天邪鬼の絶唱   作:猫預かり処@元氷狼

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紅の龍

「天伐ゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアア!」

 

 激昂。

 

 青髪の女……確かゼノヴィアと言ったか、ゼノヴィアは白い布に包まれていた見覚えのある大剣を料理をぶちまけながら突進してくる。まあ、目が合ったときに予想はしていたが。

 井草を取り出すには時間がかかる、間に合わない。最良の判断はラディアを使う事。

 

「……ラディア」

 

「任せなさいッ!」

 

 煌々とラディアの瞳がサファイアの如く輝き、蒼い魔力が彼女の体から溢れ出る。

 

「せぇあらッ!」

 

 一直線の正拳突きを、ゼノヴィアは大剣の剣身で阻むがあまりの拳の威力に吹き飛ばされた。ラディアの人体化においての身体能力の中でも単純な『力』は、俺よりも高い。竜体化した場合においては蒼竜が攻撃タイプのドラゴンではないため俺が総合的には勝るが。

 

「クッ! ……天伐、まさかこんなに早く出会えるとは思わなかったよッ!」

 

「半年ぶりか、哀れな聖女」

 

 ラディアが対応している間に、井草を取り出してしまう。

 

「冥獄の彼方・無窮なる輪廻・遠きを結ぶ(まど)と成せ」

 

 静かに空間が湾曲した中心から現れた長い太刀、邪刀《井草》を掴み。鞘から抜き、刀身を剥き出しにして応戦する。

 ラディアは得意の我流拳術で、ゼノヴィアを圧倒していた。店の中である分、長身の大剣を振うには手狭であり、尚且つ彼女が根っからのパワータイプだという点がラディアの有利の理由だ。その間に、今現在彼女の仲間・・・・・がどれだけいるかを確認する。

 男二人、少女二人。その内の三人は、どうやら悪魔のようだ。もう一人は教会関係者。

 教官関係者の少女一人はゼノヴィアに加勢しようとしていたが、中々戦いの間に入れずにいた。先ずはアイツを仕留めよう。

 

「俺は知らんぞ、そちらから仕掛けてきたのだから」

 

 床を蹴り、大きく前進する。

 地を踏みしめて歩くのではない、地を蹴った前進力を活かして接近する。これもまた天伐流刀剣術の一つである。《接覇》、である。

 

「もうもうもう、いきなりなんなのよゼノヴィアー!」

 

 栗髪ツインテールの彼女は、戸惑いの表情を除けないようで剣を持ってオロオロとしているだけだ。そんな隙を俺が見逃すわけも無く、斬ろうとしたが赤い何かに阻まれる。邪魔をしたのは黒髪の少年だった。

 

「よくわからねーけど、無抵抗な女の子は斬らせねえ!!」

 

 赤い籠手を左腕に装着している少年。その籠手からは、途轍もない゙龍゙の気が発せられていた。

 

「赤龍、それも最上位クラスか……!」

 

『Boost!』

 

 少年の力が、大きく増加する。

 倍増……?まさか

 

「その籠手、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』か」

 

「おうよ! 力を倍増する能力を持つ神滅具(ロンギヌス)だ!」

 

 随分と、敵に優しいやつである。自分の能力を軽々しく見せびらかすとは、俺が能力をある程度知ってたからまだマシだが……素人か。先に落そう、素人と言えど神滅具という神器の上位種の力は

侮れない。

 

「天伐流刀剣術、゙跋塞(バッソク)゙」

 

 敵が抗戦時において、使わねばならない範囲を奪い取る技だ。どんな動きにおいても、突然自然体から繰り出される攻撃と言うのは皆無と言っていい。抜刀術においても、体を低くし体の重心を前ににする。そうした身体の置き方や、力の入れかたの強弱をするにあたって使う空間の使用を先読みし、刃を置いてゆく。それが跋塞の極意である。敵の攻撃が大振りであればあるほど、この攻撃は効果を示す。

 

「くっそ! なんだこれ動けねえ!」

 

「悪く思うな赤龍帝の少年」

 

 斬った。

 そう確信したが、俺の剣は固い拳によって弾かれた。弾いたのはメリケンサックを付けた小柄な少女だ。落ち着いた瞳で、拳戟を繰り出してくる。重い、一つ一つの拳打にラディアに負けず劣らずの力が込められている。速さも、まあまあ――――But(だが)

 

「技術に劣るッ!」

 

 少女に足払いを行い、太刀の柄頭で鳩尾に痛撃する。彼女は嘔吐して吐瀉物をぶちまけて蹲る。おそらく吐瀉物が喉に詰まり呼吸困難に陥っているのだろう。

 

「てめえ、よくも小猫ちゃんを!」

 

 馬鹿正直に正面から突っ込んでくる少年。良い判断だ、頭を使ったわけじゃないだろうが俺の正面から突っ込んでくるという行動は間違っていない。跋塞は相手の動作を防ぐ攻撃、それに対抗するには動作を防ごうにもこちらが先に防御しなければならない行動、所謂正面突破が有効。

