髪の毛よーし……肌よーし……口臭よーし……
スマホの充電、財布の中身、全部よし……!
あとは待つだけだ……!
「お、お待たせしましたー!」
き、来た……!ついに来た……!
────お……おーい!!こっちでぃしゅ……噛んだちくしょうっ!!!
「待たせてしまってすいま───きゃんっ!?」
こ、転んだ!?大丈夫ですか────
「……なんだかお互いに緊張してますね」
どうも、結局アコヒナしか勝ちません、天雨アコです
「……でも、あんな酒泉君を見るのは初めてですね」
「私達にすら見せたことのない顔をしてるな……」
現在私達は風紀委員一同で酒泉の跡を追っています
「……あれが酒泉の相手の娘……!」
理由?察してください、事態が悪化しないように委員長と行動を共にしているんですよ
咄嗟に吐いた私の嘘がバレない為にも……!
「……アコ、酒泉は本当に買い物に付き合ってるだけなんだよね?」
「そ、その通りです!あの娘は酒泉のお友達ですから!あの男の交遊関係の広さを考えるとトリニティにご友人がいてもおかしくありませんから!」
「………確かに、実際にそんな話を聞いたことがあるけど……」
あっ、本当にいるんですね……
「えっと……本当はもう少し可愛い服で来たかったんですけど……正実の活動帰りでしたので……」
……それなら別の日でも良かったのでは?
「………その………急に酒泉さんに会いたくなってしまいまして……」
そ、そうですか………でも、制服でも可愛いですよ
「あ、ありがとうございます!………えへへ」
「…………っ」
ヒナ委員長が歯を食いしばりながらお二人を見つめています
……なんででしょうか、私も少しイラッとしてきましたね
何故私がこんなに胃を痛めているのに彼だけ楽しんでいるんですか、これは理不尽です!
「……どうしましょう、なんだか酒泉君に悪い気が……」
「じゃあ、チナツはこの二人を置いて帰れる?」
「………無理ですね」
「でしょ?」
イオリとチナツが背後で何か話していますけど、今はそれどころではありません!
この状況をどうにかしなければ……!
「…………一応聞いておきますけど、帰らない理由は本当にそれだけですか?」
「………そういうチナツは?」
「……少し興味があるだけですよ、他意はありません」
「……同じく」
「じゃ、じゃあ……そろそろ行きます……?」
そ、そうっすね……どこに?
「……まずは……お買い物……とか……?すみません、男の人とデートするのは初めてで何をどうすればいいのか分からなくて……」
い、いえ……俺も今まで自分に恋愛感情を持ってくれてる人とデートしたことはないんで……
「……そうなんですか?」
お恥ずかしながら……
「………じゃ、じゃあ……私が初めてですね……えへへ」
「なんですかあの甘酸っぱい空気は……!」
「……アコ、あの子は本当にただの友達なの?」
「えっ!?そ、そうですよ!酒泉から直接聞いたので間違いありません!」
ほら!貴方のせいでヒナ委員長に疑われてしまったじゃないですか!
このままでは今日をやり過ごすことができるかどうか────ん?何者かがあの二人に近づいて……?
「やっほ~☆放課後にこんな所で会うなんて奇遇だね、暇人さん☆」
あ……あれは聖園ミカ!
口では嫌いと言っておきながらなんだかんだで酒泉に構ってもらおうとするめんどくさい女ランキング堂々の一位の聖園ミカじゃないですか!
「聖園……ミカ……!」
ま、マズイです……委員長の纏うオーラに殺意が混ざって……!
────ゲッ……聖園さん……
「貴女って正実の子だよね?酒泉君、今度はどんな事件を起こしたのかな?」
「えっ!?い、いえ!酒泉さんは────」
「貴女も大変だねー、こんな面倒な男に絡まれちゃって……大丈夫?正実まで送るなら私が代わろっか?」
す、好き勝手言いやがって……!
「あはは!もしかして怒っちゃった?」
青筋を立てながら怒りを抑える酒泉、そんな彼を遠慮なく煽る聖園さん
相変わらず仲が良いのか悪いのか分からない二人ですが、少なくとも互いに気を許しているのは確かでしょうね
「もしかしてデートかな?………なーんて!酒泉君に限ってそれはあり得ないか☆」
───んなっ……決めつけんな!デートだよデート!
「え?なに?酒泉君、無理やりこの子ナンパして連れてきたの?サイテー……」
なんで俺から仕掛けてる前提なんだよ!?俺が誘われた側かもしれないだろ!?
「まっさかー……だって酒泉君だよ?モテないことで有名なあの酒泉君だよ?」
そんなことで有名になった覚えはねえよ!?いい加減な事を言うんじゃねえ!?
「えー?まさかちょっとでも自分がモテると思ってるのー?あんなに口が悪いのにー?」
お二人はギャーギャーと騒いで喧嘩していますが、その中に割り込んで正実の生徒が大声で叫びました
「わっ………私が自分から酒泉さんをデートに誘いました!!!」
場の空気が固まり、周りの通行人から視線を集める
……大胆すぎません?
「……え?ごめん、なんて?」
「で、ですから……私が酒泉さんをデートに誘ったんです!」
聖園さんは暫く唖然としていると、恐る恐る口を開いて問い始めました
「えっと……それ、本当?」
「本当です!」
「……二人は付き合ってるの?」
「こ、告白はしました!………お返事はまだですけど、いずれそういった関係になれればな、と……」
「……脅されてたり?」
「そ、そんなことされてません!」
「……正気なの?」
そう言ってから、聖園さんは頬をひくつかせながら説得に入りました
「………しゅ、酒泉君だけは止めといた方がいいんじゃないかな~?この子、結構口が悪いよ?」
「むしろその方が素を出してくれてる感じがして嬉しいです!」
「………乙女心も分からないし、すぐに人を煽ってくるよ?」
「それなら、これから私の気持ちを知ってもらいます!」
「……………で、でもさ!ゲヘナとトリニティでお付き合いするのは大変だと思うの!周りの目とかもあるし……ね?」
「そ、それでも構いません!周りからの視線なんてどうでもいいです!」
「……でも……その……ほら!風紀委員って危険な仕事が多い上に恨みとかも買いやすいしさ!貴女もそれに巻き込まれちゃうかもしれないよ?もし付き合うにしても、かなり強い人とかじゃないと───」
「そ、それなら!私も酒泉さんと同じぐらい強くなります!」
正実の生徒がそう叫ぶと、そのままガシッと酒泉の腕に自身の腕を絡ませました
どうやら相当硬い意思のようですね……!
「…………」
「ど……どんな壁があっても、私は諦めませんから!」
「…………」
「私はそれぐらい本気で酒泉さんを───」
「………………あ……あはっ…」
───……聖園さん?
「あはは、あははははは!あはははっ☆」
聖園さんは突然黙ったかと思いきや、突然笑いだしました
なんですか、あの表情は……まるで狂った魔女のような……
「あははは!うふふ……そっか、そうなんだ……でも、まだ付き合った訳じゃないんだよね……あはっ、あははははは☆」
「えっと……どうかしたんですか?」
「ううん、なんでもないよ……そっか、そんなに好きなんだ」
「は、はい!」
「じゃあ、二人の関係が上手くいくように祈るね☆それと……………また今度ね?酒泉君」
唖然とする二人を置いて、聖園さんは笑いながら去っていきました
………何故でしょう、聖園さんがこのまま終わる気がしないのですが────
「……アコ、これはどういうこと?告白ってなんの話?」
「………あっ」