【アンケート企画】みんなでアクアに助言して遊ぼう! 作:をれっと
「そうだねぇ…助言って感じもあんましないんだけどさ、アイを認めてあげてよ。君なら、わかるでしょ?」
アイを…認める?
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
アイを認める?
俺は十分にアイを認めている。
極限まで嘘で塗り固めた完璧なアイドル。彼女は全てが魅力的で、抜けているように見えるところすら魅力。一切の雑味を見せず、誰もかれもが彼女の虜になるような。
明らかに一番輝いているアイドル。
これ以上ないほどに認めている。
認めるとは、こういうことではないのだろう。なぜこんなことを俺に言ってきた?考えろ……
昔の俺と、今の俺で違うところ。それは、彼女の思いを真に理解しているかどうかだ。
彼女は人の愛し方を知らない。
俺たちを作るくらいだ。きっと俺たちの父親のことは確かに好きだったし、恋をしていたのだろう。
しかし、それでもなお誰かを愛していると言う自覚が得られない。そして、今のドライな彼女を見る限り、父親とも恋で止まり、愛には至ることはなかったのだろう。
……ん?
ファンにはあれだけ愛してると言い続けたのに?
俺たちの父親には愛してるとか言ってたのだろうか?
わからない。
アイはリョースケ君の前で言っていた。「いつか嘘が本当になることを願って」と。
アイは「嘘はとびきりの愛」と言っていたが、嘘を肯定しているわけではない。
しかも、他人に本当を求めているのではなく、自分に本当を求めている。
彼女は誰よりも嘘つきなのに、誰よりも誠実な人間なんだ。
なぜなら、子供である俺たちにだけは、嘘をつかなかった。嘘を嘘だと見抜くことが絶対にできない子供達には、絶対に嘘をつかない。少なくとも俺たちに対してだけは、この世のどんな親たちよりも誠実な親なのだ。
ファンに嘘をつきまくってる大嘘つきなのに、俺がこんなにも彼女をいまだに好きなのは、彼女が誠実な人間だからなのかもしれない。
誰がそんなことを認めてくれると言うんだ?誰がわかってくれると言うんだ?
嘘と誠実という一見矛盾している2つを、誰が認めてくれる?
タスウケツが言うのは、そういうことなんじゃないか?
彼女の愛が本物かどうかはわからない。
それでも、彼女が誠実に俺たちに向き合ってくれているということを、アイに「認めている」と伝えてやる必要があるのではないか?
ドームという場をつかんだ今、彼女のアイドルとしてのゴールは目前だ。
アイが俺たちの元に帰ってきた時、アイはアイドルとしてゴールしたアイになっている。
ファンが襲ってきたんだ。アイはファンに対して少なからず恐怖心を持った。そんな彼女が、ドームライブで愛を確信して帰ってくるか?
有り得なくはないな。でもそれは狂乱の類のものだ。
タスウケツは、『アイが走り抜けてきたアイドル人生に、「正解」という答えを渡してやれ』と言いたいのではないか?
今回の助言は、リスクがある。
俺がアイを認めてやるには、「俺がある程度成熟した人間である」と明らかにわかる形でやる必要がある。赤子が母を認めるなんて、言葉にするものではないのだから。
母が赤子を認めたこともないのに、赤子が母を認める状況を作れと言われたのだ。
やるのか?
そんなリスクを取るのか?
本物の愛を確信して帰ってくることも十分に考えられるのだぞ?
逆に認めてやらないことによる危険性は?
可能性として、アイが錯乱状態になるという可能性がある。人は自分の過去に対して、正しいと思いたがる習性がある。
アイは無理やり「正解だった」と思い込もうとするせいでなにかしら暴走する可能性がある。
そして、今回リョースケ君を家に招いたのはおそらく俺たちの父親。もしかしたら一番アイの「本物の愛」に近づいた人間かもしれない。
そんな人間が牙を剥いた。アイはその現実から目を逸らしたがるのではないか?
