今回もゆったりしていってね。
ちりんちりん。吾輩である。最近の吾輩は特段変わらぬ生活を送っているのである。強いて言えば、あの酔っばらっておった女子が時折まいほーむ付近できょろきょろしながらうろつくようになったことか。
毎度隠れる身としては中々に辛いものがある。別にあの女子を嫌っておるわけではない。いやしかし、吾輩とて酔っぱらって路地裏に迷い込んだ挙句、ねこに介抱されたともなれば赤面ものであることはわかるのだ。わざわざこの顔を見せてやるのも酷というものでろう。
吾輩は気遣いのできる大人なねこなのである。えへんえへん。
しかし、何故にあそこでうろついておるのだろうか。もしや落し物でもしたのかもしれぬ。仕方なし、まいほーむに戻ったら見慣れぬものがないか探してみるとするのである。まったく、手のかかる女子である。
さて、そんな調子のため日常としかいえぬ日々である。することもないのであるからして、吾輩はこれからいつものおさんぽと吾輩いちおしのお昼寝すぽっとに行くつもりである。
まずは日向ぼっこによい公園にでも……むむ?
前からねこが来るのである。ううむ、相当なご立腹であるな。尻尾がぶおんぶおんと揺れているのである。
このままでは衝突してしまうであろうが、吾輩は決して退きはせぬ。吾輩の後ろにはまいほーむへの道がある故、ここで退けばなわばりを譲ることと同義なのである。
こういう時は相手よりも早いことが重要である。毛を逆立たせ、特に尻尾を膨らませれば、それに気付いたねこは暫したたらを踏んだ後に来た道を引き返して行った。うむ、決着である。
先手を打たれれば不利である。威嚇も戦いも、先に流れを制した者が勝利する。腹を立てていた故に吾輩に気付くのが遅れたのがあのねこの反省点である。
何はともあれ、まいほーむは守られた。これで一安心である。
んなぁ、気を張りつめたからかお腹が減ってきたのである。日向ぼっこをした後は狩りをせねばならぬな。
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うぐおおお。お腹が減ったのである。公園で日向ぼっこをしていたらついつい寝過ごしてしまったのである。おひさまはもう沈み、鳥も虫も上手く見つからぬ。人間に貰おうにもみんな家に入ってしまったのである。
吾輩としたことが、なんたる失態。このままではねこの中のねこを名乗れぬのである。穴があったら入りたいのである。狭ければなおよしである。
さて困った。吾輩はこれまで狩りと人間からの恵みで生きてきたのであるが、これらが難しいとなるとごみを漁るしか手段がなくなってしまうのである。
いや、野良猫の如く人間の食い残しを漁るなどまっぴらごめんである。吾輩は野良猫ではなく野猫である。言わばねこの中のねこであるからして、そのようなみっともない真似は死んでも嫌である。しかしこのままでは一日何も食わずで終わってしまうのである。
こうなったら最後の手段……いや、一縷の望みである。吾輩のおさんぽの最終地点は神社である。そこの巫女とは吾輩、顔見知りであるからして、きっとご飯を恵んでくれるはずである。
そうと決まれば走っていくのである。えねるぎーを消耗するのであるが、今回ばかりは背に腹はかえられぬ。吾輩は風のように気ままであるが、時に突風の如き速さを得るのである!
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神社に着いたのである。しかし本当の目的地は神社ではない。境内にある家である。
玄関に来てみれば、何やら騒がしいのである。もしや客が来ておるのやもしれぬ。本来であれば日を改めるところであるが、吾輩は空腹で辛抱たまらぬ。どうにかして巫女に気付いてもらいたいところである。
「みぃこぉぉちぃいいい!!」
「あーちょちょちょ! 待ってすいちゃん! あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
おおう。どたばたと音がしたと思ったら玄関が開いたのである。ふぎゃあ!? 何か大きいものが飛んできたのである! 危ないのである!
咄嗟に横に飛んで躱せば、それは地面に転がって……む?