 

「正解だ、しかし貴様にはやるべきことがある筈だ」

 

 逆刃に持ち替え、少年の肩に振り下ろす。高威力の峰打ちを喰らった彼は腹から床に叩き付けられる。彼らは悪魔だ、殺してはいけない。ロボットの様に、頭が有殺、不殺を判断した。悪魔はもう一人いたはずだ。

 先程の少年と同じ、悪魔の男だ。瞬く間に制圧した俺をみて勝てないと決めこみ足を震わせていた。放置で、いいか? いやしかし、聖剣使いの女二人とやりあう際に何かしらのきっかけで後ろから襲われることは避けたい。

 

「く、クソッ!伸びろライ――」

 

「眠っておけ」

 

 おそらく武器を遣おうとした彼に、拳を垂直に振り下ろし意識を削り落とす。すぐさまラディアの方を見ると、二人相手にかなり苦戦をしていた。ゼノヴィアと、もう一人刀を持つ女が小回りの利くその得物で、ラディアの動きを封じようとしていた。

 

「天伐流刀剣術、゙貫閃(ガンセン)゙」

 

 言葉通りの横槍を刺す。太刀の切先はゼノヴィアによって叩き落される。

 

「既に見た技、見切っているッ!」

 

「……ほう」

 

 半年前にとは比べるまでも無く、剣の腕が上達していた。半年前までは、力技だけに頼っていた剣術が、自分の剛力をどういった場面で、どういう風に使うかという技術へと磨かれている。

 

「余裕そうだな、天伐ッ!」

 

「そんなに、俺の名を呼ぶな。好きなのか」

 

「…………」

 

 俺の煽りに蟀谷(こめかみ)をひくつかせたゼノヴィアは、無言で大剣で斬撃を繰り出してくる。ある意味、無心状態に彼女が自然になっているようで行動の先が全く読めない。それと、怒ってる竜体化ラディア並みに目が怖い。

 人には怒らせた場合、反乱狂に似た状態になる者と、無言無表情でとにかく圧力・暴力を仕掛けてくる2タイプに別れる。ラディア、とゼノヴィアは後者のようだ。チラリと、横目でラディアの方を見るとラディアは既に聖剣使いの女を拘束し終えた後だった。目配せを行う。

 

「まあ、落ち着け」

 

「黙れ天伐――!?」

 

 ラディアの掌打に、ゼノヴィアの意識は刈り取られた。

 

 

 

――――――――――――

 

 

「離せ!」

 

「いきなりなんなのよー!」

 

 辺りを落ち着いて見渡せば、ファーストフード店内は無残な状態へと変わっていた。剣の斬撃により切り刻まれた跡が無数に出来上がっている。いや、ほとんど俺が途中でゼノヴィアを怒らせてしまったのが原因なのだが。

 

「リアス・グレモリー殿は、どうやら教会と組むことを決めたらしい。悪魔と教会の連合……ね、魔王の妹だというから期待してはいたが、どうやらそこまで大した御仁ではないらしい」

 

「部長の事を悪く言うな!」

 

「いやいや、悪魔と関係のある俺からすれば君達の様な悪魔の存在が不思議でね」

 

 その俺の言葉を、ゼノヴィアは聞き逃さなかった。

 

「悪魔? やはり悪魔となんらかの契約を結んでいるのか!」

 

「おっと、口が滑った」

 

「馬鹿ね」

 

 ラディアの嘆息は気にせず続ける。

 

「まあ、それはこれからコカビエルと戦う上でバれてしまう事はいい。問題は」

 

「貴様、やはりコカビエルの事を知っていて!?」

 

「話は最後まで聞け、こんな単純な事を神に習わなかったのか?」

 

「くっ」

 

 神の名を出されては、そう安易な事は出来なくなるのか悔しそうに歯噛みをして口を噤んだ。

 

「……問題は、この場をどう流すかだ」

 

「流す!? 私達教会関係者がどれだけ斬られたと思ってる!? それを流せと貴様は言うのか!」

 

「だから、この場と言っているだろうに……」

 

 ゼノヴィアの激昂の言葉に、引っ掛かりを感じたのか悪魔の少年が口を開く。

 

「なあ、ゼノヴィア。コイツ、教会関係者を斬った、って……?」

 

「彼奴は天伐咲。奴こそ本当の『悪魔』と言っていい。教会関係者……神父や聖女、悪魔祓い達を何代にも渡って殺し続けている狂った一族の一人さ」

 

「神父や、聖女を!?」

 

 それも、最早俺と姉上だけとなったがな。

 

「そこらの殺人鬼など、比べ物にならない。 フリード・セルゼンですら、な」

 

「フリードより……!?」

 

 その瞬間、悪魔の彼等は親の仇を見るかのような敵意の眼差しでこちらを見つめてくる。フリード・セルゼン、はぐれ神父だったな。中々素質のある奴だが、コイツも討伐対象には入っている。

