目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が   作:小林司

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 駿川さんへのお話。門限破りと最悪な目覚め

 

ハヤヒデさんが退室して少し経った頃。

 

 コンコン

 

またも扉がノックされた。これ、私何時(いつ)帰れるんだろう?

 

駿川(はやかわ)です。今宜しいですか?」

 

駿川……理事長秘書の駿川さんか。

 

「どうぞ、開いてますので」

 

「では、失礼します」

 

声を掛けると扉が開く。

 

入ってきたのは、上下緑のレディーススーツを身に(まと)った女性。頭には緑色の帽子。

 

「失礼します。生徒会にご確認頂きたい資料をお持ちしたのですが……。シンボリルドルフ会長は?」

 

「トレーニングです。今日は戻らないと聞いておりますが……その書類は急ぎでしょうか?」

 

急ぎならば会長を呼ぶか、私の了承で済ますしかない。期日に余裕があれば、預かり後日返却とする必要がある。

 

「いえ。明後日迄にお願いします」

 

そう言って書類の束を差し出された。

 

って、かなりの分厚さだぞ、これ。

 

「承知しました。それではお預かりします」

 

受け取る。

 

うわ……見た目通り重たい。何枚あるんだろう?

その資料を会長の机に置いた。

 

「ところで、ブタノカックーニさん」

 

駿川さんが続ける。私に何か用だろうか?

 

「昨日は色々あったとお聞きしていますが、お身体は大丈夫でしょうか?」

 

やっぱり。そのことか。

 

「理事長も心配しておりましたので。今、ここでこうしてお会い出来て良かったです」

 

「ああ。えっと、その節はご心配お掛けしました。お陰様でこの通り、元気ですよ」

 

そう答えると、一瞬曇った表情が元通りに明るくなった。

 

「そうでしたか。もし、困ったことがありましたら、何なりとご相談ください」

 

「ありがとうございます」

 

親切な人だな……。優しく微笑む彼女を見て、そう思った。『快適な学園生活を送れるように』サポートするのが彼女の役目らしい。

 

また、理事長にはあらゆるウマ娘たちを支えたい、という強い意思がある。この件(私の現状)を話しても問題ないだろう。むしろ、その方が良さそうだ。

 

「実は、理事長の耳に入れておきたい話がありまして。今度お時間を頂戴したいのですが……」

 

 

 

 

 

 

駿川さんに、今の私の現状を話した。

 

何処(どこ)まで話すか迷ったけれど、『昨日頭を打ってから、その前の記憶が一切無い』『私はレースに出るつもりはないが、学園を去るつもりもない』ということを話した。

 

勿論、なぜかゴールドシップさんは知っていた『別の記憶をもったクーニとは別人』ということは言っていない。つまり、ゴールドシップさんに勧められた通り記憶喪失を装った、ということだ。

 

最初、記憶がないという話をしたときの駿川さんは凄く驚いていたが、適度な相槌を挟みながらも黙って私の話を聞いてくれた。

 

その上で、後日時間を確保してくれる、ということになった。

 

 

 

 

 

 

「それでは、今日はこれにて失礼します」

 

生徒会室を出て行く彼女を見送る。

 

「はぁ……」

 

なんというか、ほっとした……。

 

『走らない』ということを言ったから、怒られたり最悪退学を言い渡されるんじゃないかって、少し不安だったから、一部嘘を言ったとはいえ学園関係者に話を聞いてもらえて良かった……。

 

ほっとしたら、なんだか眠くなってきた。帰って早く寝よう…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思いながらも睡魔に負けてソファーで寝てしまったら、目が覚めたのが22時過ぎでした。

 

「あ、これ寮の門限過ぎてるじゃん……」

 

何で誰も見回りに来なかったんだ? こんな時間まで生徒会室に明かりが付いてて気にしないとか……。まあ良いや、私自身の過失だし。

 

 

照明の落ちた校内を、射し込む月明かりとスマホのライトを頼りに歩く。

 

『廊下は走らない』生徒会役員だから守らないとね。とか言っている場合じゃない!