ピンクの髪に装飾の多い巫女服……これは、巫女ではないか? 吾輩の後ろで勢いよく玄関の扉が閉じる音がしたのである。おおう、がちゃりと鍵の閉まる音もしたのである。
「い……痛い……さすがに胸を弄るのはライン越えだったにぇ……」
ふむ、どうやら喧嘩して叩き出されてしまったようであるな。巫女よ、喧嘩はいかぬ。しっかりと謝って仲直りするのである。そんな意を込めてにゃあと声をかけてやると、巫女はようやく吾輩に気付いたようである。
「あれ、猫ちゃんだにぇ。こんな夜遅くにどうしたの? いたっ!」
そういって立ち上がろうとした巫女は、手を支えにしなかった故か転んでしまったのである。うむ、何か白いものが見えた気がするのであるが、吾輩それどころではないのである。
吾輩、厚かましくもご飯をたかりに来たのである。もうお腹と背中がくっついてしまうぐらい空腹であるからして、何か食べさせて欲しいのである。巫女の手を舐めてやればわかってくれるだろうか。
「ちょっ、あはは。なになにくすぐったいにぇ。あっ、わかった!」
おお! さすがは巫女である。少しばかりぽんが目立つが、やはり神事をこなしておるだけのことはあるのであるな!
「みこに甘えたくなったから来たんでしょ。じゃないとこんなスリスリしてこないもんにぇ」
さすがは巫女であるな。ことさら『わかった』といってわかっていた試しがない。その自信は一体どこから来るのか小一時間問い詰めたいのである。
しかし吾輩は諦めぬ。にゃあにゃあと鳴きながら身体を足に擦り付けて尻尾をぴんと立てるのである。ずっとそうしておればさすがの巫女も何か違うことに気付いたようで。
「え、違うのかな……わかんない。お腹減った? ご飯食べに来たの?」
うむ、うむ! その通りである。足から離れて吾輩の口周りをぺろりと舐めるのである。そして見つめ続けてやれば、巫女はその考えにようやく確信に至ったようである。
「そっかぁ。ちょっと残念だにぇー。ご飯持ってくるから待ってて」
ありがたい! にゃあとお礼を言ってやるのだが、吾輩の言葉がわからぬ巫女は気にとめず神社を経由して家の中に入っていってしまった。仕方ないとはいえ少しだけ寂しいものがあるのである。
ふわぁ。安心したら疲れがきたのである。おおう、ずっとご飯を探していたからか毛並みが荒れているのである。んべ、んべ。ついでにかゆいところを後ろ足でかくのである。ああ、気持ちいいのである。
そうしておれば、玄関の鍵が開く音がしたのである。おお、巫女よ。待ちわびたのである。
「お待たせ〜! これしか無かったけど遠慮せず食べていいよー」
巫女の手にはおにぎりがあったのである。吾輩、味蕾は人間や犬どもには劣る故に甘味は感じにくいのであるが、お米は大好きである。
はぐはぐ、この肉には無い粘りのある食感と温かさがたまらぬ。むむ!? これは、中に鮭が入っておるな。素晴らしいぞ巫女よ。吾輩の中で一つも二つもらんくが上がったのである。
「すごい勢いで食べてる。お腹減ってたんだにぇ〜」
むう、食事中に撫でるのはよすのである。吾輩が大人であるからよいものの、普通のねこであれば機嫌を悪くしてしまうのである。む? このおにぎりには具が入っておらぬ。まあ美味いからよいのである。
「あ、シケ吉にぇ。途中で面倒くさくなったから具を入れなかったやつ」
聞く者が違えば激怒しそうなことを……。吾輩が懐の広いねこの中のねこであってよかったであるな。
「みこにぇ、今お客さん来てるからもう行かないと。猫ちゃんは食べたらちゃんと帰ってね」
うむ、忙しいところ失礼したであるな。お礼のにゃあを言ってやると、巫女はひらひらと手を振って家の中に戻っていったのである。うむ、やはり巫女に頼りに来て正解であったであるな。
「ちょっと!? まだご飯があったはずなのにどこいったの!?」
「あ、みこが使っちゃったにぇ」
「僕が後で食べるからちゃんと残しておいてって言ったじゃん!!」
「仲裁きーつね!」
「なんだ白いなんぉガブッ!」
「いたぁああぁああ!!?」
うむ、なにやら楽しそうであるな。しかし吾輩はお腹もいっぱいになったし帰るとするのである。
今日は大変な一日であった。巫女がおらねばどうなっていたことか。今度巫女にお返しのぷれぜんとをせねばならぬ。ぺこーらに渡しそびれたものであるが、あの蝉の抜け殻であればきっと喜んでくれるであろうな。
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後日、桜神社に来た兎が賽銭箱の上にのった大きな蝉の抜け殻に悲鳴をあげたそうな。
よろしければアンケートを作りましたので回答お願いします。
基本、この作品はねことホロメンの1体1ですが、どうしたものかと。