ダンジョン深層住みです、いつからかは忘れました   作:蓮太郎

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生きてます。デカ女概念もうちょっと流行れ流行れ…………


第51話 ちょっとのヒント

 

―うーむ、こいつの隙は無いな

 

――本当にそう思う?

 

―――もう3回もトラップに引っかかって死んでるけど…………

 

―襲う側からしたら隙は無いだろう!アレだけ警戒してるくせに何故トラップだけ踏むんだ!

 

 キメラは困っていた。『教祖』という男の評価が定まらない。

 

 キメラよりも遥かに格上であり現状では勝つことは出来ない相手があの雄のほかに居たことが恐ろしい。

 

 もしかしたら他にもいるのかもしれないという憶測がどうしても一つの頭蓋に収まっている三つの脳内によぎる。

 

 先ほどから即死トラップに3回も引っかかって…………今4回目を引っかかった。

 

 いくらなんでも油断しすぎではないかと考えられるが、あの男と実力は拮抗はしているらしいのでリアクションが取りづらい。

 

――そういえばさ、まだこいつの肉は食べてないんだよね。

 

―――食べる前に掃除されちゃうから口にできてないんだよね。

 

―しかし奴は自分の肉を食べたところでなにも得られないと言っていた。

 

――そこが謎なんだよねぇ。力は魂もそうだけど肉体にも宿る、それを食べて強くなるんだから。

 

 捕食した物の力を得る、キメラの大前提となる大いなる力。

 

 ダンジョンの創造者が持っていた能力をほんのわずか(・・・・・・)に配られたのが中位のモンスターである。

 

 キメラは中位の中でもポテンシャルがある方であり、シレッと深層に居座れるくらいの実力は元から備えていた。

 

 200年前にナノマシンを喰らって以降、常に産まれ続けるモンスターを捕食して蟲毒じみたことをしてきたため故山でありながら全ダンジョン内で最強格のモンスターとなった。

 

 だが負ける。

 

 あの男に何度も負け続けていたことが気に喰わない。

 

 そしていつか勝つと何度も挑んでも負け続け、試行錯誤しても負け続け。

 

 積み重なる負けを踏まえてキメラは一つの悟りを得た。

 

―これ以上は育たん。もはや強くなるためには外に出るしかない。

 

―――その外に出る手段を探してるんだけどね。

 

――全く、どんな手段で私たちをここに押し込めてるのやら。

 

―創造主がわざわざ俺たちを閉じ込める真似はしない。むしろ外に出ろと催促する側だろう。

 

―――外からの干渉かなぁ?

 

 分からないことをうんうんと考えても仕方ない。

 

 人間に擬態しているとはいえ中身はモンスター。残念ながらそのまま深層から脱出しようとしたが見えない壁に阻まれてできなかった。

 

 何か別の条件がある。そう思わずにはいられない。

 

「ふう、多くの苦難があった」

 

「がう(翻訳:自滅ばっかりじゃん)」

 

「なんだ、自滅ばかりと言いたい目は」

 

「がう!(死んでるくせにえらそーに!)」

 

「まあいい、そんな調子で俺を食べようとしても無駄だからな。何故ならもっと早く死ぬからだ」

 

「がう?(何言ってんだこいつ?)」

 

「まあまあ、そろそろ知りたいんだろ?ここから出る方法」

 

 ぴくっとキメラの耳が動いた。

 

―こいつ!

 

――本当にしゃべるのか?

 

―――嘘を言ってるかも

 

―真偽はともかく知るべきだ。

 

「興味津々だな。まあざっと説明すると、外に出られないようにするためのバリアがあるのは知ってるな?」

 

「がう(知ってる)」

 

「それを作ったのは俺だ」

 

 咄嗟に手が出た。

 

 あの男の行動や攻撃パターンを自分なりに解析し、そして放たれた奇妙な猫パンチ。

 

 一見変な攻撃に見えるが総体重8tかつ音速を超えてソニックブームを放つ拳は『教祖』の顔面を簡単に砕いた。

 

「だが俺を殺したところで何も変わらない。結界は消えないぞ?」

 

 手についた血をペロリと舐めると、背後から気配なく声をかけられた。

 

 目の前に首のない死体は残っている。しかし、『教祖』はまた現れる。

 

 何事もなかったかのように、何も気にせず振り返ればそこに立っている。

 

 転がっているのは人形で、新しく現れたのも人形と言われたら納得はいく。

 

