【悲報】皆がボクを狙ってる?~婚姻したら裸にされるし拐われそうになるし、挙げ句、狙われてるって誰得ですか?~   作:ペロりねった

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80.速報! 蒼湖に美少年きたる

 

 

『皆さん、こんばんは。蒼湖(おうみ)ニュース・バラエティーの時間です──』

 

 古都・蒼湖(おうみ)のローカルチャンネルの夕方ニュース・バラエティーが始まる。

 

 それは、ありふれた日常の一場面。

 

 ある者は家事の手を止め、ある者は作業の手を止めテレビの画面に視線を向ける。

 

『──スプーク! また、あの喜多村家に男子が囲われてしまったようです!』

 

 司会──相楽(さがら)ミャーチの言葉で開始される。

 

「それは、お化け(スプーク)や!」とパネラーの一人から突っ込みが入る。

 

 お茶の間でも同様に突っ込んでいる。

 

『なんやて~! それとスプークっちゅーたら宇宙に上がった』とパネラーは、(ぼう)衛星打ち上げロケットでボケようとしたらしい。

 

『──独自に映像を入手しました』

 

『ちょっと、突っ込んでや』

 

 茶の間でも、『せやせや』と口に出し、あるいは心の中で突っ込んでいる。

 

 そのボケも、華麗にスルーして相楽は続ける。

 

 いつもの光景で、もうパネラーの誰も深追いしない。そんな暗黙の了解が見てとれる。

 

 スタジオ中央に移った相楽の後ろのモニター画面には、(あら)い画像が映しだされる。監視映像のよう。

 

 画面の向こうで拍手が()く。

 

『四人に囲まれて移動する中央の人物を観てください』

 

 

 キョウはテレビに夢中の子供たちに肌着を着させて一息つく。

 

「何、これ」

 

 やっとテレビに目を向け絶句する。それはつい数時間前の出来事がテレビに映されていたからだ。

 

「キョウに似てる、ね?」

「うん」

「そうだね」

 

 タンポポが感想をもらすと、アリサやマナも同意している。

 

 サキはほくそ笑んで見守っている。

 

 

『若いですね~。成人したての男性でしょうか?』

『護衛? が襲い来る女を薙ぎ倒していますね?』

『男性は和服……ですか? そそりますな~』

 

 パネラーたちは、思いおもいに感想を述べている。

 

『護衛二人が先行して行きます』

 

 相楽は、淡々と映像に言葉を添える。

 

『二人じゃ護れないでしょう』

『あっ! 男性が何か投げましたよ?』

『白い何か……布……でしょうか……』

『気を取られて、女が殴り倒されてます……痛そう』

 

 画面には白い(かたまり)が飛ぶ姿が映り、それに気を取られた女が護衛に叩かれて倒れる映像が流れる。

 

 画面の向こうで『うわ~』と観覧客の声が上がっている。

 

『おっと、出口から脱出しましたね?』

『これが、喜多村の人間だと?』

 

 パネラーが疑問を呈する。

 

『フロアーの映像はここまでです。……しかし、我々、スタッフが貴重な録画を入手しました! こちらです』

 

 パネラーの問いに答えず、司会・相楽は続ける。

 

 困惑は、パネラーのみならず、視聴する人たちも同じ。

 

 新たにモニターは映像を映しだす。こちらは、鮮明だが映像が揺れている。

 

『これは……あまり危機感がなく早歩きで進んでますね』

『すごく可愛い! くっ、喜多村め~』

 

 画面の向こうの観客も、唸っている。視聴者も『うんうん』と同意している。

 

『足許、見て、革靴ですね~? 草履(ぞうり)が間に合わなかった、のか?』

 

 パネラーの感想に「走りにくいからだよ」とキョウが突っ込む。

 

 

『──それはあとで解説します、続きを御覧ください』

 

 すかさず相楽は発言を(さえぎ)って、次を(うなが)す。

 

『ああ……「おとこ」って誰か気付きましたね~』

『ああ、さすがにすぐ護衛たちは対応を変えてます』

『周りより反応が早いです』

『駆け出しましたね。慌てた様子もなく、対応が素早い』

『ああ、ここら辺は、さっきの監視カメラと重なるところですね~』

 

 言葉どおり、先ほどの監視映像を補完する別角度の視点で捉えている。

 

『ここ、投げてますね~、さっきも見ましたが何でしょう? あれ』

『まあまあ、先を見てください』

 

 相楽が続きの視聴を勧める。

 

『拾って……すごい取り合い、争奪戦が始まりました』

『ヒモ……でもない。長いソックス……ですか?』

『あ! あっ! そんなに引っ張ったら──』

『千切れます、よね~?』

 

 パネラーの予想の通り、白い物が引き裂かれるところを映像が捉えている。

 

 

「やっぱり、そうなったか~」と、キョウは振り返る。

 

 

『何ですか、あの男性が身につけたものだったのでしょう。ただの靴下にあの反応はありませんからな~』

『と、ここまでですか?』

『ここで終わり?』

 

 突如、映像は途切れる。

 

 

「サキちゃん、これ抗議事案だよね?」

「それほどでもないじゃろ?」

「だってさー、人権無視だよ? ボク、ずっと『あの』って呼ばれるよ?」

「ああ、心配せんでも、そなたは古都に知れ渡る。少し早くなっただけじゃ」

「は?」

 

 サキの言葉にキョウは絶句した。

 

 

『──ああ、撮影者は近くの争奪戦に参加して録画は止めたようです。では、次、こちらはスチルです。動画では無く鮮明です』

 

 相楽も同意して映像を締めくくり、用意した写真のフリップをあげる。

 

『これは……お若い。すごく若いです。中学生くらいですね』

『それもあとで。次、こちら』と、相楽は次のフリップを出す。

『ほお、これは買い物の一場面、ですか?』

 

 

「ぎゃー!」っとキョウが悲鳴を上げた。

 

 それは、キョウが下着を手に取った場面を映している。

 

 子供たちは耳をふさぎ、キョウに人さし指を口に当てて抗議する。

 

 

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