目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が   作:小林司

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 ドタバタ珍道中 とは、まさにこの事でしょう

 

スペシャルウィークさんのデビュー戦前日。いよいよ出発の日だ。

 

府中のトレセン学園から阪神レース場までは、車をノンストップで走らせても6時間掛かる。休憩なしで行くのは危険だし、道中トラブルが起きるとまずいので、前日に出発してホテルに宿泊することになっている。

 

そろそろ集合時間だ。私は、まずは車を取りに行く。

 

理事長室へ顔を出してから、駿川(はやかわ)さんの案内で駐車場へ向かう。

 

「はい。此方(こちら)が今回お貸しする車です」

 

これが噂(?)の 世紀末覇王号 か。塗装は黄色、至って普通の軽自動車だけどなぁ。何故この名前を?

 

ナンバープレートは『多摩781お6313』。分からぬ……。*1

 

「キーは此方です」

 

「はい」

 

「燃料はレギュラーガソリンが満タンで入ってます。お帰りの際は、極力近くのスタンドで給油をお願いします」

 

レンタカー借りるときみたいな説明だな……。

 

「それと、此方が通行証です。高速道路料金は既に支払ってありますので、そちらを料金所に提出ください」

 

なるほどね……。ん? 『国立府中IC→宝塚IC』『宝塚IC→八王子TB*2

 

……? 何故だ。

 

「ああ。お気付きかもしれませんが、すぐそこの府中SICは通れませんので、行きは国立府中ICへお回りください。帰りは府中SICで出られますからお気をつけくださいね」

 

そうか、ETCではないからSICは使えないんだな……。

 

あそこの府中SICは『入るのにはETCが必要、出るのは不要』という特殊なSICだからなぁ……。均一区間内故の特殊構造。

 

「了解しました」

 

「はい。それでは気を付けて行ってらっしゃいませ!」

 

戻って行く駿川さんを見送ってから、車に乗り込む。

 

さて、エンジンを……。エンジンを……? あれ?

 

 

って、マジか! 勘弁してくださいよ……!

 

 

 

 

「お待たせしました!」

 

車を集合場所へ走らせて行くと、皆が揃っていた。

 

既にスピカトレーナーも到着している。

 

「俺の車に、スズカ、スペ、スカーレット、ウオッカが乗れ。クーニの車には、ゴルシとステイゴールドと池沢トレーナーが乗ってください」

 

スピカトレーナーの指示で、それぞれ分乗する。

 

「ステイゴールドと申します。今日はお願いします」

 

「彼女のトレーナーの池沢です。乗せて頂いてありがとうございます」

 

トレーナー、池沢さんというらしい。

 

「生徒会役員のブタノカックーニです。クーニとお呼びください。えっと、安全運転で行きますので、よろしくお願いします」

 

互いに自己紹介をした。

 

ステイゴールドさんと池沢トレーナー……。

 

明後日レースに出るらしい。

 

……あれ? 一人足りないような?

 

「って、ゴールドシップさん。何やってるんですか?」

 

車の後ろに、車に背を向けて立ち、大麻(おおぬさ)*3を振っていた。祈祷師(きとうし)

 

「安全祈願」

 

さいですか……。

 

「あ、彼女はゴールドシップさんです」

 

キョトンとしている二人に対して私が紹介をした。

 

すると、彼女はそのまま「よろしく」と挨拶。

 

変な人ですよね……。分かります、池沢さん……。

 

「えっと……よろしくお願いします……」

 

池沢さんは若干引き気味だ。

 

対しステイゴールドさんはというと……。

 

「……!」

 

無言で彼女を見つめている。

 

「……どうかなさいました?」

 

気になって声を掛ける。

 

「いえ。初対面のはずなのですが、不思議と他人のような気がしなくて……」

 

「奇遇だな。あたしもそう思ってたとこだ。……兄弟!」

 

あれ……? なんか意気投合してません?

 

仲良さそうに肩なんか組んじゃって。

 

「ところでクーニ。お前、何で制服なんだ?」

 

ステイゴールドさんと組んだ肩をほどき、今度は私の肩を組みながらそう話し掛けてくる。

 

「生徒会役員の仕事なので……」

 

そう答えながら、左袖に通した腕章を見せる。『生徒会役員』

 

「お前、こんな時も生徒会なんだな……」

 

呆れないでください! そこ。

 

「会長命令なんですよ。『生徒会役員たる者、如何様(いかよう)な場所に()いても、品行方正、泰然自若な行動に心掛けるように』という、全役員への指示ですから」

 

なので、学園外でも生徒会役員として仕事をする場合は、制服と腕章の着用が義務付けられた。

 

