HUDZILLA   ゴジラ擬人化少女の破壊録   作:一途一

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遅くなりました。


蹂躙

ヘリ部隊や戦車部隊がモーター音をけたたましく鳴らし戦場(いくさば)へ向かう中、六人は自衛隊に発見されないようビルの間を縫って着々と進んでいた。

 

並の人間では出せないようなスピードで規則的に向かっている彼女達は25分程で原宿に到着した。

 

「ここからは全員の所定位置に着くように向かいます。…散開」

 

『No.1』の少女が指示を出し、六人は散開した。

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

『此方第四対ゴジラヘリコプター隊、全機攻撃準備完了』

『此方第一隊ゴジラ戦車隊、全両攻撃準備完了』

 

 

無線からは作戦の準備を終えた内容の旨が続々と流れてくる。石動は椅子に深く座り、自分の今後について思案していた。

 

この作戦の本当の概要がバレてしまえば、もれなく石動は非人道的研究を支持したとして確実に逮捕、そのまま永田町から追い出されるだろう。加賀からは心配しなくて良いと言われたが、あの男の言うことを石動は信じられなかった。

 

「作戦準備、全て完了しました。…本当に、宜しいですね?」

「ああ…構わん。直ぐに始めろ」

 

 

この一言で全ての作戦は開始された。戦車は砲弾を無尽蔵に放ち、ヘリからは何千もの薬莢が地に落ちていく。

前回とは違い対象が小さいが為に、戦車隊やヘリ隊は近接戦闘を余儀なくされた。しかし核汚染が酷く、数分で交代することを余儀なくされた。

 

『対象に動きはありません。攻撃にも何の反応を示さず、そのまま沈黙しています』

「了解、作戦を第二フェーズへ移す」

 

そう司令官が伝えると、遠距離に位置する多連装ロケットシステムMLRS(マルス)による対地攻撃が始まった。

 

 

その様子を画面の外から眺める石動は、受話器から音が鳴っていた事に気づき手に取った。

 

『もしもし、加賀です。部隊が全て目標地点に到達しました』

「ああ、そっちも進めて構わん」

『了解しました。これより、【似ゴジラ機関を所有する人型戦闘兵器】による掃討作戦を開始します。それと…司令官様の方はそちらにお任せしますよ?』

 

今度も電話は一方的に切られる。石動は天を仰ぎ、今年が自分の晩年になるかもしれない、と悟った。

 

 

覚悟を決め、行動に移す。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと…待ってくれないか」

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

六人の少女はスクランブル交差点を囲むように配置された。生身で場所に突っ込んでいる時点で分かることだが、彼女らは核の影響を受けない。

 

『No.1』がライフルを沈黙する対象に構え、他の個体に合図を送る。

 

「作戦を開始します」

 

 

各個体は一斉に発砲した。銃弾の雨は対象に向かって当たり続けるが、一向にその硬い鱗を剥ぎ取れる気配がない。

そうしている内にライフルは全ての弾を吐き出し、硝煙を揺蕩わせながら沈黙した。

 

「近接戦闘に移行します」

 

六人は所々が紫色に輝く“変わった材質”のナイフを取り出し、構える。

 

 

全員が一斉に動き、対象を刺し貫かんと駆け出した___

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

俺は…一体何をしているんだろう。

 

 

 

家に帰るんじゃ無かったのか?…ならこんな所で留まっていては駄目だ。

 

 

 

俺の躰を返してくれなんて事は言えないし、言わせて貰えない。クソッタレ…

 

 

 

全部元に戻してくれよ。俺はこんなの嫌なんだ。

 

 

 

真面目に働くし、社会にだって貢献する。税金だって嫌ってほど払ってやるから。

 

 

 

 

だから…全部元通りにしてくれ。躰も、時間も、この世界も。

 

 

 

 

元通りにしてくれよ…

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

彼女達の放った刃は全て対象の硬い鱗に突き刺さった。『No.5』と『No.4』が背中に、『No.3』と『No.6』が腹に、『No.2』と『No.1』が両胸にその刃を突き刺し、その鱗を全力で引き裂いた。辺りに血が飛び散り、地面に血溜まりを作る。それを何度も何度も繰り返し、対象は段々とその鱗を落として行った。

