「そんでよぉ、その暴走の悪魔ってのはどこにいるんだぁ?」
「くくくっ、今宵のマッハちゃんは血に飢えておるわ」
「パワ子てめぇ勝手に名前決めてんじゃねぇ。超デンジ号だっつっただろうがよぉ」
「マッハちゃんじゃ!!」
「超デンジ号!!」
バイクに乗って言い合う二人をよそに
アキは時計を見ながらいう。
「黙れバカども。そろそろ来る」
デンジ達を囲むパトカー群を一つの影が覆った。
上を見るとバイクに乗ったライダースーツの女が
パトカー群の上をバイクで跳躍しているのが見える。
パトカー群を飛び越えたそのバイクは大通りに着地して
そのまま走りさり見えなくなった。
次にパトカー群の周りやその間を
男達が乗った複数のバイクが高速で疾走していく。
「目視にて確認。最初に見たやつが暴走の悪魔だ。
悪魔がバイクと同化して契約者が運転している。
四課であれを補足する。二人とも速やかに任務につけ」
「でもさぁ。なんかよぉ、あの女追われてるみてぇに見えたけどよぉ?」
「そうじゃのう。どっちにつくんじゃデンジ? 勝ちそうな方がいい」
「わかってねぇなぁパワ子よぉ。んなもん女に決まってんだろうがよぉ」
「いや、おい待ておまえら、どっちがどうとかじゃねぇ。
任務は暴走の悪魔の補足と説明しただろうが。おい待て!!」
「すぐ追いつくからよぉ。待ってろよぉおんなぁ!!」
「ワハハハ! 血を吸わせろぉ!!」
デンジとパワーちゃんはバイクに二人乗りして
パトカーの群れから高速で飛び出し
ビルに囲まれた薄暗い大通りを疾走し始めた。
夜の大通りをバイクの集団が疾走する。
デンジとパワーちゃんはその集団に高速で迫る。
二人が集団を視界にとらえたところで
そのバイクの集団が交差点をカーブする。
「おいパワ子! オレ曲がれねぇ!」
「な、なんじゃと!? ワシがやる! とりゃぁぁぁ!」
パワーちゃんが交差点の電柱に血の糸をはりつけ
ハンマー投げの要領でマシンをカーブさせ
中空に投げ飛ばす。
二人のバイクは高速で
男達のバイク群の上を疾走し
ガシャンと大通りに着地した。
デンジは目の前に暴走の悪魔の女を見つけて
不敵な笑みを浮かべる。
「おいデンジ! 男どもを追い抜いてしまったぞ」
「んなこと知るかよぉ。本体はあの女だろぉがよぉ」
デンジとパワーちゃんの先を走る
暴走の悪魔の女は振り向いて二人の方を一瞥すると
さらに加速して大通りを疾走する。
「ついてこいってかぁ? いいじゃねぇかよぉ。
地獄の底まで追いかけてやるぜぇ!!」
暴走の悪魔は大通りを高速で疾走しながら
次にビルの壁面を駆け上がり
次の交差点をさらに対角線上にジャンプして
再びビルの壁面に着地するとそのままビルを駆け上がる。
「あの悪魔めちゃくちゃやりおるのう」
「こっちもやれっかよぉパワ子ォ!」
「わかっておるわ! おりゃ!」
パワーちゃんがマシンの前方に血を撒き散らし
車輪がその血を巻き込むと
車輪についた血がスパイク状に変化しその車輪で
ビルの壁面を疾走する。
「おらぁぁぁ! 待てコラ悪魔ァァァ!!」
壁面を疾走する暴走の悪魔が再びジャンプして
目の前のビルの窓ガラスを破壊して商業ビルの中に入って行った。
「追うぞパワ子ォ!!」
「ほりゃ!」
パワーちゃんが血の糸を向かいのビルに貼り付けて
振り子のようにマシンが宙に浮きそのまま商業ビルに入った
暴走の悪魔が破った窓ガラスへ突っ込んで追跡を続行する。
デンジ達の先を走る暴走の悪魔の女は
商業ビル内の広いホールを疾走すると
次に中抜けのホールの柱に取り付いて
商業ビルの内部を上層へと疾走し始める。
デンジとパワーちゃんも血のスパイクがついた車輪で
商業ビル内部の壁面を登り
ビル内部の上層へ向かうトンネルを走行するように追跡する。
「この程度でよぉ振り切られっかよぉ! ギャハハハハ!」
「ワハハ! 追え! 追うのじゃデンジ!!」
暴走の悪魔は巨大ビル内部の上方へ向かったトンネルから
再び跳躍してフロアを疾走し目の前の窓を破壊してビルから飛び出した。
デンジとパワーちゃんもそれを追ってビルから飛び出す。
そこは上空300メートルの中空だった。
夜の街から立ち並ぶビル群が大通りの中空を下から照明で薄ぼんやりと照らしている。
デンジとパワーちゃんはマシンごとしばらく
ビル群の合間の空中を高速で滞空し
ハッ気づいたパワーちゃんが血の糸を飛ばし
振り子の要領で落下するマシンを支える。
空中でゴウゴウと逆風を受けながら
血で支えられたマシンがビシビシと音を立てる。
「ぐぬぬっ、バイクが重い、血の糸がもたぬぞ。
そういうわけじゃデンジ。すまんな」
パワーちゃんはそういうと
血の糸を掴みながら一人でバイクから離脱した。
「パワ子てめぇ殺すぞこらぁぁ! うおおおぉぉぉ落ちるうううぅぅぅ!!」
血の糸の支えを失ったデンジとバイクが
ビルの間の空中に放り出され
そのままガシャンガシャンとマシンごと大通りに放り出され
デンジはゴロゴロと転がった。
「イッテェ~~…」
フラつきながらデンジが顔を上げると
ボンヤリとにじむ視界で
目の前に暴走の悪魔の女が立っているのがわかった。
女はヘルメットを脱いでデンジに話しかける。
「おまえ、なかなかいい走りじゃないか。私はレイカ。おまえ名前は?」
「あ、かわいい。オレ、デンジ…」
「いつでも来なよ。チームのみんなにも言ってることだけど
もし私を追い抜けたら私はお前のものだよ」
暴走の悪魔の女はそう言うとヘルメットをかぶって再び走り去った。
その後ろ姿を呆然としながらデンジが眺めていると
しばらくしてパワーちゃんが後ろから歩いてきた。
「お~生きておったか。ワシはバディとしてうぬを信頼しておったんじゃ。
本当じゃぞ。裏切ったわけではない。マ、マキマには言うのでないぞ。
そうじゃ! こんどおやつを食うときは1個多くデンジにやろう! 特別じゃぞ!」
必死に説得するパワーちゃんを見ていたデンジは
今度は呆然としたようにうつむいた。
「え? オレのもの?
……やる! やってやるぜぇ! オレはよぉおお!!」
デンジは走り去る暴走の悪魔を見つめながら
握り拳でそう叫んだ。