ダンジョン深層住みです、いつからかは忘れました   作:蓮太郎

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第55話 コラボ配信、始

 

「はい、という訳で始まりました!コラボ配信で一緒にやっていきます!はい、自己紹介!」

 

「ロロンでーす」

 

「ラランでーす」

 

「話題の事務所とのコラボです!張りきって参りましょ…………恵右ちゃん、まだ行かないで!」

 

「君、もうちょっとお話を!」

 

 

:もうカオスで草

:ナンパ失敗してて草

:結局こうなるんだよね

:なんだあの男

:あさりポセイドン

:なんだ今の

 

 

 生配信というのに既にカオスになり始めている状況。

 

 お馴染みの坂神あかねとロロン&ラランというギャルからのスタートと思いきや、先に進もうとする恵右を止めるヴィジュアル系の男。

 

 男は生配信で身体を掴むのはまずいと言う事は理解しているため通せんぼという形で頑張って引きとどめようとしている。

 

 ちなみに男の名はリュウセイである。

 

「何で止めるんですか?」

 

「先走っちゃダメだからね?ほら、ダンジョンだから足並みをそろえないと」

 

「何で貴方達とそろえる必要があるんですか?」

 

「コラボ配信!コラボ配信だからお互いに歩み寄っていい絵を取るんだって!」

 

「そこまで強くないのに?」

 

「言われてるじゃんリュウセイ」

 

「初対面にも見破られてるんだよリュウセイ」

 

「弱くないさ、身の丈に合ってるだけの行動をとってるだけだよ」

 

 

:嘘つけ浅い層しか潜ってないぞ

:見た目だけで他はパッとしないよな

:女遊びしたいだけのクズ

:『コメントは削除されました』

 

 

 リュウセイはともかく、しぶしぶと皆の歩幅に合わせて恵右も歩くことにした。

 

 いつもは恵右が先走り、あかねが取りこぼしを仕留めるというスタイルでガンガン進むような攻略をしていた恵右だが、人数が増えたことにより活動方法がいまいちよく分らず困惑していた。

 

 そもそも、いままでソロだったのがコンビを組んで攻略する機会が増えた時点で苦戦していたのがようやく慣れた頃合いだったのも相まって、非常にやりづらそうにしていた。

 

 分からない化粧のトーク、飲めない好きな酒の話、少し大人な面子に取り残された気分になる。

 

 あえて食べ物の話題をふらないのは恵右が暴走するのが分かりきっているからである。

 

「っとと、話の途中だけどモンスター!戦闘準備!」

 

「華麗な剣を見せてやろう」

 

「援護は任せてー」

 

 前衛はレイピア使いの恵右と剣士のリュウセイ、後衛はボウガンと投石紐のロロン&ララン。その後ろを守るあかねの構成である。

 

 現れたのは定番の狼型モンスターが5匹。彼女らが冷静に対処すれは問題ない。

 

 恵右はいつも通り眼球から脳を掻き乱す一撃必殺を繰り出し、リュウセイは華麗に見える剣で表面だけ斬る。

 

 そのうち漏らしをロロン&ラランが矢と石で狙っていく。

 

 素早さが売りの狼型モンスターとはいえど、リュウセイの剣を僅かに受けて気を引かれている横から投擲物を受けたら致命傷になりかねる。

 

 矢は刺されば単純に肉体を動かす邪魔となり、投石も魔力で強化した腕で振り回した石は並の威力では済まされない。

 

 身体に矢が刺さり、そして頭に石がクリティカルヒットした狼型モンスターはふらふらとよろめいてから倒れた。

 

 しかし、それらを避けたモンスターが彼女らに飛びかかる。

 

「どっせい!」

 

 その飛びかかりは無防備な姿をさらし、横っ腹からスレッジハンマーを叩き込まれた狼型モンスターは内臓を潰される音と共に横へ吹き飛ばされる。

 

 後衛を守りつつ油断したところに叩きこむ役割をあかねが担う。

 

 多人数とは言えどやや理想的な編成が組めており、戦闘面は順調に攻略していた。

 

「よし、それじゃあ解体…………」

 

「待って、マジでここでやる気?」

 

「衛生面ヤバくない?」

 

「大丈夫です。一番新鮮な生を食べられるのはここだけなので逃せません」

 

「生は流石にムリなんだけど!?」

 

「こういう子なんです」

 

「君は保護者なのかい…………?」

 

 

:いつもの

:毎回マジでトチ狂ったことするよな

:全員の安全確保をしてからしろ

:既に死屍累々のモンスターの周りで安全確保…?

