夜である。薄暗くなった空をビル群の照明がぼんやりと照らしている。
大通りにはパトカーが数十台配置され
雨のあとの大通りの道路がパトカーの赤いランプの点滅を映し出している。
アキが車から降りてポケットから手帳を取り出す。
「どうも、特異四課です。協力要請を受けて来ました」
「お~お待ちしてましたよ。
いやぁ面目ないことですが、我々民間ではどうにもこうにも……
あの悪魔、あまりに速くていつも振り切られちまうんですわ」
「えぇ、お話はうかがっています。例のものは?」
「あぁ、それならこっちです」
「ありがとうございます。おい、デンジ、パワー、こっちだ」
アキに連れられてデンジとパワーちゃんがパトカーの間を
ぬって先に進んでいくと
パトカーの輪の中に一台のバイクが置いてあるのが見えた。
アキがツカツカとそのバイクに歩いて行く。
「ドイツの公安に特注して作ってもらった。
規格度外視で普通の人間が乗ったら事故ったらアウトだが
お前らなら死んでもいいから使えるだろう」
アキがそのバイクのハンドルに
手をポンと置いてそのバイクの名前をつげる。
「ストームブレイカーIIIだ」
「お~」
「ぬおおぉぉぉぉ!! ワシか!? これはワシのものなのか!?」
「あれ? でもよぉ、それって英語なんじゃねぇのかぁ?
ドイツ語なんて一文字もしらねぇけどよぉ」
「いや、今オレが名付けた」
「いやぁ~どおりでダッセェ名前だと思ったわぁ~。ぜってぇ乗りたくねぇ~」
「ワシも雰囲気で乗っておったがよく考えたらめちゃくちゃダサいわ」
「じゃぁ疾風丸」
「なぁに急に侍キャラっぽい感じにしてんだぁ?
湿布っておめぇジジイじゃねぇんだからよぉ」
「ぶっちぎりで鬼ダサいのう。デンジがのっていいぞ」
「俺も乗りたくねぇ。ダサいもん」
腐った魚のような目になっている二人をよそに
アキはタバコを取り出すと火をつけて吸い、夜空に煙をひと吹きする。
「フゥ~。シュヴァイツァ・レーゲンIIIだ」
「お~。なんか角度つけてきたなぁ~」
「ぬおおおぉぉぉぉ!! ワシじゃ! ワシが運転する!!」
「でもよぉ。せっかくだし俺が名前つけてぇぜ」
「よし! ワシが名付けよう! マッハちゃんじゃ!!」
「オレは超デンジ号がいいぜぇ~」
「それでよく人のネーミングがダサいとか言えたな……
……名前なんてどうだっていい。
お前らがこれに乗って暴走の悪魔を捕捉しろ」
「お~、まかせとけ。暴走の悪魔をやっつけてよぉ。俺はマキマさんとツーリングしてぇぜ」
「マキマさんがそんなことするわけないだろうが。
そもそもおまえ無免許だろ。これに乗っていいのは今回だけだ。
事故っても死なないお前らだから乗っていいということになった。
デンジでもハンドルくらいは握れるだろう」
「心配すんなっての、けっきょくチャリンコのよ~りょ~だろ?」
「なんじゃそんなことなのか! よゆ~じゃな!」
「おまえら自転車に乗ったことはあるのか?」
「ないけどよぉ」
「逆に聞きたいんじゃがチャリンコに乗ってる
悪魔なんて見たことがあるのか? アホなのかおまえは?」
「……デンジが前でハンドルを握れ。パワーは後ろで血で二人の体を固定しろ」
デンジとパワーちゃんはしばし顔を見合わせると
ビー玉のように目を輝かせてグッと親指を立てた。