目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が 作:小林司
本作品は、アニメ準拠のオリジナルストーリーです。
アニメの設定では本話の時点で、ウオッカ・ダイワスカーレットが各一勝。スペシャルウィークが二勝してからの話になります。
本話では作中時点で、ウオッカ・ダイワスカーレット・スペシャルウィーク三人とも、まだ一戦一勝ということになります。というか、します。
実際、ウオッカ・スカーレットのデビュー戦は(06年)10月で、スペは(97年)11月なので、この三人を同年デビューとすると、既に辻褄合わないんですよね……。
因みに、皆様御存知とは思いますが、スペちゃんの二戦目(二勝目)は、セイウンスカイ デビュー戦の翌日だったりします。年明けてます。
「頼も~う!」
ある日の放課後。生徒会室の自分の執務机で、いつも通り仕事をしていると、突然ノックも無しに乱暴に扉が開かれた。
外れそうな勢いだったが、外れた気配はない。顔を上げずに、何事もなかったかのように仕事を続ける。
「なんだこれは~!」
そう怒鳴りながらやって来る。この声……。
「はい。何でしょう?」
私の執務机まで来たのが分かったので、顔を見て話し掛けた。
おお、左右で目の色が違うのか。あ、言葉通りの意味ではなく、文字通りの意味で……。
「これ。一体何なんだ!」
そう言って机に叩きつけられたのは、『チーム一覧表』の冊子。最新版の奴だ。
しかし、ちっこいなぁ。この娘。
「えっと? 何処か不明な点がありましたかね?」
「ここ、これが間違ってるの!」
そう言いながら頁を開いて指を差す。
「えっと……」
その部分に目を落とす。
『チームカノープス』
南坂トレーナー
ナイスネイチャ・イクノディクタス・ダブルジェット
そうだ。今回からチーム名と共にトレーナーの名前も入れるようになったんだっけ……。
しかし、間違っている所なんて無いと思…………。
「あっ!」
声を上げてしまった。
「でしょ! ターボの名前が間違ってるの! 一つも合ってないじゃん!」
「本当ですね。申し訳ありません、ツインターボさん」
謝ると満足そうに頷いた。
「分かれば宜しい」
この態度、何様なのだろう。私は気にしないが、こういうのを気にする人もいるから注意してもらいたいものだ。
「……」
しかし、何処か腑に落ちないのか、それとなく納得ずくな気がする。間違えた理由が知りたいのだろうか。
実は、この件には少し嫌な予感のする理由がある。
「今回の件はですね。私の不手際です」
「というと?」
「いつもなら、この冊子の更新・印刷依頼・データ確認は全て私が行っているのですが、今回だけ私が関わっていないんですね」
「へ?」
決して誤魔化すつもりはないが、頬を掻きながら説明してゆく。
「その、データを更新した日は所用があって外出していたんですよ」
浦和へ行った日の事だ。
「外出? ……車か!」
「はい、そうですが……」
喰い付きが良いなぁ。
「ネイチャが言ってたのだ。最近、生徒会のお姉さんが車で出掛けるのを見るって。あなたのことだったのか」
まあ、有名ですからね……。
「この間違いは申し訳ありませんでした。次の更新の際に訂正しておきますので、今回は注意書の添付をしておきますね」
「分かった! それじゃあ!」
足早に生徒会室の扉へと向かって行く。
「今度、車に乗せて欲しいから、よろしく!」
一方的に言い切って、生徒会室を出ていった。
なんというか、台風が通りすぎていった気分……。
嫌な予感のする理由。
それを説明するには、少し遡った方が分かりやすいだろう。
あれは浦和へ行く前日の話だ。
放課後。校内で発生したトラブルの処理で、生徒会室へ行くのが遅くなった。
「失礼します」
ノックして許可を得てから入室。
「クーニ。遅かったじゃないか」
「遅くなり申し訳ありません。大樹のウロの中へ落とし物をしたという生徒の対応をしていました」
まあ、ウロの中は深く、取るのは難しい。幸い、落としたのがクラスで配られたプリントだったので、教師に訳を話して同じものをもらってきて渡し、解決した。
「それはご苦労だった」
ありがとうございます。
室内に居るのは会長と私だけだ。
「他のメンバーは?」
「トレーニングに行ったよ。私もこのあと一件、用件を済ませたら合流する」
なるほど。
ところでその用件とは何だろう?