その話を聞いた時、ナリタブライアンさんは露骨に嫌そうな顔をしていたが、エアグルーヴさんは満更でもなさそうだった。

 

かくいう私は、って? 構いませんよ。むしろ、制服以外の服を着なくて済むのは有り難い。この服には何とか慣れたが、やはり女物のスカートは着慣れない。

 

「マジか。大変なんだな」

 

「おーい! そろそろ出るぞ!」

 

「あ、はーい!」

 

彼方(あちら)側は準備が整ったようだ。スピカトレーナーから声が掛かったので、急いで出発準備を整えた。

 

 

 

 

 

 

 

「うっひょお~! 車に乗るのは初めてじゃねぇけど、助手席に乗るのは初めてだぜ!」

 

出発早々から、ゴールドシップさんはこのテンションだ。疲れるだろうに……。

 

後席を見ると、二人は作戦会議中らしい。しかし、

 

「お二人とも。それは構いませんが、酔いませんか?」

 

「大丈夫です。よほど酷い運転でなければ」

 

「私は『どうすれば酔えるの?』というぐらい、乗り物酔いには強いです。ご安心を」

 

そうでしたか……。

 

まあ、私は運転が好きだし安全運転を心掛けているから、大丈夫だろう。

 

ある一点の問題を除けば、だが。

 

「なあ、クーニ。さっきから忙しなく弄ってるそのレバーは何だ?」

 

「これですか? シフトレバーですよ」

 

気になるらしい。当然か。恐らく、こういう車に乗ったことはないんだろう。

 

「シフトレバーはあたしも知ってるけどよ。そんなに小まめに弄るもんなの?」

 

やっぱり。

 

「この車はMT車なので。AT車の場合、速度に応じて勝手にギアが変わりますが、MT車の場合はこうやって運転手が自分で任意のギアに入れるんですよ」

 

「へぇ~」

 

だから最初驚いたのだ。

 

まさかMT車が回されるとは思わなかったから。

 

さっき、一点の問題 といったのはこれだ。ギア変速時のショックで酔う人もいるらしいので。

 

「面白いんだな~」

 

楽しそうでなにより。

 

とはいえ、さっきも思ったけどずっとこのテンションでは、疲れると思うんだけどなあ……。

 

「おお! いよいよ高速道路に入るんだな!」

 

国立府中ICに到着。

 

 

余談だが、料金所の係員にめちゃくちゃ驚かれた。ちゃんと免許ありますよ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい。大丈夫なのかよ……?」

 

ゴールドシップさんの歓声は、高速道路へ入ってから悲鳴混じりのものへと変わった。

 

「大丈夫ですよ。これくらいなら」

 

「本当なんだな!」

 

私は、さも当たり前だという返事をするも、ゴールドシップさんは信用してくれない。

 

やはり軽自動車、高速入った途端にエンジンの回転数が上がり、音が大きくなった。

 

しかし、タコメーター見る感じだと問題は無さそうだ。音だけらしい。

 

とはいえ、あまりに大袈裟な音に、ゴールドシップさんがビビりまくり。

 

後ろの二人は真顔で正面を見て座っているのに。あれ? 気絶しているのか……?

 

 

 

 

 

 

トレセン学園を出発しておよそ2時間。双葉SAへ入る。

 

「クーニ。トレーナーたちは次の八ヶ岳PAに入ったらしいぜ」

 

ゴールドシップさんから教えてもらう。

 

流石に1時間もあの音で走り続けていたら、彼女も私の言うことを信用してくれた。今もこうして到着前からスマホで連絡をとってくれている。

 

「了解。ところでゴールドシップさん」

 

「ゴルシで良いぜ。で、何だ?」

 

えっ? 急にどうしたの?

 

おっと、聞くことを忘れそうになった……。えっと、

 

「トレーナーって、運転荒いんですか?」

 

「荒いというよりは、下手くそだな。無鉄砲に飛ばす感じだ」

 

なるほどね。

 

私は制限速度を守って走っていたのに、トレーナーが先に行ってしまったのは、そういうことか。

 

「さてと。ちょっと早い気もしますが、お昼にしましょう」

 

「了解です」

 

「そうですね」

 

「おけー」

 

 

 

 

 

 

トイレを済ませてから、フードコートへ。

 

「トレーナーは?」

 

「私はいつものよ。あなたは?」

 

ステイゴールドさんとトレーナーは二人で、ゴルシさんは自分でそれぞれ券売機へ向かう。

 

「あ、皆さん領収書は必ず貰ってくださいね。私が預かりますので」

 

