【悲報】皆がボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~   作:ペロりねった

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28.電車で初遭遇

 

 

 通用口から外に出ると、日はとっぷりと落ちて辺りは暗く、通用口上の外灯の周りしか明かりがない。

 

「そう言えば、赤井さんに連絡もしないで……」

 

 (あわ)てて携帯端末で、電話をかけようとして、番号を知らないと改めて気づいた。

 

 家にも固定電話がないようだったし、有ってもそちらの番号も分からない。

 

「まあ、マキナに(たの)もう」

 

 初めてマキナに電話をかける。呼び出し音が鳴り続けて、なかなか出ない。

 

 受話待ちの時間に、ケイト先輩が通用口から出てきた。

 

 マキナはまだ手が(はな)せないんだろうな~と思っていると接続した。

 

 

『キョウ、なんだ?』

 

「お仕事中、すみません。赤井さんに今から帰ると伝えてもらえますか?」

 

『それなら、帰りが遅くなるともう伝えてる。今から帰る(むね)も連絡しておく。切るぞ』

 

「はい、ありがとうございます」

 

 先回りして連絡してくれていたみたい。終始(しゅうし)、仕事モードで口調が硬い。

 

「あの……赤井って?」

 

「ああ、うちのお手伝いさんが先輩と同じ名前で赤井っ言うんです」

 

「……はぁ? ええっと、白髪(しらが)がチラチラ見える茶髪(ちゃぱつ)で四十代くらいの……」

 

「そうですね。赤井先輩と良く似た方です。親戚(しんせき)とかですか?」

 

「はあぁ~、うちのオカンだな、ほぼ」

 

「やっぱり……」

 

「あああっ。仕事に入ってるのは喜多村って言ってたけど……まさか」

 

 大きなため息を()いて、先輩は後ろのビルを見上げた。

 

「えっと、何か()いてたり、とか?」

 

「喜多村のお(じょう)さんが、『若くて可愛い(ワラ)婿(むこ)さんと突然同居し始めた』って言ってたのが……、お前だったとは」

 

「せ、世間は(せま)いですね、案外?」

 

「全くだ。可愛いお婿さん(ワラ)が、お前とは、斜め上すぎる」

 

 なんで、可愛いとお婿さんに失笑するのか分からん。また、ちっこいとか思われてるんだろうか?

 

(やかま)しいわ!」

 

 思わず、また自虐(じぎゃく)に突っ込んでしまった。

 

「す、すまん。さあ、帰ろう」

 

「は、はい」

 

 自分への突っ込みなのに(あやま)られてしまった。ケイト先輩と一緒に駅へ。改札を抜けて帰りの電車に乗る。

 

 帰宅の時間と重なったようで、()きとは違い車内はかなりの人が乗り込んでいた。

 

 乗降口近くのポールに(つか)まり、車窓の街の明かりを(なが)める。

 

 先輩はボクの後ろを(かば)うように立っている。

 

 一つ、二つと駅を過ぎると、お尻に違和(いわ)感が……。車内が(ゆれ)れるたび、何かが当たってるのかと思ったが、どうやら(ちが)ってるっぽい。

 

 後ろのケイト先輩を見るとにっこりするだけだ。まあ、先輩じゃないな。

 

 となると、……斜めのおばさんサラリーマンか? ちょっと(にら)んで見た。

 

 特に狼狽(うろた)えもしないか。やっぱり勘違(かんちが)い?

 

 視線を向き直して車窓を見ていると、明らかに(てのひら)側で()れてる感じになった。

 

 また、振り返ってケイト先輩を見る。彼女はニッコリ。おばさんサラリーマンを見てみると、ややっ! こいつだな。

 

 心なしかニヤついてる感じだ。思いっきり睨んでやった。

 

「お前、何にらめっこしてんの」

 

「むぅッ! にらめっこじゃないです」

 

 お尻を触ってるヤツがいるんです~、っと先輩に(ささや)いた。

 

 たぶん、ヤツにも聞こえただろう。抑止(よくし)力になるハズだ。

 

 先輩は、やおら目付きが(けわ)しくなった。

 

 そうして、また車窓に目を向けると、お尻を触っていた手が(われ)れ目をなぞるように()で上げるとジャージの中に(しの)び込んできた。

 

 さすがに、その卑劣(ひれつ)な行為に(たかぶ)ってきた。侵入した手が尻たぶを(つか)んだ時に、その手首を握った。

 

 捕まえたぞ。放すもんか!

 

 次の停車駅に着いてドアが()くと同時に外へ(おど)り出た。まだ、手は掴んだままだ。

 

「誰か、嫐女(のうにょ)です!」

 

覚悟(かくご)しろ、この痴女(ちじょ)!」

 

「「えっ?!」」

 

 後ろを確認すると、ジャージに突っ込んだ手を引き離そうとしている人を先輩も捕まえていて、もうひとり知らない人も手首を掴まえられていた。

 

 どうなってるの?

 

 

「いやぁ~助かります。春になると出没(しゅつぼつ)するんですよ~。はっはっは~」

 

 ボクは、大きくため息を()いた。軽いノリの駅員さんに引き渡して事情を聴かれた。

 

 なんでも不埒(ふらち)行為(こうい)をする者とそれで()じいる男子を見て(えつ)()る者の二人組なんだとか。

 

「まあ、なかなか男の子は電車に乗りませんがね~。目敏(めざと)く男子を見付ける目は持ってるんですね~」

 

 持ってはいけない人がそんな能力を持っていて、困ったモンです、と他人(たにん)事だ。

 

 

「では、お願いします」

 

「お願いします。はあぁ~」

 

 また、大きくため息を()く。余計な時間を取られて帰宅が(おく)れる。

 

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