イセリア人間牧場奮闘記   作:あるいてごろりと

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《誰か…。
誰か…助けてください…。》


フォシテスは夢を見る。
助けを呼ぶ女性の言葉を聞いた。
不思議とその声を聞くと、自分の中にあった黒い物が薄れていくように感じた。
それはフォシテスの行動の源でもあるものだ。
しかし、なぜだか悪い気はしなかった。




イセリア人間牧場奮闘記
「牧場主だって苦労しています。」


そこはイセリア、シルヴァラントという名の大陸にある地域の一画であり、そこに建造された施設『イセリア人間牧場』の話――

 

 

人間牧場で特徴的なのは、ディザイアンという組織が周囲の村人を連れ込み無理やり奴隷として働かせる施設ということである。

奴隷となった村人は、何だかよくわからないけどとにかく大きな箱を摩擦力たっぷりの地面の上で手押しによって運ばされる。

 

村人が少しでも休もうものなら、鞭を手にしたディザイアンの兵隊に小言を言われる。

ある時、兵隊が小言のついでで『これぐらいでヒィヒィ言っちゃってなにさ、男のくせに!』と言った時に奴隷の村人たちの反感を買ったらしく、彼らはこぞって集まりジェンダーハラスメント及びパワーハラスメントであると抗議をした。

村人たちは列をなして行進し、どこから持ち出したのか《平等の権利と労働を!》や《働く生き甲斐を求むる!》と書かれたプラカードと拡声器による呼びかけをおこない牧場内でストライキを起こした。

 

牧場内の奴隷監禁部屋にて立てこもった奴隷達をどうにかしようと鞭を手にした兵隊達は厳しめの声や猫なで声など様々な声掛けを試みるも全く反応が無くてしょげそうになっていた。

 

奴隷が働かなければ牧場は機能しない。

それはとある場所へ献上するための『エクスフィア』という特殊な物質を製造・発送が困難になることを意味している。

それに『エクスフィア』は、それを直接肉体に埋め込まれた奴隷の恐怖や悲しみなどを栄養として育ち完成させるものである。

 

声高らかに労働改善を訴える彼らからはきっと『エクスフィア』を作ることが出来ない。

仮にできたとしても、それを装備した者の夢枕に立った奴隷が収入をアップしろとか残業時間の不正申請を辞めさせろとか言ってきそうで怖い。

そう推測し、事態を重く見た五聖刃改めイセリア牧場の牧場主こと、左腕にでっかい金属棒を身につけているフォシテスは奴隷の要求を飲むことを朝のミーティングでディザイアンの兵隊に伝えた。

兵隊の1人が挙手をおこなったので、フォシテスは意見を聞く。

 

「あの、フォシテスさん。

決して否定の意志はないのですけど、本当に粛清とかしなくていいんですか?」

 

兵隊の問いにフォシテスは頷く。

 

「粛清すれば一時しのぎにはなるかもしれないが、いずれたまりにたまった不満を爆発させた奴隷達がストライキもしくはそれ以上のことを起こしかねないからな。

やけを起こしたわけじゃないから心配しなくていい。」

 

フォシテスの言葉を聞いた兵隊は戸惑うような表情をしていた。

兵隊は聞こえないほどの声で小さく「それではプランが…。いや、でも粛清なんてしなくていいのなら…。」とつぶやくと納得した様子を見せた。

 

「それでは、ミーティングを進めよう。」

 

フォシテスが提案したのは、奴隷の労働環境改善である。

従業員である兵隊のマナー指導はもちろんのこと、奴隷がストライキを起こしたのは兵隊の言葉のせいではなく、根源的な理由としてろくに休憩や休日が取れない出勤体制に不満があるものだと考えた。

労働環境改善について具体的に言うと、労働時間は早朝から兵隊が寝るまでという曖昧だったものを基本朝8時から夕方17時までとすること、さらに猛暑日の続く夏季には朝7時から出社して夕方18時退社とする代わりに、気温がピークとなる時間帯の昼休みは3時間設けることを考えた。

もちろん残業はつく上、15分単位で申請可能である。

兵隊達は、リスクを挙げつつも最終的にはとりあえずそれでやってみようと意志を固めた。

 

 

フォシテスは、奴隷監禁部屋の扉の前にて労働環境改善の話を奴隷達に伝えてみた。

話を終えると、奴隷達は扉をゆっくり開け隙間から顔を出して「それ、ほんと?」と確認した。

フォシテスが一度会議で話を通しておきたいが、必ず実行を約束すると伝えると渋々奴隷達は働きだした。

 

(これは他の五聖刃にも伝えるべきことだな。)

 

 

そう思ったフォシテスは後日、毎月第三土曜日におこなわれる幹部会でその旨を説明すると、同期の顔にいくつもの傷があるマグニスから『何で?』と言われた。

当然の質問ではある。

 

優良種たるハーフエルフが劣悪種である人間に対して及び腰になったと捉えられても仕方がない手段に出たのだ。

多少のしっ責は仕方ない。

 

しかし、マグニスの『何で?』はそういう意味ではなかったことを直後に知る。

マグニスは言う。

 

「何でそのレベルの労働環境改善の話をしているんだ?」

 

フォシテスはその発言の意味がすぐには分からなかった。

ストライキが起きたからやむを得ず労働環境を整えると今しがた説明したばかりである。

レベルとはなんだろうか。

マグニスは続けて言う。

 

「そんなの今頃決めている牧場はお前の所だけだぜ。」

 

フォシテスは知ることになる。

ロディルによって技術の進歩した昨今のエクスフィアは負の感情でなくても育成できる上、人間に植え付けるのは少しばかりの栄養を吸い取るのみで、何も装備した奴隷が死ぬことはない代物に変わったということ。

そして、他の五聖刃はすでに奴隷に対しての労働環境を整えており、牧場によっては有給だのプレミアムフライデーだのを設けていることに…。

 




キャラ紹介

フォシテス

五聖刃の1人。
左腕にでっかい金属棒をはめ、右目には眼帯をつけている。
ハーフエルフで長生き。
風属性の魔術を使う。
ある日老婆に抱きつかれてそのまま爆発した過去を持つ。
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