目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が 作:小林司
長らくお待たせ致しました。
駆け足で行きます。
「お二人とも、ありがとうございました」
「いいえ。むしろ私達があなたを付き合わせてしまったんですから。お礼を言うのは此方です。最後、面倒なことになりましたが、今日はありがとうございました」
「私からも。ありがとうございます」
京阪電車淀駅にて。
私は、ステイゴールドさんと池沢トレーナーに付き添って京都レース場に来た。
来たまでは良かったが、いざ帰ろうと思ったら、京阪本線がトラブルで運転見合わせになってしまったのだ。
このままでは、スペシャルウィークさんのレースまでに、阪神レース場に戻れない。
困っていたら、駅員から『ここから西山天王山駅まで行けば、阪急電車に乗れる』ことを教えてもらった。
一応、路線バスが通っているが、考えることは皆同じ。
バスは混雑、タクシーも順番待ち。加えて道路も渋滞している。
しかし、私だってウマ娘だ。
普通に歩いていったら45分位掛かる距離でも、この足で走れば10分あれば余裕だ。
持っているものは、スマホと財布、領収書を纏めたクリアファイルのみ。これらは肩掛け鞄に入れている。
まあ、色々なものが付いた勝負服を着て走る娘もいるんだから、これくらい大したことないだろう。
問題は服装だが、すこぶる丈夫なトレセン学園の制服だ。破れるようなことは、……無いと思う。
「それでは失礼します」
「気を付けて!」
「また学園でお会いしましょう!」
二人に見送られながら、走り出す。
「おお! これがウマ娘専用レーンか」
車道の一番左車線は、青く塗られ、ウマ娘が走っているイラストで示されている。
制限速度は50㎞/h。因みに、隣の車道は40㎞/h……。車より速く走れるんだな……。
「お先~!」
「どうも~」
信号待ちをしていると、けっこうレーンを走って行くウマ娘が多いことが分かる。
私のようにただ走っているだけ(?)の娘もいれば、郵便配達をしている娘に、商談に向かうのか、娘と言ったら失礼に当たりそうなOLらしき壮年のウマ娘もいる。
「あれ、トレセン学園?」
「トレセン生が何でこんなところに?」
当然、ウマ娘だから聴力も良い。
私について話しているであろう声もちらほら。まあ、目立つ格好だからね。仕方ない。
西山天王山駅に到着。
えっと……ここからなら仁川駅まで一枚で良いのか。きっぷを購入……。
あ! 領収書もらい忘れた。
「すいません……」
改札口の窓口へ。
「はい?」
「領収書、もらうのを忘れてしまって……」
「ああ。
「これです」
一応、乗車券を提示する。
「はい、ええですよ。……宛名はどうします?」
あ、宛名か。
「えっと『中央トレセン学園』で」
「……はい。お待たせしました」
「ありがとうございます」
領収書をもらって改札を入る。
今の駅員、私が『トレセン学園』の名を出した途端、此方を凝視していた。
驚いた感じの口調で「トレセン……生徒会……!」って呟くのが聞こえてきたから、まさかトレセンの学生だとは思わなかったのだろう。
電車を乗り継いで、阪神レース場まで戻ってきたのは、出走ギリギリだった。
もうファンファーレも終わったらしい。ゲート入りの途中だ。
スピカメンバーがどの辺りに居るか、観客が多くて全く見当がつかないので、適当な場所でレースを眺める。
さあ、いよいよスタート。
ゲートが開いて……って、ちょっと出遅れた!
でもちゃんと追い付けている。
あ……。あれ、あの娘にマークされているな。土飛ばしてるし。
しかし、そんなものはものともせず、自分の走りを続けている。さて、何処から仕掛けるか。
お! 来た来た!