タスウケツの言葉を鵜呑みにするつもりはない。
しかし、タスウケツの言う通り、アイを認めてやるべきだと思える要素が多すぎる。
タスウケツは俺のことを見下している。これは確実だ。だからこそ、あいつの言葉には責任が伴わない。
しかし、あいつに害意は今のところない。
やるべきだと、責任を感じずに考えたのだ。
そして、俺もやることの価値を認めている。
リスクを孕んだ選択肢。
俺は……アイを認める。
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
俺たちはドームの関係者席で泣きながらアイのライブを見た後、警察の事情聴取を受けた。
その際に、ミヤコさんにリョースケ君に住所を流した人物は俺たちとよく顔が似ていたことを伝えた。
すると当然、俺たちの父親が黒幕であることに察しがつく。
アイが警察の事情聴取を受けた後、社長とミヤコさんがアイを連れて、俺たちの家の別室で話し込み始めた。
当然防音加工がしっかりされているため、俺たちは話を聞くことはできなかった。
しかし、何を話しているのかはわかる。当然、相手の男を吐かせようとしているのだろう。
二時間後、アイたちが出てきた。
「明日、また聞きにくるから。心の整理しておいてくれよ?」
「はーい」
「はぁ…」
相変わらず、アイは飄々として見える。
アイの嘘は完璧だ。抜け目のある性格のせいで、推理できてしまうが、彼女単体を観察して彼女の本心を知ることは絶対にできない。
その完璧に飄々とした様子は、俺の決断を行動に移すことを渋らせる威力があった。
それからまた一時間後、ルビーが先に寝てしまった時、俺はようやく覚悟を決めた。
彼女の本心を見抜けない俺に、彼女を認める資格があるのかわからない。
でも、やると決めたのだ。
やってやる。最悪の事態の対処法が思い浮かばずとも。
「どうしたの?アクア。もう寝る時間だよ?」
風呂上がりのアイが笑顔で俺を布団に誘導しようとする。
「ねぇ。ちょっと話したいことがあるんだ」
「…どうしたの?」
俺が声を震わせて言うと、アイは俺の座るソファの真正面に、床に座った。
「俺は他の子供達よりも成長が早い。そして、俺もアイのアイドルやってる姿が大好きだ。立派なファンのつもりなんだ」
「ありがとう」
アイはにっこり笑って返した。
「今朝さ、あの黒い人に言ってたじゃん。「愛ってよくわからないけど、本当に愛したいって思って愛を歌ってた」って。アイは、愛してるって嘘をついてきたんだよね?いつかその嘘が本当になることを願って」
「……うん。そうだよ」
少し動揺が見られた。俺が幼児とは考えられないほど鋭く状況を把握していたからだろう。
「俺はさ、アイが本当に愛していたかなんてわからない。だって俺は、誰にも愛されたことがないから。アイは俺たちに愛してるって一度も言ったことがないから」
「……っそれは!」
「最後まで聞いて」
アイは焦った表情をしていた。化けの皮が剥がれたようだ。
「俺はアイが俺とルビーのことを愛してるかなんてわからないよ。でも、誠実な人だなって。思ってる」
「せい…じつ……?」
俺の頭まで沸騰しそうだ。熱い。どんどん心が溢れてくる。
「俺たちはまだ子どもだから、「愛してる」って言ってくれれば、それだけで愛してくれてるって確信してたと思う。でも、アイはそうしなかった。
どうしてそうしたのかわからないけど、でも、結果としてアイは誠実な態度をとった。
その誠実さの原因が自分のことが嫌いになるからとか、過去の嫌いな人と被るからとか、自分の正義のためとか色々あったとしても、アイは僕らに誠実に接してきたことに変わりはない。
だから少なくとも、アイは誠実な親なんだよ。だから、俺はアイを。星野アイを愛している」
「で、でも…私は清純じゃないし、ずるくて汚いし、無責任だし…本当に愛してるからわからないし……」
「そんなことはどうでもいい」
「…え?」
「俺は星野アイのことを愛してる。アイドルとしてのアイのことも愛してるよ。でも、星野アイのことも愛している。
俺の知る星野アイは、いつも嘘をつくことに必死で人の名前を覚えられなくて、その場に沿ったことを心と関係なく言って、飄々とした、余裕のある態度を頑なに崩そうとしない強がりで、
誰よりも嘘つきだけど、誰よりも誠実な人だ。
他の人に対してずるいとか無責任とか、そんなことは俺にとってはどうでもいいことだ。
