袋一杯にして、次の普段着の店に。着なれたものが家にあるので、そこには用事がないと言ったんだけど、マキナさんはせっせと買い物カゴに放り込んでいる。
その姿を横目に、ボクはお料理で使うエプロンを探す。ベビードールの近くに見かけたんだけど、あれは用途が違うと思うので。
普段着も買って一息ついたので、お昼にしようと決めた。荷物は一旦、車に積むと言って一階のセーフハウスに連れて行かれる。
そこにボクを預けて、荷物を車に運ぶんだって。一緒に運ぼうと「ボクも運びます」と言ったんだけど譲ってくれない。
未就学くらいの子供たちがソフト玩具で遊んでいる。そんな中でボクだけが浮きまくっている。
守衛の職員? なのか、子守りの店員さんに気を遣われてコーヒーの接待を受けてしまう。
喉が渇いていたので助かったけど……。マキナさんと離れると、なんだか心細い。
一度、通ってしまった途は道筋がついて止められない。搾精では感じられなかった幸せを伴って心が温かくなる。
「なんだか温かくなってきた……」
図らずも下腹を擦っていたら、膝に手を置いて覗き込んでくる子がいた。
何だろうと思って、にっこり微笑むと安心したのか膝によじ登ってくる。
「お膝に座りたいの?」
そう言っても返事はない。無邪気な瞳がボクを凝視してくるだけ。
そんな彼女を抱え膝に座らせる。でも、向きが気に入らなくて身体をよじって、こちらに回転しようとしてくる。
「ああ、ごめんね?」
改めて抱え上げて向かい合うようにフェイストゥフェイスの姿勢にしてあげた。
機嫌が直った彼女は、ひたすらボクの顔を見てくるのみ。
「早くママが来てくれるといいね」
その言葉に初めて? 反応があり、ボクに手を出してくる。
何だろう。そのちっちゃな手を取って握ってあげると微笑み返してきた。
その笑顔を見て熱い何かが心臓から身体中に流れていき、背中を震わせた。
愛する人との結晶を抱いたら、こんな幸せを感じるのだろうか?
安心したのか、彼女は微睡みはじめ、いつしか身体を預けて眠ってしまった。
「眠っちゃったね……」
彼女を起こさぬようにパイプイスから立ち上がりソファーに移動する。
しかし、困ったな。マキナさんが迎えにきても移動できないぞ。
なんて考えていたら、抱っこしているのを見つけた遊んでいる子の幾人かが寄ってきて、抱っこしている子とボクを見る。
なんとなく、羨ましい、とか思ってるっぽいんだけど、どうすりゃいいんだろう。
悩んでいるボクとは裏腹に集まった子たちがにじり寄って膝に乗ったり、抱きついてきた。
「このオバさん、いい匂いがする~」
その言葉がきっかけになって、遊んでいた子たちのほとんどが、こちらに興味を示してしまった。
でも、オバさんはやめて。せめてお姉さんで、お願い。
「お前、オトコ……か?」
そんな時、年かさの小学低学年くらいの女の子が訊いてくる。
「おとこってオトコ?」
「オトコって、こどもを作れる人?」
「ほんとにオトコ? 初めて見た」
苦笑いして、ああ、なんて言い訳しようかと考えている内、矢継ぎ早に訊いてくる女の子たち。
これはマズい、と思うが後の祭り。わらわらと子供たちがオモチャを放り出して集まってきた。
「オトコなら、お父さんになって~」
「ダメ! わたしんちのお父さんにするの~」
「ボク──私、男じゃないよ。女だよ……」
「オトコだよ。ママと全然違う匂いがする~」
子供でもギラギラした目付きで諍い始めてしまった。どう突っ込むか悩むけど、せめてお兄さんにしておくれ。
ようやっと、ボクの事態を子守りの店員さんに気付かれたけれども手遅れだった。
抱えた子を片手でガードしながら、集まった子たちをもう片手で近寄らせないようガードする始末。
店員さんはボクが男と曝露できずに、宥めすかして子供たちを引き剥がそうと苦心しているところにマキナさんが迎えに現れた。
「これはどういう状況だ?」
「まあ、なんと言うか……」
あらましをマキナさんに告げた。まとわり付いてきていた子たちは、マキナさんと店員さんの努力のお陰で剥がしてもらえた。
店員さんは、マキナさんとボクに平謝り。店員さんたちに瑕疵はないので「気にしないで」と慰める
問題は眠りを護った子だったのだが、買い物を済ませた母親が迎えにきてくれたので引き渡して事なきを得た。