今回!と?多めです。
それではゆったり…できるかなぁ。
ちりんちりん。吾輩である。
今日は珍しく、遅い時間であるにも関わらずおさんぽ中である。
人であった頃の名残りなのか、いつも夜には寝ている吾輩であるが、本来ねことは夜行性。こうして夜の帳が満ちる街をおさんぽするのもまた楽しみの一つなのである。
夜となると人間も鳥や虫も静かになるのであるが、おひさまの代わりにおつきさまがおるので、吾輩はまったく寂しくはない。無論、おつきさまにも挨拶はかかさぬ。
無二の友である故、いつの日かはいつも夜を照らし一緒にいてくれるおつきさまにお礼がしたいのである。しかし吾輩はおつきさまに手が届かぬ。これではねずみもとかげもあげることができぬ。それは悲しいのである。
こうなれば、話に聞く月にまつわるものたちに聞くしかないのであるな。確からいおん、わに、人間の女子、かえる……ええと、他にまだあった気がするのである。
「えぇ……マジで行くん?」
「当たり前っすよスバル先輩! 言い出しっぺがなんで一番怖がってるんですか」
おお、思い出したのである。うさぎであるな! おつきさまでお餅をぺったんぺったんしておると聞いたことがあるのである。いつか吾輩も同席させてはくれまいか。
いやそれよりも、あのうさぎ耳の女子。もしやぺこーらでは? しまった! あの蝉の抜け殻は巫女にあげてしまったのである。せっかくぺこーらを見つけたというのに何も持っておらぬとは……歯痒い、歯痒いのである! …………む?
「ほらスバル先輩。そんなに震えてないで行きますよ。もう少しで件の廃墟に着きますから、こんな肝試しなんかさっさと終わらせましょうほらほら」
「鬼かおまえぇ! せめて心の準備ぐらいさぁ……」
「そんなことしてたらいつまで経っても終わらねぇぺこだよ。行ーくぺこ行くぺこー」
「あっ、ちょ、ぺこちゃん押さないでって!」
肝試しか………………ふむ。
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「中は思ったより綺麗だな」
「いやめっちゃ散らかってるぺこ。え、スバル先輩まさか部屋汚い勢?」
「ちげーよ! お決まりのセリフでも言わないと怖いんだって!」
廃墟の中を二人はどんどん進んでいくのである。すばる……スバル? という女子は片手に懐中電灯を持ちながらびくびくしておるのである。吾輩にとってはこのような暗闇など明るい部類なのであるが、やはり人間には怖いものなのであろう。
吾輩は二人に見つからぬように物陰からついて行っているのである。あの海賊の女子やフブキらの件で、無闇に人間と接触してはならぬと考えたのでな。しかし夜にこのような場所に行くのはどうにも心配であるからして、こうして後をつけておるのである。
「うーん、今のところ何もなさそうぺこ」
「いや何もなくていいから。このまま何事もなく終わるのが一番いいんだからな!?」
「わーかってますって。念を押さなくてもいいですぺこだよ」
うむ、この廃墟はそこまで大きくはない。入ってからしばらく経つがこれまで恙無いところを見ると、今のところは順調であるしこれはすぐ終わりそうなものである。
…………ふむ。このままではどうにもいかぬ。吾輩の傍にあった瓶を一つ、落としてやるのだ。がしゃあん。
「はぁぁあああ!!? なに!? なんで落ちた!?」
「ア゙ア゙ァ゙ァ゙ッッ!!? ヤバイ!!」
「は? ちょっぺこちゃぁああんん!??」
脱兎の如く走り出したぺこーらに置いてかれるスバル。うむうむ。作戦は大成功であるな。
棚から下りて、スバルのところへ近付くのである。無論、にゃあと声をかけるのも忘れてはならぬ。
「ヒィッ!? って、猫……? なぁんだよぉビックリしたってマジでぇ……」
すまぬ。そこまで驚くとは思っておらなんだ、許して欲しいのである。見たところ腰を抜かしてしまったようだし流石に反省しておる。
お詫びと言ってはなんであるが、お膝に乗るゆえ存分に吾輩を愛でるがよい。ほれほれ、吾輩の毛並みを撫でて落ち着くのである。
「お、おお乗ってきた。いや、そうだな。そうだもんな。人のいない廃墟とか野良猫の住処になっててもおかしくないわ。ちくしょぉ、そうなると怒るに怒れないじゃんか……コイツふわふわだし……」
これスバルよ。一つ訂正するのである。吾輩は野良猫ではなく野猫なのであるからして、ぷらいどのためにも断固として譲れぬのである。
お膝から下りてにゃあにゃあ言ってやるが、悲しいかな。人間に吾輩の言葉は伝わらぬ。
「急に鳴きだした……餌か? 食べれるもの持ってないしなぁ……」
