「エゲツいなぁ」
俺はボヤいた。
目の前。轟轟と燃える炎を前にして。下の闘技場で燃え上がるストロベリーブロンドをボケッと見下ろして。
といっても、ステラ姫の能力。炎を操る能力だと、こういうだだっ広い場所じゃあね。猛威を振るいまくるからね。
A級は伊達じゃあないねぇ。
俺の能力とはねぇ。
あれだけの力をキチンと制御できてるのは、努力の証だ。
すごい。怖い。
「勝てる?」
横にいるチビッこが聞く。派手な和服を着崩した小さい娘だ。
西京寧々。これでも世界3位のバケモノだ。
「………まぁねぇ。『勝てるか勝てないか』で言えば勝てるけど、『戦いたいか戦いたくないか』でいうと戦いたくないねぇ。めんどくさそうだし」
俺の『
じゃあKOKに相応しいかというと、そんなワケもなく。
学校でグダグダとくだを巻くくらいしか仕様もない。
「アレを見て、『勝てる』って断言できるのも相当だよ?」
「俺の『能力』知ってるでしょ?相性差だよ相性差。俺の『能力』はああいう相手にはめっぽう強いから」
まぁねえ………と派手な衣装の女は頷く。
俺の『能力』は一応『国家機密』らしい。と言ってもそんな派手な能力でもない。ギリギリ国家機密くらいのモンだと思ってくれたら嬉しい。
黒鉄兄だ。『能力ポンコツ』の代名詞。ただ、それを補って余りある『体術バケモノ』。
「勝てる?」
先ほどと同じ質問をする女。
「わからん。ホントにわからん」
素直に答えると、チビッこは目を見開く。
「勝てるって言わないんだ?さっきはA級、今はF級なのに」
「そりゃあそうさ。あの体術のバケモノ。能力はゴミみたいなクセして頭はめちゃくちゃいいから、めちゃくちゃ裏をかこうとしてくるんだよ。めっちゃめんどくさい上に素直にパワーでは負けてくれないからねぇ」
彼は強くない。むしろ弱い。
ホントにあんなヤツ、いったいどうやって産まれたのやら。怪物過ぎる。
「ほら、勝った。危なげないねぇ……」
舐めてかかったヤツ相手にはアッサリ勝つ。ホントに凄い。
「………戦いたくないねぇ。どうだい?寧々?戦いたいかい?」
振り返った先は誰もいなかった。
「………不運だねぇ」
その言葉は静かに闘技場に溶けていった。
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「よう!『能力ポンコツ』!」
お姫様は「…ちょっ!!!」と言いかけたが、黒鉄兄に止められた。
「はい。なんですか?」
黒鉄兄はにこやかに応える。
あえて挑発する言葉を選んだのに、動揺すら見せないか。やるねぇ。
はぁ。もしも戦うとなったらめんどくさいねぇ。ホントに。
「君は、才能がないよねぇ。魔導騎士になるための。俺のようなタイプでもない」
「はい。でも魔導騎士になりたいので」
「そかそか。いやぁ、魔力も能力もゴミみたいなのによく目指すよ」
「でも、それが僕の夢なので」
「才能の壁は厚いよ?キミの立場の壁も。それでもその壁は覆そうと、超えれる壁だと思うの?まるで子供の夢物語みたいに」
「でも、それが僕の夢なので」
「………すごいねぇ。じゃあね。せいぜい今のうちは調子に乗ると良いよ。その壁にブチ当たって絶望するまでは、ね」
俺が
「……
「なんだい?『能力ポンコツ』?」
「ありがとうございます」
「眩しいねぇ。目が潰れそうだよ」
僕が手をヒラッと振るとそのまま職員室に消えるまで、ずっと視線を感じていた。
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「……信じられない!!!」
日向先生が消えたあと。
ステラが爆発した。
「イッキのことを『能力ポンコツ』『能力ポンコツ』って連呼して!自分だって、いってもDランク相当!大した魔力持ってないクセに!」
まぁまぁ、と僕はステラを宥める。
「言い方は確かに良くない。でも天先生は事実しか言ってないよ。僕の能力がポンコツなのも事実だし、魔力もゴミみたいなのもホントさ」
それに少し気になることを言っていた。
『
ちょっと調べてみよう。
家に帰って、早速生徒手帳で調べてみる。
「………え?」
日向陽斗
Eランク
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「ほら!やっぱりランクだけの見掛け倒しだったのよ!そのランクも大した事ないみたいだし」
ステラが嬉しそうに言う。
だが、それはおかしい。
それに、
それに、名前もヘンだ。
「………能力名すら一切わからない」
僕はその事実に改めてゾッとした。
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「俺の能力?」
「はい。昨日調べてみても一切出てこなかったので」
にこやかに来る黒鉄兄。敵意満点の姫様。
……姫様の方がすっげぇわかりやすい。
「水流操作系統だよ。自然操作系さ。……なんでそんな事聞くん?」
これはウソではない。
「ただの自然操作系ですか?」
「ただの自然操作系だよ」
これもウソではない。
「いえいえ。昨日調べてみたら、能力名も
あ~。
「所詮、Eランクの能力を気にする方が間違ってるさ」
俺が笑いながら流す。
なんでこんな質問に素直に答えられないんだろね。
俺は俺に疑問を抱きながらも質問を笑い飛ばした。