俺にとってはアイは俺たちを責任を持って育てようとしている親であり、サンタさんすら信じさせないほど頑なに誠実な人であり、嘘をついてでも金を稼いでくれる恩人なんだよ。そこに愛してくれているかどうかなんて要素は含まれてない。
世間一般がどうとか、アイ自身がどう思うかとか、どうでもいい。
俺にとっては実際のアイの行動と、俺の気持ちだけが重要なんだよ。
俺はアイの行動を誠実だと思った。俺は恩を感じている。俺は星野アイを愛している。
たとえ君が、一生俺のことを愛してくれなくても、俺は君を愛している。死んでも愛している。生まれ変わっても愛している。誠実で、一本芯の通った君を愛している」
俺もまた完全に化けの皮を剥いで、アイの肩を掴んで捲し立てた。
何が正しいとか、リスクがあるとか、アイの気持ちとか。全部忘れて、俺は俺の気持ちをまっすぐに伝えた。
不思議とスッキリした気分だ。
何をしようとしてこうなったんだっけ……
そうだ。アイを認めるって話だった。
「俺は……アイをいい親だと思ってるよ。……それじゃ」
なんか急激に後悔が滲んできた。台本とか用意すればよかったなぁ……
言いたいことがよく纏まってなかった気がする。そもそも今自分が何を言ったのかよく覚えてない。
言うってことに集中しすぎて、何をどう伝えるか考えてなかったからだ…
はぁ……リスクあるんだからせめてよく練れよ………
俺が俯き気味に寝室に向かいながら後悔していると、ガバッと抱きしめられた。
「アクア……!」
うお!?なんだぁ!?
泣き声を押し殺した声で、俺の名前を呼んだアイが、俺を抱きしめていた。
親が子を抱きしめるような抱きしめ方ではない。子が親に泣きつくような抱きしめ方だった。
「私も……私も!アクアのこと愛してる!ルビーのことも、アクアのことも、愛してるよぉ……!」
「…………」
残念ながら、俺にはわからない。これだけ嘘をついてきた彼女の言葉が、本物なのか、嘘なのか。
もちろん嬉しい。
でも、俺にとってそんなのはどうでもいいことだ。
アイが本当に愛していると思えているのなら、それでいい。俺は愛されなくてもいいから、アイに幸せになってほしい。
俺は黙って、アイの背中を撫でていた。
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
俺とアイは泣き止むまで抱き合ったあと、普通に寝た。
今日は手を握られながら寝た。
幸せな時間だったなぁ………
「なにその目!?僕らの助言のおかげでその幸せな時間があったんだけど!?」
へいへい、感謝してますよ。
「感謝してるんならいいのさ。ま、根本的な問題。アイの命を狙ったやつは捕まってないんだしね」
あー……思い出したくなかった。
「君は幸せになればなるほど腑抜けになるねぇ。ま、やる時はやってくれるし、腑抜けていられるように頑張ってほしいね」
はいはい。で、今日も助言しにきたのか?
「そうだねぇ…………」
アクアからの信頼度:65
〜タネ明かし〜
タネ明かしでは選ばれなかった選択肢を選んだ場合のif話をしていましたが、今回はエピローグですので、星の砂ルートについて。
前々回、「アイに星の砂を玄関に飾らせる」という選択肢が2つ並びました。あれは、ドアチェーンを徹底させた場合のみ現れるという話をしました。
ドアチェーンを徹底させた時点で、アイが死なないことが確定しています。ですので、アイを裏切るような選択肢を用意してもあからさまにアクアを騙す助言しかできないため、アクアを騙さない選択肢、「アイに星の砂を玄関に飾らせる」ことが強制されました。
星の砂を玄関に置いたことにより、アイがファンにプレゼントされて嬉しかった記憶を強く思い出し、アイはもう助からない状態になっていなくても、ファンであるリョースケ君を受け入れるような言葉をかけました。
それにより、原作と同じセリフをアクアが聞き、アイの真意を知り、彼女を真の意味で認めてあげられるようになる。そして、「アイを認める」と言う選択により、彼女のアイドル人生は「正解だった」とアイの人生を肯定してあげると言う結果になりました。
「アイを認める」以外のお話は、また次回。
をれっとのtwitter:https://twitter.com/wo11et?s=21&t=IoLuKUypp_jTEmO_0xdZlA
まだアクアに助言する?
-
する(つづく)
-
しない(完結)