大海は視えず   作:魔剣グラム

5 / 7
4話

「エゲツいなぁ」

俺はボヤいた。

目の前。轟轟と燃える炎を前にして。下の闘技場で燃え上がるストロベリーブロンドをボケッと見下ろして。

といっても、ステラ姫の能力。炎を操る能力だと、こういうだだっ広い場所じゃあね。猛威を振るいまくるからね。

 

A級は伊達じゃあないねぇ。

 

俺の能力とはねぇ。比較にならないなぁ(・・・・・・・・・)

あれだけの力をキチンと制御できてるのは、努力の証だ。

すごい。怖い。

 

「勝てる?」

横にいるチビッこが聞く。派手な和服を着崩した小さい娘だ。

西京寧々。これでも世界3位のバケモノだ。

「………まぁねぇ。『勝てるか勝てないか』で言えば勝てるけど、『戦いたいか戦いたくないか』でいうと戦いたくないねぇ。めんどくさそうだし」

俺の『能力(インビジブルー)』は七星剣舞祭には相応しくない。だから学生時代にはすべての試合を辞退している。

じゃあKOKに相応しいかというと、そんなワケもなく。

学校でグダグダとくだを巻くくらいしか仕様もない。

 

「アレを見て、『勝てる』って断言できるのも相当だよ?」

「俺の『能力』知ってるでしょ?相性差だよ相性差。俺の『能力』はああいう相手にはめっぽう強いから」

 

まぁねえ………と派手な衣装の女は頷く。

俺の『能力』は一応『国家機密』らしい。と言ってもそんな派手な能力でもない。ギリギリ国家機密くらいのモンだと思ってくれたら嬉しい。

 

黒鉄兄だ。『能力ポンコツ』の代名詞。ただ、それを補って余りある『体術バケモノ』。

 

「勝てる?」

先ほどと同じ質問をする女。

「わからん。ホントにわからん」

素直に答えると、チビッこは目を見開く。

「勝てるって言わないんだ?さっきはA級、今はF級なのに」

「そりゃあそうさ。あの体術のバケモノ。能力はゴミみたいなクセして頭はめちゃくちゃいいから、めちゃくちゃ裏をかこうとしてくるんだよ。めっちゃめんどくさい上に素直にパワーでは負けてくれないからねぇ」

 

彼は強くない。むしろ弱い。

だが(・・)負けない事に特化しすぎている(・・・・・・・・・・・・・・)

 

ホントにあんなヤツ、いったいどうやって産まれたのやら。怪物過ぎる。

 

「ほら、勝った。危なげないねぇ……」

 

 

舐めてかかったヤツ相手にはアッサリ勝つ。ホントに凄い。

 

「………戦いたくないねぇ。どうだい?寧々?戦いたいかい?」

 

振り返った先は誰もいなかった。

「………不運だねぇ」

その言葉は静かに闘技場に溶けていった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「よう!『能力ポンコツ』!」

お姫様は「…ちょっ!!!」と言いかけたが、黒鉄兄に止められた。

「はい。なんですか?」

黒鉄兄はにこやかに応える。

あえて挑発する言葉を選んだのに、動揺すら見せないか。やるねぇ。

 

はぁ。もしも戦うとなったらめんどくさいねぇ。ホントに。

 

「君は、才能がないよねぇ。魔導騎士になるための。俺のようなタイプでもない」

「はい。でも魔導騎士になりたいので」

「そかそか。いやぁ、魔力も能力もゴミみたいなのによく目指すよ」

「でも、それが僕の夢なので」

「才能の壁は厚いよ?キミの立場の壁も。それでもその壁は覆そうと、超えれる壁だと思うの?まるで子供の夢物語みたいに」

 

「でも、それが僕の夢なので」

 

「………すごいねぇ。じゃあね。せいぜい今のうちは調子に乗ると良いよ。その壁にブチ当たって絶望するまでは、ね」

俺が(きびす)を返すと黒鉄兄の視線をジッと感じた。

「……日向(ひゅうが)先生!」

「なんだい?『能力ポンコツ』?」

「ありがとうございます」

「眩しいねぇ。目が潰れそうだよ」

僕が手をヒラッと振るとそのまま職員室に消えるまで、ずっと視線を感じていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「……信じられない!!!」

日向先生が消えたあと。

ステラが爆発した。

「イッキのことを『能力ポンコツ』『能力ポンコツ』って連呼して!自分だって、いってもDランク相当!大した魔力持ってないクセに!」

まぁまぁ、と僕はステラを宥める。

「言い方は確かに良くない。でも天先生は事実しか言ってないよ。僕の能力がポンコツなのも事実だし、魔力もゴミみたいなのもホントさ」

それに少し気になることを言っていた。

 

俺のようなタイプ(・・・・・・・・)』。

 

ちょっと調べてみよう。

家に帰って、早速生徒手帳で調べてみる。

 

 

「………え?」

 

日向陽斗

Eランク伐刀使い(ブレイザー)

水流操作系能力(・・・・・・・)

戦闘記録無し(・・・・・・)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「ほら!やっぱりランクだけの見掛け倒しだったのよ!そのランクも大した事ないみたいだし」

ステラが嬉しそうに言う。

だが、それはおかしい。

なぜなら(・・・・)この学校で教えるならDランク相当の(・・・・・・・・・・・・・・・・・)能力が必要で(・・・・・・)あるからだ(・・・・・)あの理事長が妥協するとは思えない(・・・・・・・・・・・・・・・・)

それに、戦闘記録が皆無(・・・・・・・)なのだ。どれだけ探しても何一つ出てこない。これだけ検索を掛ければなにか1つでも引っかかりそうなのに。

 

本当に何一つ掛からない(・・・・・・・・・・・・)まるで誰かが意図的に戦闘記録を(・・・・・・・・・・・・・・・)消してるかのように(・・・・・・・・・)

 

それに、名前もヘンだ。水流操作系能力(・・・・・・・)なんて。普通、伐刀絶技(ノウブルアーツ)固有霊装(デバイス)の名前くらい出てくるものだ。

 

「………能力名すら一切わからない」

僕はその事実に改めてゾッとした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「俺の能力?」

「はい。昨日調べてみても一切出てこなかったので」

にこやかに来る黒鉄兄。敵意満点の姫様。

……姫様の方がすっげぇわかりやすい。

「水流操作系統だよ。自然操作系さ。……なんでそんな事聞くん?」

これはウソではない。

「ただの自然操作系ですか?」

「ただの自然操作系だよ」

これもウソではない。

「いえいえ。昨日調べてみたら、能力名も霊装(デバイス)伐刀絶技(ノウブルアーツ)も一切出てこなかったので」

 

あ~。

そうだろうね(・・・・・・)

 

「所詮、Eランクの能力を気にする方が間違ってるさ」

俺が笑いながら流す。

 

なんでこんな質問に素直に答えられないんだろね。

俺は俺に疑問を抱きながらも質問を笑い飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。