吾輩は猫の中の猫である   作:サンサソー

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見てくださる方々がいて、まずは安心。
ゆったりしていってね。


礼はきちんとせねばならぬ

 人間の家は、たまにこうぐるっと塀が囲っている時があるのである。それが中々ざらざらとしていて、意外と寝転がると気持ちいいのである。ただ塀の欠片や砂くずが付くのは好かぬ。

 

 今日も今日とて、吾輩は気の向くままに過ごすのである。塀の上で寝そべり、四肢を投げ出しておるのはなんとも言えぬ幸福感があるのである。前世では経験できなかった故、そもこんなものが幸せの一つとなるなど想像だにしておらなんだ。この家の人間には迷惑であるやもしれぬが、吾輩の魅力に免じて許して欲しいのである。

 

 むむ、何やら気配がするのである。吾輩はねこであるからして、そういったものには敏感なのである。えへん。

 

 それはそうと、何やらごみ捨て場のところが喧しいのである。にゃあにゃあ、かあかあと声がする。どうやら人間の食べ残しを巡ってねことからすが喧嘩をしているようである。

 

 人間に飼われておらぬねこは野良猫と呼ばれるのであるが、その食い扶持はごみ漁りか犬の餌の強奪が主である。もちろん吾輩はそんなはしたない真似はせぬ。小鳥や虫を狩る時もあれば、身体を擦り寄せ、人間たちからご飯を提供してもらう時もあるのである。特に吾輩はにぼしやつなかんが好みである。

 

 さて、ふぎゃあかあかあと騒いでおれば人間が聞きつけるのも時間の問題である。そら、ほうきを持った人間の男が家から出てきたのである。ああこれ、ほうきを直接ぶつけてはならぬ。からすはまだしもねこは食べ物のためならば反撃することがあるのである。

 

 からすもねこも追い払われ、やっと静かになったのである。やはり体格にも優り武器まで持たれてはなすすべなし、まこと恐ろしい限りである。む? 人間よ、何故に吾輩に近付いてくるのである。待て、落ち着け。ほうきを振り上げるでない。ふぎゃあ。

 

 

 

 

 

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 ああ、酷い目にあったのである。吾輩はねこの中のねこであるからして、ごみなど漁らぬしあやつらの仲間でもないのである。こういう時こそ人間とのこみゅにけーしょんをとりたいものであるが、それはなんとも難しいものである。

 

 むむ、唐突ながら吾輩は重要な事実に気付いてしまったのである。またたびが進呈されてもよいほどの大発見なのである。

 

 その大発見とは……ここはどこであろうか。もしかすると吾輩は逃げるのに夢中で、知らぬ土地に踏み込んでしまったのやもしれぬ。この辺りのねことは顔も合わせたことはなし、なわばりを侵されたと攻撃されても文句は言えなくなってしまうのである。

 

 いや、まず挨拶をすればわかってくれるであろうか。事情を説明すれば許してくれるやもしれぬ。何事もまずは対話からなのである。

 

 しかし、この辺りは人通りが多いのである。それこそ人の波といっても過言ではない。うなぁ、危ないのである。このままでは吾輩に気付かず蹴られてしまうやもしれぬ。

 

 いそいで人混みを潜り抜け、ぴーぽーぴーぽー鳴る柱にくっついた箱の下まで来たのである。たまに見かける、道路に立つ働きものである。車を誘導するのは大変であろう、後でとかげでもとってきてやれば喜んでくれるだろうか。

 

 それにしても、吾輩を見ればにこりと笑うか撫でてくれるかしてくれる人間たちが見向きもしないのは少し寂しいものがあるのである。みんなが手に持つ板か、道路の箱を見るぐらいしかないのである。むむむ、そんなものに負けた気がして少し腹が立つのである。

 

 箱が青く光り、ようやく人も移動した時を見計らって歩道にある長椅子に避難するのである。とと、どうやら先客がいたらしい。にゃあと断りを入れて同席するのである。

 

「へ? わわっ、猫が来たぺこ」

 

 うむ、吾輩はねこである。人間の女子よ、一つ相席をよろしく……人間? ふむ、青髪に合う白いうさぎ耳からして、あのねこ耳を付けた女子と同じようなものであろうか。

 それににんじんを髪に挿しているのである。普段であれば食べ物で遊んではならぬと注意するところであるが、今回は見逃すのである。それよりも吾輩は乱れた毛並みをけあしなければならぬのである。

