだよアコちゃん……」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ま、待ちなさい!」

 

 

自販機の真横で炭酸飲料を飲んでいる酒泉の前に一人の少女が立ちはだかる

 

彼女は……コハルは黒い羽をパタパタと小さく羽ばたかせ、子犬のように吠える

 

 

「こ、今回も私達が負けちゃったけど………次こそはこうはいかないんだから!」

 

涙目になりながらも、拳を握りしめて堂々と叫ぶ

 

 

「ツルギ委員長もミカ様もまだまだ本気を出していないだけよ!二人がその気になればアンタにだって負けないんだから!ミネさんだってそっちの怪我人を前に動揺しちゃっただけだし、ハナコやアズサだって……その……前日の補習授業のせいで本調子じゃなかっただけよ!そ、それに………次の戦術対抗戦は私だって出るんだから!」

 

────へえ?今回選ばれたメンバーを差し置いて出場メンバーに選ばれるほど強くなる……と?

 

「………な、なれるわよ!」

 

 

コハルは若干言葉に詰まりながらも、すぐに気を取り直して返事をする

 

 

 

「絶対に強くなって……そ、それで、今度は私達が勝つんだから!」

────そうか、なら期待して待ってるよ

 

「ええ!首を洗って待ってなさい!」

 

 

 

自販機横のゴミ箱に空き缶を放り捨てると、酒泉はコハルを見ることなく来た道を引き返す

 

暫く歩いてから一言

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────あれ?今のセリフって〝そのうち主人公にリベンジされる敵役〟っぽくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あーん」

 

────あーん……うん、完璧っすね!

 

「二人で作った甲斐があったね………じゃあ、私にも食べさせて?」

 

はい、あーん

 

「あーん………ねえ、酒泉」

 

ん?

 

「さっきまで誰と話してたの?」

 

ああ、自販機でジュース買ってたら正実の生徒に宣戦布告されただけですよ

 

「……ぎゅー」

 

お?嫉妬ですか?

 

「うん、だから私の匂いで上書きするの」

 

………素直ですね

 

「照れながら言った方が良かった?」

 

どっちのヒナも可愛いですよ

 

「……もう、これ以上私を惚れさせるようなこと言わないで」

 

それはまた……どうして?

 

「………本当に抑えられなくなっちゃうから」

 

……じゃあ、もっと言ってやろっと

 

「………帰ったら覚悟しておいてね」

 

 

 

 

 

 

「あれ?チナツ、今日は手作りじゃなくてコンビニのなんだ」

 

「あはは………昨日は緊張で寝付けなくて、そのせいで起きるのが遅れてしまいまして……」

 

「─────」

 

「へえー……あっ、アコちゃのヘイロー割れた」

 

「確かこの辺に接着剤ありましたよね……どれどれ……」

 

「まあ、そのうち再生するし……別にいいんじゃない?」

 

 

 

 

 

 




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