吾輩は猫の中の猫である   作:サンサソー

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アンケート締め切りました。
了解です、私の采配でいきます。ダメだと感じ始めたらブラウザバックを推奨します。

それでは今回もゆったりしていってね。


吾輩のお気に入りなのである

 ちりんちりん。吾輩である。お昼寝ばかりであったからかもうすっかり夜である。大雨であった故、蝉の声も聞こえないのである。少し寂しいのである。しかし吾輩、蝉の鳴き声が好かぬわけではないが昼寝の邪魔だけはして欲しくないのである。

 

 ちりんちりん。それに比べてこの鈴の音はとても綺麗なのである。いつ手に入れたと言われれば、起きたらあの女子がおらず、吾輩の前脚にこれが巻かれていただけのことである。もう吾輩の物であるからして、あげないのである。はて、吾輩は誰に言っているのであろうか。

 

 ちりんちりん。ちりんちりん。うむうむ、心地よい音である。これは吾輩のちゃーむぽいんとにするのである。吾輩の毛並みとこの鈴の音があれば人間などいちころであろう。

 

 さて、吾輩は自分のなわばりに帰るところである。吾輩とてなわばりはあるのである。それはもう立派で、誰しもが羨むようななわばりである……少し盛ったのである。

 

 なわばりといっても、路地裏の小さな場所である。吾輩は争いなど好まぬのであるからして、必然的にも他のねこたちと比べるとそれはそれは小さいものである。

 しかし、吾輩は自由気ままなねこの中のねこであるからして、帰ることが少ない。それに、なわばりのような小さなことにはこだわらぬ! 故に吾輩が弱いなどということは決してないのだ。

 

 とことこと着いてみれば、葉っぱの寝床や一所にまとめられた吾輩の宝物などなど、吾輩の素敵で完璧なまいほーむが出迎えてくれたのである。うむ、あの大雨は濡らしただけであったな。囲まれたこの場所までは風も手出しできまい。

 

 いや、違うのである。こだわらぬと言っていたがこれは違うのである。大きさのことを言ったのであるからして嘘はついておらぬ。今ある自分のなわばりは大事なのである。吾輩のまいほーむであるならば相応の利便性が必要なのである。

 

 はてさて、家に帰った時のなんとも言えぬ安心感。これには吾輩、前世からしてずっと好きだったのである。そふぁがあれば言うことなしなのであるが、そんなもの置けないであるからして葉っぱのべっどで我慢するのである。

 ああいかぬ、横たわる前に毛繕いをしなければ。んべ、んべ。これが中々忙しいのである。毛繕いが終わればようやく寝床に腰を落ち着けることができるのである。ふふふ、毎夜毎夜この時だけはとてもうれしくなってしまうのである。

 

 んなぁ、やはりこの寝床は格別である。地面もまた捨てがたいのであるが、このさわさわかさかさとした寝心地が最高なのである。

 吾輩はいつも、寝る前に宝物を鑑賞するのである。此度のおさんぽでもこの鈴が加わったわけであるが、これは吾輩のちゃーむぽいんとであるからして常に付けておくのである。うむ、うむ。今日はこれにするのである。

 

 赤く少し光る石である。吾輩の宝物の中でも二、三を争う一品である。つるつるしてて、色に深みがあって、ええと、ええと……。とにかくいい石なのである。ただ丸くないのがいかぬ。転がして遊べぬゆえ一番ではないのである。

 このような感性、前世の記憶が無ければ吾輩は持ち合わせておらなんだ。からすでもなし、光り物にねこは執着せぬ。

 

 んべ、んべ。味はしないのであるが、つるつるな舌触りが楽しいのである。ついでに汚れも落とせる、まさに一石二鳥というわけである。流石は吾輩、常に行動には良い結果が伴うのである。

 

 むむ? 何やら音がするのである。はて、このような路地裏の奥になどねこすら寄り付くものでもない。いったいどのような物好きなのであろうか。もしかすれば吾輩の客やもしれぬ。

 

「ぅ……あー失敗した。調子に乗って飲みすぎるんじゃなかったー……ヒクッ」

 

 これは……なんとも苦い匂いである。これはあれであるな、酒である。なるほど、酔っぱらいが道に迷ったか。これはいかぬ、この辺りはあまり小綺麗ではなしガラの悪い人間もたまに屯する。そも光すらまともに無い故、怪我でもすれば大変である。ここは大人である吾輩が通りまで送ってやらねばならぬ。

 

 どうやらだいぶ近いであるな。とてとて。声からして人間の女子であろうが、ここまで来てしまうとはいったいどんな輩なのか、角からちらりと覗いてみるのである。

 

「んんおお!?」

 

 ふぎゃあ。目と鼻の先に顔があったのである! 思わず後ろに飛び退いてしまった。どうやら相手も驚いたようで、屈んだ状態で大きく仰け反っておる。いやしかし、ねこの中のねこである吾輩が退いてしまうとは、一生の不覚である。煮るなり焼くなり好きにするのである。

 

 もはや命はない。奴の目の前でころんと寝転がってやるのである。いや、失敬。それどころではないようである。

 

「ぅっ、お……おえ……」

 

 待って、止まれ。ここでやってはならぬ。なんとかしなければ吾輩のまいほーむが地獄と化すのである。

 ちりんちりん。前足を振って鈴を鳴らすのである。吐き気はお腹に意識をやれば余計に酷くなるのである。そら、ここに吾輩がいるのである。その魅力に酔いしれるがよい。

 

「…………あぶねえ。鈴の音が無かったら船長死んでた」

 