 

「まさか野良猫が来るなんて思ってなかったぺこ……というか初対面の人間の前で毛繕いするなんて相当人間慣れしてるぺこな」

 

 んべ、んべ。はみはみ。ほうきで叩かれるわ人混みにもみくちゃにされるわで酷いものである。吾輩の自慢の毛並みが跳ねて絡まっての大暴れである。

 

 あむ、あむむ。む? 何やら香ばしい匂いがするのである。くんかくんか、これはにぼしなのである! どこ、どこににぼしが……吾輩の横から匂いがするのである! 

 

 毛繕いを中断して振り向いてみれば、先程の女子がにぼしを長椅子に置いているのである。い、いいのであるか。吾輩を見るということは食べてもいいのであるか。

 

 女子は黙って、すすすっとにぼしを吾輩の方へ寄せてくれるのである。うむ、うむ。吾輩はすべて理解したのである。むぐむぐ。まずは感謝を伝えねば。あぐあぐ。

 

「凄い勢いで食べるぺこな〜……猫を飼ってた甲斐があったぺこ。本当は帰ったらうちの猫にあげるつもりだったぺこが、また買って帰ればいいぺこ」

 

 むむ。どうやら吾輩は耐えきれずに食べてしまったようである。しかも聞けば、このにぼしは別のねこのものと言うではないか。

 なんとはしたない! 吾輩はねこ失格である。ううむしかし、まだ香ばしい匂いがする……なんとも抗い難し。

 

「へっ? ちょっ、こっち来ちゃだめペコ! ぺこーらは猫アレルギーなんだぺこ!?」

 

 何やら女子が騒いでおるが、それよりもにぼしである。どうやらその手から匂うのである。舐めさせるのである。もっとにぼし。

 

 女子の膝に乗り、閉じられたその手に頭を突っ込みこじ開ける。うむうむ、やはり芳しいのである。これはいかぬ、我慢できぬ。ぺろぺろ。

 

「な、舐めないでぺこ! 膝に登られると何もできないぺこよ!」

 

 うるさいのである。吾輩はにぼしの味がする手を舐めるのに忙しいのである。女子の口にぽすんっと肉球を押し付けてにゃあと一声かけてやるのである。

 ……うむ、静かになったのである。

 

「お、怒られたぺこ。猫に怒られたぺこ。ぺこーら何か悪いことしたぺこ……?」

 

 うまうま。うむ、満足である。それにしてもこの女子の名はぺこーらというのか。吾輩ににぼしをくれた優しき人である。ここはぷれぜんとを渡さねばなるまい。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ぺこーらの膝から下り、長椅子の背もたれに乗るのである。そしてすぐ側の木に飛び移るのである。うむ、とれたとれた。

 さあ、ぺこーらよ。これを受け取るのである。良くしてくれた礼の、吾輩からのぷれぜんとである。

 

「なんで来るぺこ。いや、いやだ! そんなのこっちに近づけるんじゃねーぺこだよ!」

 

 むむっ、これの良さがわからぬのであるか。だがすぐに好きになるのである。そらそら、手を出すのである。のせてあげるのである。

 

「ひぃいい! なんでこんなことになるぺこ! もういやぺこぉおお!!」

 

 !!? ま、待つのだぺこーらよ! まだ吾輩のぷれぜんとを受け取ってもらってないのである! こんなに立派な()()()()()はそうそうお目にかかれないのである! 

 

 

 

 

 

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 結局、ぺこーらを見失ってしまったのである。それにいつの間にかいつもの場所に戻っていたのである。ううむ、吾輩は諦めないのである。また会うことができたら、今度こそ蝉の抜け殻の良さを教えてあげるのである。覚悟するのである、ぺこーらよ! 

 

 

 

 

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「ぜえ、ぜえ。なんでこんな目にあってるぺこ。マジ意味わかんねーぺこ」

 

「それにしても……膝に乗られたりしたのに全然なんともなかったぺこな。もしかしてぺこら、猫アレルギー克服したぺこ?」

 

 

 その後、家で飼い猫と戯れた際にバッチリ反応したのは言うまでもない。

 

「納得できねーぺこだよ!!」

 

 

 

 

 




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