深い夜と化け物退治 作:ゆげさん
安堂寺高校に入学してから数日が経った。深司はクラスメイトとそれなりに話せるようになった。このクラスは良い奴が多そうだな、と深司は思った。
「俺、将来の夢は仮面ライダーだったんだよな。」
このように無邪気な人間がいるからだ。この人間の名前は田中誠司。似たような名前だったことから、クラスの自己紹介が終わったあとすぐに話しかけてきたのだ。
深司は少し話しただけでも、誠司は悪い人間ではないと感じた。というよりも、悪いことを考えられるほど頭が回りそうにない、と中々失礼なことが誠司の喋り方や雰囲気から感じ取れたからだ。
「だった、なんだな。」
「ああ。だって現実じゃ変身なんてできやしないだろ。」
「それはそうだ。普通に考えればな」
建設的な会話をしているようで中身は特に詰まっていなかった。
深司はたったの数日だが、この学校生活が楽しいと感じた。自分にはなかった精神の潤い。それを感じることができているからだ。
普通の生活。やっとそれを感じられる。そう深司は思った。
「そういや、次は移動教室だったな。」
「あっ、そうだった」
時計は授業開始五分前を指していた。二人は筆記用具と教科書を引っ掴み、特別教室に駆けていった。
授業は図書室で行われた。
「皆さんには、この図書室で調べ物をしてもらおうと思います。テーマはなるべく日本に関わることにしましょう。この図書室は、ほかの高校よりも蔵書数が多いです。普通では知ることのできないことが知られるかもしれませんよ。」
教師の言う通り、図書室の本は多かった。街の大きな図書館ほどではないが、それの十分の一はあるかと思われた。本棚には小説の文庫本や単行本、最近流行りの漫画。また、郷土史や歴史書などが並んでいた。
深司はそれらを眺め、圧倒されていた。不思議な威圧感があった。
「この町の歴史が知れるのか。」
深司はポツリと言葉をこぼした。
深司はある妖怪、化け物と言い換えた方がよいだろうか、それを探している。それは、この地に根付いている存在であると感じていた。
深司は他の化け物共を狩ることで、それへの足掛かりが得られると考えていた。しかし今、深司は思いがけないチャンスを得ることができた。
無論、化け物狩りだけで情報を得ようとしていたわけではない。街の図書館に赴き、関係がありそうな書籍を調べた。しかし、どこにもそれの情報は載っていなかった。何故かはわからなかった。
けれど、高校が独自に所有している史料ならば。そう期待していた。案外学校や公民館などで、あまり一般には出回っていない本があったりするものだ。
「よし、誠司。ちょっと手伝え。」
「どうした急に。別にいいけど。何探すの。」
「この街の歴史。」
「なんだか堅苦しいな。楽なものでもよかったろうに。」
「そう言うな。意外と歴史を知るのは楽しいぞ。過去が実際に存在したことを実感できるから。」
「ちょっと何言ってるか分からない。どんな感じのやつ持ってくればいいの。」
「ちょっと分厚めの郷土史。」
「かしこまり。」