【悲報】皆がボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~   作:ペロりねった

15 / 203
15.誰もいない家

 

 

 何か吹っ切れて晴れやかな気分になっていた。マキナさんは満足げなボクの様子を感じ取ったのか、帰宅を(すす)めてくる。

 

 休日の帰宅に重なって軽く渋滞(じゅうたい)して、行きよりは時間がかかって家に辿(たど)り着いた。

 

 眠っていれば良いと言うマキナさんに甘えて帰路は眠ってしまったので実感はしなかったけれど。

 

 車の荷物をマキナさんが運び、ボクは新居の解錠(かいじょう)テストをかねて玄関を開けてみる。

 

 玄関を入るとむわっとスパイスの(かお)りがしてきた。照明をつけると、ダイニングのテーブルに置き手紙があった。

 

 荷物をダイニングに置いたマキナさんに、手紙を渡すと一緒に読む。

 

「私は帰ります。温めて食べてください。サラダと飲み物は冷蔵庫の中です」と優しい字で書いてあった。

 

 お風呂のお湯張りを始めて、準備していてくれた食事を温める。

 

 食事は室内の匂いから(うす)々わかっていたがカレーだ。カレー皿によそって温める。

 

 付け合わせにサラダがあり、飲み物にラッシーが冷蔵庫に用意されていた。

 

「「頂きます」」

 

 マキナさんは何か黙々(もくもく)と食べ始める。

 

 (とり)肉がごろっと入ったチキンカレーで、ボクは辛くてヒーヒー言って食べた。口直しにラッシーを、ぐびぐび飲む。

 

「卵を割り入れたらマイルドになるぞ?」

 

 そう言うマキナさんの提案に乗って、生卵をカレーに混ぜて食べた。

 

 言葉がなくて食器とスプーンが当たる音が強調される。

 

 今夜は赤井さんが既に居ないんだなって思う、それだけで静かさが強調されたような感じ。

 

 

 カレーを食べ終えて、コーヒーを飲もうかとしていると、お湯張りできたと通知が鳴る。

 

 どちらともなく、入るか(すす)めるかを躊躇(ためら)っているとマキナさんが(そば)に来てボクの手を取り(みちび)いていく。

 

 まあ「一緒(いっしょ)に入ろう」ってことなんだろう。手をつなぎ二人で風呂場に入った。

 

 躊躇(ちゅうちょ)なく()ぎ出すマキナさんに合わせて、ボクも脱いでいく。

 

 脱ぎ終わると、待っていてくれたマキナさんと手をまた(つな)いで浴室に入っていく。

 

 明るい場所でお互いに裸でいるのは初めてだ。それぞれ自分で身体を洗っていたけど、いつしか互いに洗い合っていた。

 

 ボクは今夜も念のためスペシャルソープで身体を洗い、泡を流すと湯船に()かる。

 

「今日はありがとうございました。思い付きに応えてもらって。運転たいへんでしたね」

 

 向かい合うマキナさんを(ねぎら)った。

 

「いや、そうでもないさ。君は座っているだけで疲れたろう?」

「いえ。帰りは眠ってしまい、すみません」

「構わないさ。久々に海が見られて楽しかった」

 

 また一緒に行こう、と(さそ)ってくれる。また行きましょう。次はちゃんとして行きたいな。

 

 

「ほぉう。いい匂いがする……」

 

 風呂から上がり、脱衣場で体を()くと(こす)れるたびにスペシャルソープ由来の匂いが立ち上る。

 

 身体から発するそのバラのような香りにマキナさんが気づいて言う。

 

「ありがとうございます。母が持たせてくれたソープなんです」

「あの匂いは、それだったんだな……」

 

 思い出すようにボクの背中に鼻を近づけて嗅いでくる。肌をなでるような鼻息がこそばゆい。

 

 

 替えの下着を持ってきていなかったので穿()いていた下着を穿()こうとするとマキナさんに止められる。

 

「新しいのを穿かないか?」

 

 新しいのって、お昼に買ったヤツですか? たぶんマキナさんが選んだものでしょうね。

 

「はあ、構いませんけど?」

「待ってろ」

 

 風呂場から飛び出すと荷物がそのままのダイニングに向かっていくマキナさん。

 

 ガサゴソ聞こえてきたあと、手には薄衣(うすぎぬ)をまとめて持っている。(うっす)らと(あか)いのも()けて見える。

 

「これだ」

「はい……」

 

 ボクは丸まった布を受け取った。

 

「私は先に部屋へ行ってる」

 

 そう言ってマキナさんは一糸(いっし)まとわぬ姿で二階に上がって行った。二人の(よご)れものをまとめてカゴに収めると渡された物を調べる。

 

 薄くひらひらしたのは、やはりベビードールだった。素肌に着ける紅いビスチェはレースでできていてカップがなくコルセットみたいだ。

 

 ってこれ、背中で()めるようになっていて自分で留められないよ? そしてヒモと見紛(みまご)うショーツ、いやほぼヒモですよ、これ。

 

 ビスチェに下がったベルトで落ちないようにするのかな? 

 

 ビスチェを体の前である程度留めて回転させて後ろ手に残りをなんとか留める。

 

 紅いヒモ(﹅﹅)穿()くとベルトでつないで、自身の姿を見るとなんだか物悲しくなってきた。

 

婦夫(ふうふ)って大変……」

 

 まだ見ぬ旦那(だんな)様があと二人、いるんだよね。まあ姉妹だから、そうは(ちが)わないと思うけど……。

 

 その人その人に好みを知って性格に合わせて……ボクにできるんだろうか?

 

 まあ今から考えていても仕方ないけど、マキナさんとは上手くやってけそうだから大丈夫だろう。

 

 ベビードールを羽織(はお)ってダイニングに行き、散らかった荷物をまとめる。

 

「朝、早く起きて片付けよう」

 

 荷物から取り出した電動歯ブラシで歯を(みが)くとボクの部屋へのろのろと向かった。

 

 

 部屋に入ると待ってましたと満面の笑みで両手を広げるマキナさんがいた。その中に身体を(あず)けると二日目の夜が始まる。

 

 まあ、結婚しては初めての夜だけど。明日は、普通の日常が始まるので(ひか)えめにお願いします……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。