目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が 作:小林司
お久し振りです。メイン作品で息詰まったのでこちらを投稿します。
トレーナー試験 の辺りは、私のオリジナルです。実際のところは分かりません……。
とある日の放課後。全役員が揃っている生徒会室にて。
「クーニ」
唐突に、いきなり口を開いて爆弾発言を放ったのはシンボリルドルフ会長だ。
「君は卒業後の進路とか、何か考えているのかな?」
……。
…………?
「この学園、卒業出来るんですか?」
「君は一体何を言っているんだ?」
「質問に質問を返さないで頂けますか」
「それは君が先だっただろう?」
えっと…………確かに。
「失礼しました。しかし会長。私はご承知の通り記憶がありません。そもそも、ウマ娘のトレセン学園卒業後の進路に、どの様なものがあるのでしょうか?」
知らなければ選びようがない。
「沢山あるぞ。選びたい放題だな」
今までだんまりだったナリタブライアン副会長が口を開いた。
「ウマ娘は身体能力は別として、人間と大差無いと言われています。即ち、人間の女性同様に様々な職業に就けると思っていただければ」
エアグルーヴ副会長が続く。
「理事長が色々な方面にパイプを有しているからな。希望さえ言えば様々な業種から求人を出してもらえる。就職希望者の内定率は100%と思ってくれて良い」
最後、会長が締める。
しかし、内定率100%とは凄いな。
「ま、まあ。最も多いのが……え、永久……」
ん? グルーヴ副会長、なんだか恥ずかしそうだぞ。顔を真っ赤にしてゴニョゴニョと喋っている。普段ではあり得ない光景だ。
「永久就職。つまり、担当だった専属トレーナーとゴールインして、永久就職ってことだ」
あのブライアン副会長も珍しく赤面している。
「それはつまり?」
「トレーナーと
ああ。だから二人とも恥ずかしそうだったのか。
でも、そればかりだったらトレーナー不足しないのだろうか? 特に男性。
「そういう訳だから、当学園のトレーナーはいつも不足している。トレーナー試験が難しい故に少ないのもあるが、一番はそれが原因だろう」
なるほど。やっぱり不足しているんだ。ならば。
「卒業後の進路、ウマ娘のトレーナーとなり、後進の育成に尽力する。というのは?」
「それはあまりお勧めできないな」
あれ? そうなのか。
「何故?」
「ウマ娘が持つ本能だよ。君も知っているだろう?」
なるほど。そういう理由か。
「『走りたい』『誰にも負けたくない』『常にトップでありたい』という、抗い難い欲望ですね」
「その通り。いくら自身が現役を退いた身であっても、自分が担当する現役ウマ娘を見てしまうとね。その本能故に嫉妬という形で出てしまうのだよ。それで情熱を無くして辞めてしまったり、果ては担当への嫌がらせを行ったり……。それがあるから、学園としてもURAとしても推奨していない」
確かに、それは宜しくない。
と、此方が納得したにも関わらず、会長は怪しげな笑みを浮かべる。
「しかし。クーニ、君なら大丈夫じゃないかな?」
「何が、でしょうか?」
「君は『本当にウマ娘なのか?』と、疑いたくなるほど、走ることに全く執着がない」
そりゃあ、中身は人間ですから。
「意外と、トレーナーとしてもやっていけるのではないかな……」
は?
「グルーヴ」
「かしこまりました」
えっ?
グルーヴ副会長が、今の会長の声を合図に、棚から何かを持ってきた。
そして、私の目の前に広げる。
「なんですか、これ?」
「トレーナー試験の過去問だ。筆記試験、解いてみると良い」
無茶苦茶な……。
『トレーナー試験は東大より難しい』そう言われている。
それをいきなり解けって言われてもなあ……。
どれどれ……。
⏱
じっくり。二時間掛けて解いた問題を、グルーヴ副会長が採点していく。
因みに、実際の試験の制限時間は二時間半らしい。
「会長、終わりました」
「どうだった?」
「正答率20%。不合格です」
まあ、当然の結果だろう。
「「「はぁ……」」」
「いやいやいや。会長たちその溜め息何ですか!」
そんな顔されても困るんだが。
「普通に考えてください。何の対策も無しに、急に解けって言われて分かる訳ないじゃないですか!」
難しいどころのレベルじゃないんだよ。何なのあれ! 『初代三冠ウマ娘セントライトが出走したレースの一つ。京都農林省賞典四歳呼馬の現在の名称は?』とか、『トレセン学園生徒会、会長経験者
「仕方無い。図書室に行ってみなさい。参考書や対策本があるはずだ」
「は?」
「一週間、猶予を与えるから、勉強して、また過去問を解いてもらおう」
「拒否権……」
「ない」
この野郎~!
「それでは……始め」
あれから一週間が経った。今度は前回のと別の年度の試験を解くことになった。
会長命令ということで、放課後の生徒会役員としての仕事を全て会長・副会長に押し付けて勉強した。
別に私は勉強が出来ない訳ではない。むしろその逆だ。
人間の私が『デブでブス』だった話は前にしたと思うが、そんなわけだから勉強だけは一生懸命に取り組んでいたのだ。
それ故、中学の頃から成績は常にトップ。試験も常に100点満点。というか、それ以上。
100点満点のテスト、五教科で550点なんてこともあった。
理由は? って?
