目が覚めたら、ウマ娘でブタさんだった。というか、調理済みっぽい? 名前が   作:小林司

9 / 24

お待たせいたしました。

本来、今朝投稿する予定でしたが、私のミスで他の作品へ投稿されてしまいました。申し訳ありません。

遅くなりましたが、最新話をお送りします。




 レース前のお出掛け。同伴を求められた先は……別のレース場ですか?

 

翌朝。

 

今日はいよいよスペシャルウィークさんのデビュー戦だ。

 

彼女のレースは今日の第7レースなので、出走は昼過ぎ。スピカメンバーは、緊張でガチガチの彼女を、励ましたり、アドバイスしたり、緊張を解そうとしたり……朝から忙しい。

 

幸い、昨晩寝れなかったということは無かったようだ。

 

今日がフリーのステイゴールドさんと池沢トレーナーは、ある場所へ同行するよう、(半ば無理矢理)私に求めてきた。

 

地味に交通費が掛かるので、学園負担にさせたいのだろう。全く……。

 

因みに、何処かは聞いていない。

 

 

 

阪神レース場は『仁川(にがわ)レース場』と呼ばれることもある。それは阪急電車の仁川駅が近いからだ。

 

その駅から阪急電車に乗り、JRへ乗り継ぎ、京阪電車に乗り換えた。

 

「あと30分ぐらいで着きます」

 

池沢トレーナーがそう言いながら座席に腰掛ける。ロングシートなので、隣へ座った。

 

ステイゴールドさんは反対側の隣へ。

 

しかし、ここまでわりと時間が掛かったな……。あと30分と言ったが、既に30分くらい経っている。

 

私は預かった領収書を無くさないようにしまっておく。

 

「トレーナー。何処に向かっているんですか?」

 

「それは着いてからのお楽しみです」

 

えっと、どれが誰の領収書か分かるように……。

 

えっと、『スピカ』『池沢トレ』『生徒会』……。分けてしまわないと。

 

そんなわけだから、ここまでの切符を買うのも一苦労だった。

 

領収書が必要なので、Suica等のICカードは使えないし、支払い先が違うので三人分まとめて切符を購入することも出来ず、色々と面倒だった。

 

「そういえば、クーニさん」

 

ん? 池沢トレーナーからだ。

 

「昨日、男湯に入ってたって本当ですか?」

 

「ふえっ!」

 

急に話を振られ、しかもその内容に変な声が出てしまった……。

 

「えっ? トレーナー、それどういう話ですか!」

 

ちょっと、ステイゴールドさんそこに喰い付かないで!

 

「そ、その話は多少盛られています!」

 

「と、言いますと?」

 

やべぇ。どう話そうか……?

 

簡単に纏めると、『ホテルの部屋に着いたら、制服からジャージへ着替えた』『他の同室メンバーより後に、お風呂(浴場)へ向かった』『疲れていたのと、服装が制服ではなかったため、男性(人間)だった頃の感覚で、男湯の暖簾(のれん)を潜った』。

 

脱衣中に気付き、慌てて男湯の更衣室を出ようとしたところ、スピカトレーナーと鉢合わせて驚かれ、暖簾を潜って出たところを、スペシャルウィークさんとゴルシさんに見られてしまったのだ……。

 

スペシャルウィークさんの、『何やってるのこの人?』と言いたげな表情と、ゴルシさんの『やっちまったなぁ~』という表情は、忘れようとしても忘れることは出来ないだろう……。

 

「えっと……。つ、疲れていたんですよ。あの車の運転と、生徒会へ提出する報告書作成で。それで、よく確認もせずに入っていったら、男湯でした……」

 

「なるほど……そんな訳でしたか」

 

誤魔化せた?

 

「間違えたことに何時気付きましたか?」

 

え、それ聞くの? どうするかなぁ。

 

『男湯と分かっていながら、間違えて入った』のを『男湯と気付かずに入ってしまった』って偽ったので、気付いたタイミング……理由も繕わないとなぁ……。

 

えっと、

 

「と、トイレが。あのホテル、浴場の入れ替えが無いから、男湯には男子トイレ、女湯には女子トイレしか無かったでしょう? だからです」

 

「あ、確かにそうですね」

 

「それで気づけたとは……。クーニさん流石です」

 

ふう~。ここも誤魔化せたようだ……。

 

 

 

こんなことになると色々と大変だ。今後気を付けよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「次ですよ」

 

ん?

