龍、それが絶対不変の強者の証であり名であることは大昔から変わってはいない。
その所為か、天使、堕天使、悪魔、人間等にとって龍種は忌むべき存在であり、厄災をもたらす権化として殺し、それが英雄伝になったことは多い。
ドラゴン、彼らは愚者であり強者であり王者であり聖者であり使者であり勝者である。
それらの根源は全て『力』だ。
俺の力、
ラディアの記憶が、五感が、思考が、俺と一体化され同一人物かの様な感覚だ。
「ラディア、制限時間は」
《前と変わらず……ううん、前より少し落ちてる。30分と言いたいところだけれど、コカビエル相手だと20分、ね》
「十分、そう思いたいが」
しかし、先程より状況は良くなっている。龍翼を使えば、俺も飛ぶことが可能になる。そして何よりも、
龍脈とは、竜の力が流れる動脈のようなものだ。魔力、に似た物理法則を無視した超常の力を扱えるようになる。只、元が魔力ゼロの人間のためにできる事は限られる。人体強化や、具現化した龍力塊の撃ち出しなど、シンプルなものなどしか現在は不可能だ。
「竜、いや龍の力だ。不思議なものだ、中級ドラゴンが人間と交わることで龍にまで力を伸ばすなど、いつみても馬鹿げているな」
コカビエルの疑問は最もだ。俺自身、何故ここまで力が増幅されるのかは知らない。そして、この技術を生み出したヴォラク家も普通ではない。
いや、今はそんな事はどうでもいい。20分に限られているこの時間、無駄にするのは愚かだ。
「改めて、参る」
跳躍、ではない。飛翔する。
「っぬ」
龍翼が一つ、羽ばたいただけだ。しかし、その数瞬で俺はコカビエルの背後に回り……太刀を上から真直ぐに振り下ろしていた。愚直に、単純に振り下ろされたその一太刀は回避する間もなくコカビエルの翼を一翼、斬りおとしていた。
「ぐ、ぐがあ!!!!???」
コカビエルの目は驚愕に見開き、苦悶の声を発した。
確実にヤツは俺の動きをみきっていた、そう確信していた筈だ。しかし、それを裏切る様に自分の翼が斬りおとされている。
対する俺も、背に冷や汗がタラリと垂れた。
この刹那に起きた事象、それは紛れも無く天伐流刀剣術の一技術だ。
天伐流刀剣術奥義、゙
龍人化を使用した際に起こる爆発的な力の連動を物理限界まで研ぎ澄まし、視えつつも不可視となり得る斬撃を放つ。
「う、ぐあ」
俺に、傷を与えるなど。
俺の脇腹には大きく銃創に似た傷跡があった。おそらく、光の槍による負傷。やつは塵醒の攻撃を回避しつつ反撃の一矢を俺に届かせたのだ。泣きたくなる戦力差、今ので致命傷を与えてしまいたかったがあれ以上踏み込めば俺が危険となっただろう。
《傷に回復魔術を行うわ》
「頼む」
ラディアが龍人化となった際、彼女は俺と一体となりつつも俺の中で別に魔術を使う事が可能になる。ラディア本人、いや本竜の龍脈と龍人化で生み出された俺の龍脈から溢れる竜力を使う事が可能なのだ。
光の槍による傷は淡い光を放ちながら、塞がった。
《治療完了、けど気を付けて。魔力の糸で縫っている様なものよ、オーバーな動きをすれば傷口はまた開くわよ》
「充分だ」
痛みは消えている。それだけで動きに支障はなくなる。
「貴様ァ……!」
「ひとつ、言っておくが。龍人化の使い方は、俺が一番秀でていると父上から言われていたッ!」
話している時間はない。
残り時間、17分。決め手となる一撃を、なんとしても与えなければ勝機は失す。だがしかし、塵醒は使えない、細々と掠り傷を与えていても仕方がない。
「っ」
コカビエルは無動作で光の槍を俺に放った。その数、目視で確認できて25本以上。咄嗟に後方へ飛び、回避するが光の槍は追尾機能を持っていた。
「ッるァッ!」
邪気を帯びる井草で光の槍を相殺していく。邪剣の邪気は邪龍にも匹敵するものだ。純粋な悪意は上にも下にも制限はなく、全て同じもの。違いに満ちる正義の光、それも堕ちた正義の光を相殺するのは必然と言えた。
