ダンジョン深層住みです、いつからかは忘れました   作:蓮太郎

52 / 78
第52話 対価の苦痛

「あぎっ、ああ゛っ!ぐううぅ!」

 

「その調子だ。神経系が上手く接続出来たら痛みもマシになる。自分の腕がどう動いていたか思い出せ」

 

 ぎちぎちと機械が動く音が聞こえる。

 

 椅子に座らされ、胴体と右手と左足を縛られ動けなくされており、失ったはずの左腕には鉄の腕が装着されている。

 

 ここ最近にダンジョン深層に転移トラップで来てしまった挙句、遥か格上のモンスターに襲われてしまった煌木メイが苦痛の表情で悶えていた。

 

 無論、原因は左手に装着している義手である。

 

 実験中の男ことケンは彼女の失った腕を再現するために道具を付けたのだが、確実に思い通りに動かすためには神経系に直接接続しなければならない。

 

 別に直接つなげなくても脳波で操作は可能なのだが、地上の人間の状態をよく知らないケンは脳波操作系義手の選択肢は最初から省いていた。

 

 その理由は魔力である。

 

 脳波で操作する場合、最も注意することは外部干渉である。

 

 多少の電波なら大丈夫ではあるが、ダンジョンで採れた鉱石で作られた義手はよく魔力を通してしまう。

 

 もし、『教祖』のように魔力をきめ細やかに操れる生物、もしくは意志ある物があれば操作権限を乗っ取られる可能性が否定しきれないのだ。

 

「待て、痛みを和らげるために魔力を回すな。数値が乱れる」

 

「むりっ、むりい゛っ!」

 

「弱音を吐くな。自分で選んだ道だろう」

 

「うううううううっ!」

 

 平常では絶対に出さない獣のような声が部屋に響きわたる。

 

 こんな拷問を受けたら自分はどうなるかと聞いた人間も卒倒しそうだが、残念なことにケンはそういう声には慣れていた。

 

 痛みに耐えかねてバタバタと無秩序に暴れだす義手。ガンガンと謎の金属で作られた立方体の机を叩いて本体メイから離れようともがいている。

 

「生体に直接つけるなら最初から痛覚を遮断…………いや、自分の腕になるのに痛覚は必要だ」

 

「はあっ、はあっ、まだ、なの?」

 

「まだだな。進歩でいうならごちゃごちゃした動画のエンコード中だ」

 

「めっちゃかかるううう!」

 

 唸り、叫びながらメイはひたすら痛みを我慢する。義手を動かすために相当な精神を使ってしまう。

 

 かろうじて保っていた意識も限界を迎えて、そのままぐったりと前のめりになる。

 

 意識を失ったことで義手も機能停止しがちゃんと音を立てて立方体金属の上に横たわった。

 

「流石に限界が来たか。今回はこれくらいにしておこう、これからもっと頑張らないとなじまないからな」

 

 冷汗で濡れたメイを労いつつ拘束を解いた。

 

 そのまま倒れそうだったが体を支え、義手を外してからタオルの敷いたベッドに横たわらせる。

 

 薄着とはいえ汗を滝のように流した後なので全身にまとわりついた水分がタオルの中に染み渡っていく。

 

 目覚めた後の水分補給を忘れないために深層で取れた果実を冷蔵庫から取り出し、拳二つ分の大きさで、恐らくオレンジのような果実の見た目をしたものの皮をナイフで切り取る。

 

 この切り取る作業は1秒のみ満たなかった。その中から現れた果実は最初の大きさから拳一つ分まで小さくなっていたが。

 

 それでも十分である。何故ならダンジョン深層で取れた果実、その身に詰まった重さや栄養素は100単位だと片手だけで数えきれないのだから。

 

 露になった果肉を布でくるみ、それをミキサーの上で絞る。

 

 なお、この果肉は岩石と同じ硬さなのだがケンは素手で絞った。むしろ握りつぶしたと言って過言ではない。

 

 潰れた果肉から溢れる果汁がミキサーの中に入っていく。

 

