HUDZILLA   ゴジラ擬人化少女の破壊録   作:一途一

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書き溜め一話しか無いです。不定期投稿です。


呉爾羅は滅びぬ。進化し続けるのだ。例え方向を間違えても。

俺は今暗闇に居る。何も見えない、何も感じられない。息もしている感覚がない。

 

 

体はびっくりするほどに動かない。このまま何時まで俺は一人でいれば良いのだろう。

 

 

こんなことなら、まだ家に籠もってゲームでもしていたほうがマシだったかもしれないな。

 

 

ああ、帰りたい―――

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

2023年、4月10日。俺はある場所に訪れていた。

 

 

ここは東京。つい最近、と言っても7年前ぐらいだが…『ゴジラ』なるものが無力化された場所に俺は訪れていた。

此処二年の間に規制はほぼ解除されて、ほぼ展示状態になっていた。

ガイドに連れられ、各場所を巡っていく。常に冷凍機が作動しており、理論上ではもう再び動き出すことは無いらしい。

 

最後に訪れた場所、尻尾の部分で異変は起きた。人の形が集合したような形の尻尾は、今までの何処よりも不気味だった。

 

人の形をしている全ての顔が俺を見つめているみたいで…

 

 

 

《警報。冷凍装置が停止、放射線量増加。残り30秒で許容放射線量を超過します。》

 

 

 

突然の事だった。けたたましく警報音が鳴り、向こうの隔壁が閉じ始める。

 

「まじかよ、ガイドさん。ここ大丈夫じゃなかったのか?」

 

「知りませんよ!こんな事起こるなんて知りません!早く逃げますよ!」

 

俺は何故かあの“人形”から目が離せなかった。無いはずの眼に見つめられたまま、自分の意識が囚われる。

 

「ちょっと!笠斬さん!扉閉まりますよ!」

 

此方に来るように声を掛けられるが、気にすることも出来ない。

 

“人形”が不気味に動き始める。それと同時に隔壁が閉まり、無機質な機械音が次の動作を始めた。

 

《隔壁閉鎖完了。非常用冷凍機を作動。安全が確認され次第次段階に移動します。》

 

 

足元が冷えてくる。体に霜が付き始めた。体を動かそうにも意識が縛られているため動かすことが出来ない。

 

このままでは死んでしまう。死にたくない。だがそんなのはお構いなしに霜は体を侵食して行く。

 

死にたくない、しにたくない、しにたくない、しにたくな…

 

 

 

《冷凍が完了。呉爾羅対処法19条に則り影響を受けたものは海中に投棄されます。》

 

 

 

その言葉を最後に隔壁が開く。そこには武装した集団と“処理班”が這入ってきた。

 

“処理班”の隊長は『ゴジラ』の尻尾と一緒に冷凍された男を見る。

 

「この7年で20体目か…俺はまだこんな不気味な『冷凍食品』のサンプルを採って捨てんにゃあかんのかなぁ。」

「しょうがないだろ。生きていけるだけマシだ。なんせ俺たちは死刑囚、何だからな。」

「書類上は死んでるだろ。」

「生きるためには仕方がない事だ。それにしても、今回は厄介だな。“処理”するもんが増えちまったぞ。」

「珍しいな。まさかこの『人でなし』が動くとは。」

 

そう言って“処理班”の一人は男の足元に視線を向ける。視線の先には足首を掴むようにして腹ばいになっている“人形”の姿があった。

 

「まあコイツにも同情しちゃうな。この前見たんだよ、この“見学会”に招待される条件って奴。非公式だけどな。…なんでも職無し、親族無し、結婚・交際歴無し、就職歴無しの四拍子が揃ってる奴が招待されるらしいぞ。」

 

冷凍されて床とくっついた足を剥がしながら隊長は喋る。後ろに居る武装した集団に目配せをしてチェーンソーを持ってこさせる。

 

「何気にこれを使うのも久しぶりだな。まあ使わないほうが良いんだがな。」

 

基本的に“人形”は物理的に破壊することが困難である。そのため切り離すにはくっ付いている部分を切り取る必要があるのだ。

 