 

でも、走って転ぶのも危ないから、急ぎ足で昇降口へ向かう。

 

靴を替えて寮へ走って向かう。

 

普通、こんな場合って寮長が玄関で待っててお説教……懲罰。という流れですよね?

 

恐る恐る……いや、こういう場合は正々堂々と行くべきだろう。明かりのついている玄関を開く。

 

「お。クーニ帰ったか」

 

案の定、玄関には寮長の姿が……!

 

「た、ただいま帰りました……」

 

制服の上からエプロンを纏い、いかにも『寮母さん』といった格好で立っている。

 

これ、怒られるパターンだよね? ゴールドシップさんからは、『口を開けばいつでも、タイマンだ! 熱血肌の女傑』と聞いている。ヒシアマゾン寮長だ。

 

『門限破りとは太え野郎だな。あたしとタイマンだ~!』とか言い出すんじゃ?

 

「お疲れ。遅かったな」

 

あれ?

 

「晩飯まだだろ? 確保しといたから、早く食って寝ろ。明日も早いんだろ?」

 

……?

 

怒るどころか、やんわりとした口調で、私の事を労ってくれている感じだ。

 

「あ、ありがとうございます。あ、それと、昨日はご迷惑お掛けしてすみませんでした!」

 

「良いってことよ。それじゃあ、あたしは寝る!」

 

そう言って自室へ向かって行く。

 

私の帰りを待っていた感じだが、門限を過ぎているのにその事を全く咎められなかった。何故?

 

 

 

腑に落ちぬまま、食堂で夕食をとり、自室へ向かう。

 

病み上がりだからか? だとしても、門限破りについて触れる筈だ。『遅かったな』の一言だけというのは奇妙だ。

 

私が時間を間違えていたとか? それも無い。食堂の時計は23時近かったし、正確だった。

 

分からん! もう考えるのは終わり!

 

自分の部屋に着いた。

 

鍵を開け、ゆっくり扉を開く。

 

「ただいま、です……」

 

サクラバクシンオーさんは寝ているかもしれないので、起こさぬように静かに入った。

 

「…………」

 

予想通り。彼女は既に就寝していた。

 

「それじゃあ、私も寝るか……」

 

昼過ぎ、学園に行く前に一度シャワーを浴びているし、汗もかいていないからこのまま寝てしまおう……。

 

今日も昨日に続いて色々なことがあったなぁ……。

 

大事をとって入院となったため、病院のベッドで朝を迎え、帰寮するも部屋が分からずフジキセキさんに頼り、学園に顔を出せば頭陀袋で誘拐され……。

 

ゴールドシップさんに色々教わり、(クーニ)の事と学園のこと、他のウマ娘たちのことを知って、生徒会室ではシンボリルドルフ会長に睨まれ、退学勧告をされるも強制退学は出来ないことを知り、生徒会のために働くことになり……。

 

「私は一体どうなるんだろう……」

 

この先のことは分からない。

 

とりあえず、出来ることから順にやっていこう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか眠っていたらしい。

 

翌朝、目覚めは最悪なものだった。

 

 

 

『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! バクシン! バクシン! バクシンシーン!』

 

突如流れ出す音に驚き、飛び起きる。

 

『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバクシン! バクシン! バクシン! バクシンシーン!』

 

これは……目覚まし時計か?

 

隣のベッド、サクラバクシンオーさんのものだろう。私は無くても起きれるから、目覚ましをセットしていない。

 

「うーん……?」

 

『バクシンバクシンバクシン! バクシンバクシンバク』

 

あ、止めた。

 

そして、ベッドから起き上がる。しかし、

 

「バックシー」

 

そう言いながらベッドに倒れる。

 

爆死って……おい、死ぬな。

 

「ーン」

 

再び起き上がる。勢いそのままにベッドからも飛び出す。

 

起きたんだな……。

 

なんというか、朝から元気だ……。

 

 

 

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