今回のように、遠征に生徒会が絡んでいる場合、かかった費用は、領収書を提出することで全て学園負担になるのだ。

 

まあ、領収書を貰い忘れたらアウトだが。

 

 

 

 

 

ゴルシさんは、ラーメン大盛・半チャン・餃子。ステイゴールドさんも同じだ。

 

「奇遇ですね」

 

「奇遇だな」

 

今朝、初めて会ったと言っていたが、そう思えない節があるなぁ……。この二人。

 

「不思議なこともあるのですね」

 

トレーナーがそう呟く。かくいうトレーナーは、普通のラーメンに餃子だ。

 

「ク、クーニさん。あなたそれだけで良いんですか?」

 

というか、私の頼んだのを見て池沢トレーナーに驚かれたんだけど。

 

「普通ですよ。私はこの量で充分です」

 

ラーメンと半チャン。運動していない場合はこれで良い。

 

もちろん、私もウマ娘だから、走った後だったらこれじゃあ足りないけどね。

 

今は別に運動してないから食べ過ぎたら体重増加に直結だ。それに、お腹を膨らませてしまったら、当分運転できなくなってしまう。池沢トレーナーはAT限定の免許らしいので、世紀末覇王号を運転できるのはこの中では私だけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

四人掛けテーブルで食事をとる。

 

先に食べてしまった私は、地図でこの先の行程を確認している。

 

「なあ、クーニ」

 

「どうしました?」

 

すると、まだ食べている途中のゴールドシップさんが、箸を止めてテレビ画面を指差す。

 

映っているのはドラマだが、その端にニュース速報の字幕が出ていた。

 

韮崎(にらさき)~須玉 火災通行止』って。

 

えっ? これから通るところじゃんか。嘘でしょ……。

 

 

 

 

 

 

「……はい。承知しました」

 

電話を切る。

 

取り急ぎ、関係各所へ連絡を入れた。

 

先を走っているスピカトレーナーには、「追い掛けるから、気にせず進んで」と伝え、学園には「トラブル発生です」と一報を入れ、SAスタッフに道路状況を確認した。

 

私がトレセン学園の制服だったので、一瞬驚かれたが、訳を話したら納得してもらえた。

 

曰く、『通行止解除を待ったり、一般道へ迂回するよりは、中部横断道・新東名経由で向かった方が無難』という話だった。迂回する車で一般道が混雑しているとも言っていた。

 

通行証について学園に確認したところ、『宝塚ICを降りるまで、何処を通っても大丈夫』ということだった。途中乗り降り自由とのこと。

 

「中部横断道は全線開通していないので、一部下道に下りることになります。道案内をお願いしたいので、池沢さんが助手席に座っていただけますか?」

 

「分かりました」

 

「それでは出発しましょう」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、中部横断道(一部、国道52号線)→新東名→伊勢湾岸道→新名神 を経由して、適度に休憩を挟みながら宝塚へ向かったのだが、目的地に到着したのは、こちらの方が早かった。

 

迂回してかなりタイムロスになったはずだが……。

 

 

どうしてこうなるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは完全な余談だが、富士川沿いの道路を走っていたら、ゴルシさんが『身延まんじゅう』なるものを見付けて停車させられた。スピカ分も購入して、お土産物として渡したら、他の面々に(そこを通ったことを)滅茶苦茶うらやましがられた。

 

いやね、こっちは遠回りで大変だったんだよ?

 

 

因みに、スピカ側の到着が遅れた理由は、トレーナーが道を間違えて舞鶴の方を回ったから らしい。つまり、両者とも遠回りをした訳だ。

 

『特別転回*4という制度をご存じですか?』って言って盛大に呆れてやった。

 

 

*1
世紀末覇王 と称された、テイエムオペラオーの誕生日 1996313日より

*2
本線料金所

*3
大麻たいまではない

*4
高速道路にて、降りる予定のICを過ぎてしまった場合に、次のICで申し出れば正規料金のみで引き返せる制度





一番くじ。試しに2回だけ買ってみたら、ゴルシのタペストリーが当たりました……。大本命でライスのフィギュア狙って買いましたが、当たるわけ無いですよね。

でも、タペストリーは大当たりですよね(汗)



本作では、アニメオリジナルウマ娘『キンイロリョテイ』=『ステイゴールド』がモチーフ という説を採用させていただきました。……が、ドリームジャーニー登場後、ステイゴールドが実名で登場したため、キンイロリョテイはステイゴールドへと変更させて頂きます。

今後の展開次第では矛盾が生じる可能性もありますが、本作の今後の展開上、ステイゴールドが実名でないのは不都合が生じるため、変更させて頂きます。
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