 大きさの割に詰め込まれていた果汁はミキサーの容量の半分を占めた。

 

 これで完成ではない。そこに更に砂糖やシロップなど調味料を加えて味を調整し、そしてかき混ぜる。

 

 そして完成したのが緑色の栄養満点ジュースである。

 

「見た目だけどうにかならんのか」

 

 これでもそこそこ研究した方なのだが、どうしても意欲を削ぐような色になってしまう。

 

 見た目はともかく味は保証するため、栄養を取るためには飲んで欲しい逸品だ。

 

 それに加えてそろそろ戻ってくるであろう友人と1匹が腹を空かせているだろうから何かふるまわないといけない。

 

 友人はともかく一匹の方が機嫌を損ねる、もしくは食に興味を失えば被害にあうのは煌木メイだ。

 

 新世代の人間と貴重な実験材料を簡単に手放すわけにはいかない。

 

 もし、もしも事が済むのであれば地上での活動を視野に入れなければいけないので自身を売り込む材料になる。

 

 旧世代なら何も問題はない機器類も魔力を通して活動する新世代の人間だと不具合を起こす可能性は大きい。

 

 だからこそ今のうちに実験をしておかなければならない。

 

 何度でも言うが煌木メイは貴重な実験体だ。失うには惜しく、投資するなら今とケンは考えた。

 

 再び冷蔵庫に向かって彼は食材をあさり始める。

 

 空腹になるのは2人(・・)と1匹なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【いつも胸に】ダンジョン探索を語るスレ39 part99【素材を夢見て】

 

 

345:名無しの探索者

 えー、本日は5時間も探索したんですが、何の成果も得られませんでした

 

346:名無しの探索者

 無能

 

347:名無しの探索者

 せめて鉱石は持ち帰れ

 

348:名無しの探索者

 やっぱ規制が強くなってるよな

 

349:名無しの探索者

 また転移トラップが見つかったのが痛い

 

350:名無しの探索者

 再調査のためにベテランが雇われたの聞いた

 

351:名無しの探索者

 ベテランつっても中堅のたたき上げだけどな

 

352:名無しの探索者

 また新しいトラップが出来てたらおちおち潜ってられないよ

 

353:名無しの探索者

 罠を恐れて探索できるかい!

 

354:名無しの探索者

 その罠を踏んだら地獄行きですが

 

355:名無しの探索者

 俺らは化け物じゃないからな

 

356:名無しの探索者

 化け物つったら純光教の教祖はどうなったんだろ

 

357:名無しの探索者

 あのカルト集団?シラネ。

 

358:名無しの探索者

 深層に潜ったのは聞いた

 

359:名無しの探索者

 死んでるでしょ

 

360:名無しの探索者

 1週間も音沙汰が無かったらまあ、ね

 

361:名無しの探索者

 でも魔法つかうとかなんとか

 

362:名無しの探索者

 そもそも純光教ってなに

 

363:名無しの探索者

 基本的にダンジョンに頼らず生きて行こうっていう狂人の集まり

 

364:名無しの探索者

 今の時代、ダンジョンなしに生きて行けるのか?

 

365:名無しの探索者

 基本的にだからちょっとはセーフ

 

366:名無しの探索者

 なんちゃって菜食主義者かよ

 

367:名無しの探索者

 意味わからん集団だから敬遠されてるのは事実

 

368:名無しの探索者

 ただし教祖と幹部はヤバいと聞く

 

369:名無しの探索者

 kwsk

 

370:名無しの探索者

 自分で調べろ

 

371:名無しの探索者

 動画探せばわんさかある

 

372:名無しの探索者

 最近はなんか全身から血を吹いた奴と対峙してたのが出回ってたな

 

373:名無しの探索者

 何それ?

 

374:名無しの探索者

 嘘乙、そんなのないぞ

 

375:名無しの探索者

 少ししたら全部消えてたから陰謀あるって

 

376:名無しの探索者

 ダンジョンで生活してるのかな?