だがしかし、如何せん数が多すぎた。捌き損ねた槍が頬を削り、足を掠めた。鈍痛に似た痛みが身体の様々な場所を駆け巡る。コカビエルにとってこのレベルの光の槍を連射することなど、一か月も続けられるだろう。物量的な差で負けてしまう事は目に見えている。どうにかして、この状況を打破しなければならない。
「天伐流刀剣術、゙弧躍゙!!」
選んだのは、弧躍。
大きく後方宙返りを行い、俺は光の槍の雨から抜け出す。その際、懐からダガーナイフを投擲しつつ、斬撃には竜力塊を乗せて飛ばした。
「小癪なッ!」
当然、頭部……主に眼球を狙った短剣と、甘い斬撃は弾かれたがヤツの意識がコンマゼロ秒途切れたために、光の槍からは逃れることができた。ふぅ、と一息つきたいところだが、生憎とそんな暇はない。先程の繰り返しは御免被りたい。
「ラディア、火を!!」
《了解っ》
井草が燃え上がり、高熱を放つ。RPG風に言えば
「゙
簡易な技名だが、立派な天伐流刀剣術の一つだ。本来龍人化でない場合は、空気摩擦を利用した熱を使った技だが、龍人化の場合゙火゙そのものを使った魔剣と化す。
龍翼を大きく動かし、羽ばたき接近し斬りまくる。上手くコカビエルは紙一重で避けていくが、計算通りである。斬灼、まさか父上や先代方が使っていなかったのは功を奏した。
「見誤ったな! コカビエル!!」
そう、天伐流刀剣術の攻撃種にはそれぞれ極意がある。斬灼の極意とは、斬った場所に熱を、火を残す事。今や至るところに弧状の赤い熱が牢獄の如く刻まれていた。火の牢を作る、それが斬灼だ。
「ちぃっ」
翼をコカビエルが動かす事に、その黒い翼が生々しい音をたてながら焼けている。致命傷とは成り得ないが、こっちが戦況の有利を掴んだと言っていい。
ただ、
ラディアと一体化している俺は、このビルの屋上に誰かが近づいてきている事を察知した。おそらく、悪魔。木場祐斗、しくじったか。
木場祐斗に頼んだことは、赤龍帝と行動を共にして利用し、敵の調査をする事。それは赤龍帝や、他の悪魔達を上手く封じ込め、俺達が行く先へと行動させないようにできる方法だった。
「時間は、無いな」
龍人化制限時間残り11分50秒。光の槍の相殺に時間を使い過ぎた、早く決めてしまわねば。
「舐めるなァアアアアアアアッ!!!!」
「くっ!?」
コカビエルは火の牢獄などで抑えられる奴ではない。それは十分理解していたつもりだが、もう少し稼げると思っていた。ヤツは強引に翼を押し広げ、火を吹き飛ばした。物理的に。黒翼の焼ける音が熱くなった鉄板に肉をぐっと押しつけたときの様に耳に木霊する。気味の悪い音だ。
「天伐流刀剣術、゙貫閃゙!!」
間合いの計れぬ一撃は、両手に持った2本の光の槍で受け止められた。鍔迫り合い、ヤツの力はこれまでのどんなやつより重く、強い。筋力や剛に頼る剣士ではない俺からすれば、不利な状況だ。有利に持ち込んだと思えば、逆転される。
力負けする、そう思ったが遅かった。一気に押し切られ、俺は体勢を崩した。空中での小回りを効かせるのは難しい。完全な隙を俺は見せた。
「……やっば」
そう、つい本心が声に出てしまう。
やばい、これはやばい。
「死ねええェッ!」
光の槍が俺の胸へと吸い込まれる様に近づいた。
だがその時だった。一筋の雷が、コカビエルを襲った。
「ふんッ!」
俺を貫こうとしていた光の槍でコカビエルはそれを弾いた。
「誰だ」
雨雲は消えている、雷は自然のものではない。
俺とコカビエルは出所の燦々と輝く太陽を見た。
白と赤の巫女衣装。
「あらあら、うふふ。
黒髪の女が、手に暴れ狂う雷を宿していた。
この作品の堕天使幹部はかなり強化されてます。
原作読んでると、堕天使勢(この時はヴァーリ除いて)はものすごく弱いと思うんですわ、仮にも幹部ですもの。もっと強くなきゃ。
当然、堕天使の娘である彼女もかなりお強くなってます。もっと女王です。