なぜ人間は皆、吾輩がにゃあと言うとご飯と間違えるのであろう。吾輩は食いしん坊ではないのであるからして、誠に遺憾である。いや、くれるならば食べるまでだがそれはそれである。
「スバル先輩!」
「うわぁっ!? えっぺこら!?」
ぬおっ!? スバルの後ろから急にぺこーらが現れ……む、スバルよ。今おぬし、ぺこらと言ったか? 名はぺこーらではないのであろうか。ううむ……。
吾輩がちんぷんかんぷんになっておるうちにぺこらはスバルを立たせ、腕を掴んで走り出したのである。おうい、どこへゆく。吾輩も連れて行って欲しいのである。
「ちょっ、いきなりどうしたぺこら!?」
「わかってないぺこ!? スバル先輩こそ何してたぺこ!」
「何って、猫を撫でて……」
おおう、足が早い早い。しかし侮るなかれ、吾輩のようなねこは足の速さであれば人間に遅れなど取らぬのである。追いかけっこなぞいつぶりであろうな!
「はぁ!? あんなの撫でてたぺこ!? 怖いからって頭おかしくなったぺこか!」
「あんなのって、どうしたんだよぺこちゃん!」
「だって……」
「
「……はぁ!?」
何を言ってくれておるのだ! おのれぇやはり許せぬわあやつ! 威嚇しながら追い回してやるのである!
んに゙ゃぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!!
「ヒィッ!? なんか怒ってるって!」
「早く逃げなきゃヤバイよスバル先輩!」
はっ、小癪な! 吾輩から逃げるなど片腹痛いのである! 待つのである! 待つのであるぅ!!
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「あった! 出口!」
「え……? あ、ああ! 出口ぺこ! まずあそこまで行く……!?」
そうはいかぬ。スバルとぺこらの間にすたっと飛び込むのである。これで二人を分断できたのであるな。あと少しである!
「ちょっ!? ぺこら!」
「スバル先輩!」
ふかぁっと威嚇でぺこらを牽制し、素早くスバルへと飛びかかるのである。逃げろ逃げろ、噛んでしまうやもしれぬぞ!
「ぎゃぁああこっち来たぁあ!!」
「スバル先輩ー!」
廃墟から抜け、少しばかり追ったところで吾輩は足を止めたのである。ふわぁっと欠伸が出る。こんな夜にはしゃぎすぎてしまったやもしれぬ。
さて、吾輩はまいほーむに戻るのである。いい運動をしたのであるからして、今夜はぐっすり眠れそうであるな!
るんるん気分で吾輩は帰路に着くのであるが、最後にふと、声が聞こえた気がして後ろを振り返るのであるが……ふむ。
気のせいであるな! どこぞの影法師が現れたわけでもなし、気にする事はないのである。
してやったり顔で、吾輩は悠々と帰ってやるのだ。ざまーみろである。
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「はぁ……はぁ……酷い目にあった……って、マズイ! ぺこら置いてきちゃった!」
「ぺこらがどうしたぺこ?」
「うおわあっ!? ぺ、ぺこら。よかった逃げ切ったんだ……!」
「ん? ……というかスバル先輩。約束の時間なのになんで来なかったぺこ? 一緒に肝試しするって言ったじゃないですか」
「え? ……いや、さっきまで廃墟でしてたじゃんか」
「……あの、スバル先輩? 空き家はあっても廃墟なんてそうそう無いぺこ。それに行くのって夜の神社でじゃなかったぺこ?」
「え? ……あっ」
猫の魔除け。
今回の話の概要
・肝試しに行くスバルとぺこら発見
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・会ったことのあるぺこらに違和感を覚える(一度死んで転生+魔除け猫パワー)
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猫の干渉に気付いたぺこらが一時撤退、猫はスバルのケア
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・ぺこらに妨害されながらもスバルを追い出すことで救出(死体関連は嘘なので猫激おこ)
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・ぺこら(ドッペルゲンガー)&廃墟消失
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・スバルがぺこら(本物)と合流