目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が   作:小林司

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本作は、アニメ・アプリ ごちゃ混ぜです。

そのため、『チームに所属する』ウマ娘もいれば、『専属契約』を結ぶウマ娘も居ます。

前にもお話ししております通り、私はウマ娘に全く詳しくないので、不自然な点が多いと思います。あまりにも「これは有り得ない!」という点がありましたら、ご指摘いただけると有り難いです。




 怒涛(ドトウ)の視察

 

生徒会副々会長の仕事には、生徒会の承認が必要な書類のチェックがある。

 

会長が目を通す書類の数を御存知だろうか?

 

会長まで上げる必要の無い書類もあるので、私が目を通す書類は、あの数の3倍以上はあるのだ。

 

そもそも会長が目を通すその書類も、一度私が目を通してから渡すので、私の仕事は想像以上に多く、忙しい。

 

異を唱えたところで、『君はトレーニングが無いのだから、それぐらい余裕だろう?』だって。

 

だから、放課後の生徒会室は、私は在室の場合が殆どだ。まるで電話番……。

 

余談だが、生徒会室の電話が鳴ることは稀だ。

 

 

 

現在、その書類のチェック中。確認して押印しては、次の書類を確認。

 

えっと、次は……『契約書』だ。

 

頭に『専属・チーム』と、丸で囲む部分があるが、専属の側に丸が付いている。

 

ん? 『ワンダーアキュート』ああ、彼女か。専属契約を結んだらしい。

 

承認の欄に押印し、次へ。

 

えっと、『アルバイト許可申請書』か。

 

私が人間だった頃の世界の競とは違い、ウマ娘世界のレースは所謂(いわゆる)『賭け事』ではないので、その賞金の出所は謎だけれど、レースに出走し、良い成績を収めれば、ある程度の賞金が手に入る。

 

それでも、家族のためにお金が必要という理由でアルバイトをする生徒はいる。

 

例えば、アイネスフウジンさんとか……。って、この書類、彼女のものじゃないか。

 

幾つかのバイトを掛け持ちしている筈だ。

 

とはいえ、レースで遠征があったりするので、長期のバイトは少なく、短期アルバイトを幾つか掛け持ちしている。今回は何処で働くのだろう。

 

えっと……、『にゃんにゃん倶楽部』

 

へぇ~。

 

……へ?

 

もう一度、目を通してみる。見間違いの可能性もあるし。

 

『にゃんにゃん倶楽部』

 

…………は?

 

 

 

見間違いではなかった。

 

この店名、一体どういうお店なのだろう?

 

確認もせずに承認するわけにはいくまい。とりあえず、指示を仰ごう。

 

書類から顔を上げる。

 

室内を見回すと、全員在室だった。

 

「ルドルフ会長」

 

そう、声を掛ける。

 

「ん? 今呼んだのはクーニか」

 

「はい。私です」

 

「用件は何かな?」

 

私は今の書類を手に取る。

 

「此方の書類を見ていただけますか?」

 

「どれどれ? ブタノカックーニの依頼で書類を確認しよう。()()()()()の依頼で()()()()()ン」

 

ツボったのか、肩が震えている会長。

 

…………?

 

「か、会長……」

 

「……」

 

「はい……」

 

今の会長の一言に、青ざめるエアグルーヴ副会長と、関わりたくないのか露骨に無視をしているナリタブライアン副会長。そして、呆れつつ書類を差し出す私。

 

「ありがとう。どれどれ……」

 

まだ肩震えてる。

 

というか、人の名前でダジャレを考えるなよ。失礼極まりない。

 

「これは?」

 

肩の震えが止まったと思えば、頭上に巨大な『?』マークを浮かべ、こちらを見てくる。

 

「いや。見れば分かるでしょう?」

 

「分からないから聞いたのだが?」

 

「それならば、私も同じです」

 

「君に分からないことがあるのか?」

 

「分からないことしかありませんが?」

 

「私なら分かると思ったのか?」

 

「三冠ウマ娘ですから」

 

「それを言うならば、彼女もだろう?」

 

そう言って視線をずらす。

 

「……」

 

しかし、その当人は無視を続けている模様。

 

睨み合う、と言うと言い過ぎだが、互いに譲れぬ状態だ。

 

「これはどうするべきだと思われますか? 会長」

 

「君はどう思う?」

 

「質問に質問を返さないでください」

 

「……宜しい。ならば、この店に視察に行ってもらおう」

 

は?

