深い夜と化け物退治   作:ゆげさん

4 / 5
やるしかない

 馬鹿げている。そう言いたげに深司は本を閉じた。

 

「郷土史がわざわざこんな話を載せるのか。まるであいつじゃなくて、安堂寺の人々が悪いかのように書かれてるじゃないか。」

 

 深司は混乱を抑えきれなかった。あの化け物のルーツが『これ』だとは信じられなかったからだ。しかし、それ以上に深司にとって気になる言葉があった。

 

 『奪う力』

 

 深司にとっては忌まわしい力であった。深司はその力によって家族を殺されたのだ。その力が本来、『与える力』であったということに戸惑っていた。

 

 深司が混乱と憎悪で、脳が働かないままウンウン唸っていると、誠司が話しかけてきた。

 

 「深司。あと十五分くらいで授業終わるぞ。プリントにまとめなきゃいけないだろ。」

 

 「ああ。もうそんな時間か。ありがとう。」

 

 一旦は落ち着くことができたようだ。深司は、流し読みした内容を軽く思い出しながら、プリントにそれらをまとめた。深司はものを要約するのが得意なほうであった。書き終わったプリントを教師に提出して授業は終了した。

 

 その後の授業は、特に目立ったことも起きずに終わった。深司が、自分は数学が大の苦手、ということに気づいただけであった。

 

 学校が終わり、帰路に就いていた。学校では重要な情報を得ることができた、と深司は郷土史のことをふりかえった。

 

 途端、深司の周りの空間が歪む。

 

「これは。」

 

 深司には心あたりがあった。

 

「奴だ。怪物だ。」

 

 

 

 怪物は存在しているだけで、世界を歪ませた。その身から放たれる、大きすぎる妖気が空間に影響しているのだ。世界の理に反していながらも存在し続けていた。

 

 名を『暁天』。かつて人に寄り添い、しかし人に害され、災厄を振り撒くようになった妖怪であった。

 

 

「ずいぶんと楽しんでるじゃないか。せっかく安心できる場所だったのに、僕のことを調べちゃってさ。そんなに求めてくれるなよ、照れるなあ。」

 

「黙れ化け物。」

 

「おいおいおいおいおい。ひっどいなあ。暫くご無沙汰だったから逢いに来てやったっていうのにさあ。まあ、いいよ。それでこそ『おにいちゃん』だもんねえ。」

 

「その呼び方をお前がするな。穢らわしい。ふざけるな。」

 

「いやぁ大変だったよ。本に自分の目を入れるなんて結構結構難しくてさ。力をたっくさんぶち込んで、やっと見えるようになったんだよ。まあそんな苦労をしたお陰で、君の普段の生活を知れちゃった。」

 

 暁天は嬉しそうに口を歪ませて言った。何故暁天がここにいる、と深司は焦っていた。深司は今、刀を持っていなかった。ただの無力な、ただの人間だった。

 

「なぜ。なぜ、お前がここにいる。」

 

「あ、それ聞いちゃうんだ。いいよいいよ。答えてあげちゃうよ。」

 

 暁天はまた、ひどく嬉しそうに口を歪ませて嗤った。

 

「お腹空いてたからねえ。お友達、食べちゃった。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。