 だが目の前で生きている。呼吸をし、心臓を動かし、全身に血液が流れる音がキメラの鋭い聴覚でとらえているのだから。

 

「まあ、ヒントはやるか。初めて俺を直に殺したご褒美としてな」

 

 そういいつつキメラに背を向けて『教祖』は歩きだした。

 

「この結界は、とあるものを使って維持している。まあ大したものじゃないが俺が加工したものだから経年劣化や酸で壊れることは無い。そう作ったからな」

 

 独り言のように、歩きながらつぶやくソレはどこか不気味に感じる。死臭が満ちた空間なのにどこか能天気な態度がキメラには気に食わない。

 

―頭を潰したのは失敗だったか。

 

―――感情のままに動くのもダメだねー

 

――胴体を貫いて腹を掻っ捌いたほうが良かったね

 

―頭を喰らえば力はともかく更なる知能を得れたかもしれない、か。

 

――でもライオン頭は馬鹿だよね

 

―――考えなしだよね

 

―なんだと貴様ら!

 

「―――で監視し続けてる天文台も、って何で一人で頭を殴ってるの?」

 

 聞かせるように話していたらキメラ、見た目は無駄にナイスバディで美女のキメラなのだがポカポカと音が鳴りそうな感じで自分を殴っていた。

 

 ただし、現実の音は岩同士がぶつかっているような鈍い音だが。

 

「聞いてる?結構重要な話をしてたけど」

 

「がうっ!?(きいてなかった!?)」

 

「長話が嫌いなタイプか。じゃあざっと説明すると、どこかに結界の元を隠したから探して壊してね」

 

「がう!がう!(どこにあるの!教えろ!)」

 

「自分で探してこそ達成感だろう?はは、そんなに強い力で掴むなおい齧るオヴぇ」

 

 がぶりゅ、と大きな口を開けて『教祖』の前頭葉は噛み砕かれた。

 

 もぐもぐと脳を咀嚼するキメラは思った。

 

―全然味がしない。

 

――何も得られないね。

 

―――土食べるよりも変な感覚。

 

 かなり不評の食レポであった。

 

 少し前に合った肉の宴で人間を少々(・・)食した時はとても感動したことは覚えている。

 

 ただ、この『教祖』と言う人間は、いや、人間なのかすら定かではない生物の肉は美味いとも不味いとも言えない不思議な味だった。

 

 別に癖になる訳でもなく、いくら咀嚼しても味のないガムのような感覚。なおキメラはガムの存在を知らないため奇妙な感覚に陥っている。

 

「で、気は済んだか?」

 

「ぺっ」

 

「素直に吐き出されるとショックなところあるよ」

 

 脳みそがダメなのかと考えたキメラは背後で復活した『教祖』をよそに口に残っていたものを吐き出した後に素手で腹を裂いてはらわたを引きずり出した。

 

 その際に前頭部が欠けた教祖の遺体の首を持って宙ぶらりんにした上で腸を引きずり出し齧りついているので非常に冒涜的にな光景になっている。

 

 常人が見たら卒倒してもおかしくはない光景だが深層では日常茶飯事、なんならもっとひどいことが起きていたりする。

 

「ま、時間はたっぷりあるんだし気長にやるといいさ。そもそも最後にあいつが立ちはだかるけどね」

 

 そう、例え結界を突破しても最後に立ちはだかるのはあの男。

 

 外に繋がる通路に仁王立ちして待ち構えている男の姿がキメラの脳内に浮かんだ。

 

 

「がう…………(面倒だなあの野郎…………)」

 

「じゃ、最後に食材だけ回収して何とかしようか。ゲストもいる事だろうし、盛大な食事にしてやろう」

 

「がう!(美味しいごはん!)」

 

 餌付けされていると言えば殺されるが、実際餌付けされていることは事実である。

 

 あの男、ケンが作る料理のレパートリーが未だに底を見せていない以上はまた新しい味に出会えることを喜びの一つとなった。

 

 使命は半分忘れてキメラは獲物を狩りに行く。

 

「…………そろそろ実験を本格的に進めるべきか。今まで守っていた純粋な人間とモンスターの交配を開放すべきか、悩むなぁ」

 

 その後ろで来るべきろくでもない未来への備えを考えている『教祖』の事はつゆ知らず。

 

 人間とモンスターと、そしてダンジョンの生存戦略は既に始まっているのだ。




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