 

「私が、ですか?」

 

「そう言ったつもりなんだが」

 

「拒否します」

 

「君に拒否する権利を与えたつもりはない」

 

「拒否権は与えられるものではないはずです。最初から私は保有していました」

 

「ならば、その拒否権は私が剥奪する。行ってきなさい」

 

はあ~。盛大に溜め息をつく。

 

「分かりました。行ってきます」

 

そう答えると満足そうに頷いた。

 

全く、人使いが荒いよこの人は。

 

「その代わり、当日の交通費やその他出費は、生徒会経費にしますからね!」

 

ちょっと強めに言っておく。

 

「交通費? 車で行けば良いじゃないか」

 

あー! もう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室での(プチ)騒動翌日。

 

放課後、私は駐車場へと歩いている。少しだけイライラしながら。

 

これ、他人から見たら額辺りにムカマークの一つや二つ、見えるんじゃないだろうか。

 

まあ、今私がイラついている理由に、生徒会は全く関係していないのだが……。

 

 

 

 

 

車を借りるために理事長室へ向かって、その室内にて。

 

「はい。では、こちらが車のキーです」

 

「はい、ありがとうございます」

 

たづなさんから鍵を預かる。

 

「あと、此方(こちら)もお渡ししておきますね」

 

「はい……?」

 

もう一つ。これは……給油カードか?

 

「そちらは学園指定の給油カードです。そのブランドのガソリンスタンドであれば、何処でも利用できます。それで給油なさってください」

 

あー。そういうこと……。

 

「分かりました。それでは行ってきま……」

「たづなよ」

 

そう言って部屋を出ようとしたところ、理事長が秘書の名を呼ぶ。

 

「はい」

 

たづなさんと一緒に、私も理事長の方を見る。

 

……あれ?

 

何時もならば扇子に書いてある単語を口にしてから開くのに、今回は既に扇子を開いている。

 

えっと……『提案』?

 

「その鍵、いっそのこと彼女に預けてしまうのはどうか?」

 

はぁ!?

 

というか、いつものあのアホテンションは何処へ?

「なるほど! そういうことですか」

 

えっ? たづなさん、どういうこと?

 

「その通り!」

 

あ、いつもの理事長に戻った。

 

「今この学園にMT車を運転出来る者は、彼女しか居ない!」

 

ちょっと間違っている。自家用車を持っていないトレーナーの中には、MT車の免許を持っている者は居ない、という意味だ。

 

マルゼンスキーさんや、スピカトレーナーはMT車を運転出来るが、自家用車を所有しているので、学園の車を使う機会は稀だ。

 

……えっ? スペシャルウィークさんのデビュー戦はって?

 

あれが、その『稀』だったんだよ……。

 

「それ故、あの車を使う者は彼女しか居ないし、仮に居ても他の車を回せば良いだけの話! だから、あの車の鍵はクーニ、君が持っていなさい!」

 

え……。

 

「事故が起きた時が大変であろうから、たづなかさつき、私の何れかに一報はもらいたいが、好きに使ってくれて構わない!」

 

えー。

 

「そ、そうですか……。良いんですか……」

 

「うむ! では、気を付けて行ってきなさい!」

 

「いや、要らないんですけれど?」

 

「遠慮は要らん! 自由に使いたまえ!」

 

半分涙目でそう伝えるも、満足そうに笑っている理事長には何を言っても無駄なのだろう……。

 

 

 

 

ちょっと長めの回想終了。

 

そういうことがありました。

 

学園の車の鍵を持っているなんて知られたら、今以上に会長から雑用を押し付けられかねん。

 

涙目で『要らないです』って訴えても通じず、半泣きで理事長室を出たものの、考えてみたらもっとはっきりと拒否の意思を伝えるべきだったな、と思い自分にイライラしているのが現状だ。

 

駐車場に到着。我が愛しの(?)『世紀末覇王号』。

 

実は、この車を運転するのはこれで5回目だ。

 

門限に帰らず失踪の可能性がある寮生を、寮長と一緒に探した時。『勝負服を部室に忘れた!』と(なげ)く娘のために、中山レース場まで持って行った時(因みに、その娘のレースはGⅡでした……*1)、その他諸々。

 

さてと。目的地はそんなに遠くないが、油断すると危険だ。無事に行ってこれるよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ねこ)カフェでした……。全然怪しいお店ではなかった。

 

現に今、私は周りを数匹の猫様(ねこ)に囲まれ、注文した商品の到着を待っている……。至福の空間なり。

 

店名から察するべきだったのかもしれない。

 

だが、こういう名前の如何わしい店は何度か見たことがあったため、警戒するに越したことはないだろう。大目に見て欲しい。

 

あ、でももし本当に如何わしい店だった場合、この姿でどう対処すれば良かったのだろう?

