吾輩は猫の中の猫である   作:サンサソー

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アンケートは締切日曜までにするつもりですが、凄まじい票差ですね。私も少し驚いてます。
それではゆったりしていってね。


海賊危機一髪である

 ちりんちりん。吾輩である。

 

 さわやかな朝日と風はとても気持ちいいのであるが、それどころではなかったのである。何を隠そう、吾輩は上手く海賊の女子から逃げおおせたところである。うむ、出会ってしまったのだ。それはもうばったりと。

 

 先にも言ったとおり、吾輩はあの女子のことを嫌っておるわけではない。むしろああまで世話してやったからこそ少しばかり愛着はあるのである。今までは、吾輩は大人であるからしてこれもあの女子の面子のために気を遣ってやっていたのだ。今はもはやそんな事はせずともよいとわかったのであるが……。

 

 では逃げる必要も無いと思うであろうか? いや、仕方がなかったのである。うむ。万に一つも、あの女子が何やら叫びながら迫ってきたのが怖かったからというわけではない。吾輩がびびり散らかしているなぞありえぬのだ。うむ。

 

 しかし身体の震えが止まらぬ。そこなとかげよ、今は捕りはせぬ。少しばかり先程のことを吐かせてはくれぬか。

 動きが止まったのである。もしや吾輩の意思が通じたのであろうか。まあいいのである。聞いてくれると言うならば吾輩の見事な逃走劇を聞かせてやるのである! 

 さて、それは遡ること今朝のことであった。

 

 

 

 

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 美味かった美味かった。何年も命が延びる延びる。

 小鳥二匹に虫を幾匹。狩りも上々であった故に素晴らしくまんぷくである。うむ、それ故か眠気も酷くある。今日のところはもうまいほーむに戻ってお昼寝するとしようか。とてとて。ううむ、眠い。

 

 いっその事このまま手頃な場所で寝てしまおうか。いいや、もう少しで愛しきまいほーむに着くのである。路地裏は暗くて涼しい故、眠気に勝てぬやもしれぬ。仕方なし、通りに出ておひさまを少しばかり浴びるのである。む? 通りか。何か考えていた気がするのである。

 

 はて、先程から何かが引っかかる。何やら忘れているような、そうでないような。いやいや吾輩はねこの中のねこである。大事なことは忘れぬ故、大したものではなかったのであろう。そう思いながらにゃむにゃむと口を動かしながら歩いていた時である。

 

 すんすん。何やらとてもいい匂いがするのである。ふにゃあ、気持ちよくなってきたのである。うむ、うむ。こつん。うにゃあ、何かにぶつかってしまったのである。

 

 これはいかぬ。ぶつかってしまったらちゃんと謝らねばならないのである。吾輩はこういった礼儀にはうるさいのである。恐らくぶつかったのであろう人間の足に擦り付きにゃあと言ってやるのだ。

 

「ん、何か足がモフモフ……あっ、その鈴は!」

 

 むう? 何やら聞いた覚えのある声であるな。顔を上げてみるのである。おお、おおう。あの時の酔っ払っておった女子ではないか! なんということだ、吾輩としたことがすっかり眠くて忘れておったのである。

 

「あ〜ん、猫ちゃ〜ん。会いたかったよ〜」

 

 そう言いつつ女子は大きな箱をその場に置いて……にゃあ!? マスクと手袋を付けたのである! 

 

 あれはだめである。昔に見たことがあるが、あれは野良猫を捕獲しようとする人間どもの常套の格好である! 野良猫たちの噂によれば、捕まったねこは去勢され味の無い物を食わされ太らせたところで、果てには喰われてしまうのだという。

 

 はぐはぐ。もしやこの女子も吾輩を喰おうという算段なのであろうか。もぐもぐ。あれほど介抱してやったというのに恩を仇で返すのか。うむ、女子が地面に置いてくれたにぼしが美味いのである。

 

 女子の手が伸びてくるのである。それは吾輩にとって断頭台の刃に等しい恐ろしいものである。きっと捕らえてそのままここでばくりっといくつもりである。

 

 嫌である! 吾輩は自由気ままに生きるのである! 人間の食料になどなりたくないのであるぅぅぅ!! 