 

「まあ、そういうことだ」

 

 何がそういう事よ。とラディアが呟くが、これもまた無視する。

 教会の奴等は見過ごせないが、悪魔との対立はできるだけ避けたい。理由としては、もしヴォラク家と天伐が契約していることを知られ、ヴォラク家の存立が危うくなることなのがあれば困るからだ。それにヴォラクの悪魔としての階級は、遠くグレモリーに及ばない。ましてや、リアス殿の兄である四大魔王の一人、サーゼクス・ルシファーと比べるなんて象と蟻のようなものだ。

 実際、ヴォラク家は悪魔として有名というわけでもなくどこにでもいる有力貴族の一人、といったレベルだ。それはグヴァラギリス様が気にしてないからいいのだが。

 

「天伐! まさか貴様が聖剣盗賊の一味だとはな!」

 

「だから何故そうなる。そして冗談は止せ、何故俺が天使崩れの最も殺すべき堕天使と仲間にならないといけない」

 

「天使様や教会の悪魔祓い達を殺している奴の言葉が、信じられるかァッ!」

 

 ラディアの魔力拘束を力で剥ぎ取るかのように凶暴に体を前に出すが、ラディアの魔力圧によって背から柱に叩き付けられる。

 

「いいか。俺とそこの竜はコカビエルをぶっ殺しに来たんだよ、それを理解してくれないか」

 

「黙れッ!」

 

 これは、もうだめかもしれない。もういい、その暴れ熊をどうにかしないと話にならん。

 こうなってくると、先程の話ではゼノヴィアの怒った場合のタイプは前者であった。比較的温厚そうな、茶髪ツインテールの女に話を持ちかけるとしよう。

 

「そこの、茶髪ツインテールの君、名前は」

 

「ぇ? 私? し、紫藤……イリナよ」

 

「では、紫藤。そこの暴れ青熊とは話ができん、代わりに紫藤、君が答えろ」

 

「あ、はい」

 

 崩していた足を正座に戻して、顔を引き締めた。

 

「俺は、コカビエルが倒したい。君達もコカビエルを倒して聖剣を取り返したい。どうだ、不干渉協定でも結ばないか? 俺も君等が悪魔と共同戦線を張っているとすれば、手出しはできない。だが、そこの悪魔と同じように俺達も共同戦線に参加するなど以ての外だ。それは君等からしてもそうだろう?」

 

「ええ、そうね。で? 要するに、貴方が言うのは自分たちがコカビエルを倒している間、私達に黙って見ていろという事なの?」

 

「まあ、そうだ」

 

「無理よ、相手は幹部クラスの堕天使と言えど私達は教会の使い。戦わなければ、教会の尊厳を著しく失う結果になってしまう。ましてや、全教会の敵である天伐に取られたとなれば……!」

 

 ため息を、つかざるを得なかった。

 

「君等、゙それ゙でコカビエルに勝てると思っているのか?」

 

「それは!」

 

「やってみなければわからない、とか言うなよ?」

 

「なら、貴方は倒せるというの!?」

 

「なわけないだろう。コカビエルは俺より遥かに生きている、実戦経験も豊富、戦争を経験している。勝てる要素は無い」

 

 だったら……!そう、紫藤は叫ぼうとしたが怯えた様に口を閉じた。

 

「俺はな、やってみなければ。とか憶測で戦いをしようとする奴等と戦いたくはない。そういうタイプの戦士はすぐにへまをする。なんて言ったって、やってたらできた。なんてことを最初から行おうとする大ばか者だからな」

 

「……っ」

 

「俺は殺すんだ、コカビエルをな。邪魔をするなら失せろ、これだけが言いたいだけだ」

 

 太刀を鞘へと仕舞い、元の亜空間宝物庫へと転送する。

 紫藤は何も言わない。

 

 黒髪の少年を見る。

 

「赤龍帝」

 

「……なんだよ」

 

「あまりに幼い、赤龍帝という二天龍の一柱がまだ生まれたての雛だ。白龍皇がいるというのにそれでは、これからの戦いで貴様、死ぬぞ。馬鹿正直なのは戦闘において不利ではない、むしろ有利だ。しかし、周りを見ずに突っ込むのは素人がやることだ。俺はそんな龍は、龍とは呼ばん。言って下級の赤竜(レッドドラゴン)……いや、火蜥蜴(サラマンダー)だ」

 

 籠手から怒りの波動が伝わる。大方、封じられた赤龍帝が俺の侮辱激怒しているのだろう。

 

「それと、近々リアス殿に挨拶に向かう。その旨、きちんと伝えておけ。ラディア、行くぞ」

 

「ええ」

 

「待てェッ天伐ゥッ!」

 

「だから、待てと言われて待つ奴がいるわけがないだろうに」

 

 半年と同じゼノヴィアの返しに、苦笑しながら全壊のファストフードの店から、静かに立ち去った。

 

 




中二成分はラノベのスパイス
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