深い夜と化け物退治   作:ゆげさん

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はじまり

 町は暗い。向うの街はとても明るい。素晴らしい、と深司は思った。人が生まれて、繁栄する。結果としてあの明るい街がある。少々不健全なようだが、それもまた人の素晴らしさというものだろう。そして化け物に視線を直す。

 深司は宣言するように、化け物に言葉を吐く。

 

 「だからこそ、お前らを殺さなければいけない。人の陰が生み出したものだ。親が子の世話をするように、人間がお前らを殺してやる」

 

 深司はひとつ踏み出した。化け物は人型ではあるが、右腕が異常に肥大化している。胴体よりも巨大なそれは、化け物の障害となるものを薙ぎ払ってきたことがわかる。それほどに大きく凶悪な武器であった。しかし、長所と短所は表裏一体である。その右腕は巨大であるがゆえに、化け物自身が使いこなせていなかった。深司は、化け物は腕を振ることが精一杯で動きが単調であることに気がついた。

 

 化け物が右腕を後ろに引いた。そしてその腕は、空間を削り取るように横薙ぎに振るわれた。深司は生身の人間である。特殊な能力はない。いくら動きが単調であるとはいえ、それは簡単に深司の命を抉り取るものだった。深司は恐怖感を覚えた。

 深司は大きく踏み込み、化け物の懐まで潜りこんだ。

 

 「弱い」

 

 深司は、右腕を斬り飛ばした。すかさず脚も斬り飛ばす。化け物は仰向けに地面に倒れる。

 

 「その命、貰い受ける」

 

 化け物の心臓に太刀を突き立てた。

 

 

 この世界に於いて、化け物は人間から生まれる。人間の欲望、願望、悪意、憎悪、執念、希望。人間の、ありとあらゆる感情や望みから生まれる。大きな願いや感情から生まれた化け物は、実体を持ち、人を襲うようになる。その中でも、古来から人間に災いをもたらしてきた化け物を妖怪、近代になって人間に害を与えるようになった存在を都市伝説、と呼ぶようになった。

 

 

 深司はある妖怪を殺すために化け物共を殺している。その妖怪を殺し、因縁を終わらせるために、化け物共を殺し続けるのだ。

 

 

 

 カーテンの隙間から日が差した。深司の顔を照らしている。掛け時計は午前七時を深司に知らせた。深司は、布団からのっそりと動き出した。シャワーを浴びて、制服に着替える。朝食を済ませ、準備が整った。

 

 「いってきます」

 

 深司は、安堂寺高校に入学したばかりの高校一年生である。新しい環境に心を躍らせている。なにしろ、高校が始まるまでは、化け物を狩る毎日だったのだ。そんな血塗れな日々から抜け出せるとなると、心躍らせるのも仕方がないだろう。

 

 

 

 しかし、深司が願った日々は存在しなかった。深司に、普通の生活、学生を楽しむことなど、できはしなかった。深司の運命は、あの妖怪と出逢ったあの時から、醜く歪んでいたのだった。

 

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