【悲報】皆がボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~   作:ペロりねった

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08.新居の夜

 

 

 お風呂から上がり、用意していた(はだ)着をつけ寝巻(ねま)き代わりのスウェットを着ると、二階に上がる。

 

「マキナさん、お風呂が()きました」

 

 ノックをしドア()しでマキナさんに伝える。

 

「分かった。ありがとう」

 

 部屋に戻ると、カーテンが()まっていた。赤井さんが締めてくれたのか、自動で締まったのか。

 

 すぐにでも、家や部屋の設備について訊《き》いておかないといけないけど、もうこの時間じゃマキナさんにも訊けないか。

 

 さしあたっては荷物整理だと気持ちを切り替えた。

 

 バッグ二つの中身を(から)にすると、明後日(あさって)の登校をイメージして必要なものを確認する。

 

 靴下(くつした)類、肌着、ブラウス……数日分の替えあり。制服はオーケー。

 

 通学の(くつ)、スポーツシューズ、ジャージに始まり運動に関するもの全般ダメ。

 

 まあ、教科書・勉強道具類は支障(ししょう)がなさそうだけど、決定的に洗面道具類がない。

 

 普段着、部屋着も欠乏(けつぼう)してる。これは仕方ないか……。

 

 月曜の時間割りにテキストをバッグに()めて登校の準備をする。

 

 それを終わらせると、携帯(けいたい)端末(たんまつ)に不足品をメモっておくか。

 

 と、その前に少し飲み物がほしいな。お茶でももらって来よう。

 

 ダイニングに行ってお茶を()れ、二階に戻るとソファーのローテーブルに湯飲みを置いて座る。

 

 端末のメモアプリを起動して不足品を入力していく。

 

「明日のお買い物の時、家に()ってもらって……」

 

 家に残ってるのを集めてくればいいよね。

 

 

 明日の行動予定を考えながら、窓の方を見ると締められたカーテンが目に入る。

 

 まとめた行動予定もメモにしておく。湯飲みは朝、返すとして、もう()ようかな?

 

 照明リモコンを持って巨大(きょだい)なベッドに寝転(ねころ)んで、灯りを減光(げんこう)する。

 

 携帯端末でネットニュースなんかを見ていたら……うつらうつらしてきた。

 

 

 何か……虫の知らせ、みたいな何か。(かわ)きを感じたり尿意(にょうい)を感じたりして、ふっと目が()めたという瞬間(しゅんかん)だった。

 

 遠くでノックの音が()こえる……。

 

「──ふぁい? 何ですか……」

 

「キョウ君、少しいいかな?」

 

「マキナさん? ダイジョブです──」

 

 まだ、ぼやける感覚で携帯端末の時刻を確認する。二十一時でそんなには(おそ)くもない時間だ。

 

「──何ですか?」

 

 声の方に目を向けると扉を少し開けて(のぞ)いているマキナさんがいた。

 

 リモコンで照明を増光(ぞうこう)して、身体を起こすとベッドの(へり)に座ってマキナさんを見る。

 

 おずおずと体を(すべ)り込ませてマキナさんが部屋に入ってくる。寝巻(ねま)きとかじゃなくローブ姿だ。

 

「──明日の買い物の話、ですか?」

 

「ああ、そう。そうだね……」

 

 昼間の彼女とは(ちが)って歯切れが悪い。仕草がどことなくキョドっている。

 

 なんとなく、その時が来たのだろうと(さっ)した。お見合いの返事をするや、家に(まね)かれたのだ。

 

 いつでも同居(どうきょ)できる家が準備(じゅんび)されていて、きっとこの日を()(のぞ)んでいたに違いない。

 

 かと言って、家族への紹介(しょうかい)と顔合わせ、書類(しょるい)だけでも()ませられる結婚(けっこん)とは言え、その手順も決まらぬうちに早すぎでしょう。

 

「ボクもちょっと()きたかったんです。部屋のことを」

 

「部屋? なんだろう?」

 

 ソファーじゃなく、ためらいながらこちらへ歩を進めてくる。

 

「ここのカーテンはどうするんでしょう? お風呂のうちに()まってはいたんですが」

 

 ()せ目がちにベッドまで辿(たど)り着くと、そっと(となり)にった。

 

「ああ、ドアのとなりにコントロールパネルがあってエアコンも操作(そうさ)できるよ」

 

 なるほど……と、エアコンやカーテンは集中して操作できるんだ。

 

「それでクローゼットなんですが……」

 

「クローゼット? ああ、あれね。あそこの鏡を押さえると開くんだよ」

 

 鏡壁(きょうへき)(はし)を指さしてマキナさんが言う。まあ、それは発見した。

 

「それは分かったんですが、あそこまで(かがみ)になってるのはナゼなんでしょう?」

 

「えっ? さあ、姿見代わりに鏡()りにしたんじゃなかったかなあ?」

 

 遠い(むかし)を思い出すような、虚空(こくう)を見つめて(つぶや)くように言った。

 

 あれ? (ふく)みもなく本当に知らなそうだ。

 

「姿見代わりで便利ですけど、やり過ぎな気がします。それに……」

 

「それに?……」

 

「あの鏡、マジックミラーですよね?」

 

 少し()めてマジックミラーのことを訊いた。

 

「ほ、ほぉう……そ、そうだった、かな?」

 

 いきなり、挙動(きょどう)(あや)しくなった。今、思い出した感じだ。ただ単に忘れていただけ?

 

「マジックミラーにした利点、ってないですよね? 何でマジックミラーになんかにしたんでしょう?」

 

「さ、さあ。それは設計(せっけい)士とかに訊かないと分からないな……」

 

「そうなんですね……」

 

 設計とか、施主(せしゅ)意向(いこう)反映(はんえい)するんだから注文主だろうマキナさんが知らないはずないよね。

 

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