 

ウマ娘の脚で本気で蹴れば、人間一人あの世へ送ることなど容易い。

 

殺ってしまった場合は正当防衛を主張すれば良いのだろうか?

 

『急にトモを触られてビックリして、無我夢中で脚振り回したら。気付いた時にはその人息してませんでした……』とかで誤魔化せそう?

 

ちょっと強引かなぁ? そんなところに行ったってだけで、言い逃れが難しい可能性も……。

 

「お待たせ致しましたぁ~。肉球ラテですぅ~」

 

おや、考え事をしている間に、注文の品が届いたようだ。メニューを見て一目惚れしてしまった肉球のラテアートが施されているカフェラテ……あれ? 今の声……。

 

って、メイショウドトウさん!

 

彼女とは面識が無いものの、喋り方に特徴があることは聞いている。

 

「あれれぇ。生徒会の方ですか?」

 

ガシャーン!

 

おいおい。私の正体に気付いて慌てたのか、持っていたお盆を落としてしまう。アルミ製らしく、そこそこ大袈裟な音を立てながら落下。

 

「ごごご、ごめんなさい~!」

 

音こそ立ったが、空だったため被害は無し。

 

「いや。お気になさらず……。えっと、メイショウドトウさん」

 

名前を言うと、可愛く首を傾げる。

 

「あれぇ? 私の名前……」

 

「生徒会役員ですから。生徒の顔と名前は覚えてます」

 

これは本当だ。

 

走らないからトレーニングが無い。生徒会の仕事もない日は暇なので、その時間を使って一生懸命覚えた。

 

そのお陰で、メイクデビューを済ませている生徒なら、一目瞭然だ。

 

「申し遅れました。生徒会副々会長のブタノカックーニです。宜しく」

 

「あ、こちらこそ……宜しくお願いしますぅ」

 

「ところで。何時(いつ)からこのお店で働いているんですか?」

 

そう尋ねると、慌てて手を振る。

 

「ちゃんと、学園に許可貰ってますよぉ? 無許可だと思いましたか?」

 

…………おい、会長。

 

あのプチ騒動(?)でのやり取りだと、知らないような口振りだったが。

 

 

 

 

スマホを取り出し、会長に電話を掛ける。

 

「あ、会長ですか?」

 

『ああ。私だ』

 

「会長、知ってたんですね?」

 

(ねこ)カフェだろう?』

 

おい!

 

「この野郎」

 

『良いじゃないか。たまには息抜きも大事だ。それに、君は(ねこ)が好きなんだろう?』

 

「まぁ……。そうですけど」

 

『元は私が悪いのだが、君には沢山の仕事をお願いしているからね。今日はゆっくりしてきなさい』

 

「分かりました……」

 

(ねこ)カフェでゆっくり出来るなんて……。私はトレーニングの真っ只中だからな。()()()とも羨ましい限りだ』

 

しれっとダジャレ言い放たれた。本当、この人ダジャレ好きだよなぁ。

 

『おっと、いまのは冗談だよ。ゆっくりしてこいと言ったのは私だからね』

 

まあ、真面目な話にダジャレぶち込んだら、いくら私でもキレますからねぇ。

 

「ところで……」

 

『それじゃあ。ドトウに宜しく』

 

あ、切りやがった!

 

「会長! 話まだ終わってませんけど……」

 

もう聞こえないよな。

 

 

 

溜め息をつきながらスマホを片付ける。

 

ふと、隣に立ったままのメイショウドトウさんを見ると、頭の上に猫様(ねこ)が乗っていた。

 

「メイショウドトウさん。その子は?」

 

「この子はメトちゃんですぅ」

 

メトちゃん。可愛い……。

 

あれ? 撫でようとしたら(はた)かれた。

 

「この子、私とは仲良しなんですが、他の人が触るのを嫌がるんです……」

 

なるほど……。

 

 

 

結局、会長はこの店のことを知っていて、常日頃莫大な量の仕事を抱えている私を、遠回しに休ませてくれたのだった。

 

休ませてくれたのは有り難いのだが、そもそもの仕事量を減らすことは出来ないんだろうか……。

 

愚痴を言っても返事は決まっているだろうから、黙っていよう。

 

 

 

結果的に、メイショウドトウさんのお仕事ぶりを見学するだけになってしまった感じ。

 

怒涛の視察、といったところか……?

 

ん? 怒涛(ドトウ)の視察。

 

やべ。これ会長には黙っていよう。『人の名前でダジャレ言うな』といった本人がこれでは示しがつかん。

 

 

 

 

*1
ウマ娘が勝負服を着て走るのは、GⅠレースのみ。つまり、そのレースで勝負服は不要だった。

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