 うむ、堪えたようで何よりである。もしやらかしていたら吾輩の爪とぎ板にしてやる所であった。

 さて、吾輩はねこであるからして夜目がきく。ここまで吾輩を焦らせた下手人の姿を見定めさせてもらうのである。

 

 ふむ、赤を基調とした海賊のような服装であるな。赤髪に眼帯……前世の吾輩であればろまんというやつを掻き立てられたのであろうか。

 こすぷれいやーであろうか? いや、この女子は自分を船長と言ったのであるからして本物の海賊やもしれぬ。なんということか、そこらの不良よりもとんでもないやつであった。助けてやろうと思っていた吾輩の方がぴんちである。

 

「気持ち悪いぃ……」

 

 うむ、仕方ない。このような状態の女子を追い出すほど吾輩は鬼ではないのである。にゃあと一言詫び、服の裾を咥えて吾輩のまいほーむへと引っ張ってやるのだ。

 

「ヒック……あーん、船長お持ち帰りされちゃいますぅ〜……」

 

 こやつ目が蕩けておる。吾輩のことをちゃんとわかっておるのだろうか。酒とはなんとも恐ろしいものであるな。

 

 

 

 

 

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「う〜……ん」

 

 少し落ち着いたようである。わざわざ吾輩の葉っぱべっどを貸してやったのだ、早く良くなって帰って欲しいものである。

 

「ぁ……猫ちゃ〜ん、おいで〜」

 

 嫌である。吾輩は酒の匂いが好きでない。酔っぱらいのもとに行くなど勘弁願いたいのである。

 

「……ぅぅ。猫ちゃんに振られた。うわーん! 皆して船長に冷たいんだ!」

 

 おいやめろ。吾輩のべっどが、ああ! ばらばらになっていくのである! 大人であるといっても限度があるのである! ここは断固抗議せねばならぬ! 

 

 なあぁぁあああうぅ! 

 

「ぐずっ……怒られた……うう……」

 

 いや、そんな号泣されても困るのである。調子が狂う。

 

 さっきから振り回されてばかりである。あの猫耳の女子と再会して上機嫌な日であったはずなのに、厄日になってしまったのである。

 

 

「船長だってアイドルなんだよぉ……もうちょっと優しくしてくれてもいいじゃん……チヤホヤしてくれてもいいじゃん……」

 

 

 ………………なぁう。

 

「ん、あれ? 猫ちゃん……」

 

 仕方ないのである。今夜だけのさーびすであるからして、吾輩の魅力に溺れて存分に愛でればよいのである。

 

 吾輩には言葉が喋れぬ。吾輩にはこれしかできぬ。半端にも前世の……人間の記憶を持っているが故の不甲斐なさが、今回ばかりは身に染みるのである。

 

 膝の上に乗り、ごろんと寝転がってやるのである。恐る恐る近づいてくる女子の手を掴み、頭を押し付けるのである。うむ、そうだ。撫でればいいのである。もふもふすればいいのである。

 

『惨めさから抜け出す慰みは2つある。音楽とネコだ』

 

 どこぞの有名人もそう言っているのである。吾輩はねこである。慰めてやるのである。

 

「ぇへへ。猫ちゃんまで虜にしてしまうとは……やっぱり船長の魅力は隠せないかぁ〜」

 

 何やら変なことを言われた気がしたが、吾輩は見て見ぬふりをしてやるのだ。伝う雫も、小さなありがとうも。

 

 

 

 

 

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 むむ。どうやら吾輩、眠ってしまったようであるな。ずっとわしゃわしゃと撫でられておった故、毛繕いもしっかりせねばならぬ。いやしかし、何やら腹が重いのであるな。

 

「んん……」

 

 おおう。女子よ、いつの間に吾輩の腹を枕にしておるのだ。許可を出した覚えはないのであるが……まあ今回だけは許してやるのである。

 

 そっと頭を下ろし、寝床であった葉っぱを代わりに詰めておくのである。人間の身体では硬い路地裏で寝れば痛くなるやもしれぬが、吾輩ではどうしようもなかったのだ。そこまで泥酔した己を恨むのであるぞ、女子よ。

 

 んべ、んべ。ううむ、吾輩の身体まで酒臭い。これは一度、どこかで水浴びをせねばならぬ。昨日は大雨が降った故、水分補給ついでに水遊びをするのも良いかもしれぬ。

 

 うむ。毛並みはばっちりである。さて、本当はこのままおさんぽに行きたいのであるが、この女子が気にかかる。しかし吾輩は人間ではなくねこであるからして、起きるまで傍にいてやる義理もないのである。うむ、ここは吾輩の宝物をやるのである。きっと元気になるのである。

 

 女子の近く……正確には寝床の近くに落ちたままであった赤い石を手の中に押し込んでやるのだ。これは吾輩の宝物の中で二番目、いや三番? ええいどれでもよい。とにかく吾輩の宝物の中でも上位に位置するものである。これをやる故、何かあればこれを見て吾輩を思い出すがよい。

 

 寝ておる女子ににゃあと声をかけ、今日のおさんぽへと赴くのである。ぽかぽかなおひさまが居るので、そちらにもにゃあと挨拶をしてやるのだ。おひさまはお返しに温かい日差しをくれるのである。あの女子も、きっとそうなるのであろう。吾輩にはわかるのである。

 

 

 

 

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「んん……船長いつの間に寝てたぁ……? ん、え、これルビー!!?」

 

 

 




ホロメンの解像度を上げたい。

感想、考察、評価ありがとうございます。
誤字報告もありがとうございます。読みづらいと思いますが、あれ煮干しとツナ缶なのですよ。すみません。
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