「個性、はなかっぱ!」「ちょっとまてや。」 作:九頭竜 胆平
生まれたときから強靭な体を持っていた。相撲をとるのが好きだった。きゅうりがうまかった。泳ぐのが好きだった。男を見ると無性に睾丸をむしりたくなった。すなわち、
「俺は河童だった。」
個性ガチャ、チートガチャに続き、親ガチャ、というか村ガチャまで失敗した。飯はなく、糞寒い物置小屋の中に放置されても死ななかったのはやはりこの個性のお陰だろう。バナナと大豆、蜜柑にきゅうりがあれば人(なのかどうか定かではない存在)である俺は生きていくことができた。美味しいYummy感謝感謝である。
「いや、童さんは人間だ。あいつらが間違ってるんだ。」
異形系個性は人として扱われない。それが此村のルールである。人じゃない俺たちは同じく人じゃないやつと仲良くするしかないのだ。俺のとなりで俺のバナナを貪っている目蔵も異形の一人だ。当然栄養源は俺のバナナである。
「だが、此村ではそれがルールだ。俺はそんな人生に嫌気が指した。」
フルーツを無限に作れる俺や力持ちの目蔵はなんやかんや此村の役に立っているが、それでも周囲の反応は便利なもの止まりだ。昔は一緒に遊んでた子がある日突然こちらを無視するようになり、しまいには石を投げてくるようになる。洗脳教育がいかに恐ろしいかを俺は30(実年齢は10)にもなってようやく理解した。
「お前たちを残して出ていく俺を許してくれとは言わない。だが、憎み続けないでくれ。俺を憎むくらいなら町に出ていく夢を持ってほしい。」
おらこんな村~いやだ~。おらこんな村~いやだ~。都会へでるだ~。と伝えたところ目蔵を除いた全員に裏切り者扱いをされたため川辺で二人で黄昏ている。
「勿論だ。みんなもつい辛く当たってしまっただけで、本当は祝福したいと思っているに違いない。」
わかってるさ。だからもうここにいるんだ。
「んじゃ、俺はもういくよ。お前もがんばれよ。」
俺は思い付く限りの食い物を咲かせ終わると、川へダイブした。空気を沢山吸った体はなにもせずとも少し浮かび、俺を湖へと運んでいく。
河童の川流れである。
魚がうめえ。魚がうめえのだ。あいつらとの別れは、魚のうまさに勝てなかった。今俺は猛烈に感動していた。なぜなら、生を受け直して初めて魚を食ったのだ。ビチビチビチ
空の青さはまるで俺の心情を表しているようで、木々から聴こえる鳥のさえずりは俺の旅立を祝福する協奏曲だ。ビチビチビチ
口の中にいるこいつが俺の生命の脈動を教えてくれる。ビチビ…あっ、死んだ。
緩やかな川に流され十分強。腹にイクラをつけた鮭がいたことで俺はこの川が海に繋がっていることをしった。