【悲報】皆がボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~   作:ペロりねった

2 / 203
02.マキナさんの会社

 

 そこに()まる白い高級車の前まで行くと、マキナさんは我に返ったのか(あわ)てて手を放される。

 

「すまない。ちょっと舞い上がってしまった」

 

「いいえ、お気になさらず」

 

 いきなり手を(つか)まれてちょっとビックリしたけれど。

 

 平常モードに戻ったマキナさんに、「さあ」と開けられた助手席のドアに(うなが)される。

 

 お礼を言ってボクは助手席のシートに座った。

 

 この車って運転は運転手に任せるようなものだと思うけど、自分で運転して来たんだね。

 

 などと内装を(なが)めている内に(すべ)るように車は動き出した。

 

 ボクの人生で乗ることはないような座り心地や乗り心地に心(うば)われているとマキナさんが話しかけてくる。

 

「すまないが、会社に戻って小用を済ませてからでないと新居に送れない。午後からは、業務を入れていたからね」

 

「はい。構いません」

 

 そう言って、急遽(きゅうきょ)ボクを引き受けたせいでやるはずだった午後の仕事の内、やむを得ない処理を終わらせてからマキナさんの自宅──新居に移ると告げられた。

 

 それほど言葉を交わさぬ内に、ビルが建ち並ぶ中の一つ、その地下駐車場に入っていき車を降りる。

 

 彼女が助手席に回ろうとするのを断って車を降りた。

 

 申し訳なさそうな顔に、気にしないよう笑顔を向ける。

 

 車の乗り降りくらい、自分でできますよ。

 

 こちらを幾度(いくど)となく振り向き気遣(きづか)って歩くマキナさんの後ろを付いていくとエレベーターの前へ。

 

 それは社員用のものらしい。(ふところ)から出したIDカードをチェックボックスにかざして乗り込んだ。

 

 

 目的の五階に上がると、そこはフロアぶち抜きの事務所で、不透明の仕切りが立てられて所々に出入口の隙間(すきま)()けられている。

 

「ちょっと、ここで休んでいて」

 

 エレベーター近くのソファーセットを指をさしてマキナさんが言う。

 

 見た感じは接客用とかではなく、社員の休憩(きゅうけい)用みたいだ。

 

 それを了承しながらも、出入り口の隙間を抜けていくマキナさんを追って仕切りの(かげ)から(のぞ)いてみる。

 

 机が固まった一角に進むと、彼女は部下だろう人に指示し始めている。

 

「午後は少し遅くなる。急ぎの決裁(けっさい)()ませると退社するので周知していてくれ。食事してくる」

 

 食事と聴こえて、お昼ごはんの時間が来ているのを思い出した。

 

「食事にしましょう」

 

 仕切りの(かげ)(のぞ)いていたボクのところに戻ってきたマキナさんは、そう言った。

 

 食事と聞いてお腹が鳴り出しそうだった。

 

 社員の人にボクを紹介しなくて良かったのかなあ~、と思いながら事務(じむ)所の人に会釈(えしゃく)して、マキナさんに連いて行く。

 

 お昼前からお見合いだったので、会食しながら話を()めるかも知れなかったし、早く決着がつけばそこで食事するかも知れなかった。

 

 けれど話はサクサク進んでしまい婚約の諾否(だくひ)まで(ゆだ)ねられて解散した。

 

 すぐさま婚約を了承(りょうしょう)する連絡(れんらく)をして、新居に移るのも承諾(しょうだく)したから食事をするのも忘れていたね。

 

 マキナさんに気付かされなかったら、知らずにお腹が減りすぎてへろへろになっていたよ。

 

 マキナさんとエレベーターで一階に降り、ダイニングホールに進む。

 

 そこは本当にホールになった巨大な食堂だった。百人以上は一度に食べられる規模(きぼ)がある。

 

 会社の一階は迎えいれる玄関だろうというのに、それだけの面積を占めていて大丈夫なのかと心配になる。

 

 ホール内には遅い食事の人がそこそこ居て、入った途端、人の目が集まった。

 

 こちらでも毛色の変わった人を見る目が向けられた。ボクは、ビジネススタイルじゃないから仕方ない。

 

 提供されているのは日替わり定食とビュッフェ・スタイルで人それぞれ好きに選べるみたい。

 

 初見なのでマキナさんに(なら)おうとしたけれど、彼女は定食に加えてビュッフェでも数品(つま)まむ豪胆(ごうたん)さ──いや健啖(けんたん)さ? を見せていた。

 

 とても真似(マネ)できなさそうにないので、ビュッフェの数品をトレイに取り、彼女と並んでテーブルに座った。

 

「君は少食だね? もっと食べないと」

 

 ボクは、そうですねと苦笑いして返す。

 

 平時ならもう少し食べられそうだけど、並んだビュッフェの料理を(なが)めていたら食欲を()がれてしまったみたい。

 

 勢い食べる彼女を見ながら、圧倒された心を落ち着かせるようにじっくり食べる。

 

 彼女の身長は百七十はあるだろうか。ボクとは頭ひとつくらい違って大きい。

 

 そのたくましい体はそうやってできたのかなあ、と感心する。

 

 おそらく平均的な肉付きだろうけれど、精力的な活動を維持するにはその量が必要なのだろう。

 

 何かにつけ精力的な人だ。それくらいじゃないと務まらないのだろう。

 

 食べ終わると食後のコーヒーは事務所でゆっくり飲もう、と勧められる。

 

 確かにホールは広いし、他の人の目が気になって(くつろ)げないかな。先ほどのフロアに戻ったほうがいいね。

 

 五階に上がり、もとの事務所へ戻った。そこの(すみ)には打ち合わせ用のソファーセットがある。

 

 マキナさんは、そこで休んでいてくれと言って一緒に座る。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。