 

今発車した駅は、岩清水八幡宮駅だ。

 

つまり、次の駅は……。淀?

 

駅に着き、電車を降り、改札を出て歩いて行くと。

 

「到着しました。京都レース場です」

 

いやいやいや。さも当たり前のように言わないでください。なんで、これから阪神レース場でレースがあるのに、別のレース場に来てるんですか?

 

「今日、ここレースありませんよね?」

 

「ええ。今日はありませんよ」

 

「じゃあ、何しに来たんですか?」

 

「散策」

 

「は?」

 

池沢トレーナー……。

 

「私は初めて来ましたが、お二人は?」

 

「ここでは4回走ってます」

 

「月頭の菊花賞に出たから、今月2回目ですね」

 

えっ?

 

「そんなに来ているのに、何故わざわざ?」

 

「いや、この娘自分のレースがある日だと、緊張してそんな余裕無いんですよ。だから、こうやってフリーの日に来るんです」

 

それもそうか。

 

って、明日レースなんじゃ? 前日にこんなことしてて良いのだろうか?

 

「この子、ここで初めて走った時、最終コーナーで曲がらずに逸走して、競争中止になったんですよ*1。原因が、極度の緊張が原因の腹痛。トイレに駆け込む事態になりました」

 

「あの時は本当に焦りましたよ。最初から緊張しっぱなしで、トイレの場所とかを把握せずに出走しましたから。急にお腹痛くなって……。もう走れない! ってコースから外れて……。トイレの場所も分からないから、最悪その辺で……って彷徨っていたら、トレーナーが気付いてくれて。事なきを得ました……」

 

それは大変だったんですね……。

 

というか、ステイゴールドさん、思ってたより饒舌(じょうぜつ)に喋るな……。

 

車に乗っていたときの印象だと、口数少なくて大人しそうな感じがしてたけど。

 

 

 

そうこう言いながら歩いていくと、二人が立ち止まった。

 

「着きましたよ」

 

そこにあるのは……石碑? 花やリンゴ、人参等が添えられているから、お墓だろうか。

 

「これは?」

 

ステイゴールドさんもこれが何か知らないらしい。

 

「このレース場で、レース中に故障が原因で亡くなった娘の記念碑です」*2

 

えっと……?

 

気になるのでスマホを取り出し検索。『京都レース場 記念碑』……あ、真っ先に出てきた。

 

「宝塚記念のレース中、第三コーナー手前で骨折、その勢いのまま転倒し全身強打。即死だったようです」

 

トレーナーがそう口にする。内容は今私が調べている通りだ。

 

「詳しいんですね」

 

「ええ。私がトレーナーになったとき、自分が担当するウマ娘が、このように事故を起こさぬように気を付けます、という決意表明で、ここへ来ました。なので、担当になった娘と一緒に来るようにしています。まあ、今回あなたと来るのは1年以上経ってしまいましたけど」

 

苦笑いしながら隣に立つ担当を見やる。

 

「トレーナー……」

 

ステイゴールドさんは泣いてはいないものの、目頭が赤くなっている。

 

「私、トレーナーのために、三……三冠ウマ娘にはなれなかったけど、たくさん走ってたくさん勝って、皆に愛されるウマ娘になります!」

 

「一緒に頑張りましょう」

 

「はい!」

 

ええ話や。

 

この歳(※元々の姿の)になると、こういう話は染みて涙脆くなってしまう……。

 

って、いい雰囲気ぶち壊してしまった……!

 

 

 

 

 

 

「それでは帰りましょうか」

 

「「はい」」

 

『お客様に御案内致します。送電トラブルのため、京阪本線全線で運転を見合わせております』

 

 

おい、まじか……。

 

 

 

*1
元ネタは、4歳未勝利戦(3戦目)にて、最終コーナーを曲がろうとせずに逸走。身を翻して騎手を振り落とした もの。

*2
実際、この場所にあるのは『ライスシャワー碑』ですが、本作では存命のため、他のウマ娘に差し替えています。名前は決めてませんが、ライスシャワーのものではありません。





なお、ステイゴールドはトレーナーにああ言っていますが、実際ステイゴールド号は、3勝してから28連敗しており、不思議な人気が出てファンには愛されていたようです。


ちょっとしんみりする真面目なお話をお送りしましたが、本作はタイトルからも分かる通り、笑えるギャク系のお話を目指していますので、このようなお話は控えめでいきます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。