 

 

「対象にはまだ核反応があります。核の精製を止めていません。追撃します―――」

 

『No.1』がそう言い放った時だ、先程とは違う鮮血が顔の辺りに飛び散った。それが『No.5』と『No.4』の血である事を視認した時、既に視界に二人と対象の姿は無かった。

 

咄嗟に4人は回避行動を取った。対象は後ろ側に背中を“回して”から低くファイティングポーズを取っていた。

お陰で丁度羽の部分に位置していた『No.4』と『No.5』は羽に腹から顔を引き裂かれ、その生命活動を停止している。

 

4人が一旦離れている間に対象は再び羽を点滅させ、力を生み出し始める。

 

その紫電は体中に循環し、散々切り刻まれた傷を癒やしていく。

 

そして『No.3』と『No.6』が横から切り刻もうと突進する。それが二人の最後の行動だった。

 

 

『No.3』のナイフは背中に刺さったが、『No.6』のナイフは左手で掴まれ、紫電が張り巡らされた掌の中で呆気なく破壊された。

 

そしてその手はそのまま『No.6』の頭を掴み、腐ったスイカの様に脳漿を散らさせた。その頃『No.3』は心臓を右手で貫かれ、既に絶命していた。

 

 

「『No.2』、もっと距離を取ることを推奨します」

 

 

『No.3』と『No.6』が交戦している間に後方まで下がっていた『No.1』の言葉に、『No.2』は呼応するように退き始めた。対象は背中に刺さったナイフを抜き、その中の紫光(しこう)を滾らせる。

 

勢いを付けて投擲されたナイフは射線上に居た『No.2』の脳味噌を掻き混ぜ右目を抉り貫き、『No.1』のこめかみを掠りながら向こうの壁に着弾した。

 

 

最後に残ったのは『No.1』ただ1人。少しばかり血に染まった白髪を靡かせ、拳を握った。

 

「対象の沈黙は確認できません。戦闘を継続します。」

 

 

『No.1』は助走を付け、特に強化もされていない拳で殴り込む。

 

 

 

その拳は―――

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

気づけば俺は、白い空間で蹲っていた。何も存在しない、真っ白な世界。俺にとっては申し分ない1人の世界だった。

 

しかし、完璧とは言えなかった。眼の前にこんな奴が居たら誰だって不愉快になる。

 

 

 

真っ黒な体に、おおよそ人とは言えない外見。きっと俺の躰を弄くり回した本人であろう、まるでエイリアンみたいなそいつは何も言う事は無く只俺を見つめている。

 

 

「sjikdne?」

「何語だよ、それ。漸く喋ったと思ったら……まともな言葉喋ってくれ」

「me,mdykwkindi」

「me意外聞き取れないんだが。出直してこい」

「…」

 

 

そいつは分かりやすく項垂れた。こう言っちゃ何だが、昔こんな子供に会ったことがある。学校の職業体験で出会った妙に高飛車で、だけど子供っぽさが全面に出ている子だった。

 

 

 

こいつをじっと見つめてみると、そいつは首を傾げて来た。きっと顔のせいであどけなさが消されているのだろう。

 

 

 

さっきまで何も感じず、苦しいままだったのにこの心地よさは一体何なのだろう。

 

「なあ…お前は一体何なんだ?いや、きっとゴジラに関するなんかなんだろうけど。」

「…?」

 

 

そいつはまたもや首を傾げるだけだ。しかし、少しは元気が出てきた。そして、これから何をしたいのかも。

 

「なあお前、一つお願いを聞いてくれるか?」

「iey?」

「どっちか分かんねぇな…まあ良い。これは俺の身勝手な願い事だが…」

 

 

馬鹿な俺はそいつを信じて願った。

 

 

 

