吾輩は猫の中の猫である   作:サンサソー

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感想も貰えてホクホクしてます。
ゆったりしていってね。


世界は狭いようでいて広いのである

 起きてみれば空模様が怪しいのである。雨が降る前特有の湿った匂いもするのである。これは一雨来るやもしれぬ。どこか雨宿りできる場所を見つけなければ。

 

 雨の香りはお空の優しさなのである。これから雨が降ることを教えてくれる、とても優しい気の持ち主なのである。吾輩は礼儀にうるさいねこであるからして、にゃあとお空にお礼を言えるのである。

 

 さて、吾輩が雨宿りするにも少しばかり悩ましいものがあるのである。人間の家の軒下が望ましいのであるが、人間たちはそれをあまり良く思わぬのである。

 吾輩がどれだけ説得しようとも、にゃあにゃあとしか言えぬ吾輩はなすすべなく追い出されてしまうのである。なんとも世知辛いものである。しかし世知辛いというのはどういった辛さなのであろうか。ねこには刺激が強すぎて辛味を知ることはこれからも無いのであろうが。

 

 とてとて。とてとて。気分はほんのりおさんぽである。しかし楽しくなってはいかぬ。吾輩の目的は雨から逃れる場所を見つけることである。

 むむっ、香りが強くなったのである。これはいかぬ、早く見つけなければ……いや、もうここにするのである。

 道端に停められていた車の下に潜り込み腰を落ち着けるのである。長らくおひさまの光が当たっていなかったのか少し冷たいのであるが、背に腹はかえられぬ。いや、地面に当たって冷たい思いをしておるのはお腹なのであるが。

 

 ぽつ、ぽつ。むむっ、雨が降ってきたのである。一度降り始めると勢いはぐんぐん増し、それはもう土砂降りとなってしまったのである。ううむ、道がでこぼこしておるからか車の下まで雨水が流れてくるのである。吾輩の居れる場所が小さくなっていくのである。これが水攻めというものなのであろうか。

 

 湿気が酷い。吾輩の毛並みもへにょへにょと重くなってくるのである。めんてなんすしなければ変なくせがついてしまうやもしれぬ。んべ、んべ。あむあむ。

 

 雨脚はますます強まっていくばかりである。吾輩は雨の日が嫌いなわけではないのである。雨音とかえるの合唱はとてもいいものであるし、雫が落ちる様などはずっと見ていられるのである。しかし叩きつけるような強い大雨は好かぬ。流石に怖いものがあるのである。

 

 ふぎゃあ。光ったのである。光ったのである! 音がすごいのである! 丸まらねばならぬ。身を守らねばならぬ。かみなりさまが怒っているのである。おへそは取らないでほしいのである。

 

 ううむ、前世ではこのようなことで驚きはしなかったというのに。なんという体たらくであろう。早く雨が通り過ぎるのを祈るばかりである。

 

 む? 何やら背中に違和感があるのである。何かがたくさん当たっておれば、とても冷たいのである。蹲っていた頭を上げてみれば、なんと。車が無くなっておるのである。

 前の方で遠ざかっていく車が見えるのである。もしや、中に持ち主が乗っておったのだろうか。ま、待って欲しいのである! 吾輩が雨ざらしになってしまうのである! 

 

 

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 車を見失ってしまったのである。ううう、雨の中ずっと走った故か身体がずぶ濡れなのである。身体が重いのである。寒いのである。

 

 我輩としたことが、とんだ失敗である。このままではいかぬ。どこか休める場所は……むむ。公園が見つかったのである。それに、おお! 屋根のある椅子があるのである! 