問題に不自然な点・誤りがあって、それを指摘したら各10点貰えただけの話。
毎回毎回、当然のように誤りを指摘していたから、仕舞いには試験前に教師から問題の確認を頼まれたことさえある。
『試験前に試験問題を、これを解く生徒に見せて良いのか?』って問ったら、『見せても見せなくても。君は絶対満点以上を取るだろう?』だってさ。加えて『これで君に100点以上の点数をあげなくて済む』とまで言われてしまったよ。
因みに、図書室を利用していたら、スイープトウショウさんから面白い本を勧められた。
『トレセン学園七不思議』という本で、我々生徒会に対するものもあるらしい。これが終わったら読んでみるつもりだ。
⏱
「解けました」
全て書き終え、一通り目を通してから申告。
「は? あ、えっと……宜しいのですか?」
顔を上げればグルーヴ副会長が信じられないものを見るような目で私を見ている。
「ん? ああ」
時計を見て納得した。
制限時間二時間半に対し、一時間半しか経過していない。
「言いたいことは何となく察しますが、もう大丈夫です。採点お願いします」
全て解けたし、見直したからよっぽど大丈夫。
グルーヴ副会長が採点していく。
会長とブライアン副会長は、後ろからその様を眺めているのだが、二人の表情が面白いように変わる。
どうやら、彼女らも試験問題を見たことが無かったようで、問題の内容に対してのものらしい。
『有馬記念にて、初の連覇を達成したウマ娘の名は?』とか。『ウマ娘の誕生日が一定の期間に偏っている理由は』とか。トレーナーとして必要なのか怪しいものまで有ったからね。
もちろん、『有馬記念の創設時のレース名は?』や『この写真から、今後発症が疑われる疾病を挙げよ』など、当然必要な知識も出題されている。
まあ、それらは全て参考書や過去問解説書などを読み漁った結果、全て把握してしまったが。
……。あれ? 一週間前にも私が解いた問題を、採点している間に見ていなかったか……? 別の問題とはいえ、そこまで大きく異なってないのに、そこまで興味を抱くのか……。
いや、あの時は仕事中の片手間だったから、見ていなかったな。失礼。
グルーヴ副会長の手が止まった。つまり、採点が終わったのだろう。
「クーニ」
「はい」
「次のトレーナー試験、受けなさい」
突然、この人は何を言い出すんだ。
「拒否権……」
「あると思っているのか?」
マジか。とはいえ、今回ばかりは黙っていられない。
「いやいやいや! 普通に嫌ですよ! そんなの受けたら受かるの確実なんですよ! トレーナー資格有したまま、残りの学園生活過ごせと?」
「不都合でもあるのか?」
「不都合しかありませんよ! 私はただの一生徒です!」
トレーナー試験は、3つに分かれている。筆記試験・身体能力試験・技能試験 この3つだ。
筆記試験はまず間違いなく突破できるだろう。
身体能力試験はウマ娘の場合免除されるらしい。
となると、残るのは技能試験。故障や怪我を未然に防ぐため、普段の様子からその原因となるものを発見し、発生する前に対処する。それが技能試験だ。
正直に言うと、私はこれも突破できると思っている。
だからこそ、受けたくない。
「しかしまあ、『受けたら受かるの確実』とは。自信満々だな」
「私を誰だと思っていますか?」
「グルーヴ」
「分かりました」
無視しやがった。
「分からなくもないな。あの姉貴ですら、クーニに教えを乞いたいと常々言っているほどだ」
ブライアン副会長の姉…………ビワハヤヒデさんか!
「そういえば、少し前 さつきさん*1 に会った時、次期理事長候補として名前が上がっているらしい話も聞いたぞ」
えっ? それ初耳。というか、それは絶対に嫌なんですけど?
もし、絶対と言うのなら除名処分覚悟で夜逃げしますが。
おっと?
今のやり取りの間に、グルーヴ副会長が物凄い早さで書類を書き上げ、それを手に椅子から立ち上がった。
「それでは行って参ります」
「ああ。気を付けて」
そして、生徒会室を出て行く。
「ところでクーニ」
「何でしょう?」
「来週の会議資料の件だが……」
「資料の作成は終わっています」
「その会議にURAの重役が視察に来るらしい。だから、いつもの藁半紙ではなく、普通紙にカラーで印刷するように言われているから、その通りに頼むよ」
「畏まりました」
藁半紙か。そんなものを現役で使っているなんてねぇ……。まあ、一説には藁半紙の衰退により発生した大量の在庫の処分を引き受けているだけ。と言われている。郵便局職員が、重たそうに持ってくるのを何度か見ている。
あ。そういえば。
「会長」
「何だ?」
「グルーヴ副会長は何処へ?」
「郵便局へ」
郵便局? こんな時間に…………。
まさか?
「一体、何をしに?」
「もちろん、トレーナー試験の願書を提出にな」
「誰の?」
「君のだ」
……………………。
私の?
「私、一筆も書いてませんがね?」
「代筆が許されているんだ」
……………………。
「速達で郵送するから、明日には届くだろうな」
「あ。えっと、そうですか……」
見事やられた。さっきの会議資料の話は時間稼ぎだったのだろう。
ここまでされたら呆れて言葉も出ない。いつもなら、『あの大馬鹿野郎~』とか、『マジふざけんなよ、会長!』とか、心の中で叫んでるけどね。それが出ないの……。
こうなったら仕方ない。当日の試験をドタキャンするかな……。
理事長秘書の一人。