 

「うーんまだ警戒されてるな……ほらほら猫ちゃん。ここにね、イイ粉があるんですよ。これあげますからちょーっと大人しくしててね。ヒヒヒヒ……」

 

 吾輩、気付いたのである。先程からするいい匂いが女子から放たれておる。なんなら女子の手にある袋からするのである。うむ、これはまたたびの香り。こやつ本格的に吾輩を捕らえようとしておるのである!? 

 

「あっ、待って猫ちゃーん!?」

 

 やめるのであるやめるのである。吾輩を追いかけるのはやめるのである。待てと言われて待つねこはなし。喰われるとわかっていて大人しく喰われるねこもいないのである。

 

 人間の家を囲う低木に突っ込むのである。そのまま真っ直ぐ駆けていけば、追えなくなったのか女子の声も遠くなって行くのである。吾輩を捕まえたいのであればにぼしやつなかん、ついでにまたたびを大量に持ってくるのであるな! 

 

 

 

「人の敷地内に入っていくのはズルじゃん! あーもう、やっと見つけたと思ったのに……」

 

「え、なに地面に這いつくばってんのマリン」

 

「あっ、スゥー……いやぁ何もないんすよ。一時の気の迷いって言いますか何と言いますか。だからちょっと内緒にしてて欲しいかなーって」

 

「ファッファッファッ! 新しい雑談ネタゲットー! 一味にバラしてやるぺこ」

 

「ぺこらてめぇええ!!」

 

 

 

 

 

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 そういった経緯を経て、吾輩は女子から逃れるためにまいほーむとは逆方向へと爆走したのである。おかげで寝ぼけ眼であった吾輩のおめめはぱっちり。何事も無くまいほーむで寝ておれば幸せな夢がきっと見られたであろうに、とても残念である。

 

 聞いてくれて感謝するのであるとかげよ。では頂くのである。うむ、嘘はついておらぬ。『今は』と言った故、話し終えればもう喰う喰われるの仲であるゆえ。是非もなし。

 

 しかし吾輩はねこの中のねこであるからして、恨むようなことはせぬ。むしろ感謝するのである。最近は寝てばかりであった故、おさんぽの時間が今日は多く取れるのである。ふふふ、此度は吾輩の起きている時間の最長を目指すのもよいやもしれぬ。ふわぁあ。まんぷくである故、眠くなってきたのである。

 

 はっ! いかぬいかぬ。前言を裏切るのが早すぎる。このまま寝てしまっては吾輩の沽券に関わる。今はおさんぽの時間であるからして、足を動かして眠気を覚まさねば。

 

 とてとて。とてとて。今日はたっぷりと時間があるのである。きっとたくさんのものが見られるであるな。吾輩、とっても楽しみである! 

 むむ、ちょうどよいところに公園があるのである。人間の子らが遊んでおるな、吾輩も混ぜて欲しいのである! 

 

 

 

 

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 ふわぁあ。むにゃむにゃ。

 

「あら〜。ベンチで猫さんが眠ってらっしゃる。触ってみちゃおうかな。つんつん、つんつん」

 

 ん、んむ。虫め、なかなかしぶといのである。すぴー。

 

「おっと、指が捕まっちゃいましたな。おぉ〜、肉球がぷにぷにで気持ちいい」

 

 やっと捕まえたのである。かむかむ、ぺろぺろ。

 

「はぁ……猫ちゃん可愛いなぁ。よし、このまま連れて行ってビックリさせちゃおう。怒られそうだけどこれは楽しいことになるぞ〜」

 

 んん〜、あったかくてなんだか気持ちいいのである……ぐぅ。

 

 

 

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