 

377:名無しの探索者

 教祖は名前もないし、なんか魔法も使うし

 

378:名無しの探索者

 魔力を出力?意味わからん

 

379:名無しの探索者

 まだ研究中だよな魔力放出

 

380:名無しの探索者

 これの映像は残ってるよな

 

381:名無しの探索者

 CGとか言うやついるけど俺現地でパフォーマンスっぽいの見たから異常だよあれ

 

382:名無しの探索者

 地味に由緒あるのがツッコミ辛い

 

383:名無しの探索者

 何で100年以上維持してるんですか?

 

384:名無しの探索者

 カルトこわ

 

385:名無しの探索者

 そんなんだったら深層でも生き残れるか

 

386:名無しの探索者

 例の男と合流してそう

 

387:名無しの探索者

 例の男と言えば煌木メイも行方不明のままか

 

388:名無しの探索者

 あれは生存してる

 

389:名無しの探索者

 最後の配信の最後に少しあの男が写ってたから生きてる、多分

 

390:名無しの探索者

 グロ注意すぎて元のが見れん

 

391:名無しの探索者

 元々ダンジョン配信なんてグロ上等だろう

 

392:名無しの探索者

 断末魔を集めた動画があるんだ、今更だろ

 

393:名無しの探索者

 アレは断末魔に入るのか?

 

394:名無しの探索者

 断末魔でしょ(モンスターの)

 

395:名無しの探索者

 泣き叫ぶメイちゃんは、こう、くるものがある。

 

396:名無しの探索者

 メスガキが分からされたねぇ(物理的に)

 

397:名無しの探索者

 明らかに手を食いちぎられてたんてすがそれは

 

398:名無しの探索者

 何か持ち帰ってくるだろうか

 

399:名無しの探索者

 いや、かなり重症だったから生きてるかも怪しい

 

400:名無しの探索者

 まあ、捜索願取り下げられた時点で終わりよね

 

401:名無しの探索者

 人気もまちまちだったからええんでnsifhr

 

402:名無しの探索者

 お、馬鹿にしたか?戦争か?

 

403:名無しの探索者

わかってない奴が語るなよ

 

404:名無しの探索者

 クソッタレ、また虫が入ってきた!

 

405:名無しの探索者

 誤送信を言い訳にするな

 

406:名無しの探索者

 虫といえば最近なんか大きいダンジョンのモンスターが虫ばっかになってない?

 

407:名無しの探索者

 気持ち悪いのばっかできつい

 

408:名無しの探索者

 メイちゃんを馬鹿にするなよお前

 

409:名無しの探索者

 そのせいで食べれる系のモンスターが高騰し始めてるし

 

410:名無しの探索者

 出現比率も虫が徐々に多くなってるよな

 

411:名無しの探索者

 季節的にも暖かいしそういうものなんじゃない?

 

412:名無しの探索者

 あんまり例がないけどなぁ

 

413:名無しの探索者

 外も中も虫が多いとか地獄かよ

 

414:名無しの探索者

 昆虫食でも始めるか?

 

415:名無しの探索者

 虫はちょっと…………

 

416:名無しの探索者

 雁木恵右ならまだワンチャンある

 

417:名無しの探索者

 生食メインを出すな

 

418:名無しの探索者

 参考にならんだろあれ

 

419:名無しの探索者

 評価できるの食べっぷりだけじゃん

 

420:名無しの探索者

 あれな、試してみたら意外といける

 

421:名無しの探索者

 あんまり真似したくないけど、味付けは良さそう

 

422:名無しの探索者

 リクエスト募集はしてるらしいから要望を出せばあるかも

 

423:名無しの探索者

 この前道端で飛んできたバッタ食べてたの目撃されてたぞ

 

424:名無しの探索者

 保護者ら拾い食いするなって怒ってたやつか

 

425:名無しの探索者

 保護者(坂神あかね)

 

426:名無しの探索者

 お守りしててかわいそう

 

427:名無しの探索者

 というか本当に肉を食べたい!早く取ってきてくれ探索者ー!

 

 




感想いただけるとモチベに繋がるのでよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。