 

「ん? お〜?」

 

 急いで駆け込み、身体についた雨水をふるふると飛ばすのである。ううう、毛が張り付いて気持ち悪いのである。これは念入りに毛繕いもせねばならぬ。

 

「わっわっ。僕が濡れちゃうよ、待って」

 

 むむ? おお、どうやら先客が居たようである。しかし許して欲しい。吾輩はどうしようもなく気持ち悪いのである。これだから大雨は好かぬ。だが迷惑をかけたのであれば謝らなければならぬ。にゃあと言ってやるのである。

 

 ふむ……それにしても聞き覚えのある声なのである。いや、そちらに目を向けるよりも先に毛繕いをせねばならぬ故、顔は見れぬ。あいすまぬが顔を見て挨拶するのはもう少し待つのである。

 

 ふぎゃあ。また光と音が来たのである! 挨拶をしなかった吾輩にかみなりさまが怒っているのであるな。待って欲しいのである。吾輩はちゃんとしようとは思っていたのである。

 

 むむっ? 今度は背中に何か温かいものが来たのである。先程のような雨の冷たさではなく、どこかで感じたことがあるような。そうである。これは人肌の温かさである。

 

 顔を上げれば、おお、いつぞやの吾輩と同じような耳をつけた女子である。吾輩の背中を撫でてくれているのであるか、なんと優しい女子であろうか! これはまたたびをいっぱいあげなければならぬ。きっと喜んでくれるのである。

 

「すごく冷たくなってるよ。ほら、おいで」

 

 女子が手を広げているのである。吾輩は知っているのである。あれは吾輩がお膝の上に来てもよいというぽーずである。それをする人間はねこを愛でたい時にするのである。

 吾輩はねこの中のねこであるからして、そう易々と身体を許すことはないのである。しかし今回は特別である。吾輩の毛並みを存分に堪能するといいのである。

 

 お膝の上に乗ると、女子は吾輩を抱きしめたのである。んなぁ、あったかいのである。冷えた身体に染み渡るのである。

 おお、背中がいい具合に気持ちいいのである。耳の後ろもちょうど良い力加減。この僅かな間にずいぶんとなでなでを上達させたのであるな。これであればどこのねこを撫でても恥はかかぬであろう。

 ごろごろ。あったかくて気持ちいいのである。これはまたたびに並ぶやもしれぬ。ごろごろごろ。

 

「濡れたはずなのにもふもふだね〜。それに野良猫とは思えないくらい綺麗な毛。もしかして飼われてたりするのかな」

 

 女子よ、吾輩は正真正銘の野良猫である。ああそこそこ、顎がとてもよいのである。吾輩は人間には飼われぬ、自由なねこの中のねこであるからしてごろごろ。ああ、気持ちいいのである。眠くなってきたのである。

 

「ん〜、あったかくなってきた。湯たんぽみたい」

 

 ごろごろ。あったかくて気持ちよくて、ああ、もうだめなのである。おやすみ……。

 

 

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 なむなむ。ふなぁ。むむ……にゃあ。ごろごろ。

 

 ぬお。吾輩、また寝てしまったのである。んー、温かいとつい眠気が来てしまうのである。いや、今も温かいのであるな。

 

「んあ〜……ふぅ……」

 

 おお、女子よ。眠っておるのであるか。起きるのである。吾輩は猫だからよいものの、こんな雨の日に寝てしまっては……晴れているのである。

 

 暗かった雲が退いて青色が見えるのである。おお、虹がかかっているのである。久しぶりに見たのである。

 

「んん……ふふふ、ひっかかっ……たぁ……ね……」

 

 何やら楽しそうな夢を見ているのであるな。これは起こしては可哀想である。吾輩は大人であるからして、こういった気遣いはばっちりなのである。それにしても「ひっかかった」とはなんであろうか。楽しそうな顔からしてなにかの遊びであろうか。

 

 うむ、しかしおひさまも顔を出したとなるとまた暖かくなってきたのである。ううむ、今日はこのまま寝て過ごしてしまおうか。そうするのである。

 

 願わくば、この女子と同じ夢を見る事はできぬであろうか。楽しいものはぜひ吾輩も混ぜて欲しいものである。ん……ふぁあ。では……おやすみ……。

 

 ふにゃあ。ごろごろ。んむむ……んー……。

 

 

 

 




友人に言われて一言評価を撤廃。以後、ご自由に。
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ゆったりほんわかできる話を展開できているだろうか

  • ゆったりできているのである
  • もっと精進するのである
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