 

 あっさり倒しきった狼型モンスターの群れを即座に解体しようとする恵右に拒絶反応が出るギャル二人組。

 

 ダンジョンで即座に生を食べようという考えが意味不明なのは当然として、立ち止まって解体するというのは無防備を晒すという所業である。

 

 モンスターに襲われるのは当然のリスクとして、ダンジョン内であくどいことを秘密裏にしている人間に襲われる可能性だってある。

 

 そんな馬鹿な行動を常日頃から行ってるのが恵右である。

 

「ほら、腎臓ですよ。生でちゅるちゅると、ダメなら醤油につけてどうぞ」

 

「何でわざわざ腎臓を!?」

 

「おしっこ作る所を食べるとかおかしいって!」

 

「でも美味しいですよ?」

 

「本……当に、美味しいのか?」

 

「騙されないでください、彼女は特別な訓練を受けてるのでお腹壊します。実体験です」

 

「君も身体を労ったらどうだい?」

 

 保護者の苦労は続く。

 

「それでは捌き方ですが…………」

 

「アノ子って猟師か何か?」

 

「昔からサバイバルもどきはやってたって言ってたけど、ここがイキイキできるとも言ってた」

 

「…………メイのことでコラボって話なのにベクトル違うくない?」

 

「まー、あっちはあっちで配信してるしリュウセイが合いの手を入れてるから終わるまでトークでもする?」

 

「ごめんね、迷惑かけて」

 

 しれっとモンスター解体組とトーク組に分かれて配信を気にしつつ、本題に移ろうとした。

 

「でさぁ、メイのやつ何持って帰ってくると思う?」

 

「何って、資源のこと?」

 

「そうそう、だってアンタも胸のソレ(・・)貰ったんでしょ?」

 

「あー、なるほど。でも煌木メイって手とか足とか大変なことになってたよね。そこのところはどう思ってるの?」

 

「何とかなるんじゃない?」

 

「教祖様もいるし帰ってこれるよ」

 

「そんな甘いことを…………」

 

 思っている以上に他人事な二人にあかねは渋い顔を作った。

 

 簡単に帰ってこれるならいいのだが、何が起こるか分からないのがダンジョンである。自分が帰ってこられたのもはっきり言って運が良かったと感じているあかねだからこそ思うのだ。

 

 帰還に浮ついたまま警戒を怠るのはよくあること。それで帰ってこなくなった探索者は数知れず。

 

 深層に住んでいる彼を除いて例外はないんじゃないかと感じている。

 

 『教祖』も油断しまくって死に続けているのであながち間違いではないが、それは本人とケンとキメラ、その他極一部しか知らない。

 

「いやでもね、あの人は与えるとしても企業とか団体に利益を出す奴じゃなくて個人だけに効果ある物しか渡さないと思う」

 

「へえ、その心は?」

 

「あの人、そういう団体に興味なさそうだった」

 

「でもさぁ、あんなナノマシン?だっけ?あの技術を持ち込んだら大儲けできるっしょ」

 

「お金とかに興味あったら、ずっとダンジョンに潜ってないよ」

 

 何度も彼の姿を思い出す。

 

 圧倒的強さ、200周年記念式典の際に持ち出してきた鎧もそうだが生身も恐ろしく強い。

 

 恐らく人類の中でも頂点に立ってもおかしくない強さを保有しているだけでなく頭脳も現代では再現できないものを作り出すほどで、こちらも頂点に立っている。

 

 何故、地上に出ないのか?

 

「ま、そこら辺は考えても本人からしか答えが出ないだろうけどね」

 

 だから、あかねは答えを先延ばしにした。

 

 彼は人間だ、会話をしてそう感じたのだからそうなのだ。

 

 その目の奥底の、黒いナニカは見て見ぬふりするのが一番だと言い聞かせて。

 

 ブラックホールのような、吸い込まれそうな瞳を、少し思い出し、忘れようとして。

 

カサカサ…………

 

「ん?」

 

 足元で奇妙な音がなった事に気づいたあかねは下を向いた。

 

 そこには50cmもある巨大なゴキブリが近くまで来ていた。

 

「うおっ、あああ!?」

 

「きゃああっ!?」

 

「気持ち悪っ!?」

 

 あかねは雄叫びを上げながらゴキブリを踏み潰し、ロロンとラランはあまりのキモさに叫び声を出した。

 

 魔力強化されたスタンピングで潰せたのはいい。問題はこのゴキブリ、もといG虫型モンスターがいる事である。

 

「全員逃げるよ!Gが出た!」

 

「今の叫び声、そういうことなのか!」

 

「入れ食いですね」

 

「「「誰が食べるか!」」」

 

 恵右の空気が読めない発言に他女性3人は異口同音で言うが、既に遅い。

 

 カサカサカサカサ、カサカサ…………

 

「き、きたああああ!?」

 

「逃げろ!この数はやばい!」

 

「リュウセイ!先頭で走るなぁ!」

 

 進んできた道から大量のG型モンスターがきた事で1人除いて阿鼻叫喚、コメント欄も叫び声でいっぱいになっていた。

 

 恵右を後衛として皆で前進するように走るしかない。配信中の端末を握りながら4人はそう考えた。

 

 楽しい楽しいコラボ配信は始まったばかりである。

 




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