「じゃあ行くぞ。」

 

チェーンソーのエンジンを掛け握られている足首の少し上から切り離していく。

冷凍されているため血が出ることは無かった。

 

「これで大方完了だな。後はコンクリに詰めるだけだ。」

「隊長、これはどうするんだ?」

 

隊員は切り離された“人形”を指差す。

 

「ああ、それも一緒に詰めといてくれ。」

「分かった。」

 

 

持ってこられたのは長方形の箱だった。これは放射線を通さないように作られた特殊な箱で、よっぽどの事がない限り中から物が漏れる事は無い。

 

“処理班”はその中に男と“人形”を入れ、そこに水を流し込み、蓋をする。

そして外にあるトレーラーに運んだ。

 

「これで俺たちは暫く死なずに済むな。」

「そうだが…これは一体いつまで続けるんだ?」

「知らねぇよ。まあ、このでっかい置物が腐り切るまで、ってとこだな。腐るかどうか知らねぇけど。」

 

“処理班”は武装した集団に連れられ元の居場所に戻る。

 

だが隊長には一つ気がかりな事があった。

(…コンクリに詰める時少しだが氷が溶けてた…死んでるならあんな寒いとこで氷が溶けるわけがねぇ。)

 

何か悪い予感がする。

 

(まあ、今頃あの箱は海の底か。考えるだけ無駄だな。)

 

隊長は考えることをやめ、明日からどう過ごすかを考え始めた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

コンクリートの箱は刻一刻と海底へと沈んでいる。

先も言ったがこの箱はよっぽどの事がない限り壊れることがない。

だが例外もある。

 

例えばその降り立つ海底の場所に旧日本軍が敷設した地雷がある場合とか。

 

 

 

 

 

 

どかんという音をきっかけに意識が浮上する。暗闇に亀裂が入り、中に光が漏れて来る。

 

亀裂は遂に全方位を囲み俺を解放した。上には微かだが光のような物が見える。

 

此処は一体何処なんだ?そして俺は一体どうなってるんだ?

 

 

 

 

…まずは体中を触って自分の安全を確認してみる。

 

 

 

肩、普通。少し細い気がする。

 

腕、少しゴツゴツする。だけど細い。

 

頭、特に変化は無い。少し髪が長くなった?

 

背中、なんか刺さった。何かが生えているような気がする。

 

 

胸、……なんか盛り上がってる。(!?!?!?)

 

腰回り、細い。なんかゴツゴツしたのに覆われている。足、細い。太もも辺りがゴツゴツしている。

 

下、……ノーコメント。

 

 

なんか体つきが全体的に変わってるんだが!?

かつての俺も身長が低かった(160㎝)が、更に低くなっているような気がする。

声は出せないし、何より視界がほぼゼロだから自分の置かれている状況も分からない。

水っぽい何かに覆われているのだとは思うが、なにせ触れるものが無いのだからどうしようもない。

 

取り敢えずさっき見えた光の方向へ泳いで行く。

泳ぎは得意ではない筈なのだが、思ったよりしっかりした泳ぎで昇ることが出来ている。

 

 

…ふと、気づいた。俺は一体どうやって呼吸をしているんだ?

顔を触ってみるが、目もあるし、口も鼻も付いている。だけど、息をしていない。

もしここが海であるなら魚やら何やら居るはずなのに、それさえも居ない。

此処は今、俺だけが居る。他には何も居ない。

…しょうがない。こういう時は上に昇り続けるだけだ。

今日三十代になったばかりの引きこもりに言える事ではないが。

 

 

 

 

上の光は、昇るに連れて段々と輝きを増していく。手を伸ばし、光を掴もうとする。そして…

 

 

 

静かに、海の表面から顔を出した。

 

 

「はあ、一体どうなっ…」

 

 

声が可怪しい。若すぎる。それに少し女性味のある声になっている。

 

それに此処は何処だ?何処を見回しても海、海、海。

ボートの一隻すら浮かんでない。

 

しょうがない。泳ぐしか無いだろう。ここは元帰宅部部長の威厳で最速で家に帰ってやる。

ああ、今日のこと思い出したら段々腹が立ってきた。あのガイド俺を助ける素振りもせずに声掛けてばっかだったぞ!?