三人纏めてごぼう抜き、土掛け娘のタックルもかわして見事一着でゴール。
一番人気で見事一着。
走りには全く問題なかった(近くにいた見知らぬトレーナー曰く)。
問題は、この後行われるウイニングライブということは、誰が予想しただろう…………。
あまりにもお客さんが多く、スピカメンバーと合流出来る気配が無い。
といっても、今日はまだ5レース残っているし、帰りは駐車場で待ち合わせに決めてあるので、このまま別行動になっても問題は無いんだけど……。
そして、全てのレースが終わり、いよいよウイニングライブが始まる。
さてと。スペシャルウィークさんは、と言うと……。
あちゃー。なんですか? これ。
例えるなら、『棒立ちウイニングライブ』とすべき、散々なライブが終わり、帰路へつく。
結局、レース場では会えなかったメンバーと合流。
スペシャルウィークさんは泣き腫らした顔で、サイレンススズカさんが慰めていた。他のメンバーも気を遣ってか、そおっとしている感じだった。
そんな状況だったので、私は何も言えなかった。
レースには勝ったのに、何か別のものに負けた、そんな感じ。
センターが棒立ちのライブなんて、下手したら前代未聞だろう。
学園に戻ったら報告書を作成し、それを明後日提出する予定なので、まだ会長の耳には入っていないだろうが、あの人は何て言うか……。まあ、何となく予想は出来るけれど。
帰りは、明日がレースのステイゴールドさんと池沢トレーナーが居ないので、ゴルシさんとの二人旅(?)になるのか……と思っていたら、ウオッカさんが乗ってきた。
曰く、『オレは格好良いウマ娘を目指しているから、先輩の格好良い運転が見たい』だって。別に私の運転は格好良くないと思う。
行き同様、宝塚ICから高速に乗るため、下道を走って行く。
後部座席に座っているウオッカさんは、行きのゴールドシップさんの如く、大はしゃぎ。MT車についても知っているらしく、身を乗り出してシフト操作を興味深そうに眺めていた。そう、高速に入る前までは……。
高速に入ってからのことは……お察しください。
借りてきた猫のようでした……。
スピカトレーナーの運転があれなので、中国道に入ってすぐ、他の車を抜く際に追い越してしまった*1。
しかし、名神に入って少し行った辺りで抜き返された*2。
運転、適当だなぁ……。これ、新名神入ったら再び抜くことになるだろう*3。
行き同様、適度に休憩を取りながら走る。
学園に戻ったのは真夜中のことだった。
勿論、スピカメンバーは出発前に『外泊届』と『早朝深夜帰寮届』を提出しているのでこんな時間になっても問題ない。
私は? って?
実は、以前門限破りをしてしまったとき、何のお
真夜中に外出しても、早朝に帰ってきても。生徒会の業務が理由であれば問題無いとのこと(勿論、正当な理由が無ければ大変なことになる)。
しかも、寮の鍵の携行も許可されているのだ(寮長とは違い、栗東寮・美浦寮両方)。
そんなわけだから、今回スピカメンバー(全員栗東寮)が帰寮するための鍵開けを頼まれている。
寮の玄関扉を解錠。
「クーニ先輩、お疲れ様でした」
深夜帯なので、小さな声で話してくる。
「スペシャルウィークさん、昨日はお疲れ様でした。遅くなりましたが、おめでとうございます」
「ありがとうございます! それでは」
「「お休みなさい」」
スペシャルウィークさんが、サイレンススズカさんと一緒に入って行く。
「クーニ先輩、今日はありがとうございました」
「先輩、運転カッコ良かったッス! また乗せてください」
「はい。お休みなさい」
ダイワスカーレットさんとウオッカさんが入って行く。この二人もさっきの二人同様、同室だ。
同じチームで同室が二組。多くないか? 偶々だろう……。
「クーニ、お疲れ~」
「ゴルシさんも。お疲れ様でした。あ、施錠よろしく」
「おけ」
ゴルシさんが入り、内側から施錠したのを見届ける。
さて、全員入ったな。
「私も帰ろう」
そう、一人呟いて歩き出す。
私は美浦寮。前に名簿を見たことがあるけれど、共に同じ規模の寮なのに、栗東寮の方が人数多いんだよな……。何故だろう?
部屋に戻り就寝……。
朝、例の如く爆音目覚まし時計で起こされたことは、言うまでもないだろう。
……日曜日なんだから、寝かせてください。