そう思っていると扉がノックされた。
「開いているぞ」
会長がそう返すと扉が開く。
「失礼しまーす」
トウカイテイオーさんだ……。
「あ、クーニさん。お疲れ様~!」
「ありがとうございます」
しっかり挨拶してくれる。会長に会うためだけにここへやって来る面白い娘だが、何だかんだ礼儀正しい。
「カイチョー。何か用?」
どうやらトウカイテイオーさんは会長が呼び出したらしい。
私には関係の無い話だろう。
さてと、自分の仕事を片付けよう。
自分の仕事に着手し、少し経った頃。
「ウイニングライブを疎かにする者は、学園の恥」
えっ? 何か、凄い言葉が聞こえてきた。
「……っ!」
思わず会長の方を見て、彼女の顔にぎょっとする。
鬼の形相というべきか。私に『中央を
これはつまり、トウカイテイオーさんが会長をキレさせた?
しかし、一瞬で元通り。
「スピカトレーナーからの依頼もあった。それ故、テイオーには彼女らに歌とダンスを教えてやって欲しい」
「了解でーす」
なるほど。トウカイテイオーさんと言えばテイオーステップだ。彼女は歌もダンスも得意なのだろう。
私のは思い込みだな。彼女が怒らせたわけではなかった。
となると、あんな顔になった理由は……?
「クーニ」
あれ? 私も巻き込まれるの?
いやね。これでもレースには出たことあるから、
「何でしょう?」
そう返事をして会長のもとへ。
「これをスピカのトレーナーに渡して欲しい」
カラオケの割引券だ。
「それと、明後日の放課後、予約を入れてやってくれ。テイオーとトレーナーを含め、七人で」
良かった。これ、私は含まれていないな……。
「承知しました……。ああ。これですか……」
会長の机には、新聞が一部。
一面記事は、『チームスピカ。レースに勝ってもこの有り様』
写真(しかもカラー)で、私も見た、スペシャルウィークさんの棒立ち。転倒して涙目のダイワスカーレットさん。どうしたらそうなるのか、倒立状態のウオッカさん。これ絶対わざとだろう、ブレイクダンスしているゴールドシップさん。その様子を大きく報じている。
記事本文の通り、酷いものだ……。トレーナーがレースの練習に注力しすぎて、ライブの練習を放置したのだろう。でなければこんなことにはならないはずだから……。
「全員、無事にメイクデビューを勝利できたのは良かったのだが、ウイニングライブがこれでは話にならない」
ごもっとも。
「でも、ボクがいれば大丈夫! しっかり基礎から教えてあげるからね!」
それは心強い。
「じゃあ、ボクはこれで失礼するね! 明日も来るからね~!」
明日もって。何しに来るんだろう?
まあ、明日の私は旅に出ますがね。浦和へだけど。
……。
そういうわけです。
もし、あの時言った通り、トウカイテイオーさんが私が浦和に行った日に生徒会室に来ていた場合。そこで、私の仕事を彼女が処理していた場合……。
ルドルフ会長は自分が代わりに処理しておいたとは言っていたが。確証はない。
そして、ゴールドシップさんから前に教えてもらったことのメモの中に、『ツインターボ。〈途中略〉トウカイテイオーは、彼女の名前を覚え間違えている可能性』とあるのだ。
ツインターボさんの名前を間違えるなんて、彼女以外に考えられない。
まあ、実際どうだったのかはそれとなく確認してみよう。それより、今は冊子に挟む訂正文を作らねば……!