 

 

「あのガイド帰ったら絶対訴えてやる…」

 

 

 

春、何処の海なのかも自分の今の置かれている状況も分からないまま俺は決心した。

 

 

 

「早く帰るぞ…推しの子が明後日から始まるんだよ…」

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

関東は混乱の渦に巻き込まれていた。来月中に撤去される予定の放射線感知器が反応をキャッチしたのだ。

ニュースのキャスターは画面の中から避難を呼び掛けている。

 

『放射線感知器の情報によると、発生源は東京湾を北上しており、このまま進むと羽田空港に上陸する恐れがあるとの事です。現在、神奈川県、東京都、千葉県の全域に避難指示が出ています。速やかに避難して下さい。』

 

同じような文言がテレビの中からは垂れ流しになっている。

 

 

それを頭を抱えて見ているのは現在の首相、石動丈吉(いするぎじょうきち)であった。

 

「おい、ゴジラが復活する可能性はゼロじゃなかったのか!?」

 

怒り心頭の石動に対応するのは『日本核研究所』の所長、加賀鰤門(かがしもん)だ。

 

「いえ、あれはゴジラじゃありません。」

「じゃあ何だと言うんだ!放射線を撒き散らしながら進んでいるんだぞ!完全にデジャヴじゃないか!」

「落ち着いて下さい。波長が違うんですよ。本来のゴジラから発せられる放射線の波長とはズレが生じています。言うならば、『それっぽい別物です』それに…」

 

加賀はまだ怒りの収まらない石動を諌めるように言う。

 

「発生源の大きさが小さいんですよ。衛星では捉えられないぐらいにです。例えるなら…人ですね。ちょうど人ほどの大きさです。」

「そうなのか!?それなら現状の兵器でなんとか対応できないか?」

「いえ、無理でしょうね。」

「何故だ?それぐらい小さかったらすぐ仕留められるだろ。」

 

石動の疑問に加賀は言葉を紡ぐ。

 

「放射線の効果範囲は狭まりましたが、その濃さが段違いなんですよ。あのエネルギー精製機関…我々は『羽』、と呼んでいますが、アレがあった場合は確実に威力が上がった光線で全弾撃ち落とされたり、それを撃った兵器ごと真っ二つにされるのがオチですよ。」

 

「じゃあどうすれば良いんだ?」

「ゴジラは“進化”します。あれがもしゴジラの進化体ならきっと冷凍は効かないでしょう。」

 

加賀は一息ついて告げる。

 

「あの計画を実行すれば対処は可能です。」

「あれは非人道的過ぎる…認可できん。」

「ならば隠れてすれば良いんですよ。今の東京都、神奈川県、千葉県はほぼ全域で避難指示が出ていて、それを作って出撃させたとしても存在が露呈する可能性は少ないです。」

 

石動は考え込み、そして一言を放った。

 

「…成功する見込みは?」

「90%ほどです。」

「しょうがない。速やかに計画を行動に移し、それを完成させろ。」

「分かりました。直ぐに完成させましょう。」

「頼んだぞ…国の存亡と威信が掛かっているんだからな。アメリカにまた文句を言われたら俺はどうすればいいか分からん。」

 

 

そして加賀は名古屋にある臨時総理大臣室から研究所へ向かった。

 

 

加賀を見届けた後、石動も対策本部へ向かおうと移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

春の陽気が漂い始めた今日、秘密裏に『正体不明怪獣掃討作戦』が始まろうとしていた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

時を同じくして、羽田空港。ガラスの前で変なポージングをしている『ゴジラっぽい何か』の少女が居た。

 

 

 

「やっべぇなこれ。半分露出狂じゃねぇか。しかも背中に何か生えてるから背もたれがついてる椅子に座れねぇし。…性別変わってるし。」

 

 

本当は変わり果てた自分の姿を驚愕しながら見ている三十代(元)男性《無職》なのだが。

 

 

ともかく運命の歯車は動き始めた。これから、人類の進化が始まるのだ。




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