「俺の意識を、戻してくれないか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――目覚めて最初に、俺はまず殴られた。そして、自分は何故か黒い装甲の様な物を纏っていた。しかしそれは崩れかけていて、所々俺の肌が露わになっていた。

 

 

「痛ってぇ…」

「対象の初の発声を確認。データの転送を完了しました。」

 

 

突然の事に理解が追い付かなかった。少女は謎のライダースーツみたいな装備(?)を着ていて、こめかみら辺からは血が垂れていた。

 

「一体何なんだよ…!」

 

 

周りを見渡す。

 

 

すると、周りには少女達の屍体が所々に落ちていた事に気付く。頭が無い者。心臓を貫かれた者。腹から一直線に切られていた者。

 

 

「う゛ぅっ…」

 

 

すぐさま強度の嘔吐感に襲われ、地面に黄土色の液体をぶち撒けた。

 

 

 

「何なんだよ…これ。お前も、何なんだよ!!」

 

 

膝を付き、未だに収まらない嘔吐感に耐えながら目の前の少女に話しかける。

 

 

「対象は未だ沈黙していません。攻撃を続行…」

 

 

その言葉を遮断するように、アラーム音が辺りに鳴り響く。発生源は目の前の少女の装備や、周りの死体達の着ている装備からだった。

 

 

「活動可能時間を超過しました。本作戦は終了しました。」

 

 

突然の終了宣言に頭の中に!?マークが大量に浮かび、嘔吐感が吹き飛ばされる。

 

だが、その理由は空から聞こえた音から理解出来た。

 

 

「ロケット…?」

 

 

 

しかし、そう考えるには些か音が大きすぎるし、普通はこんな都会でロケット打ち上げなんてしない。

 

ならば…

 

 

「…ミサイル」

 

 

性別と種族(?)が変わってもお粗末なままの脳味噌が置かれた状況を把握した時には、既に青空の中からいくつものミサイルの頭が顔を見せていた。

 

 

 

突発的に足が動く。謎の黒い装甲は動く度に落ちていったが気にしなかった。

 

 

そのまま立ちっぱなしになっている少女を抱きかかえ、俺はうつ伏せになった。

 

 

そのまま、何故か背中が熱くなるような感覚に襲われた。自分の顔が紫色の光に照らされ、幻想的な気分にすらなる。

 

 

数回の点滅を経て発射された熱線は数十発のミサイルを撃ち落とした。しかし、撃ち漏らしたミサイルは周囲に着弾して行き、無防備な俺の体に爆風が吹き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――脅威は過ぎ去り散々な姿になった渋谷スクランブル交差点の中心部で、俺は少女を抱きかかえたまま疲れて眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

とある山中の研究所で、加賀は石動と電話をしていた。

 

夜が訪れ、照明が落とされた所長室はブラインドの隙間から月光が差し込んでいた。

 

 

「対象は沈黙しましたか?」

『ああ、丁度ミサイルが着弾する直前にな。そっからまた反応が大きくなって、また小さくなったまま今も動いていない』

「それは良かった」

『君は本当に末恐ろしい奴だ。修正していない渋谷の画像を見た時に、君の作戦の恐ろしさを理解してしまった。……もっと先の作戦が有るのだろう?』

 

加賀は口角を釣り上げ、さぞ嬉しそうに口を動かす。

 

「日本のトップに私の作戦が理解してもらえるとは、限りなく光栄ですね」

 

 

 

 

 

 

『…この作戦は今回を以て中止だ。今後君の作戦を認可する事は絶対に有り得ない。』

 

「…そうですか」

 

 

加賀は電話を一方的に切った。先程の顔とはさほど変わらないように見えるが、額には薄っすらと青筋が立っている。

 

 

「そんな事を言われても…既に次回作の完成は間近です。頭の切れる権力者程厄介な物はありませんね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――翌日、石動首相は階段から“転落”し、意識不明の状態に陥った。二ヶ月経った現在でも意識は回復しておらず、副首相が対策本部長を務めている。




伝令は確認しなくてもしても良いっていう感じなので処理班が確認しなくても問題はありません。(後付け設定)
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